更新日:2025年11月25日

甘いものが食べたい時は栄養不足?食べたい気持ちを抑える方法も紹介

「無性に甘いものが食べたい」「気づいたらおやつに手が伸びている」そのような時は誰しもあるのではないでしょうか。また、ダイエット中に甘いものを我慢できず、罪悪感を覚えてしまうこともあるかもしれません。実は、甘いものが食べたいという欲求は、必要な栄養素が不足しているという体からのサインの可能性があります。この記事では、甘いものが食べたい時の体の状態と、その他に特定のものが食べたくなる時の体の状態、甘いものが食べたい時に意識したい食習慣、食事以外に甘いものが食べたい欲求をコントロールするための方法を紹介します。

監修

谷口 英喜 先生

済生会横浜市東部病院 患者支援センター長、東京医療保健大学大学院 客員教授

INDEX

甘いものが食べたい時の体の状態

甘いものが無性に食べたい時、それは体が普段とは異なる状態というサインかもしれません。ここでは甘いものが食べたい時の体の状態として考えられるものを解説します。

エネルギー源となる三大栄養素が不足している

甘いものが食べたい時は、炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素が不足している可能性が考えられます。例えば、ダイエットなどによって食事が十分に摂れていない場合は、体が飢餓状態になってエネルギーを欲し、甘いものをはじめとする炭水化物や脂質を無性に摂りたくなることがあります。

また、たんぱく質が不足するとイライラしやすくなり、筋肉量が減って疲れやすくなるため、甘いものが食べたくなることも。エネルギーを効率よく生み出すためには、体内でエネルギー代謝をサポートする働きがあるビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)の摂取も欠かせません。三大栄養素のなかでも、炭水化物のうちの糖質はエネルギー源として使われやすい栄養素です。過剰な摂取は避けたいですが、糖質は脳や体のエネルギー源となる重要な栄養素でもあります。特に疲れている時は、糖質と、糖質からエネルギーを作り出すのに必要不可欠なビタミンB1を摂取することが大切です。

<ビタミンB1や他のビタミンB群を配合し、疲れによく効くアリナミン製品>

ストレスが溜まっている

ストレスが溜まっている時も、甘いものを食べたくなることが多いです。ストレスを感じると、脳がそれをやわらげようとして、「快楽中枢」と呼ばれる部分を刺激するためだと考えられています。

ブドウ糖をはじめとする糖質には脳内の神経伝達物質に働きかけることで、幸せを感じるホルモンである「セロトニン」や「ドーパミン」を分泌させる効果があります。また砂糖は消化吸収が早いため、すぐに脳のエネルギーとして利用でき、摂取することで快楽やリラックスした感覚につながるのも特徴です。

ホルモンバランスが変化している

女性の場合は、ホルモンの影響で甘いものが食べたくなることもあります。女性ホルモンには、主に卵巣から分泌される「エストロゲン」「プロゲステロン」の2種類があり、このホルモンは排卵や月経のコントロールだけでなく、女性の心身に大きな影響を与えています。

特に月経前にはこの女性ホルモンのバランスが変化するため、イライラする、気分が落ち込むといった精神的症状、倦怠感や食欲増加などの身体的症状が現れることがあります。その影響で、甘いものが食べたいという欲求が生まれることも考えられるでしょう。

また月経前には、血糖値を下げるために膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きが悪くなり、血糖値は不安定になりやすく、血糖値の急上昇や急降下により体調にも変化が出やすいと考えられます。

血糖値スパイクが起こっている

長時間、空腹の状態が続いた後に食事を摂ったり、甘いものやパン、ご飯などの糖質を摂り過ぎたりすると、血糖値が急上昇してしまいます。血糖値が急上昇すると、血糖値を下げようとインスリンが大量に出て、血糖値が急降下します。これを「血糖値スパイク」と呼び、低血糖状態になると空腹やイライラ、甘いものへの欲求を感じやすくなってしまうのです。

