更新日:2024年2月26日

デジタルデトックスとは? やり方や効果を解説~疲れのサインに賢く対処しよう~

デジタルデトックスをすることで、疲労やストレスが軽減されるといわれています。

「毎日、スマホやパソコンなどのデジタル機器を長時間使っている」「控えたほうがよいのはわかっているけれど、暇さえあればついスマホを触ってしまう…」そんな方に向けて、デジタルデトックスの効果や方法、取り組む必要性などを解説していきます。

併せて、デジタル機器の使用にともなう、目や脳などの身体のさまざまな器官の疲れに賢く対処する方法もみていきましょう。

監修

山下 あきこ 先生

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役 医学博士 神経内科・内科医師

INDEX

デジタルデトックスとは

デジタルデトックスとは、スマートフォン(以下:スマホ)やタブレット、パソコンなどのデジタル機器と意識的に距離を取り、心身の疲労やストレスを軽減しようという試みのことです。

2010年頃から普及し始めたスマホは、2021年には世帯保有率が88%に上り(総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」)、いまや「スマホがなくては不便」と感じるほどの生活必需品になりました。また、パソコンを使って仕事をする人では、仕事中はパソコン画面に向き合い、休憩時間はスマホを片手に過ごし…と、1日中デジタル機器にさらされている状況になっているのではないでしょうか?

このように日常生活でも仕事でも、デジタル機器が必要不可欠なツールとなっている現代、デジタルデトックスが必要だからといって「完全に手放す」「長期的に断つ」という対策はあまり現実的ではないかもしれません。そのため、「一定期間の使用を控える」あるいは「日常的に節度を守って使用する」といったデジタルデトックスのやり方を目指せるとよいのではないでしょうか。

デジタルデトックスの効果と行うメリット

デジタルデトックスを行うことによって感じられる効果は、人によって異なります。そのため一概にはいえませんが、例えば以下のような効果があるといわれています。

  • ・睡眠の質の向上
  • ・仕事・勉強の質の向上
  • ・肩こり、頭痛の低減、脳疲労の回復
  • ・身体を動かす時間が取れる
  • ・人と会う時間を大事にできる
  • ・リアルな体験に価値を見出すようになる

など

デジタルデトックスで得られるこのような効果によって、健康的な生活が送れるようになる、趣味や運動、勉強など時間を有意義に使えるようになるなどのメリットが生じると考えられます。

デジタルデトックスのデメリット

デジタルデトックスの主なデメリットは、「必要なときに必要な連絡や手続き、サービス利用がしにくくなる」ことです。スマホやインターネットの使用を前提にものごとがつくられている現代社会では、デジタル機器の使用制限が一時的だとしても、不便を感じる場面も出てくるかもしれません。

ある調査では、携帯電話(スマホを含む)利用者のうち、「現在利用している携帯電話がないと困る」と回答した人は7割を占めました。その理由として、「公衆電話が見当たらない」「相手の連絡先を覚えていないため緊急時の連絡が取れない」「決済手段や行政サービスがスマホに移行しつつある」などが挙げられています(マイボイスコム(株)「携帯電話・スマートフォンとライフスタイルに関する調査」)。このように、コミュニケーションやサービスの利用などに際し、困難が生じるかもしれません。

また、スマホ依存になっている人の場合、スマホを使っていないと落ち着かず、イライラして精神が安定しないというデメリットが考えられます。依存とまではいえなくても、スマホがない生活に極度の退屈さや不安を感じることがあるとすれば、それもマイナスポイントかもしれません。

デジタルデトックスの方法

ここからは、具体的なデジタルデトックスの方法をみていきましょう。現代の生活とデジタル機器との関連性を前提に、デジタル機器を完全に断つのではなく、節制しながらうまく付き合っていくためのデジタルデトックス方法をご紹介します。

使用状況を可視化する

デジタルデトックスを始めるためにも、デジタル機器を1日にどれくらい使用しているのかを可視化し、把握することが大切です。これはネット依存症の治療法の一つ、「認知行動療法」でも用いられている方法です。

