更新日:2024年10月31日
五大栄養素の働きとは?バランスよく摂取する方法や、過不足による体への影響も解説
五大栄養素とは、体のエネルギー源となる炭水化物・脂質・タンパク質の三大栄養素(主要栄養素)に、体内の働きを整えるビタミン・ミネラルの微量栄養素を加えたもの。そもそも栄養素は、食物に含まれる、健康に生きていくために必要な成分です。五大栄養素のうち、いずれかが不足したり、過剰に摂取したりしてしまうと、十分な成長や活動に支障が出てしまうことも。ここでは五大栄養素について、それぞれの働きやバランスよく摂取する方法、また、五大栄養素の不足により体に現れる疲れなどの症状との関連についても解説します。
監修
青 未空 先生
大阪樟蔭女子大学 健康栄養学部健康栄養学科 講師、日本ビタミン学会 トピックス担当委員、日本病態栄養学会学会誌 編集委員
INDEX
五大栄養素とは
食物から摂取した栄養素は、全身の細胞が活動するためのエネルギー源や、細胞そのものをかたち作る材料となったり、またはホルモンや抗体の産生に利用されたりと、さまざまな働きをします。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に習慣的な摂取量の基準が掲げられている栄養素は約30種類あり、これらはエネルギー源になるかならないかという違いによって、大きく2つに分けられます。
エネルギー源になり得る栄養素は、炭水化物・脂質・タンパク質の3つ。これらは「三大栄養素」または「主要栄養素」と呼ばれており、栄養学では「エネルギー産生栄養素」と呼んでいます。三大栄養素から得られるエネルギーは、体を動かすためにはもちろん、体温の維持や神経伝達など、大半の生命活動に必要とされます。
ただ、生命活動のためのエネルギーは三大栄養素のみでは作ることができません。体内における生命活動の多くが化学反応によって行われていて、その化学反応を円滑に進めるためには、ビタミンやミネラルが必要です。ビタミンやミネラルはエネルギーとしては使われず、必要量も三大栄養素に比べるとごくわずかですが、欠かすことはできません。
ビタミンやミネラルは「微量栄養素」と呼ばれていて、三大栄養素にこれらの微量栄養素を加えた5つを「五大栄養素」と呼んでいます。
五大栄養素の役割
エネルギー源になる(炭水化物・脂質)
炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもの。そのうちの糖質は、体内で消化されると主にグルコース(ブドウ糖)になり、全身の細胞の主要なエネルギー源として使われます。その際、糖質は1gあたり約4kcalのエネルギーになります。
一方、脂質は1gあたり約9kcalのエネルギーとなり、糖質やタンパク質よりもエネルギー量が高いことが特徴です。また脂質は、エネルギー源として利用される以外に、細胞膜やホルモンの成分としても利用されるため、次の「体を作る」という役割も担っているといえます。
体を作る(タンパク質)
タンパク質は、糖質・脂質と同様にエネルギー源にもなり得ますが(1gあたりのエネルギー量は糖質と等しく約4kcal)、それとともに、体をかたち作るための源としての働きもあります。具体的には、筋肉や骨、皮膚、毛髪、血液、免疫機能に必要な抗体、そして多くのホルモンなど、体の新陳代謝(古くなった細胞を壊して新しい細胞に作り替えること)のために、タンパク質が必要とされます。
なお、このような新陳代謝に使われるタンパク質は、タンパク質を含む食品を摂取したらそのまま利用されるというわけではありません。タンパク質を食品として摂り入れ、消化してアミノ酸(タンパク質を構成している成分)まで分解して、それを再び全身の細胞が必要としているかたちのタンパク質に作り替えるという段階を経て、ようやく新陳代謝が行われます。
体の調子を整える(ビタミン・ミネラル)
ビタミンは、エネルギーとして直接的に使われることはないですが、体の機能を正常に保つためには必要不可欠な栄養素です。
現在、13種類のビタミンの存在が知られており、水への溶けやすさから「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に大きく分類されます。水溶性ビタミンはさらに、ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)とビタミンCに分類され、水に溶けやすいことから、体内で保持されにくく、体内貯蔵量が少ない特徴があります。脂溶性ビタミンには、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあり、水に溶けにくいことから、脂質と一緒に摂取すると吸収されやすくなるという特徴があります。
