更新日:2024年3月29日

ビタミンB6の働きとは?摂取量の目安やビタミンB6を多く含む食品も紹介

ビタミンB6は、タンパク質の代謝をはじめ、体の中で行われているさまざまな生体内反応に欠かせない栄養素です。従来、ビタミンB6は多くの食品に自然に含まれているため、不足することはほとんどないと考えられていました。しかし近年はタンパク質の摂取量の増加や高齢化などを背景として、そうともいいきれないと指摘されるようになってきました。今回はビタミンB6の働きと、不足による健康への影響、不足しないための工夫について解説します。

監修

福渡 努 先生

滋賀県立大学 人間文化学研究院 教授 日本ビタミン学会 幹事 ビタミンB研究委員会 委員

INDEX

ビタミンB6とは?

そもそもビタミンは、それ自体がエネルギー源として利用されることはありません。また、食品に含まれている量もごくわずかです。しかし、体の諸機能を正常に保つためには欠くことのできない栄養素です。

ビタミンは水に溶ける水溶性ビタミンと、水に溶けない脂溶性ビタミンに大きく分けられます。ビタミンB6を含むB群は、前者の水溶性ビタミンです。ビタミンB群は主に、エネルギーを産み出すために体内で行われている代謝などの過程で、補酵素(コエンザイム)として働きます。

酵素とは、体内の化学反応を引き起こすために必要とされるタンパク質のことで、補酵素とは、その酵素の活性を調整するように働いている成分のことです。ヒトには約5,000種類の酵素があるといわれていて、その中でビタミンB6は約200種類の酵素の補酵素として働くことがわかっています。

ビタミンB6の働き

・タンパク質の代謝

代謝とは、栄養素からエネルギーを作ったり、成長や組織の修復などを行ったりする化学反応のこと。例えば、食品中のタンパク質は筋肉や血液などの材料として使われますが、それにはまず食品に含まれているタンパク質をアミノ酸(タンパク質を構成している化合物)に分解し、そのアミノ酸を使って必要とされるかたちに合わせたタンパク質に作り替えるという「代謝」が行われています。この代謝にビタミンB6が必要で、タンパク質の摂取量が多いほどビタミンB6の必要量も増えるため、ビタミンB6が不足している場合にはタンパク質の代謝が滞ってしまいます。

なお、タンパク質の代謝の他に、炭水化物や脂質という主要栄養素(エネルギー源になり得る栄養素のことで、タンパク質も含めて「三大栄養素」と呼ばれます)の代謝にもビタミンB6がかかわっていて、エネルギー産生に必要とされます。

・神経伝達物質の合成

ビタミンB6は、神経伝達物質の合成にも必要とされます。

神経伝達物質とは、体の中でさまざまな情報を伝達する役割を担う物質のことです。例えば、ストレスに応じて体の機能を適応させるように働くアドレナリンやノルアドレナリン、それらをコントロールして精神を落ち着かせるセロトニン、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化にかかわるドパミン、不安の抑制や睡眠の質を高めるように働くγ-アミノ酪酸(GABA:ギャバ)などのこと。ビタミンB6は、それら神経伝達物質の合成にかかわっています。

・その他の働き

ビタミンB6の働きは他にもたくさんあります。例えば、赤血球の産生にかかわり、ビタミンB6が不足していると貧血が起きることも。また、ホルモンの産生を助ける働きももっています。

その他にビタミンB6は、ホモシステインというアミノ酸の代謝にもかかわっており、血液中のホモシステインの量を減らすように作用します。この作用が、動脈硬化やがんの発症、骨折をするリスクを抑えるように働くとも考えられています。

また、免疫機能に関連したアレルギー反応、酸化ストレス、骨質など、身体的な健康に対してもさまざまな経路で関与しており、さらに認知機能やメンタルヘルス疾患のリスクとの関連も報告されています。

