更新日:2025年10月28日
40代女性の不調とホルモンバランスの変化:疲れが取れない原因とおすすめの対処法を紹介

40代女性の中には、「十分に休んでも疲れが取れない」「体の不調が多くなった」と感じる方も多いのではないでしょうか。その原因の一つとして考えられるのが「更年期疲労」です。更年期は、閉経に向けた女性ホルモンの減少にともない、慢性的な疲れや不調が現れやすくなる時期で、一般的に45~55歳頃に迎えるといわれています。また運動不足にともなう筋力の低下や、仕事や家庭でのストレス、生活習慣の乱れの影響などで疲労回復が遅れている可能性もあります。本記事では、疲れが取れない原因とおすすめの対処法、疲れが長引く場合に考えられる病気について解説します。
監修
知久 正明 先生
メディカルチェックスタジオ 東京銀座クリニック院長・医学博士
INDEX
40代女性の疲れが取れない原因とは
40代の女性が「疲れが取れない」と感じる原因には、筋力の低下や生活習慣の乱れ、ストレスなどが挙げられますが、それに加えて「更年期疲労」が大きく関係しているといわれています。
更年期とは、閉経(最後の月経から1年以上月経がない状態)をはさむ前後約5年間、合計でおよそ10年間の時期を指します。日本人女性の平均的な閉経年齢は50.5歳とされているため、一般的には45~55歳頃が更年期にあたります。この時期には、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンなど)の量が急激に減少し、それにともなって自律神経のバランスが乱れやすくなります。また、加齢による基礎代謝の低下に加え、仕事や家庭での環境の変化も重なりやすいため、心身ともに疲れを感じやすくなるのです。さらに、更年期には「疲れ」だけでなく、ほてりやのぼせ、イライラや不安、肩こり、めまい、頭痛、動悸といったさまざまな症状が現れることもあります。
なお、女性ホルモンの分泌は、実は更年期よりも前の30代後半から徐々に減少していて、更年期ほど急激ではないものの、疲れやすさやめまいといった更年期と同様の不調が出てくる人もいます。この時期のことは「プレ更年期」と呼ばれていて、30代後半~40代前半にかけて起こるとされています。
ここでは、プレ更年期から更年期に当てはまる40代の女性が、「疲れが取れない」と感じる原因について解説します。
筋肉量・代謝の低下
年齢を重ねるにつれて、筋肉量やエネルギー代謝も徐々に低下していきます。その結果、疲労の回復が遅くなり、「疲れが取れない」状態に陥っている可能性も考えられます。
・筋肉量の低下
筋肉量は30歳前後から減り始め、生涯にわたって少しずつ低下していくとされています。筋肉量が減ることで体を支える力や動かす力が弱くなり、ちょっとした日常動作でも疲れを感じやすくなります。また、疲れやすくなると自然と体を動かす機会も減り、活動量が落ちてしまいます。その結果、さらに筋肉量が減ってしまうという悪循環に陥ることも少なくありません。
・代謝の低下
代謝とは、体内でエネルギーや必要な物質を作り出す一連の化学反応のことを指します。代謝は加齢や自律神経の乱れ、ホルモンバランスの変化などの影響で低下しやすくなります。代謝が落ちるとエネルギー産生の効率も悪くなり、活動や疲労回復に必要なエネルギーが不足します。その結果、「休んでも疲れが取れない」と感じるようになってしまうのです。
ホルモンバランスの変化

30代後半に入ると、卵巣の機能が徐々に衰え、それにともなって女性ホルモンの分泌量が減少していきます。女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類がありますが、プレ更年期から更年期に見られる不調の多くは、エストロゲンの減少によって生じるといわれています。
エストロゲンは、骨量の維持や自律神経の安定など、体のさまざまな機能を支える重要な役割を担っています。自律神経とは、私たちの意思とは関係なく、心臓や呼吸、体温、血圧、消化、睡眠など、生命を維持するために体の機能を自動的にコントロールしている神経のことで、「交感神経」と「副交感神経」の2つがあります。交感神経は活動モードのときに優位になり、心拍数や血圧を上げて筋肉への血液の供給量を増やします。一方、副交感神経は、食事中や睡眠中など休息モードのときに優位になり、心拍数や血圧を下げる働きがあります。この2つの神経は、状況に応じてスイッチのように切り替わりながらバランスを保っていますが、エストロゲンの減少によってこの2つのバランスが崩れることで、疲れやすさ、全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸、イライラ、抑うつなどが現れやすくなるのです。
