更新日:2023年7月28日

眠れないまま朝になったとき、どうすると良い?睡眠不足で仕事や学校を乗り切る方法

眠れないまま朝になってしまった…。眠ろうと努力すればするほど目がさえてしまう。こんな経験ありませんか?

明日もいつもどおり、朝から会社や学校。それなのに眠れない。そんなあなたにぜひ試してほしい、少しでも眠るためにできることや睡眠不足でも1日を乗り切るための対策、夜ぐっすり眠るためにできることなどを紹介します。

監修

山下 あきこ 先生

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役 医学博士 神経内科・内科医師

INDEX

眠れないまま朝になってしまったときに考えられる原因

眠れないまま朝になってしまった原因は、以下のようなものが考えられます。

  • ・ストレス
  • ・身体的な病気
  • ・精神的な病気
  • ・その他の睡眠障害
  • ・カフェイン・タバコ・アルコール
  • ・体内リズムの乱れ
  • ・睡眠環境
  • ・加齢

など

眠れない原因は多岐にわたります。眠れずに朝を迎えてしまう症状が1ヵ月以上続く場合には医療機関を受診してみてください。眠れない日があっても、月に数回だけで、日中に疲労や眠気を感じることなく元気に過ごせるようであれば心配はありません。

本記事では、眠れないまま朝になってしまったが、その日1日を乗り越えなければならない方への対策方法と、眠れずに朝を迎えないためにできる生活習慣などをお伝えします。

※睡眠の異常によってさまざまな社会生活機能の障害が生じる疾態の総称

眠れないまま朝になってしまったときに仕事や学校を乗り切る方法

眠れないまま朝になり、目覚ましをセットした時間が近づいている。もう少し経つと、仕事や学校(部活)、家事など、いつもどおりの生活がスタートする…。そんなときに少しでも眠るためのヒントや、睡眠不足でも1日を乗り切るコツを紹介します。

起床時刻まで少しでも寝る時間があるときに試したいリラックス方法

眠れないまま朝が近づいているけれど、起床時刻までには少し時間があるときには、下記のリラックス方法を試して、少しでも寝るようにしてみましょう。

・深呼吸をする

深呼吸をすると、身体や精神の活動を活発にするように働く交感神経が抑制され、心身を落ち着かせるように働き、眠気を生じさせる副交感神経が優位になります。

・静的ストレッチをする

関節や筋をじっくり伸ばしていく静的ストレッチには、心拍数を低下させる、副交感神経が優位になる効果があります。

・緊張をほぐすツボを押す

ツボ押しにはリラックス効果があり、睡眠へと誘ってくれます。

なかでも、緊張をほぐしリラックスさせるツボとして、手のひら側の手首の横じわの上で、小指側にある腱の内側あたりに「神門(しんもん)」というツボがあります。このツボを5秒かけて徐々に力を加えて押すのを、3~5回繰り返してみてください。

また、足の内くるぶしから親指の幅3本上のあたりにある「三陰交(さんいんこう)」も、眠れないときにおすすめです。

眠れないまま朝を迎えてしまった日を乗り越えるためにできること

眠れないまま一睡もできずに朝になってしまった日は、下記の方法で体を目覚めさせてみましょう。

なお、眠れなかった翌日は、自動車の運転といった危険をともなう作業には十分気をつけましょう。場合によっては他の人に交替してもらうことも考慮してください。

・太陽の光を浴びる

朝、日光を浴びることで、体内時計がリセットされることがわかっています。仕事や学校がなく遅くまで寝ていられる日でも、朝日を浴びないと体内時計が遅れた状態が続き、その晩に睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されず、再び眠れなくなってしまいます。快適な睡眠を得るために、毎日朝日を浴びるようにしてください。

・カフェインを摂取する

眠気覚ましにはカフェインが有効です。コーヒーや緑茶、栄養ドリンクなど購入しやすいものから摂取でき、眠気覚ましの他に集中力を高めるような働きもあります。

夕方以降に摂取すると、その晩の睡眠に影響が生じてしまいますので、なるべく午前中に摂取すると良いでしょう。摂りすぎると、動悸、下痢、吐き気、興奮、不安、イライラなどが生じやすくなるため、摂りすぎに注意して上手に活用してみてください。

