更新日:2023年5月29日

カフェインの効果を解説!効力時間やデメリットについても紹介

カフェインの効果には、眠気覚ましや集中力アップなどが期待されているため、仕事の合間にカフェインが含まれた飲料を飲む方も多いでしょう。しかし、カフェインには過剰摂取によるデメリットもあるため注意が必要です。カフェインの効果的な摂取の仕方や、適切な摂取量を学んでいきましょう。

監修

勝木 美佐子 先生

かつき虎ノ門クリニック院長 博士(医学)、日本内科学会総合内科専門医

INDEX

カフェインとは

カフェインとは、コーヒー豆や茶葉などに含まれる食品成分です。摂取すると疲労感が和らいだり、眠気が覚めたりするのは、カフェインの効果の一つです。コーヒーやお茶などの飲料だけでなく、エナジードリンクなどの清涼飲料水や栄養ドリンクにも含まれています。

身近な成分であるカフェインですが、片頭痛の治療薬として処方されたり、市販の鎮痛剤などにも含まれていたりすることもあるため、適切な付き合い方をすることが大切です。

カフェインの効果を得られる時間は?

眠気覚まし目的でカフェインを利用する場合、摂取後どれくらいで効果が現れるのかが気になる人もいるでしょう。

カフェインを摂取したときの、効果の現れ方の一例をご紹介します。

市販の缶コーヒーを使用したある調査によると、カフェインの血中濃度が最大になったのは、摂取後30~90分の間だったというデータがあります1)

このデータによると、例えばカフェインの効果を得たいタイミングがある場合、30分~1時間半前を目途にコーヒーなどのカフェイン飲料を飲むことができれば、パフォーマンスを高めることが期待できます(ただし、カフェイン摂取から効果の発現までの時間には個人差があり、上記のデータに当てはまらないケースもあります)。

なお、カフェインは体内にとどまっている時間が長く、摂取したカフェインの量が半分になるまでに約6時間かかるといわれています。そのため、夕方以降に摂取すると、なかなか寝付けなかったり、不安感やイライラが増幅されたりすることもあります。

1)間瀬浩安ほか:医学検査,2015; 64(4): 413-420.

カフェインによって得られる効果

カフェインには、よく知られている眠気覚まし以外にも、さまざまな効果があることがわかっています。

疲労感を和らげる

デスクワークの合間などにカフェインを含む飲料を摂取すると、疲労感が和らぎ、作業効率が向上したという経験のある方も多いのでしょうか。これはカフェインの持つ興奮作用によるものです。筋肉や神経を刺激して興奮させ、疲労感を軽減させるはたらきがあります。

眠気を覚ます

カフェインには中枢神経に刺激を与え、眠気を覚ます作用があります。

カフェインは、人が疲れを感じると体内で生成される「アデノシン」という物質に構造が似ています。疲れを感じたときに眠くなるのは、アデノシンが受容体と結びつくことで心拍数を低下させ、体がリラックスした状態になるからです。

しかし、カフェインを摂取すると、アデノシンよりも先にカフェインが受容体と結合します。その結果、心拍数の低下が起こりにくくなります。さらにドーパミンなどの分泌が促され、交感神経が優位な状態となるため、カフェインを摂ると眠気を感じにくくなるのです。

むくみを予防する

腎臓の血流が促進され、体内の水分が尿として排出されやすくなる利尿作用も、カフェインの作用の一つです。利尿作用によって体内に余分な水分をためにくくなることから、カフェインはむくみ予防にも効果的といえるでしょう。

ただし、大量に摂取すると尿量が多くなり、脱水症状を引き起こす可能性があるので注意してください。

頭痛を軽減する

カフェインには血管収縮作用があり、脳血管の拡張によって引き起こされる「片頭痛」の緩和効果が期待できます。

実際に、無水カフェインの錠剤は片頭痛の治療薬として処方されていますし、市販されている頭痛薬のなかにはカフェインが配合されているものもあります。

運動能力が向上する

カフェインは、スポーツのパフォーマンス改善に良い影響を与えるとも考えられています。

国際スポーツ栄養学会(ISSI)の発表によると、適度にカフェインを摂取することによって、有酸素運動と無酸素運動の双方で、持久力やスピードなどの向上が認められています2)