可視化には、時間管理アプリや、デジタル機器にあらかじめ搭載されている「スクリーンタイム」などの機能を使います。まずはインターネットやSNSなど、「何にどのくらいの時間を費やしているのか」、そして「1日の中で使用時間が長い時間帯はいつか」などを確認しましょう。自分のデジタル機器の使用傾向がわかったら、そのなかで使用を制限できるものはないか、1日の中で使用する時間・しない時間のメリハリをつけられないかなどを検討します。

「ながらスマホ」を減らす

いわゆる「ながらスマホ」と呼ばれる、日常生活の中で別の作業をしながら無意識にスマホを触ってしまう時間をなるべく短くしましょう。そのためには、下記のようなことを意識します。

<ながらスマホを減らす方法>

  • ・お風呂、トイレ、寝室にはスマホを持ち込まない
  • ・起きてすぐに理由なくスマホをチェックしない
  • ・食事中や会話中はスマホを使用するのを慎む
  • ・仕事中はスマホを机の上に置かない
  • ・1日の中でメールやSNSをチェックする時間や回数を決める

スマホが手元にあるだけで通知が気になってしまうので、スマホを使用するタイミングを「朝・昼・夕方の3回」などと絞るだけでも効果的です。ただし、1回の使用時間が長時間にならないように注意しましょう。

デジタル機器を使わない休日を過ごす

「仕事などでデジタル機器がなくては困る」という方は、休日だけでもデジタル機器を使用しない時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。「休日は目覚ましのアラームにスマホを使用しない」「アプリの通知をオフにする」「(カラー画面より興味がそそられなくなるため)画面を白黒に設定する」など、スマホを触らないための工夫をしましょう。

休日のデジタルデトックスにもっと本格的に取り組みたいなら、デジタルデトックスツアーへの参加もおすすめです。観光地や農山村、離島などで、デジタル機器を持たずに観光できるツアーが各地で開催されています。また、「宿泊客のデジタル機器を一時的に預かる」というサービスを用意している宿泊施設もあるので、利用してみてもよいでしょう。

その他、キャンプなどで自然豊かな環境に身を置き、あえてデジタル機器に頼らないで過ごしてみるという方法も。人との対話や食事、運動など、デジタル機器を使わないことによって生まれるコミュニケーションや過ごし方を楽しんでみませんか。

※いずれも災害などの緊急事態の際には連絡や情報収集ができるよう、緊急連絡先を控えておく、電源を切ったスマホを携帯するなどの備えを忘れないようにしましょう。

デジタル機器の使いすぎによる影響とデジタルデトックスの必要性

デジタル機器の使いすぎは、身体への悪影響やメンタルの不調、さらには思わぬトラブルを招く可能性があります。デジタルデトックスをきっかけに、より健康的で充実した生活を送れるよう、今の状況を見直してみましょう。

影響1:疲れにより集中力が低下しやすい

休憩のためにスマホやパソコン、テレビゲームなどのデジタル機器を使っているつもりでも、使い方によっては、脳や身体の疲れにつながります。

よくあるケースとしては、夜にゲームやインターネットに夢中になり、睡眠時間が削られてしまうことです。脳の働きを維持するためには睡眠が必要なので、睡眠不足になると疲れが取れにくく、集中力の低下を引き起こします。

また、長時間、デジタル機器の画面を見続けているうちに、姿勢のゆがみや血流の滞りが生まれ、身体全体が不自然な緊張状態になります。これは、疲れを溜めやすい状況ともいえるため「集中力が保てない」「思考が鈍くなる」「ものごとに関心がなくなる」など、認知機能に影響が出る可能性も。

こうしたことから、デジタル機器を使用する際は、こまめに休憩を取り、使用時間を決めておくなど、適切な距離を保った付き合い方をする必要があるといえます。また、疲れや集中力の低下を感じたときには無理をせず自分に合ったケアを行うようにしましょう。