・覚醒効果の高いツボを押す

左右の目頭の中間にある「山根(さんこん)」というツボは、覚醒作用が見込めるツボです。ここを押すと眠気が解消されて集中力が湧いてくるといわれています。

また、後頭部の「天柱(てんちゅう)」というツボは、脳の血流を増やして頭をクリアにしてくれるといわれています。天柱は、首の中心線と髪の毛の生え際から、親指の幅2本分ほど左右外側にずれたあたりです。

・眠気覚ましに効果的な香りをかぐ

ミントやジャスミン、シナモン、柑橘類の香りには覚醒作用があり、その日1日を乗り越えるときに有効かもしれません。

・エネルギーを産み出してくれる栄養を摂る

エネルギー産生に必要な栄養は、寝不足で疲れが残っていたり、集中力が落ちてしまっていたりするときに欠かせません。とくに、エネルギーになるブドウ糖とブドウ糖がエネルギーになるために欠かせないビタミンB1を摂るようにすると良いでしょう。

ブドウ糖は穀類やイモ類、ビタミンB1は豚肉や大豆、玄米などに含まれています。食事で十分に摂れない場合は、サプリメントやビタミン剤などで補うのも一つの手です。

その他、とれるときに仮眠をとったり、人と会話して脳へ刺激を与えてみたり、軽く運動をしてみると、頭をスッキリできるかもしれません。また、状況が許す場合は、その日の仕事量を減らしてみたり、無理をせず休むことを考えてみても良いでしょう。

眠れない日が続いたときに試したい!おすすめの入眠方法

眠れない夜が1日だけでなく、何日か続いている場合には、寝る少し前に次のようなことをしてみると、寝つきが良くなるかもしれません。

寝る数時間前までに入浴で体を温めて自然な眠気を引き起こす

眠れないまま朝になってしまった日には、寝る少し前に体を温めておき、就床時刻に向けて体温が下がっていくようにすると良いでしょう。深部体温という脳や臓器など体の内部の温度が低下していくことによって眠気が催されるためです。

深部体温を上げる例として、湯船につかる入浴があります。入浴によって、副交感神経が優位になることも、眠気を誘ってくれます。シャワー浴では体はあまり温まらないため、夏場でも湯船につかるのがおすすめです。季節にあわせ、ぬるめと感じる温度にするなどしてゆったりと入浴してみてください。

ただし、睡眠直前に熱い湯船につかると、交感神経が活発になり、深部体温も上昇したまま下がる時間がなく、逆効果になってしまうので注意しましょう。

眠りにつく前のリラックスタイムをつくる

眠りにつく前にリラックスタイムを設けることで、副交感神経を優位にすることができ、眠りにつきやすくなります。

副交感神経を優位にする方法として、入浴の他にアロマセラピーや瞑想などがあります。アロマでは、ラベンダーや白檀(ビャクダン)、沈香(チンコウ)などは覚醒レベルを下げるという研究結果が報告されています。

ただ、リラックスの方法は人それぞれですので、いくつか試してみて、自分に合ったリラックスタイムを見つけてみてください。

睡眠環境を整える

睡眠環境は眠れていない原因になっていることがあり、一度見直して自分なりに整えてみることも眠りにつくために非常に重要です。

例えば、良い睡眠のためには、寝室は暗い方が適しています。朝までぐっすり眠りたい場合は真っ暗にすると良いでしょう。騒音をできるだけシャットアウトすることも大切です。

そして、室温や湿度も質の良い睡眠にとって大切な要素です。湿度はやや高めで乾燥しないようにすると良いでしょう。室温については、冬季はエアコンをつけない、もしくは低めに温度を設定すると深部体温がちゃんと下がり、良い眠りが得られます。反対に、夏は涼しめの温度設定が良いですが、エアコンは湿度を下げすぎてしまうこともあるため、タイマーを使用するなど工夫しましょう。