ただし、人によってカフェインの効果の感じ方には差があります。また、パフォーマンスを改善させようと、たくさんカフェインを摂り過ぎると体への悪影響が懸念されます。自分の体質を理解した上でカフェインを有効に活用することが重要です。

2)J Int Soc Sports Nutr. 2021 Jan 2;18(1):1

ダイエットや筋トレに好影響

カフェインには脂肪の代謝も促進させる効果があるため、ダイエットや筋トレにも良い影響があるとされています。

筋トレにおいては、カフェインの摂取によって、人が意識して自発的に発揮する最大の力である「覚醒随意最大収縮」や、くり返しの負荷を継続できる持久力である「筋持久力」が高まるため、筋トレが効率的に行えるようになることがあります。また、詳しくは後述しますが、有酸素運動の前に摂取すると、脂肪の燃焼効果が高まるという研究結果もあります3)

3)Ramírez-Maldonado M, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2021;18:5.

カフェインを多く含む飲み物・食べ物

カフェインを多く含む飲み物や食べ物を紹介します。普段口にする身近な飲み物や食べ物のカフェイン含有量について、改めて考えてみましょう。

コーヒー

コーヒーはカフェインを含む代表的な飲料です。

コーヒーに含まれるカフェイン量は、豆の製法や原料によって変動するため、あくまで目安となりますが、以下のとおりです。

  • ・コーヒー(浸出液):60mg
  • ・インスタントコーヒー(顆粒製品):57mg

※コーヒーは日本食品標準成分表2020(八訂)を参照。
インスタントコーヒーは「食品安全委員会『食品中のカフェイン』ファクトシート」を参照。
いずれも100mlあたりに含まれるカフェイン含有量

国によっては健康な成人の、1日あたりのカフェイン推奨摂取量を400mg以下と定めているところがあります。ドリップコーヒーを700ml飲むと、カフェイン含有量は約420mgとなり、この推奨量を超えてしまいます。

マグカップ1杯がおよそ200mlですので、700mlというとマグカップ約3.5杯分にあたります。コーヒー以外に食事などで摂取するカフェインも考慮すると、コーヒーは1日あたり3杯程度にとどめておくのがよいでしょう。

お茶

緑茶や紅茶などの茶葉にもカフェインは含まれています。お茶のなかで最もカフェイン含有量が多いのは玉露です。

コーヒー同様、茶葉の製法や原料によって変動するため、あくまで目安となりますが、以下にお茶のカフェイン含有量の一例をご紹介します。

  • ・玉露(浸出液):160mg
  • ・紅茶(浸出液):30mg
  • ・緑茶・煎茶/ほうじ茶/ウーロン茶(浸出液):20mg
  • ・玄米茶/番茶(浸出液):10mg

※日本食品標準成分表2020(八訂)を参照。100mlあたりに含まれるカフェイン含有量

栄養ドリンク

カフェインは、指定医薬部外品の栄養ドリンクにも含まれています。栄養ドリンクに含まれているカフェイン含有量は、メーカーによって配合量や成分に違いがあるものの、1本あたり約50mgです。

栄養ドリンクには、カフェイン以外にもビタミン類やアミノ酸などが配合されているものが多く、栄養不良にともなう身体不調の改善や疲労の回復・予防といった効果を有しています。用法や用量を守って、適切に利用するとよいでしょう。

<カフェインとビタミンB1配合の、疲労の回復におすすめのドリンク>

エナジードリンク

エナジードリンクについての明確な定義・基準はなく、現状はカフェインやアミノ酸、ビタミンなどの成分が入った炭酸飲料を呼称しています。清涼飲料水にカテゴライズされており、栄養ドリンクのように「滋養強壮」などの効果効能を訴求することはできません。

しかし、カフェイン含有量は意外に多く、なかには100mlあたり73mg(500mlのペットボトル飲料に換算すると350mg以上)のカフェインが配合されている製品もあります。1日に何本も飲んだり、毎日続けて飲んだりするとカフェインの過剰摂取になる可能性があるため、注意が必要です。