ビタミンB6は女性にうれしい栄養素

ビタミンB6の作用のなかで、赤血球の産生やホルモンに対する働きは、とくに女性にとってうれしい働きといえるでしょう。

・貧血との関係

女性の月経にともなう貧血は鉄欠乏性貧血といい、その多くは、欠乏している鉄分の補充によって改善するといわれています。貧血が鉄分の補充によっても十分に改善されない場合、原因の一つとしてビタミンB6の不足が考えられます。

妊娠中は赤ちゃんが大きくなるにつれて必要とされる血液の量が増え、それとともに血液が薄くなるため、とくに妊娠後期には貧血になりやすいといわれていますが、妊娠後期にビタミンB6が低値になりやすいことも影響している可能性があります。

・つわりとの関係

一方、妊娠の初期にはつわりに悩まされる妊婦さんが少なくありません。つわりの原因の一つとして、妊娠中にキサンツレン酸(トリプトファンというアミノ酸の代謝がスムーズにいかないときに増加する物質)が増えることが関係していると考えられています。

ビタミンB6が不足すると、キサンツレン酸が増加します。また、妊娠中に分泌が増える女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの作用によってビタミンB6の必要量が増えるために、相対的にビタミンB6が不足しやすいといわれています。ビタミンB6製剤を服用することで、つわりの症状が改善されたとする研究報告1)もあります。

1) Catherine McParlin, et al.JAMA.2016 Oct 4.316(13).1392-1401.

・月経前症候群(PMS)との関係

生殖年齢の女性(閉経期以前の女性)は、「月経前症候群(PMS)」と呼ばれる月経前の不快な症状が、生活に支障を及ぼすことがあります。これにはホルモンバランスの乱れが関与しています。そのような状態に対して、女性ホルモンの産生にもかかわっているビタミンB6を摂取することにより、PMSの症状を和らげる可能性があるといわれています。

なお、経口避妊薬を服用するとビタミンB6の必要量が増えますが、PMSの治療でも経口避妊薬と同じ成分の薬が用いられることがあります。

ビタミンB6の1日に必要な摂取量は?

厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンB6の推定平均必要量と推奨量、目安量、耐用上限量は以下のとおりです。なお、「推定平均必要量」とは、50%の人が必要量を満たすと考えられる量のこと、「推奨量」とは日本人の大半(97~98%)が必要量を満たすと考えられる量のこと、「目安量」とは栄養状態を維持するのに十分な量のこと、「耐用上限量」とは習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないとみなされる上限量のことです。

なお、食品のみからビタミンB6を摂取している場合であれば、過剰摂取のリスクについてはさほど心配する必要はありません。

ただし、サプリメントや医薬品を使用する際は過剰摂取とならないよう製品の記載を確認しましょう。

ビタミンB6の食事摂取基準(mg/日)※1
性 別男 性女 性
年齢等推定
平均
必要量
推奨量目安量耐容上限量※2推定
平均
必要量
推奨量目安量耐容上限量※2
0 ~ 5 (月)0.20.2
6 ~11(月)0.30.3
1 ~ 2 (歳)0.40.5100.40.510
3 ~ 5 (歳)0.50.6150.50.615
6 ~ 7 (歳)0.70.8200.60.720
8 ~ 9 (歳)0.80.9250.80.925
10~11(歳)1.01.1301.01.130
12~14(歳)1.21.4401.01.340
15~17(歳)1.21.5501.01.345
18~29(歳)1.11.4551.01.145
30~49(歳)1.11.4601.01.145
50~64(歳)1.11.4551.01.145
65~74(歳)1.11.4501.01.140
75 以上(歳)1.11.4501.01.140
妊婦(付加量)+0.2+0.2
授乳婦(付加量)+0.3+0.3

※1 タンパク質の推奨量を用いて算定した(妊婦・授乳婦の付加量は除く)。
※2 ピリドキシン(分子量=169.2)の重量として示した。

〔出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」〕

思いがけずビタミンB6不足に陥っている可能性も?