一方、ミネラルは体の構成成分として使われたり、体の諸機能を調整したりするといった重要な役割をもっています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に摂取基準が示されているミネラルは13種類(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン)あり、それら以外にも推奨量や目安量が設定されていないミネラルも数種類あります。
五大栄養素のそれぞれの働き
ここからは、五大栄養素それぞれの働きについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
炭水化物
炭水化物のうちの糖質は、消化・吸収されると最も単純な糖の形である単糖となります。単糖のうち、最も重要なのはグルコースであり、血液中のグルコース濃度は血糖値と呼ばれ、血液中のグルコースは細胞に取り込まれてエネルギー源として利用されます。
糖質を含む食品を摂取し、その時点で必要とされるエネルギー量以上のグルコースが体内で過剰になった場合は、主に肝臓にグリコーゲンとして貯蓄され、さらに余った分は中性脂肪として脂肪組織などに蓄積されます。これらの貯蓄された分は、空腹時や食事が十分に摂れない状況でグルコースに戻され、エネルギー源として使われます。糖質を必要以上に摂取し、蓄積された状態が続くと、体重が増えて肥満になったり、肝臓に脂肪が溜まったりします。
また、同じく炭水化物のうちの食物繊維は、人の消化酵素で消化することのできない物質のことをいい、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維の2つに分けられます。食物繊維は、小腸では消化・吸収されずに大腸まで到達し、腸内環境を改善するように働きます。
タンパク質
タンパク質は、上述の通り筋肉などの体をかたち作る材料として使われますが、タンパク質を摂れば摂っただけ筋肉などが作られるというわけではありません。その時点で必要とされない過剰な分は肝臓や腎臓で処理されて老廃物となり、尿に混ざって排泄されます。このような処理には肝臓や腎臓に負担をかけますので、それらの臓器の働きが低下しているような場合には、タンパク質の摂り過ぎが健康に悪影響を及ぼしてしまう懸念が生じます。つまり、栄養素は摂れば摂るほどその効果が高まるというものではなく、体にとって必要な量を過不足なく摂取する必要があります。
脂質
脂質の1gあたりのエネルギー量は約9kcalであり、糖質やタンパク質の倍以上です。この点に加え、脂質の栄養を考える際には、脂質を構成している脂肪酸に注目することが大切です。脂肪酸は構造の違いから複数の種類に分類されており、体での作用がそれぞれ異なっています。日本人の食事摂取基準において指標が設定されているのは、飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸であるn-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸です。飽和脂肪酸は過剰に摂取すると動脈硬化の危険因子になるため、摂取量の上限が設定されています。一方で、多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないものを含むため、不足回避のための摂取量の下限が設定されています。食品としては、飽和脂肪酸は肉に多く、多価不飽和脂肪酸であるn-3系脂肪酸は魚に多く含まれています。肉は飽和脂肪酸が多いものの、鉄などの日本人に不足しがちな摂りたい栄養素も豊富であり、肉や魚を日々バランスよく食べると、必要な栄養素が揃いやすくなります。
脂質はエネルギー源となるだけではなく、細胞膜の成分となったり、ホルモンの材料となったり、同じエネルギー産生栄養素である糖質やタンパク質とは異なる必須の役割ももっています。糖質・タンパク質・脂質の3つは、エネルギー源となることが共通の重要な役割ですが、それぞれに固有の働きがあり、どれかがどれかの代わりをすることはできません。主食・主菜・副菜を揃えた献立にすると、エネルギー産生栄養素のバランスが整いやすくなるのでおすすめです。