その他、睡眠を妨げるような症状(咳や鼻づまり、痛み、かゆみなど)や病気(睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群など)がないかをチェックしたり、薬の副作用の可能性を考え、思い当たることがあれば医師の診察を受けましょう。

眠りを妨げるNG行動

眠らなければいけないと焦る

「眠りたいのに眠れない」というのは不安なものです。でも、そんなときに「早く眠らなければ」と焦ったりすると、神経がたかぶってしまって余計に寝つけなくなるという、悪循環に陥ってしまいます。横になって目をつぶってしばらく経っても眠れそうにないなら、「今は眠る必要がない」と考えて、いったん読書などをしてみてはいかがでしょうか。

なお、かつては「眠れなくても決まった時刻に床につき、目をつぶっていれば疲れはとれる」とアドバイスされることもありましたが、良い睡眠習慣のためには「眠気を感じてから床につく方が良い」との考え方が今は主流です。

夕方以降にカフェインを摂取する

カフェインには覚醒作用があります。前の晩に眠れなかった人が、眠気覚ましのためにコーヒーを飲むということがよくあり、その方法は間違っていません。ただ、カフェインの半減期(効果が半分になる目安)は2~8時間と幅があって、作用はその後も続きます。ですから夕方以降に飲んだ場合には、その晩も眠れなくなってしまいかねません。

なお、カフェイン入り飲料として、コーヒーやエナジードリンクはよく知られていますが、それら以外に、日本茶や紅茶、炭酸飲料にも含まれていることに注意してください。

長時間の昼寝

日中の眠気をとるのに短時間の昼寝は効果的です。とはいえ、昼寝をしすぎると、その晩に眠れなくなってしまうので、昼寝は長くても30分まで、かつ、午後の早めの時間帯までがおすすめです。

また、あまり深い睡眠にならないように、ふとんやベッドなどの快適な睡眠環境で眠らない方が良いでしょう。

寝る前にテレビやスマホなどからの光刺激を受ける

テレビを見たり、スマホを使って脳が刺激を受けたりすると覚醒度が高まってしまって、寝つきにくくなります。「音が聞こえた方が安心する」といってテレビをつけたまま眠る人もいますが、あまりおすすめできません。

また、明るい光は体内時計を調節するメラトニン分泌を抑制するため、電子機器の利用はその点でも眠気を妨げてしまいます。さらにスマホのブルーライトは、その作用が強いとする研究報告もあります。

アルコール・タバコ

寝る前のアルコール摂取、いわゆる“寝酒”は確かに寝つきを良くする面があります。ただ、ベッドに入ってから数時間経過すると反対に覚醒度を上げるように作用して、目覚めやすくなってしまいます。また、トイレが近くなることも、中途覚醒(睡眠中の目覚め)を増やす原因です。アルコールを飲んでから寝て目覚めてしまった場合は、再び眠りにつくのが困難になりやすいこともわかっています。

この他、喫煙者の中には、「タバコを吸うとリラックスできるから」といって、寝る前に吸う人がいます。しかし実際は、ニコチンには覚醒作用があって心拍数や血圧を上げる作用もあるため、寝つきは悪くなりやすいと考えられます。

寝るときに体を温める

寝るときに体を温めてしまうと体温が下がりにくくなるため、質の良い睡眠の妨げとなることがあります。

例えば、冷えの対策として、靴下を履いて寝ることは足が締め付けられることによって血流が滞り、余計に冷える原因となります。ホットカーペットやエアコンで温めすぎてしまうことも深部体温を上げる原因になってしまったり、暑くて目が覚めることにもつながります。

足の冷えが気になる場合は、タオル湯たんぽを試してみましょう。タオルを水で濡らし、電子レンジで温め(600Wで2分ほど)、それを乾いたタオルでくるんで用います。この方法なら、湯たんぽが熱すぎで覚醒レベルが上がってしまうようなことはなく、心地よい睡眠を得られます。

