更新日:2025年11月25日

タウリンとは?体に与える効果や疲労回復との関連、食材などを紹介

医薬品や栄養ドリンク(指定医薬部外品)によく含まれている成分として、「タウリン」という言葉を耳にしたことはありませんか。タウリンは体内に存在するアミノ酸の一種で、体の機能を正常に保つためのさまざまな役割を果たしています。タウリンの摂取による健康効果は完全に明らかにはなっていないものの、疲労回復や、動脈硬化・脳卒中の予防といった健康効果があることも報告されています。この記事では、タウリンが体にもたらす効果、タウリンに関する研究の状況、タウリンを含む食材、タウリン以外に疲労回復に効果がある栄養素について紹介します。

監修

羅 成圭 先生

徳島大学 教養教育院 准教授、国際タウリン研究会 理事

INDEX

タウリンとは?

タウリンは、魚介類に多く含まれるアミノ酸の一種です。19世紀初めに牛の胆汁から発見されたことから、牛や牡牛を意味するラテン語のtaurus(トーラス)に基づき、タウリンと命名されました。国際標準(IUPAC)では、2-アミノエタンスルホン酸と呼ばれています。人間の体内では、脳、網膜、筋肉、肝臓など、体内のほぼ全ての組織に含まれており、体重の0.1%を占めています。タウリンには体液の浸透圧の調節や、タンパク質の安定化、カルシウムイオンの調節、抗酸化・抗炎症作用などがあり、体の状態を一定に保つのに重要な役割を果たしています。

タウリンがもたらす効果

タウリンを摂取することで期待できる効果については、現在も多角的な研究が進行中であり、その全容解明には至っていないものの、現時点では以下の点が報告されています。

疲労の回復

タウリンは、疲労回復に役立つ成分として知られています。

疲労の原因の一つは、日々の生命活動にともなって体内で生まれる「活性酸素」と呼ばれる物質が、細胞などを傷つけてしまうことだと考えられています。特に、重労働や激しい運動などでたくさんエネルギーを使うと、酸素も多く使うため、その分活性酸素も多く発生します。しかし本来、体にはこの活性酸素を分解して無害にする働きがあります。また、活性酸素によって傷ついた細胞も、十分に休息を取り、エネルギーを摂取することで修復される仕組みがあります。ところが、活性酸素が多すぎる、もしくは修復エネルギーが不足するとそれぞれの働きが追いつかなくなり、細胞がダメージを受けて(酸化)、「疲れ」という生命のアラートを出します。

タウリンは、抗酸化酵素の発現を高めることで抗酸化作用を発揮し、これによって疲労の回復が促されると考えられています。また動物実験ではありますが、長時間の運動を行う前にタウリンを摂取すると、運動中の脂質利用が高まり、運動性疲労の原因となる血糖値の低下が抑制されることで、運動開始から疲労困憊(ひろうこんぱい)までの時間が長くなるという報告もされています。

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動脈硬化の予防

タウリンには、血圧を正常に保つ働きと、血中のコレステロールを低下させる働きがあります。また、血中タウリン濃度が血圧や動脈機能のひとつである血管内皮機能と関連があるという報告もあり、タウリンを摂取することによって動脈硬化の予防につながるといわれています。

※動脈硬化:動脈が硬くなって弾力性が失われた状態のこと

心臓の動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞になるリスクが上がります。また、動脈硬化などが原因で血栓ができると、脳の血管が詰まったり、破れたりする脳血管障害(脳卒中)のリスクも上がってしまいます。

肝機能のサポート

タウリンには、肝臓から分泌され、脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸の生成を促して、肝臓の機能をサポートする働きがあります。また肝臓を構成する細胞を保護する働きもあるため、例えば肝臓に脂肪がたまって生じる脂肪肝を防いだり、薬の副作用による肝臓へのダメージをやわらげたりするとされています。

また、タウリンはアルコールの分解産物である「アセトアルデヒド」の分解処理に関わっていると考えられており、アルコールによる酩酊状態(めいていじょうたい)※からの回復を進める働きも期待されています。

※酩酊状態:アルコールを摂取したことによって起こる、急性の中毒状態

目の保護・眼精疲労の軽減

タウリンには、細胞膜を保護したり、修復したりする働きがあります。眼球は外からの刺激を受けやすい器官で、特に表面にある角膜は、ゴミやコンタクトレンズ、紫外線などでダメージを受けやすくなっています。

タウリンは、角膜の回復を助けるだけでなく、目の奥にある網膜の健康を保つのにも重要な役割を果たしています。実際に、網膜にはタウリンが多く含まれており、それを積極的に取り込むための仕組みも備わっています。また、タウリンによる抗酸化作用、抗炎症作用、神経保護作用によって、眼精疲労を軽減する働きもあります。
このような働きがあることから、多くの市販の目薬にもタウリンが含有されています。