ビタミンB6は比較的多くの食品に含まれている栄養素で、日本人が主食としてきた米飯にも含まれています。また、食品から摂取する以外に、腸内細菌からも産生されています。そのため、一般的な食生活を送っている限りはビタミンB6が不足する心配はないと考えられ、これまで注意が向けられることはさほどありませんでした。

ところが、厚生労働省が発表する「国民健康・栄養調査」によると、近年のビタミンB6の平均的な摂取量は「日本人の食事摂取基準」の必要量前後にあるものの、年齢や性別によっては不足がみられています。ビタミンB6が不足しやすくなる主な原因としては、以下のような習慣や状態が挙げられます。

・少食・偏食

高齢などの理由で食事の量が少なくなっている人、偏食をする人、孤食(一人きりでの食事)などによって単調な食事になっている人などは、ビタミンB6が不足していることがあります。

・高タンパク食

先述のように、ビタミンB6はタンパク質の代謝に必要な補酵素です。そのため、タンパク質を多く摂るにつれて、ビタミンB6の必要量が増えていきます。近年流行りの低炭水化物ダイエットをしていたり、スポーツのためにタンパク質を多く摂っていたりする人は、ビタミンB6も多く摂る必要があります。

・妊娠・授乳中

妊娠中や授乳中には、胎児や乳児へ栄養を届けるため、母親に必要な栄養素の量が全体的に高くなります。ビタミンB6についても、「日本人の食事摂取基準」に付加量が示されているように、多く摂る必要があります。なお、1日あたりの付加量は、妊婦が0.2mg、授乳婦が0.3mgです。

・その他

先述のように女性ホルモンが多い状態では、ビタミンB6も多く使われます。経口避妊薬のおもな成分は女性ホルモンであるため、服用中はビタミンB6が不足しやすくなります。経口避妊薬の他にも、抗菌薬、抗結核薬、パーキンソン病治療薬、リウマチ治療薬、降圧薬などの一部の薬で、服用中にビタミンB6の低下が生じやすくなることが知られています。

薬の服用以外では、糖尿病の人や肥満の人の場合、肝臓での糖新生(糖以外の物質から糖を作り出すこと)にともないビタミンB6が多く消費されるため、不足しやすくなります。

ビタミンB6が不足するとどうなる?

皮膚炎、口内炎、舌炎、貧血、食欲不振などの身体的不調

現在では多くの働きがあることがわかっているビタミンB6。しかし、もともとはラットを用いた研究において、ビタミンB6の欠乏により生じる発育不良や皮膚炎と関連があることから発見されました。このうち皮膚炎についてはヒトにも当てはまり、欠乏状態では脂漏性皮膚炎(鼻や耳、口の周辺に起きやすい炎症)、口内炎、口角炎、舌炎などが生じることがあります。

また、ビタミンB6は赤血球の産生にもかかわっているため、欠乏すると赤血球が作られなくなり、貧血になりやすくなります。その他、食欲不振や吐き気などが現れることもあります。

イライラ、不安などの精神的不調

ビタミンB6は神経伝達物質の合成にもかかわっているため、不足によって脳波の異常やけいれん発作などが生じることが報告されています。

また、精神を落ち着かせる神経伝達物質で、「しあわせホルモン」と呼ばれることもあるセロトニンの合成にもビタミンB6が欠かせません。ビタミンB6不足のためにセロトニンを十分に合成できなくなることで、イライラしやすくなったり、うつ病の発症リスクにつながったりする可能性も考えられます。実際に、ビタミンB6の値が低い人はうつ病の発症リスクが高く、ビタミンB6の投与によってうつ病の症状が改善されたという動物実験の報告2)もみられます。

2) 美作大学・美作大学短期大学部紀要.2023.Vol,68.97-100

手足がしびれる、足がつるなど末梢神経の症状も

ビタミンB6の欠乏による影響として、末梢神経の障害や筋肉の緊張低下も挙げられます。その場合、手足のしびれや足のこむらがえり(ふくらはぎがつること)などの症状が現れることがあります。

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ビタミンB6はどんな食品に含まれている?