寝る直前の食事

空腹は良くありませんが、寝る直前の食事は血糖値を上げ、脳を覚醒させるため、眠りの妨げになります。

もしどうしても食べないと寝られそうにないというときは、糖質控えめの軽い食事をとってください。糖質控えめなら、食後の血糖値の急な変化によって脳の覚醒レベルが上がってしまうのを避けられます。温かいスープなどは、満足感が得られやすいのでおすすめです。

眠れないまま朝を迎えないために…日頃からできる生活習慣

毎朝同じ時間に起きて太陽の光を浴びる

眠れないまま朝を迎えないために、また朝までぐっすり眠るために、毎朝同じ時間に起床して朝日を浴び、セロトニンの分泌を増やすことが重要です。

精神を安定させる働きをするホルモンであるセロトニンは、睡眠に必要なメラトニンの材料となるためです。本来であれば夜、光刺激によってメラトニンの分泌がブロックされてしまうのですが、朝に日光浴をすることでメラトニンの分泌がブロックされにくくなることもわかっています。

そのために、毎朝5分~20分程度、外で日光浴をしてみてください。

眠れなかったとしても、平日か休日かに関係なく、朝はいつもどおりに起きて朝日を浴びるようにしましょう。

日中を活動的に過ごす

良い眠りには、夜に入ってからの過ごし方だけではなく、日中の過ごし方も重要です。

快眠のためには、夜、ふとんやベッドに入る時点で、多少の疲れを感じていることも必要。そのために、日中は適度な運動をしておくと良いでしょう。とくにこの点は、身体活動量が少なくなりがちな高齢者では重要なポイントです。また、前夜、眠れなかったからといって日中だらだらと過ごしていると、その晩も眠れなくなってしまうので要注意。

起きている時間と眠る時間を分けて、メリハリのある生活を心がけましょう。

食生活を見直す

規則正しい生活を送ることが、夜、心地よく眠りにつくために大切なポイントで、3度の食事も重要です。

食事の量やバランスを整えるとともに、睡眠の質を改善・向上するとされているトリプトファン、グリシンなどの栄養素を摂取すると良いでしょう。

・トリプトファン

トリプトファンは必須アミノ酸(体内でつくることができないため、食品からの摂取が欠かせない栄養素)の一つで、セロトニンの合成に必要とされています。

魚介類、鶏肉、卵、大豆製品、ごまなどに多く含まれています。

トリプトファンとともに、ビタミンB6や炭水化物を摂るとセロトニンの合成が促進されるため、同時に摂るようにしましょう。

・グリシン

グリシンは、脳をクールダウンしたり、体温を下げるように働くアミノ酸です。

深部体温が下がることで眠りに入りやすくなるので、グリシンの働きはそれに適しています。

カジキマグロ、ホタテ、エビなどに多く含まれています。また、グリシンを合成するセリンも質の良い睡眠に必要とされ、牛乳や海苔に含まれています。

眠れないまま朝になる日が続く場合は治療が必要な状態かも

眠れないまま朝になってしまう場合の「眠れない」という症状は、医学的には「不眠症」に該当します。不眠症には、入眠障害、中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害などのタイプがあります。どれか一つだけ起こることもあれば、いくつかのタイプが重なることもあります。

睡眠の異常によって、さまざまな社会生活機能の障害が生じる「睡眠障害」の原因の多くは、これまで解説してきた生活習慣の要素が大きいので、それらを改善することが第一ですが、実際には生活習慣を改善しても眠れないことや、騒音などの自分では十分に解決できない問題も少なくありません。また、何らかの病気や薬の副作用が睡眠障害を引き起こしていることもあります。

眠れないまま朝になってしまうような日が続く場合、一度、医療機関を受診して相談してみてはいかがでしょうか。あなたにピッタリのアドバイスを受けることができるかもしれません。

不眠症の詳しい説明は以下の関連記事をチェック。

<監修者(山下あきこ)サイト>
<参考文献>
  • 厚生労働省/健康づくりのための睡眠指針 2014
  • 全日本病院会「睡眠習慣セルフチェックノート」,2015
  • e-ヘルスネット
  • 山下あきこ著「こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる」, 共栄書房,2022

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