チョコレート

カフェインは、カカオ豆由来のチョコレートにも含まれています。カフェインの含有量は、カカオの種類や製法などによって異なり、一般的にカカオの割合が高いほどカフェイン含有量も多くなります。

高カカオチョコレートには、100gあたり100mg以上のカフェインを含むものもありますが、1日に数片食べる程度であればカフェイン摂取量が、後述する目安を超えることは基本的にないでしょう。ただし、コーヒーや食事などで摂取するカフェインと合わせると摂取量が過剰になってしまうこともあります。

高カカオチョコレートを食べるときは、パッケージに書かれたカフェイン含有量や1日あたりの摂取目安をチェックし、適正な摂取を心掛けましょう。

カフェイン含有量一覧表

記事内で紹介した飲料のカフェイン含有量を一覧にしました。
妊娠中などでカフェインが気になる人は参考にしてみてください。

食品名カフェイン含有量備考
コーヒー(浸出液)60mg/100ml浸出法:コーヒー粉末 10g/熱湯150ml
インスタントコーヒー(顆粒製品)57mg/100ml浸出法:インスタントコーヒー2g/熱湯140ml
玉露(浸出液)160mg/100ml浸出法:茶葉10g、60℃湯60ml、2.5分
紅茶(浸出液)30mg/100ml浸出法:茶葉5g、熱湯360ml、1.5分~4分
せん茶(浸出液)20mg/100ml浸出法:茶葉10g、90℃湯430ml、1分
ほうじ茶(浸出液)20mg/100ml浸出法:茶葉15 g、90℃湯650ml、0.5分
ウーロン茶(浸出液)20mg/100ml浸出法:茶葉15g、90℃湯650ml、0.5分
玄米茶(浸出液)10mg/100ml浸出法:茶葉15g、90℃湯650ml、0.5分
エナジードリンク32~300mg/100ml
(製品 1本当たりでは
36~150mg)
製品によって、カフェイン含有量及び内容量が異なる

※日本食品標準成分表2020(八訂)を参照
インスタントコーヒーとエナジードリンクは「食品安全委員会『食品中のカフェイン』ファクトシート」を参照

カフェインの効果的な摂り方

せっかくカフェインを摂取するなら、なるべく有効に活用できるタイミングで摂りたいもの。効果的なカフェイン摂取のコツを紹介します。

集中したいとき

カフェインは、集中したいときに摂取するのがおすすめです。
摂取したカフェインが交感神経を刺激して、アドレナリンの分泌を促し、集中力アップにつながります。

作業に入る前にカフェインを摂取し、集中力を高める準備をしておくとよいでしょう。

運動の前

有酸素運動の30分前に、「濃いコーヒー」に相当する量のカフェイン(体重1kgあたり約3mg)を摂取すると、脂肪燃焼の速度が大幅に増加するという可能性を示した研究結果が発表されています3)

カフェインには、さまざまなメカニズムで脂肪細胞を燃焼する作用があるようです。

個人差はありますが、カフェインを有効に摂取するタイミングの一つとなるでしょう。

3)Ramírez-Maldonado M, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2021;18:5.

昼寝の前

カフェインを効果的に摂取するタイミングとして、昼寝の30分ほど前をあげるケースもあります。

昼寝の前にカフェインを摂取することで、起きるタイミングでカフェインの覚醒効果がはたらき、すっきりとした気分で目覚められるというのが理由です。

ただし、カフェインの覚醒効果が現れはじめる時間には個人差があり、人によっては眠りに入るより前に覚醒効果が作用して、適正な昼寝の妨げになることがあるようです。体質によっては効果的ではない場合もあることを理解しておきましょう。

カフェインを摂取するときの注意点やデメリット

カフェインを摂取するときの最大の注意点は、摂り過ぎ(過剰摂取)です。
カフェインの過剰摂取は、心身に大きな影響を与えるおそれがあります。

過剰摂取による副作用

日本では「カフェインに対する感受性に個人差がある」として、1日の摂取許容量は決められていません。しかし、海外ではカナダやオーストラリアなどで、カフェインの1日あたりの推奨摂取量が決められています。