ビタミンB6は野菜類、穀類、魚介類、種実類、肉類など、さまざまな食品に含まれています。

野菜類

野菜類に含まれるビタミンB6量(mg)(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB6(mg)
赤ピーマン 果実0.37
モロヘイヤ 茎葉0.35
ブロッコリー 花序0.30
切干しだいこん0.29
西洋かぼちゃ 果実0.22

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

穀類

穀類に含まれるビタミンB6量(mg)(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB6(mg)
[水稲めし] 玄米0.21
[水稲めし] 精白米 うるち米0.02
ライ麦パン0.09
マカロニ・スパゲッティゆで0.02

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

魚介類

魚介類に含まれるビタミンB6量(mg)(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB6(mg)
びんなが0.94
かつお 春・秋獲り0.76
ごまさば0.65
しろさけ0.64
かたくちいわし0.58

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

種実類

種実類に含まれるビタミンB6量(mg)(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB6(mg)
ごま いり0.64
らっかせい バターピーナッツ0.48
らっかせい いり 大粒種・小粒種0.46
日本ぐり0.27

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

肉類

肉類に含まれるビタミンB6量(mg)(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB6(mg)
うし 輸入牛肉 もも 赤肉0.48
うし 交雑牛肉 ヒレ 赤肉0.39
うし 肝臓0.89
にわとり 肝臓0.65
にわとり ひき肉0.52
にわとり 親 ささみ0.66

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

効率よく摂取するためのポイント

調理方法や食べ方を工夫する

ビタミンB6は動物性の食品に多く含まれ、また水溶性ビタミンのため水に溶けやすいという特徴があります。そのため、新鮮な魚は刺身で食べるようにすると、調理にともなう損失を抑えられるでしょう。また、調理に水を使う場合は、なるべくゆで汁や煮汁も使って食べられるよう、スープにするなどして工夫しましょう。

なお、食品に含まれるビタミンB6の体内での利用率は70~80%といわれています。ただし、食品によって差があり、植物性食品よりも動物性食品のビタミンB6のほうが体内の利用率が高く、その一方、調理にともなう損失は植物性食品のほうが少ないといわれています。そのため、特定の食品ばかりでなく、さまざまな食品を摂ることで、ビタミンB6不足のリスクを抑えることができるでしょう。

サプリメントやビタミン剤を活用する手も

ビタミンB6を効率よく摂取する方法として、サプリメントやビタミン剤を活用するという手があります。食品に含まれるビタミンB6の体内での利用率は先述のように70~80%程度で、植物性食品ではより低いですが、それに対してサプリメントやビタミン剤などから摂取した場合の利用率は90%以上といわれています。

また、ビタミンB群のビタミンは互いに共同して働いているため、ビタミンB6の必要量が多い人や状態では、ビタミンB1やB2、B12、葉酸などの必要量も多く、不足していることが少なくありません。市販のビタミン剤には、ビタミンB1やB6、B12などのビタミンB群が複数配合されているものもあります。そのような製品を選ぶことで、より効率的に栄養素の不足を補正できる可能性があります。

バランスのとれた食事を意識しよう

栄養素は食事から摂り入れるのが大原則です。ビタミンB6不足かな?と気になる人は、まずご自身の食生活を振り返ってみるのがよいでしょう。とくに、口内炎ができやすかったり、疲れやすかったりする人は、食生活により注意し、必要に応じてサプリメントやビタミン剤を使用しましょう。市販のビタミン剤には「口内炎の緩和」「肉体疲労時のビタミン補給」といった症状に対する効能を持つものもあるので、試してみるのも方法のうちの一つです。それでも気になる症状が改善しない場合は、早めに医師の診察を受けるようにしてください。

<参考文献>
  • 講談社,2013「運動と栄養 健康づくりのための実践指導」
  • 栄養と料理,2006-2「ビタミンB6
  • Nutrition Care 7(4),2014「ビタミンB6をプラスする」
  • Nutrition Care 15(1),2022「ビタミンB6
  • 産科と婦人科75(10),2008「ビタミンB6欠乏による貧血」

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