生活習慣の乱れ
40代の女性は、職場では管理職などの責任ある立場を任されることが増える一方で、家庭では家事や育児、さらには親の介護といった複数の役割を同時に担うことも多い年代です。そのため、日々の忙しさや精神的なストレスが蓄積し、睡眠や食生活などの生活習慣が乱れてしまうことも少なくありません。
・睡眠不足・睡眠の質の悪化
睡眠には、心身の疲労を回復させる大切な働きがあります。しかし、仕事や家庭のストレスが原因で睡眠時間が短くなったり、眠りが浅くなったりすると、疲労がしっかりと解消されないまま翌日を迎えることになります。
睡眠不足が続くと体だけでなく精神面の疲労も蓄積し、悪循環に陥ってしまいます。また、疲労の回復には「睡眠の質」も非常に重要です。寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりすると、体はしっかり休めず、疲れが抜けにくくなってしまいます。
・栄養バランスの乱れ
40代の女性は栄養バランスが乱れやすくなる傾向があります。原因として朝食や昼食を十分に摂る時間がなかったり、残業などで夕食が遅くなったりすることで吸収能力が低下して栄養バランスが乱れることが考えられます。その結果、1日を通して必要なエネルギーが十分に摂取できていないケースも少なくありません。
また、食事を摂れていたとしても、パンやおにぎりだけなど栄養バランスが悪い食事になっていると、エネルギーやタンパク質やビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素が摂取できず、疲労を回復しにくい状態になってしまいます。
職場や家庭でのストレスの蓄積

職場では部下や後輩の指導や育成、管理業務など、責任のあるポジションを任される機会が増える傾向があります。そのため、仕事上のプレッシャーや対人関係のストレスを感じる人も少なくありません。
一方、プライベートでは、子どもの教育や親の介護といったライフイベントを経験する人も多く、こうした生活環境や人間関係の変化が心身に影響を及ぼすことも。ストレスが慢性的に続くと、体の働きを調整している自律神経のバランスが乱れやすくなり、だるさや倦怠感、血行不良による冷えや肩こり、不眠、胃腸障害など、さまざまな体の不調が現れることがあります。
疲れが取れない40代女性におすすめの対処法
プレ更年期から更年期に入り、心身ともに大きな変化を迎えている40代の女性が「疲れやすさ」や「疲れが取れにくい」と感じるのは、ごく自然なこと。ホルモンバランスや体力の変化、生活環境のストレスなどが複雑に重なり合う時期だからこそ、まずはしっかりと休養を確保した上で、普段の生活習慣を見直すことが大切です。ここでは、40代の方におすすめしたい疲労回復のための具体的な方法を紹介します。
睡眠を十分に取る・睡眠の質を上げる
疲労回復のためには、十分な睡眠時間と質の高い睡眠が必要です。必要な睡眠時間には個人差がありますが、6~7時間を目安に確保するようにしましょう。また時間だけでなく、睡眠の質も意識することが大切です。朝起きたときに、心身がしっかり休まったと感じられる休養感や熟睡感が、よい睡眠が取れているかどうかの目安になります。就寝直前の入浴や熱いお風呂は寝つきが悪くなることがあるため、寝る1時間前までにお風呂を済ませましょう。
・寝る前の食事や飲酒、喫煙は控える
夕食は就寝の2時間前までに済ませるのがおすすめです。深夜の食事は寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするので軽食程度にとどめましょう。また、過度な飲酒や喫煙は交感神経を刺激するため、睡眠の質を下げてしまいます。健康維持には禁酒・禁煙が望ましいですが、就寝前はなるべく控えるようにしてください。
栄養バランスを整え、疲労回復が期待できる栄養素を積極的に摂取する
そもそも「疲労」とは、肉体的または精神的な活動を続けた後、休息を必要とする心身の状態を指します。パフォーマンスの低下や意欲が減退する症状として現れます。疲労と活性酸素には密接な関係があり、過剰な活性酸素の発生が疲労の原因の一つと考えられています。活性酸素は、私たちが呼吸で取り込んだ酸素の一部が変化したもので、本来は体内のウイルスや細菌を攻撃する役割を持っています。しかし、過度な運動や精神的なストレス、睡眠不足などによって大量に発生すると、正常な細胞まで傷つけてしまいます。
よって疲労を回復するためには、この傷ついた細胞を修復するためのエネルギーが必要です。まずは栄養バランスの取れた食事を3食しっかり摂るように心がけましょう。
・バランスのよい食事とは?