ビタミン
摂取した糖質・タンパク質・脂質から体内でエネルギーを産生するためには、多くの反応にビタミンが必要不可欠です。それぞれの主な働きを見てみましょう。
種類 | 主な働き | |
---|---|---|
水溶性 ビタミン | ビタミンB1 | ・糖質の代謝にかかわる ・神経の機能維持にかかわる |
ビタミンB2 | ・主に脂質の代謝にかかわる ・過酸化脂質の分解にかかわる ・皮膚や爪、毛の発育にかかわる | |
ビタミンB6 | ・タンパク質の代謝にかかわる ・神経の機能維持にかかわる | |
ビタミンB12 | ・造血機能にかかわる ・神経の機能維持にかかわる | |
ビタミンC | ・コラーゲンの生成にかかわる ・抗酸化作用をもつ ・エネルギー産生にかかわるカルニチンを生成する | |
ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド) | ・糖質・タンパク質・脂質の代謝にかかわる ・皮膚の機能を正常に保つ | |
パントテン酸 | ・糖質・タンパク質・脂質の代謝にかかわる | |
葉酸 | ・DNA合成、細胞分裂にかかわる ・正常な赤血球の生成にかかわる | |
ビオチン | ・糖質・タンパク質・脂質の代謝にかかわる ・皮膚の機能を正常に保つ | |
脂溶性 ビタミン | ビタミンA | ・皮膚や粘膜を正常に保つ ・暗順応や視力を保つ ・プロビタミンAが抗酸化作用をもつ |
ビタミンD | ・カルシウムとリンの吸収を促進する | |
ビタミンE | ・抗酸化作用をもつ | |
ビタミンK | ・骨形成を調節する ・血液凝固にかかわる |
とくに三大栄養素のエネルギー代謝に深くかかわるビタミンB群について、解説します。
ビタミンB1は糖質の代謝にかかわります。糖質は主要なエネルギー源となりますが、糖質だけを摂取したのでは、効率よくエネルギーを作り出すことができません。ビタミンB1などの水溶性ビタミンが補酵素(酵素の働きを補う物質)として働くことで、はじめてそれが可能になります。
ビタミンB2は、三大栄養素の中で主に脂質の代謝に深くかかわっており、脂質を分解してエネルギーに変える過程で補酵素として働きます。脂質が分解される過程をβ酸化※1といい、分解されて生成されたアセチルCoAはTCA回路※2(クエン酸回路)に入り、生体内で“エネルギー通貨”として働くATP(アデノシン三リン酸)の産生につながります。
※1 脂肪酸を酸化しアセチルCoA(高エネルギー化合物)を作り出す細胞内の過程
※2 糖や脂肪酸などの有機物が呼吸により代謝される回路
ビタミンB6は、タンパク質の代謝に深くかかわっており、体内に吸収したアミノ酸を分解してエネルギーを産生する際や、アミノ酸から生理活性物質を合成する際の反応において補酵素として働きます。
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(※用法・用量を守って服用ください。)
なお、多くの水溶性ビタミンは尿中に排泄されやすいため、脂溶性ビタミンよりも体内に貯蔵(蓄積)されにくい性質があります。ビタミン13種類については、習慣的に通常の食事をしている場合には、過剰症はほとんど起こりません。特定の食品を習慣的に極端に多く摂取している場合や、サプリメントや薬剤など、通常の食事以外の方法で摂取する場合は、過剰症のことを考慮する必要があり、特に妊娠中の方はビタミンA(カロテノイドに限る)の過剰摂取に留意する必要があります。
ミネラル
ミネラルもまた、それ自体がエネルギーになるわけではないものの、生きていくうえでは必要不可欠な存在です。
なお、ミネラルは「日本人の食事摂取基準」に示される1日の必要摂取量によって、「主要ミネラル」と「微量ミネラル」に分けられます。それぞれの主な働きは以下の通りです。
種類 | 主な働き | |
---|---|---|
主要ミネラル (1日の必要摂取量が100mg以上のもの) | ナトリウム | ・体液の浸透圧などを調節する ・筋肉の収縮にかかわる |
カリウム | ・神経や筋肉の機能を正常に保つ ・体液の浸透圧などを調節する | |
カルシウム | ・骨や歯の構成成分となる ・心臓や筋肉の収縮作用を調整する ・神経の伝達にかかわる | |
マグネシウム | ・筋肉の収縮にかかわる ・骨や歯の構成成分となる | |
リン | ・筋肉の収縮にかかわる ・骨や歯の構成成分となる ・核酸の成分となる | |
