更新日:2025年1月30日

食後の眠気はなぜ起こる?血糖値との関係や対策を紹介

食後に眠気を感じるのは高血糖のサインといわれています。食事の摂取によって血糖値が急激に上がると、糖をエネルギーに変えるインスリンが大量に分泌されます。すると、今度は反動で血糖値が急降下し、眠気の原因となる低血糖状態に。食後に強い眠気や倦怠感を感じると、仕事や家事に影響が出てしまい困りものですが、実は食べる順番や食事内容の改善、食後の運動などで対策できるかもしれません。今回は、食後の眠気対策をご紹介します。

監修

山本 康博 先生

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長

INDEX

食後に眠気が起こる原因は?

食後の眠気は、血糖値の変動、糖質の摂り過ぎ、疲労の蓄積や睡眠不足など、さまざまな原因が関わって起こると考えられています。それぞれ詳しく説明しましょう。

血糖値の変動(食後高血糖・血糖値スパイク)

食後の眠気に関わる原因として、まず挙げられるのが、血糖値の変動です。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のこと。ブドウ糖は体のエネルギー源になる物質で、血糖値は主に食事の摂取によって変動します。誰でも空腹時には血糖値が低く、食後には一時的に上昇します。

血糖値の高い状態が続くと、体のさまざまな臓器に悪影響が出てしまいます。そのため、通常は食後、膵臓(すいぞう)から「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが分泌され、食事から約2時間以内に、ゆるやかに正常値に戻るような仕組みが、体に備わっています。

なかには通常ゆるやかに上下するはずの血糖値が食後、急激に高くなり、そして急降下するケースがあります。このような血糖値の変化をグラフにすると、血糖値上昇のピークがとがったくぎ(=スパイク)のような状態に見えることから、「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」と呼ばれています。このような急激な血糖値の変動が食後の眠気を引き起こすといわれています。

健康な状態と血糖値スパイクの血糖値の変動グラフ

血糖値スパイクと糖質疲労

血糖値スパイクは、ブドウ糖のもととなる糖質を多く摂取すると生じやすいことがわかっています。糖質は、たんぱく質、脂質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつである炭水化物を構成する栄養素で、主にごはんやパンなどに含まれます。そのため、炭水化物中心の食事を取る機会が多いと、血糖値スパイクが生じやすくなると考えられます。

血糖値スパイクが生じると、眠気を感じる他に、イライラして不機嫌になる、集中力や判断力が鈍る、すぐにお腹が空く、疲労感などの症状があらわれることもあります。

糖質の過剰摂取や不適切な代謝によって引き起こされる疲労感は、俗に「糖質疲労」とも呼ばれています。血糖値スパイクが糖質疲労の引き金になることもあるため、食後に眠気を感じることが多いときは、この後にご紹介する情報を参考に、食事の取り方や内容、睡眠時間などを見直してみるとよいでしょう。なお、それでも食後の眠気が続く場合は他の病気が隠れている場合もあるので、医療機関を受診し、相談してみましょう。

食前の肉体疲労や脳疲労、日々の疲労の蓄積

食前に、激しい、もしくは長時間の運動などで体が疲れているときや、仕事や家事などで大量の作業をこなし脳が疲れているときには、食後のリラックスしたタイミングに、いつもより眠気が強く感じられることもあるでしょう。

肉体的にはそれほど疲労を感じていなくても、脳に疲れがたまり、「脳疲労」と呼ばれる状態に陥っていることもあります。脳は、体の中でも安静時のエネルギー消費量が多い臓器で、脳での情報処理量が多くなると、疲れがたまりやすくなります。

また、食前の疲労だけでなく、日々の肉体や脳への疲労の蓄積が、食後の強い眠気を引き起こしていることも考えられます。

睡眠には、起きているときに蓄積した疲労を回復する役割もあります。
十分な睡眠時間を確保し、こまめに休憩する、疲労回復に必要な栄養素を摂取したりするなど、規則正しくメリハリのある生活を意識して、まずは疲労をためないように心がけましょう。

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日常的な睡眠不足・睡眠の質の低下

そもそも睡眠が足りていないと、食後はもちろん日中の眠気が生じやすくなってしまいます。

睡眠時間は十分なのに疲れやだるさが取れない、もしくは寝ている途中で目が覚めてしまうといった場合は、睡眠の質がよくないのかもしれません。
睡眠の質は、生活習慣・食生活・睡眠環境を見直すことで高めることが可能です。例えば、寝る前のスマートフォンの使用をやめてみる、休日も寝だめせず平日と同じ時間に起きるといったことを試してみましょう。

疲労の回復や、睡眠の質の向上が期待できる栄養素を摂るのも有効です。特にビタミンB1は、血糖値スパイクを引き起こすといわれる糖質をエネルギーに変える際に必要な栄養素です。ビタミンB群は水に溶けやすく体内にとどまりにくい性質を持っていることもあり、ビタミンB1をより吸収しやすく改良された誘導体「フルスルチアミン」が配合されたビタミン剤などを用いて、食事だけでは補いきれないビタミンB1を効率よく摂取するのも有効です。

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コラム

食後の眠気はオレキシンの低下が原因?