甘いものの他に、食べたいものでわかる体の状態

甘いもの以外にも、特定のものが食べたくなる時は、体が通常の状態と異なるというサインの可能性があります。ここでは食べたいものごとに、置かれている体の状態を解説します。

塩辛いものが食べたい時

塩辛いものが食べたい時は、体がミネラル不足になっている可能性があります。

例えば飲酒したり、運動したりすると、尿や汗から食塩に含まれるミネラルの一種「ナトリウム」などいくつかの栄養素が排出されてしまいます。その結果、体内のナトリウムが不足し、それを補うために塩分が欲しくなることがあります。

また、藻類や果物などに含まれるミネラルの一種「カリウム」には、体内の水分調整の役割があるため、不足すると浮腫みやすくなり、体の水分量が増えてしまいます。これによってミネラルが薄まったと体が勘違いし、塩分が欲しくなる場合もあります。

脂っぽいものが食べたい時

ストレスが溜まっている時は、脂っぽいものが食べたくなることもあります。ストレスを受けると、脳からの指令によって、副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは血糖値を上昇させるとともに、脂肪分解作用を促進し、エネルギー代謝を上げてストレスに対抗するように働きます。

ストレスを受けることが日常的になり、コルチゾールの脂肪分解作用が続くと、体は危機を察知して脂肪を蓄えようとして、ジャンクフードやおやつなどの脂質や糖質を欲するようになります。あるいは、揚げものなどの脂っぽいものも塩分を多く含むため、塩辛いものが食べたくなる時と同じように、カリウムが不足している場合も多いです。

辛いものが食べたい時

ストレスを感じると、刺激を求めて辛いものが食べたくなることがあります。

辛さを感じると、脳内に「β-エンドルフィン」という快楽を感じるホルモンが分泌されるため、この快感を求めて依存してしまうことも。あるいは、亜鉛が不足すると味覚が鈍くなるので、亜鉛不足も可能性として考えられます。

酸っぱいものが食べたい時

酸っぱいものが食べたい時は、体が疲れている可能性があります。柑橘類、酢、梅干しなどに多く含まれるクエン酸には、疲労の原因とも関係する活性酸素から体を守ったり、体内で摂取した食べ物をエネルギーに変える回路をスムーズに回す働きがあります。そのため、体がクエン酸を欲して、酸っぱいものが食べたいと感じているのかもしれません。

氷が食べたい時

ガリガリかじるようにして氷が食べたい時は、体内の鉄分が不足し、貧血状態になっている可能性があります。特に製氷皿に1皿分以上食べたり、食べずにはいられないような場合は注意が必要です。

氷が食べたくなる理由については、強い精神的ストレスや強迫観念が原因という説や、貧血にともなう口腔内の炎症を抑えようとしている、氷を噛むことによって反射的に脳の血流を増加させているなど、さまざまな説がありますが、明確な原因はわかっていません。

甘いものが食べたい時に意識したい食習慣

甘いものを含めた間食は、喜びや楽しみをもたらしてくれます。また誰かと一緒に食べることで、コミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。しかし、おやつをお腹いっぱい食べるのが習慣になっていたり、甘いものばかり偏って摂取したりしていると、カロリーオーバーになってしまうこともあります。そうすると肥満などの生活習慣病につながる他、栄養バランスが悪くなって疲れやすくなることも。ここでは、甘いものへの欲求を抑えるために意識したい食習慣を紹介します。

主食を抜かず、栄養バランスのよい食事を摂る

忙しさや過度なダイエットなどにより普段の食事がきちんと摂れていないと、体がエネルギー不足の状態になってしまいます。すると、その反動でチョコレートやスイーツなど、糖分や脂肪分の多い食べ物をつい食べすぎてしまうことも少なくありません。