微量ミネラル (1日の摂取量が100mg未満のもの) | 鉄 | ・全身に酸素を運搬する赤血球中のヘモグロビンを構成する ・体内でエネルギー産生に伴う電子の受け渡しにかかわる |
亜鉛 | ・数百の生体内反応の酵素を構成する ・味覚を正常に保つ | |
銅 | ・過酸化脂質の生成を抑える酵素の成分 ・鉄の代謝にかかわる | |
マンガン | ・過酸化脂質の生成を抑える酵素の成分 | |
ヨウ素 | ・甲状腺ホルモンの構成成分となる | |
セレン | ・過酸化脂質を分解する酵素の成分 | |
クロム | ・インスリンの働きを高め、糖質の代謝を正常にする | |
モリブデン | ・種々の酵素の成分 |
このような症状が現れていたら五大栄養素が不足しているサインかも
ここからは、五大栄養素の不足が関係して現れることのある症状を取り上げて解説していきます。心当たりのある症状があれば、五大栄養素の摂取を意識してみるのもよいでしょう。
疲れやすい
疲れやすいという症状には、摂取エネルギー量の不足が関係している可能性があります。つまり三大栄養素のいずれかが足りない、とくに糖質が不足しているときに疲れが現れやすいと考えられます。疲れという症状は全身の細胞のエネルギー不足が要因の1つと考えられていて、全身の細胞のエネルギー源として最も効率よく利用可能な栄養素が、糖質だからです。
糖質の摂取量が少なくてエネルギーを十分に得られない状態では、体はタンパク質などをエネルギー源として利用することになります。すると、タンパク質にしかできない、体を作るという役割が犠牲にされてしまいます。そればかりか、筋肉を分解してエネルギーを得ようとするため、筋肉がやせ細ってしまい、パワーを出しにくくなることも。それらの結果として、「疲れ」という症状を、より感じやすくなってしまいます。
また、糖質が足りていても、それをエネルギーに変える際に必要とされるビタミンB1が不足していると、エネルギーを作ることができず、疲れとして現れてしまうこともあります。ビタミンB1は、その働きから「疲労回復ビタミン」といわれることもあります。食事を十分に摂っていても疲れの症状が出ている場合は、ビタミンB1の摂取を意識してみるとよいでしょう。
なお、疲れは時には様々な疾患に繋がっている場合があるため注意が必要です。例えば、近年増加傾向にある心不全ですが、心不全の症状の1つには疲れやすさがあり、最近では、この心不全のリスクとしてビタミンB1の不足が関連しているという研究報告があります。気になる方は医療機関での相談をおすすめします。
集中力が低下している
集中力の低下には、疲れなどの他に血糖値の低下が関与していることがあります。例えば、忙しさなどのために食事を摂れないときです。
血糖値とは血液中のグルコース濃度のことで、糖質を含む食品を消化・吸収することでその数値が高くなります。このことから、食品の中でもとくに糖質の摂取量が不足することが、集中力の低下に強く関係してくると考えられます。
また、ビタミンB1やビタミンB6の不足が、糖質の利用低下や神経伝達物質の合成低下などを介して、体のパフォーマンス力の低下にかかわることもあります。糖質の利用にはビタミンB群が必要であるため、糖質は足りていてもビタミンB群が足りていなければ、体や頭を十分に動かすことはできません。
肩こり、腰痛、手足のしびれがある
肩こり、腰痛、手足のしびれといった症状は、さまざまな原因によって生じるものですが、神経や血流の障害が関係していることが少なくありません。ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12など)は神経の機能を維持する働きがあり、またビタミンEは血流改善に関与しています。肩こり、腰痛、手足のしびれなどに、これらの微量栄養素の不足が関与していることも考えられます。
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目の疲れ、眼精疲労が生じる
目の疲れやそれに関連した諸症状(眼精疲労)には、毛様体筋という眼の筋肉の疲労や神経が正常に働いていないことが考えられます。ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12などが眼の筋肉の疲労や神経機能の維持にも関係しています。また、ビタミンAの不足により、夜盲症(暗い所でよく見えなくなる症状)が起こることが古くから知られています。
免疫機能が低下している