食後に生じる眠気に、脳の視床下部で作られる「オレキシン」という神経伝達物質が関わっているといわれることもあります。オレキシンは、日中に突然強い眠気に襲われて眠り込んでしまう睡眠障害「ナルコレプシー」の発症に大きく関係する物質です。オレキシンは覚醒状態を維持するのに重要な働きをしており、ナルコレプシーはオレキシンの欠乏によって引き起こされることがわかっています。

グルコース(ブドウ糖)には、オレキシンの働きを抑える作用があることが知られています。そのため、炭水化物を多く含むなど、血中にブドウ糖が多くなるような食事を取った場合、オレキシンの活動が鈍くなり覚醒状態が弱まる、つまり眠気が生じやすくなると考えられることから、オレキシンが食後の眠気の一因といわれているのでしょう。

しかし、話はそう単純ではありません。オレキシン研究の第一人者によると、「オレキシンは睡眠と覚醒の状態を切り替えるスイッチの一部を担っているものの、オレキシンの働きが抑制されたから眠気のスイッチが入るわけではない」とのこと。食後の眠気にオレキシンが関係あるかどうか、現状ではまだ正確にわかっていないようです。

<ブドウ糖のその他の働きを知りたい方はこちらをチェック>

食後の眠気対策

散歩などの軽い運動をする

食後の運動には、血液中のブドウ糖を筋肉で大量に消費し、血糖値を下げる効果があります。食後1~2時間以内に行うと、より効果的です。
継続して行うと、運動とインスリンによって血糖値が下がりやすくなり、血糖値スパイクを繰り返すことが少なくなります。
ウォーキング、その場で足踏み、ラジオ体操などの有酸素運動をできれば毎日、少なくとも週に3~5回続けてみましょう。

カフェインを適度に摂取する

カフェインには、中枢神経に刺激を与えて眠気を覚ます効果があります。
ただし、夜の睡眠に影響を及ぼす場合もあるため、摂取する量やタイミングに注意が必要です。

カフェイン摂取は就寝3~4時間前までに

カフェインには覚醒作用があり、寝付きを悪くしたり、眠りを浅くしたりする恐れがあります。また、利尿作用もあり、夜中に目が覚める原因にもつながりやすいため、摂取する場合は就寝3~4時間前以降の摂取は控えたほうがよいでしょう。
なお、カフェインの効果の感じ方には個人差があります。自分は「カフェインに弱い」と感じる人は、午後3時以降のカフェイン摂取を控えたり、カフェインの含有量の少ないカフェインレスの飲料に変更するなどの対策をとっていただくのが無難です。

ガムをかむ

ガムをかむと脳の血流が促進し、眠気覚ましになることがわかっています。
特に辛味などの刺激のあるガムをかむと、眠気対策に有効であるという研究結果1)もあります。

1) 川野 常夫他、NIRSを用いたガム咀嚼による眠気抑制の定量的評価、人間工学(2020年発行, 56巻, Supplement号)

血糖値を意識した食生活をする

血糖値の対策も重要です。食事の取り方を工夫すると、血糖値スパイクが起こりにくくなり、食後の眠気の軽減にもつながると考えられます。以下にご紹介するポイントを参考に、血糖値の変動を少なくする食生活を目指してみてはいかがでしょう。

食事を抜かない

食事と食事の間隔があくと、血糖の急激な変化が起こりやすくなります。食事を取らない回数が多くなるほど、低血糖や空腹でイライラしてしまう時間が増えたり、逆に食後の血糖が急激に上がり過ぎて血糖値スパイクが生じたりして、眠気や倦怠感の原因になることが考えられます。特に、以下のグラフを見るとわかるように、朝食を抜くと血糖値が上下しやすくなるといわれています。食事は、毎日なるべく同じタイミングで取ることを心がけましょう。