糖質は体と脳のエネルギーとなる重要な栄養素です。摂り過ぎはよくないですが、健康のためには適量を摂取することが必要です。甘いものへの過剰な欲求を抑えるためには、単にご飯やパンを抜くという方法ではなく、主食・主菜・副菜を基本に、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素をバランスよく摂取しましょう。

・間食で甘いものを食べたい場合は…

厚生労働省・農林水産省が定めている「食事バランスガイド」では、1日のおやつや嗜好飲料の目安の量を200kcalとしています。間食として甘いものを食べる場合は、200kcal以内に収めるように意識しましょう。また甘いもののなかでも、ジュースやアイスクリーム、洋菓子などは急速に血糖値を上げるため、「血糖値スパイク」が起きやすいです。そのため、血糖値が急降下するタイミングで空腹やイライラを感じやすく、また甘いものが食べたくなるという繰り返しになることも。

どうしても甘いものが食べたい時は、キウイ、りんご、なし、ベリー類など血糖値を上げにくい果物がおすすめです。また、おやつにヨーグルトやチーズなどのたんぱく質を多く含むものや、ナッツなどの脂質を多く含むものを組み合わせて食べると、血糖値の上昇スピードが緩やかになり腹持ちもよくなります。

トリプトファンを多く含む食品を摂る

甘いものを食べたい気持ちを抑えるには、ストレスに強い状態をつくる必要があります。脳内の神経伝達物質「セロトニン」は別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神状態を安定させてくれます。セロトニンが不足すると、ストレスを感じやすくなり、意欲の低下や不眠、うつ症状などが生じることも。

セロトニンは、必須アミノ酸の一種「トリプトファン」から合成されます。甘いものが食べたい時は、トリプトファンを豊富に含む肉類、魚介類、乳製品、大豆製品、ナッツ類、バナナなどの食べ物を積極的に摂取するようにしましょう。

セロトニンの合成を促進させるためのビタミンB6を摂る

甘いものが食べたい時は、トリプトファンからセロトニンを合成するのを助けるビタミンB6も合わせて摂取するとよいでしょう。ビタミンB6には他にも、アミノ酸(たんぱく質)や脂質の代謝のサポート、赤血球のヘモグロビンや神経伝達物質の合成、免疫機能の正常な働きの維持、お肌の健康を維持するといった働きがあります。

ビタミンB6は、赤身肉、鶏肉、牛レバー、マグロ、カツオ、バナナに多く含まれます。仕事や家事、育児などで忙しく栄養バランスが乱れがちな人は、ビタミンB6を含むビタミン剤などを普段の食事にプラスするのも一つの手です。

<疲れた時などのビタミンB6の補給におすすめのアリナミン製品>

甘いものが食べたい時の気持ちを食事以外で抑える方法

ここでは、甘いものが食べたいという欲求をコントロールするために、食事以外で気をつけたい点を紹介します。

ストレスを溜め込まない

甘いものへの欲求を抑えるためには、ストレスを溜め込まないことも大切です。ストレスを溜め込まないようにするためには、自分に合ったストレスへの対処法を知り、事前に用意しておくのがおすすめです。こうしたストレス対処法は、一般的に「ストレス・コーピング」と呼ばれ、大きく分けて下記の2種類があります。

・問題解決型コーピング

「問題解決型コーピング」とは、ストレスの原因となっている状況を変えたり、問題を明確にして解決策を探したりする方法です。これには「原因をはっきりさせる」「具体的なプランを立てる」「代替案を見つけて評価する」などの対処が当てはまります。例えば業務量の多さがストレスの原因となっている場合、上司に相談して業務量を調整してもらったり、担当を変えてもらったりすることをお願いしてみてもよいかもしれません。

・情動焦点型コーピング

「情動焦点型コーピング」とは、ストレスを感じた時の感情(情動的な反応)をコントロール・軽減したり、問題から一時的に離れたりして心を守る方法のことです。いわゆる「気分転換」も含まれ、自分でコントロールしきれないストレスの軽減を目指す方法です。気分転換として甘いものや糖質の多いおやつを食べるのではなく、友人と話す、散歩する、好きな音楽を聴くなど、甘いものを食べる以外の方法で、ストレスを発散することを心がけてみてもよいでしょう。