免疫機能とは、体内に侵入してくる異物や微生物を排除して、感染症から身を守る仕組みのことです。免疫機能が低下すると、風邪などの感染症にかかりやすくなります。全身の細胞は主にタンパク質でできていて、それは免疫機能を担っている細胞も同じです。そのため、タンパク質の不足が免疫機能の低下につながる可能性が考えられます。
微量栄養素の中ではビタミンAが、微生物が体内に侵入する際の最初のバリアである粘膜細胞の構造を維持したり、機能を保ったりするように働きます。またビタミンDは、腸粘膜のバリア機能の維持に必要とされることが知られています。
月経による貧血、PMSが生じる
閉経前の女性は月経(生理)の際に血液が失われるため、鉄欠乏性貧血になりやすいことはよく知られていますが、鉄の不足以外にも、ビタミンB群(ビタミンB12や葉酸)、ビタミンE、あるいは銅の重度の欠乏が貧血を引き起こすことがあります。
一方、月経の前に体やメンタルの症状が現れる月経前症候群(PMS)が、ビタミンB6やビタミンDの摂取によって軽減される可能性も報告1,2)されています。
1)出典:Katrina M Wyatt, Paul W Dimmock, Peter W Jones, P M Shaughn O'Brien. Efficacy of vitamin B-6 in the treatment of premenstrual syndrome:systematic review. BMJ 1999;318:1375
2)出典:Elizabeth R. Bertone-Johnson, ScD; Susan E. Hankinson, ScD; Adrianne Bendich, PhD; et al. Calcium and Vitamin D Intake and Risk of Incident Premenstrual Syndrome. Arch Intern Med. 2005;165(11):1246-1252
五大栄養素を含む食材一覧
五大栄養素を含む食材は以下の通りです。それぞれについて解説していきます。
炭水化物が豊富な食材
炭水化物が多く含まれている食材として、ご飯やパン、麺類などの、主に主食として食べることの多い食材が挙げられます。また、いも類などの炭水化物の多い野菜や砂糖などの調理に使う添加糖も該当します。
炭水化物は糖質と食物繊維に分類されますが、血糖値を上げてエネルギー源となるのは糖質です。しかしながら、食後に血糖値が急上昇することは血管にとっては望ましくなく、そのような食事は糖尿病のリスク増加につながります。食物繊維は、人の消化酵素では消化・吸収されずに大腸まで到達しますが、体にとってよい働きをたくさんしてくれます。その1つが、血糖値の急上昇を抑えてくれる働きです。食物繊維が豊富な野菜などを糖質と一緒に摂取すると、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。できれば毎食、副菜として野菜を摂取しましょう。
タンパク質が豊富な食材
タンパク質が多く含まれている食材として、肉や魚、卵、牛乳・乳製品、豆類など、主菜(おかず)に使うことの多い食材が挙げられます。「良質なタンパク質」を摂取するとよいといわれることがありますが、「良質」か否かについては含まれているアミノ酸によって決まります。
アミノ酸とは、タンパク質を構成している成分です。タンパク質を含む食品を摂取した後、消化によりアミノ酸にまで分解されてから体に吸収されます。そのアミノ酸は20種類あり、その半分ほどは体内で合成することのできない「必須アミノ酸」です。それら必須アミノ酸がバランスよく含まれているタンパク質のことを「良質なタンパク質」と呼んでいます。
良質なタンパク質を含む食品は、肉や魚、卵、牛乳などの動物性食品です。なお、植物性食品の中でも、大豆や大豆製品に良質なタンパク質が含まれています。
脂質が豊富な食材
脂質が多く含まれている食材として、バターや、調理油、ドレッシング、ラードなどの料理に使う油脂類や、ベーコンや霜降り肉などの脂身が挙げられます。その他に、高タンパク食品といわれることの多い、チーズや卵にも、脂質が多く含まれています。
なお、魚の脂身は動脈硬化を抑制するといわれ多価不飽和脂肪酸が豊富なため、積極的な摂取が勧められます。
ビタミン・ミネラルが豊富な食材