欠食時の血糖値変動

食べる順番に注意する

食後の眠気の一因である血糖値スパイクを避けるには、糖質の吸収を穏やかにすることが大切です。例えば食事の際、食物繊維を多く含む野菜(サラダなど)を最初に食べると、野菜に含まれる食物繊維が腸壁をコーティングし、後から入ってくる糖質の吸収を穏やかにする作用があるといわれています。その結果、血糖値スパイクを防ぐことにもつながり、食後の眠気も起こりにくくなると考えられます。
いきなりごはんからかき込んでしまうような食事の仕方は、血糖値を急上昇させてインスリンの大量分泌を招き、肥満も招きやすくなってしまいます。

食べる順番によって変わる血糖値の動き

早食いをせず、よくかんでゆっくり食べる

早食いも血糖値を急激に上げる一因となります。かむ回数が多いほうが、食後2時間の血糖値が低くなるといわれていますので、ひとくちで30回かむように心がけながら、ゆっくり食べましょう。

バランスよく食べる

おにぎりやパン、麺類などの炭水化物(糖質)が多い単品料理は、手軽にお腹いっぱいになりやすい一方、血糖値を急上昇させる原因になります。できるだけ野菜やたんぱく質も一緒に摂取し、バランスのよい食事を心がけましょう。

主食の多いメニューが多くなりがちな場合は、ビタミンB1の摂取を意識してみるとよいでしょう。ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変える反応や神経の情報伝達に必須の栄養素です。ブドウ糖とビタミンB1を同時に摂取すると、糖質を効率よくエネルギーに変えることができます。

ビタミンB1は豚肉、大豆などの豆類、ほうれん草・ブロッコリーといった緑色野菜などに多く含まれます。しかし水洗いや加熱など、調理工程で失われやすいという特徴があります。体内に貯蔵しにくい栄養素であるため、食事からの摂取はもちろん、足りない分は栄養ドリンクなどを活用して補うことも検討してみるとよいでしょう。

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睡眠時間を十分に確保する

睡眠不足は、日中や食後の眠気をもたらします。加えて、疲労や頭痛といった不調の増加、情動不安定、注意力や判断力の低下にも関わります。睡眠不足が慢性化すると、肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患や脳血管障害などの発症リスクの上昇や症状の悪化にも関与することが明らかとなっています。
睡眠時間の目安は6~8時間程度といわれますが、個人差があります。長さだけでなく質にも気を配り、毎日すっきり自然に起きられる状態を目指しましょう。

食後の眠気がひどい場合は病気が隠れている可能性も?

食後に強い眠気のある状態が続く場合、糖尿病を発症している、もしくはその予備群の疑いがあります。
食後の眠気を引き起こす高血糖や血糖値スパイクは、動脈硬化のリスクでもあります。放置しておくと血管障害が進み、脳卒中や心筋梗塞などにつながる恐れも。

なかには、空腹時血糖値が正常でも、食後の血糖値だけが大幅に上昇する「隠れ糖尿病」の可能性も考えられます。他、食後に限らず日中の強い眠気、例えば人と会話していても眠くなってしまう、等の場合にはナルコレプシーという病気の疑いも考えられ、いずれにしてもあまりに強い眠気は病気のサインと受け止めることが大切です。

また、食後の強い眠気を起こす病気としてとても頻度が多いものとして睡眠時無呼吸症候群が挙げられます。睡眠中に呼吸が止まってしまうことで睡眠の質が低下するため、日中の強い眠気を引き起こします。睡眠時無呼吸症候群も動脈硬化のリスクであり、脳卒中や心筋梗塞につながる可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は睡眠ポリグラフ検査を受けることで比較的簡単に調べることができます。
食事のたびに、起きていられないほどの強い眠気におそわれる場合は、医療機関を受診しましょう。

食後の眠気は、食事の取り方を工夫しながらケアしよう

食後の眠気は、食べる順番や食べる量などを工夫すると、ある程度防ぐことが可能です。
特に食事の摂り方を工夫すれば、血糖値スパイクと呼ばれる血糖値の急上昇および急降下が起こりにくくなり、食後の眠気の軽減にもつながると考えられます。
食事の摂り方の工夫に加えて、しっかり睡眠を取る、日々の疲れをためない、食後に軽い有酸素運動をするといった対策も有効です。

あまりにも眠気がひどい場合は、糖尿病、ナルコレプシーなどの病気が隠れている可能性も考えられます。
まずは生活習慣の改善に努め、なかなか眠気の改善が見られない場合は医療機関を受診するなどして、上手に対策していきましょう。

<参考文献>
  • 名古屋経済大学 人間生活科学部 管理栄養学科「名経健康通信第3号健康通信第3号(2023年3月発行)」
  • 厚生労働省「令和4年「国民健康・栄養調査」の結果」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • 一般社団法人 日本人間工学会「人間工学(2020年発行, 56巻, Supplement号)」

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