ちなみに、猫はタウリンを体内で合成することができないため、タウリンが欠乏すると失明することがわかっています。そのため、キャットフードには必ずタウリンが添加されています。

タウリンに関する研究の状況

タウリンの働きについてはまだ完全に明らかになっていないものの、その効果についてはさまざまな研究報告がされています。

2023年、国際学術誌Scienceでは、体内のタウリン濃度が加齢にともなって減少し、逆にタウリンを補給(摂取)すると寿命が伸びることが報告され、注目されました。

あくまで動物実験による結果ではありますが、タウリンの摂取に寿命を延ばす効果があることが期待されているのです。その他、運動前にタウリンを摂取すると、筋持久力が上がるという報告もあります。

タウリンを含む食材と摂取のポイント

ここではタウリンを含む食材と、摂取目安量、摂取時の注意点を紹介します。

タウリンを含む食材

タウリンは、魚、イカ、タコ、貝類など魚介類に多く含まれます。特に、カツオやサバなどの赤身魚の場合では、普段食べる白身の部分よりも赤い、血合肉の部分に5~10倍もの多くのタウリンが含まれています。また、生の牡蠣にも多く含まれており、特に殻つきの場合は、むき身の2倍ほどのタウリンが含まれています。

タウリンの摂取目安量・摂取時の注意点

タウリンの摂取目安量は、「日本人の食事摂取基準」では明確に定められていません。しかし、疫学調査や実験の結果から、1日300mgのタウリンを摂取すれば、生活習慣病などの予防が期待できるとされています。

タウリンは生物の体内でも合成されますが、人間の場合、体内で合成されるタウリンはごく微量です。体内に十分供給するためには、食品や医薬品などからの摂取が必要になる場合もあります。

また、タウリンは水溶性(水に溶けやすい性質がある)のため、調理の際は注意が必要です。例えば、スープの具材にして汁も一緒に食べるなど、調理方法を工夫するとよいでしょう。

疲労回復に関連するタウリン以外の成分

ビタミンB1は、“疲労回復ビタミン”とも呼ばれ、ビタミンB1不足が疲れを感じる大きな原因となっていることがあります。

糖質をエネルギーに変える役割があるビタミンB1は、水に溶けやすく、熱に弱いため、調理の過程で失われやすいという特徴があります。また、食品から摂取しても体内に吸収されにくいという難点も。そのため、ビタミン剤を活用する場合は、ビタミンB1をより吸収しやすい形にしたビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」を含むビタミン剤がおすすめです。

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また、疲労の原因である活性酸素の害から体を守るには、抗酸化作用のある栄養素(ビタミンCやβカロテンなど)の摂取が欠かせません。

その他、クエン酸、パントテン酸、コエンザイムQ10なども抗疲労成分とよばれ、疲れに効く成分として知られています。

タウリンに関するQ&A

ここでは、タウリンに関するよくある疑問について解説します。

タウリンに副作用はある?

タウリンを大量に摂取した場合、余ったタウリンは代謝されることなく、そのまま排泄されるため、タウリンに副作用はほとんどないとされています。

ヒトを対象としたこれまでの研究で、最大の投与量である体重1kgあたり150mg(例えば、体重60kgの人で9.0g)のタウリンを長期間摂取した場合でも、副作用は報告されていません。医薬品としてタウリンを摂取した場合は、主な副作用として吐き気・下痢が報告されていますが、頻度は0.5%以下となっています。

タウリンを含んだサプリメントはある?

日本では、化学合成されたタウリンは医薬品に分類されているため、サプリメントや健康食品の原料として、合成タウリンを使用することはできません。タウリンが添加された栄養ドリンクは、効果・効能の認められた指定医薬部外品、または医薬品になります。

タウリンの働きを知って、毎日の食事に取り入れよう

タウリンの働きについてはまだ研究途中のものも多いですが、疲労回復をはじめ、肝臓の機能のサポート、動脈硬化の予防、目の健康維持など、さまざまな効果が期待できることがわかってきています。お酒をよく飲む方、血中コレステロールが高めの方は、積極的に取り入れてみてください。

タウリンは魚介類に多く含まれていますが、食事から摂取する場合は水に溶けやすい点に注意。スープやお味噌汁で毎日の食事に取り入れられるとよいでしょう。特に疲労を感じやすい方は、ビタミンB1などタウリン以外に疲労回復が期待できる栄養素もあわせて取り入れてみるのもおすすめです。

<参考文献>
  • 羅 成圭、中原 未央、川中 健太郎「経口タウリン摂取がヒトの筋力に及ぼす影響」タウリンリサーチ (2019) Vol. 5
  • P. Singh et. al. (2023) “Taurine deficiency as a driver of aging”, Science; Voi.380

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