ビタミン・ミネラルにはさまざまな種類があり、多く含む食材もその種類によって異なります。また、動物性食品にしかほとんど含まれないものや植物性食品にしかほとんど含まれないものもあります。つまり、ある食品・食品群に偏った食事を習慣的に続けているとビタミン・ミネラルの欠乏症が起こる可能性があります。ビタミン、ミネラル、そして三大栄養素の摂取の偏りを防ぐためには、なるべく多くの食材を摂るようにしましょう。そうすると自然に体にとって必要な量が入ってきやすくなります。
五大栄養素をバランスよく摂る方法
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、エネルギー産生栄養素(三大栄養素)については、成人では、1日の摂取エネルギー量の50~65%を糖質から、20~30%を脂質から、13~20%をタンパク質から摂取するとされています。
ビタミン・ミネラルの微量栄養素はそれぞれ多様な食品に含まれているので、さまざまな食品をバランスよく摂れるよう意識するとよいでしょう。
主食・主菜・副菜をバランスよく摂取する
農林水産省と厚生労働省による「食事バランスガイド」では、食事を主食(ご飯、パン、麺)、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)、牛乳・乳製品、果物に分類して、それらを年齢や性別、身体活動量に応じて適量食べることで、バランスのよい栄養素の摂取が可能になるとされています。
自分にとって適正な食事量を知る
さまざまな食品をバランスよく摂取するには、自分が普段食べている栄養素の量が適切なのかどうかを知ることも大切です。まずは、食事バランスガイドを使用して自分の摂取量をチェックしてみましょう。栄養素の摂取は習慣的な摂取量が重要なので、毎日どの栄養を何gという細かいことはあまり気にしなくて構いません。食事バランスガイドの料理の数を参考にしながら、できるだけ多様な食品を摂取するように心がけましょう。
自分自身で栄養素の不足に気が付くのは難しいですが、食事の摂取量が少なければ多くの栄養素が不足しやすくなります。その目安として、まずは三大栄養素の摂取が少ないとエネルギー摂取量が不足するので、体重が減少します。健康診断などで体格が適正よりも「やせ」と判断された場合は、エネルギー摂取が不足していると考えられます。ビタミン・ミネラルの欠乏による症状のうち、自分で気が付くような症状が出るものはかなり重度の欠乏症です。現代の日本では稀ですが、それぞれの栄養素が固有の働きをもっていることを理解し、そのような可能性もあることを知っておきましょう。しかし、微量栄養素の中でも日本人において欠乏しやすいものの代表は鉄です。成長期の子どもから高齢者まで、鉄欠乏性貧血の方は多くいます。自分自身で気が付く方法として、めまいや息切れなどの自覚症状がありますが、このような症状が出ている場合はかなり貧血が進行している段階です。定期的に健康診断を受ける方は、血液中ヘモグロビン濃度をチェックしてみましょう。その他の微量栄養素については、特定の疾患では吸収障害が起こる場合などがあります。気になる場合は主治医の先生に相談してみるとよいでしょう。
市販薬やサプリメントの使用も
上述のように、三大栄養素の不足は体重や健康診断である程度推測できるのに対して、微量栄養素の不足を知る機会はあまりありません。また、微量栄養素は食品にわずかな量しか含まれていないため、少食傾向、あるいは欠食や偏食などの生活習慣の乱れによって不足しやすいものです。身体活動量が多い人にも同じことがいえます。
これらに該当する人は、食生活の改善に加えて、市販薬やサプリメントなどの利用も考えてみましょう。
五大栄養素をバランスよく摂って健やかに過ごそう
五大栄養素は健康にとって欠かせないもの。普段健康な人なら、五大栄養素のバランスが一時的に崩れたとしても、直ちに病気に直結してしまう可能性は高くありません。しかしその期間が長く続いていると、疲れやすくなったり、免疫機能が低下したりなど、体への悪影響につながってしまうことも。健康診断で異常を指摘された場合、あるいは何となく体調がよくないという場合は、五大栄養素のバランスが崩れているのかもしれません。一度ご自身の生活を振り返ってみて、まずは食生活の改善から始めてみるのがよいでしょう。
- <参考文献>
- 文光堂「臨床病態栄養学 第4版」, 2021
- 日本文芸社「スポーツ栄養学」, 2018
- 農林水産省「栄養素と食事バランスガイドの関係」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/guide.html