健康を維持する上で欠かせない栄養素である、炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルを合わせて「五大栄養素」と呼びます。
糖質と脂質は体を動かすエネルギー源に、タンパク質と脂質は体を作る材料になります。ビタミンは糖質や脂質、タンパク質の代謝に関わり、エネルギーを作り出すのに不可欠な栄養素です。またミネラルは酵素活性化や体構造維持に必須な栄養素です。主食・主菜・副菜を基本に、これらの五大栄養素を過不足なく摂るように心がけましょう。
・疲労回復に欠かせない栄養素は?

特に疲労回復のために積極的に摂取したいのが、ビタミンB群です。ビタミンB群にはビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸の8つの栄養素が含まれ、糖質・タンパク質・脂質をエネルギーに変える際に関わっています。
ビタミンB1を多く含む食品は、豚肉、玄米、枝豆など、ビタミンB2はレバー、魚介類、大豆製品、ビタミンB6は野菜、魚介類、ナッツ、ビタミンB12は魚介類や乳製品などが挙げられます。忙しい日々の中で食事が偏りがちな場合は、ビタミン剤などで補うのも一つの方法です。
特に糖質をエネルギーに変える役割があるビタミンB1は、水に溶けやすく、食品から摂取しても体内に吸収されにくいという特徴があります。ビタミン剤を活用する場合は、ビタミンB1をより吸収しやすい形にしたビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」を含むビタミン剤がおすすめです。
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適度な運動を継続的に行う
慢性的に疲れている場合は、運動をする余裕がなく、運動不足になりやすい傾向があります。その結果、運動不足による血行不良がさらに疲労感を悪化させるという悪循環に陥っているケースも少なくありません。
筋力の低下を抑え、疲れにくい体を保つためにも、適度な運動が必要となります。日頃から有酸素運動やスクワットのような筋力トレーニングを無理のない範囲で組み合わせてみましょう。効果を得るためには、1日20~30分、週に2~3回を目標に継続して取り組むのがおすすめです。また、エレベーターやエスカレーターよりも階段を使う、移動は自転車や徒歩にする、姿勢を意識するなど、日常生活の中に運動習慣を無理なく取り入れることも心がけましょう。
毎日の入浴で血行をよくする
疲労回復のためには、できるだけ湯船に浸かることも大切です。湯船に入ると温まるだけでなく、体全体に適度な水圧がかかります。すると血管を圧迫し、血管を拡げようとするホルモンが分泌されるので、血行がよくなり疲れも取れやすくなります。また、炭酸浴などの入浴剤は組織に酸素を運びやすくする役割もあるためおすすめです。
入浴後は副交感神経が優位になるため、心身ともにリラックスすることが期待できます。リラックスやストレス解消が目的の場合は、39~40℃のお湯に10分程度の全身浴、または心臓などに持病がある方は20~30分程度の半身浴がおすすめです。
自分なりのストレス解消方法を見つける

忙しい40代の女性はストレスを溜め込みがちに。だからこそ、自分に合ったストレス解消法を見つけ、意識してリフレッシュの時間を持つことが大切です。あくまで例ではありますが、下記におすすめのストレス解消法を紹介します。
・趣味を楽しむ時間を作る
趣味を楽しむ時間を作ると、気分転換できストレスが軽減されます。例えば、楽器や手芸など習い事を始める、体を動かす、好きな音楽を聴く、読書に熱中するなど、自分に合ったものを探してみましょう。
・人と話したり、相談したりする
家庭や仕事の悩みは、誰かに話すことですっきりすることもあります。ストレスにならない範囲で、友人などと交流する時間も楽しみましょう。
・マインドフルネスを試す
マインドフルネスは、過去や未来のことを考えすぎず、「今あるここ」に意識を向けて、その状態をありのまま受け入れる瞑想のことです。
リラックスした姿勢で座り、ゆっくりと呼吸に意識を向けます。雑念が浮かんでも否定せず、そっと呼吸に意識を戻すことを繰り返しましょう。散歩中に足の感触や風の音、匂いを感じ取るなどの行動でもよいです。これを続けることで、ストレスや不安の軽減、集中力や感情コントロールの向上、睡眠の質改善にもつながります。
40代女性の長引く疲れには病気の可能性も
40代の女性のなかなか取れない疲労は、生活習慣だけでなく、病気や体の不調が原因となっている場合もあります。治療が必要な病気が関与している可能性もあるため、症状が長引く場合は、医療機関を受診するようにしましょう。ここでは、考えられる病気やその症状について紹介します。
貧血
貧血は、倦怠感や疲労感などの体の不調に関係していることが多いです。月経のある女性はどうしても鉄分不足になりがち。また無理なダイエットによる栄養不足も、貧血の原因になりやすいです。