適度な運動をする

運動には、気分転換やストレス解消といった効果があります。イライラすると甘いものが食べたくなる人は、定期的に運動を行うのがおすすめです。

特にウォーキングや軽いランニング、ダンスなどのリズムのある運動を行うと、セロトニンの分泌を司る神経の働きが高まります。運動の強度としては、体が温まり軽く汗ばむ程度で、スッキリしたと思えるぐらいが目安になります。運動時間は1日20分を目安にしましょう。1回にたくさん運動を行うよりも、継続することが大切です。

睡眠の質を上げる

甘いものへの欲求を抑えるためには、睡眠の質を上げることが重要です。睡眠時間が短くなると、満腹感を起こすホルモン「レプチン」の分泌が低下し、反対に食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が増加してしまいます。また、睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2つで構成されていて、入眠時にはノンレム睡眠が出現し、その1~2時間後にはレム睡眠へ移行するとされています。このサイクルが一晩で4~5回繰り返されるといわれていますが、このうちレム睡眠が不足すると、甘いものや脂っぽいものの摂取量が増えるという報告1)もあります。

適切な睡眠時間は年齢や季節、個人差によって異なりますが、成人であれば最低でも6時間以上は確保することが望ましいです。さらに、睡眠の質を高める工夫も合わせて行うことが大切です。睡眠の質を高めるために、寝る1時間前にはスマートフォンやパソコンを見ないようにして、ブルーライトの刺激を避けるようにしましょう。

寝付きをよくするためには、就寝前に軽いストレッチや入浴で体を温め、血行を促進するのもおすすめです。また就寝前には、覚醒作用のあるカフェインの摂取も控えるようにしましょう。カフェインを含むコーヒーや紅茶は避け、代わりにハーブティーなどを飲むとよいでしょう。

1) McEown K, Takata Y, Cherasse Y, Nagata N, Aritake K, Lazarus M., 「eLife」, Chemogenetic inhibition of the medial prefrontal cortex reverses the effects of REM sleep loss on sucrose consumption (前頭前皮質における神経活動の抑制により、糖類摂取量に対するレム睡眠不足の影響が変化する)

本当に甘いものが食べたいのか、落ち着いて考える

甘いものを食べると快楽を感じるホルモンが分泌されるため、その快感に依存しやすくなります。依存してしまう、本当に甘いものが食べたいわけではなくても、頭より先に体が反応して甘いものを摂取してしまうことも。甘いものが食べたくなったら一旦立ち止まり、本当に食べたいのか考えてみましょう。どうしても何かが食べたい場合は、甘いものをナッツやチーズ、無糖ヨーグルト、おしゃぶり昆布などに代えてみるのもおすすめです。

甘いものが食べたい時は、一度生活習慣を見直してみよう

甘いものが無性に食べたい時は、栄養不足やストレス、血糖値の乱高下、女性の場合はホルモンバランスの乱れなどが原因になっている可能性があります。つい甘いものを食べ過ぎてしまったり、特定のものばかり食べたくなったりする場合は、自分の体の状態を理解し、生活習慣を見直すことが大切です。普段からバランスのよい食事を心がけ、必要なエネルギーと栄養をしっかり摂取するようにしましょう。仕事や家事、育児などで忙しくて栄養バランスが乱れがちな人は、ビタミンB1やビタミンB6などの栄養素を含むビタミン剤を活用するのもおすすめです。甘いものを無理に我慢するのではなく、食べたくなる原因を理解して、上手に付き合うようにしましょう。

<参考文献>
  • 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット
  • 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
  • 山下あきこ「死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方」あさ出版, 2022年

疲れた時などのビタミンB1やB6の補給に
おすすめのアリナミン製品

製品ラインナップをみる