カナダ保健省によるカフェインの推奨摂取量(2012年発表)は、以下のとおりです。

  • ・健康な成人:400mg以下
  • ・妊婦、授乳婦、妊娠を計画している女性:300mg以下
  • ・10~12歳児:85mg以下
  • ・7~9歳児:62.5mg以下
  • ・4~6歳児:45mg以下

上記はあくまで海外の基準の一つで、この量を超えるとすぐに体に異常が現れるわけではありません。しかし、カフェインを過剰に摂取すると、以下のような症状が生じることがあります。

【カフェインによる急性的な心身の症状の例】

  • ・不眠症
  • ・頭痛
  • ・イライラ感
  • ・脱水症
  • ・吐き気
  • ・めまい
  • ・心拍数の増加
  • ・震え

就寝前の摂取は睡眠に影響を与える

カフェインの覚醒効果によって、睡眠に影響を与えることがあります。具体的には以下のような影響が考えられます。

  • ・入眠困難
  • ・中途覚醒
  • ・睡眠時間が短くなる

睡眠には、脳を休息させて記憶を整理・定着させたり、体の疲れを和らげたりする大切なはたらきがあります。個人差はありますが、だいたい就寝時間の6時間前を目安に、カフェインの摂取は控えたほうがよいでしょう。

妊娠中のカフェイン摂取にも注意

妊娠中は、妊娠していないときに比べて、カフェインが体内で代謝されていく時間が長くなりやすいとされています。

カナダ保健省の基準でも、妊娠中は非妊娠時よりも1日あたりの推奨摂取量が100mg少なくなっていますし、英国食品基準庁では、妊婦の1日あたりのカフェイン摂取量を200mgに制限しています。

妊娠中は絶対にカフェインを摂取してはいけないわけではありませんが、どうしてもカフェインを摂りたいときは、カフェイン量がごくわずかなデカフェの製品を選ぶとよいでしょう。

頭痛薬などの薬を服用する前後はカフェイン飲料の摂取に注意

医薬品に含まれるカフェインと、カフェインを含む飲食物とを一緒に摂取することによる摂取量の増加にも注意が必要です。

例えば、頭痛薬や眠気防止薬、酔い止め薬など、カフェインが含まれている薬を服用する前後に、カフェイン飲料を一緒に飲んでしまうと、過剰摂取のリスクが高まってしまいます。

上記のような薬を服用するときには、コーヒーや栄養ドリンク、エナジードリンクなどの利用は避けたほうがよいでしょう。

また、薬は水またはお湯で服用するように心がけることも大切です。

カフェインの過剰摂取は健康リスクにつながる可能性

カフェインを含む飲料は、自動販売機やスーパーなどで手軽に入手できます。気軽に手に入る分、飲み過ぎてしまわないように普段から注意することが大切です。長期的に摂り続けると、以下のような健康リスクが懸念されます。

  • ・高血圧(肝機能が低下している人が摂取した場合)
  • ・骨密度の低下(カルシウム摂取量が少ない人)
  • ・胎児の発育を阻害(妊婦)

一般社団法人全国清涼飲料工業会は「カフェインを多く添加した清涼飲料水の表示に関するガイドライン」を作成し、添加されているカフェイン量を表示するように、飲料メーカーなどへの周知に取り組んでいます。

カフェインは、仕事中の集中力アップや眠気防止に効果があるといっても、なにごとも摂り過ぎは体に悪影響が出てしまいます。カフェインの摂り方を考えてうまく付き合うことが大切です。

摂取量を意識しながら賢くカフェインと付き合おう

カフェインには、集中しやすくなったり、眠気を防止したりと、日ごろのパフォーマンスアップ効果をもたらします。

一方で、カフェインの効果を期待して過剰摂取をしてしまうと、健康リスクが高まるおそれもあります。

効果と摂取量を正しく理解して、カフェインと賢く付き合っていきましょう。

<参考文献>