貧血を防ぐためには、鉄分を意識的に摂取することが大切です。鉄には、肉や魚など動物性食品に含まれるヘム鉄(吸収率15~30%)と野菜や大豆など植物性食品に含まれる非ヘム鉄(吸収率2~5%)があります。非ヘム鉄は体に吸収されにくいですが、動物性タンパク質やビタミンCと同時に摂ることで吸収が高まります。お肉と野菜を一緒に摂ったり、食後にビタミンCを多く含む果物を食べたりするなどの工夫をしましょう。なお、食事中にタンニンを含む緑茶や紅茶を飲むと鉄分の吸収が妨げられるので、注意が必要です。
甲状腺機能低下症(橋本病など)
甲状腺は喉元にあるホルモンを分泌する臓器であり、蝶ネクタイと同じような左右対称な形をしています。甲状腺ホルモンは基礎代謝の調節、成長・発達の促進、心臓や腸管、神経機能を調整する働きがあり、生命を維持するための重要な働きを担っています。
橋本病などの疾患は甲状腺の炎症によって甲状腺の機能が低下することで、分泌される甲状腺ホルモンが低下してしまいます。その結果、全身の代謝が低下し、体温の低下、冷え、コレステロール値の上昇、月経不順、肌の乾燥やむくみ、脈拍数の減少、便秘、無気力感などの症状が現れることがあります。
橋本病は中高年の女性に多く、更年期症状や自律神経失調症の症状ともよく似ているため見逃されがちな病気です。症状が悪化する場合は、内科に相談しましょう。
慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatigue Syndrome)
(正式名称:筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)
慢性疲労症候群は、はっきりとした原因がわからないまま、突然の強い疲労感と全身倦怠感が6ヵ月以上続く病気です。休息や睡眠を十分取っても疲れが取れないことが特徴で、集中力や記憶力が低下したり、抑うつ状態などの精神神経症状が長期にわたって続いたりするため、健全な社会生活が送れなくなってしまうケースも少なくありません。
慢性疲労症候群の原因はまだ解明されていませんが、ウイルス感染や免疫の異常、ストレスなどが関係していると考えられています。ストレスによって自律神経が乱れると、副交感神経の機能が低下します。副交感神経の機能が低下すると、疲労の回復やエネルギーの再生がスムーズに進まず、疲労感や全身倦怠感が生じてしまうのです。
なお、慢性疲労症候群(CFS)という呼び方は、疲労という誰もが日常生活で経験している症状を病名として用いていることにより誤解や偏見を受ける可能性があるために、現在は「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS:Myalgic Encephalomyelitis /Chronic Fatigue Syndrome)」と呼ばれるようになってきています。
原因不明の疲労感や全身倦怠感が6ヵ月以上続く場合は、内科や心療内科などを受診するようにしてください。
更年期うつ
女性のうつ病患者数は男性より多いとされています。プレ更年期や更年期に現れる症状には、気分の落ち込みや、やる気の喪失などが挙げられますが、こうした精神症状が強くなると、更年期うつになる場合もあります。うつ症状は、女性ホルモンの変化によるものだけでなく、結婚、妊娠・出産、育児、介護などのライフイベントによる環境・役割の変化がきっかけになる可能性もあります。
「これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなる」「注意力や集中力が低下したり、体が動かなかったりして、家事や仕事をいつものようにこなせない」といった症状が2週間以上続く場合は、精神科や心療内科を早めに受診しましょう。
ホルモンバランスの乱れを感じやすい40代。無理せず休んで生活習慣を見直そう

ホルモンバランスの変化を迎える40代の女性は、疲れや不調を感じやすくなっています。また、仕事で責任ある役職についていたり、プライベートでも大きな変化があったりと、ストレスを抱えることが多い年代です。「疲れが溜まっているな」と感じたら無理をせず、しっかり休むようにしましょう。加えて、睡眠時間を十分確保する、適度な運動を行う、食生活を改善するなど、生活習慣を見直すことも大切です。食生活が乱れがちな人は、ビタミンB群や抗疲労成分を含むビタミン剤を活用するのもよいでしょう。
疲れが長引く場合や、極度の倦怠感・抑うつ感が続く場合は、他の病気が隠れている可能性も考えられます。症状が改善しない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
- <参考文献>
- 厚生労働省,働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
- 厚生労働省,働く女性の心とからだの応援サイト
- 健康長寿ネット