<疲労の回復、集中力の維持・改善に関連するアリナミン製薬の製品>

影響2:疲れ目の原因になる

デジタル機器の画面を凝視する状態が続くことは、疲れ目の原因になります。また、長時間、一定の距離で同じものを見続けると、目の周りの筋肉がこり固まってピントを合わせる力が弱まり、視力低下を招く恐れもあります。特にスマホの場合は、他のデジタル機器よりも画面と目との距離(視距離)が近くなりがちなため、ピント合わせを行う筋肉の負担はより大きいと考えられます。

こうした疲れ目や視力低下を防ぐためには、デジタル機器の画面との視距離を正しくすることが大切です。目安は40cm以上。この距離で見づらい場合には、必要に応じて適切な視力矯正をしましょう。

さらに、デジタル機器の使用後には疲れ目に効くエクササイズがおすすめ。1日に2〜3回ほど取り入れて、目の周りの筋肉のこりをほぐし、血行を促してあげましょう。

<疲れ目に効くエクササイズのやり方>

  • ・遠くと近くを交互に見る
  • ・左右・上下に眼球を動かす
  • ・目をぎゅっと閉じる
  • ・目頭や目の周りの骨の下を指でそっと押す(眼球を傷つけないよう注意してください)

疲れ目は一時的な目の疲れですが、慢性的に疲れ目が起こり、目以外の箇所に影響があらわれている状態は「眼精疲労」と呼ばれています。疲れ目の段階から慢性化しないよう対処することが必要です。

<眼精疲労にすぐれた効果をあらわすアリナミン製薬の製品>

影響3:睡眠の質が下がる

ベッドや布団に入ってから、スマホでSNSや漫画、ゲームをし続けることが習慣になっていませんか?寝る前の長時間のスマホ操作は、夜更かしの原因になるうえに、光の刺激によって目が覚めてしまい、眠りに入りづらい状態をつくるので注意が必要です。

質のよい睡眠を取るためには、就寝時間の1時間前からデジタル機器の使用を控えることが大切。手元にスマホがあるとつい操作してしまうので、「寝室にスマホを持ち込まない」「通知を切る」「寝る直前に返信をしない」などの対策を取りましょう。さらに、就寝前には室内の照明の明るさを抑えて快適な温度に整えるなど、睡眠に適した環境づくりも効果的です。睡眠には心身の休息や身体組織のメンテナンスなどさまざまな大切な役割があります。そしてそれらを日々、より適切にこなしていくうえでは身体にとって必要な栄養補給を意識することも重要です。

<今日の疲れを明日に持ち越したくない、明朝ちゃんとリスタートしたい人におすすめのアリナミン製薬の製品>

影響4:身体のこりや痛みを引き起こす

デジタル機器を使用するときの体勢も重要です。そもそも、デジタル機器を使用するシーンは、電車で移動するとき、職場のデスクにいるとき、家のソファで休むときなど、座っていたり横になっていたりすること(座位行動)が多いでしょう。この座位行動の時間があまりにも長いと身体に負担がかかり、肩や肘、首すじなどのつらいこりや、痛みの要因になります。

対処法として、定期的にデジタル機器の使用を中断し、立ち上がって軽く動くなど、できるだけ頻繁に座りっぱなしの状態を解消することが大切です。また、座り仕事が多い人は特に、積極的に身体を動かす時間をこまめにつくり、1日の身体活動量を増やすことも意識しましょう。

運動もおすすめですが、買い物、洗濯、掃除などの家事や、通勤手段に自転車や徒歩を取り入れることでも、手軽に身体活動量を増やすことができます。

<疲れた身体、肩のこり、重い腰の痛みなどのつらい症状緩和に関連するアリナミン製薬の製品>

影響5:不注意による事故やトラブルを招く

常にスマホをいじることが習慣になっている人は、注意散漫になって危険な事故やトラブルを招くことも。車の運転中にスマホなどの携帯電話を使用した場合では、使用しなかったときに比べて、死亡事故率が約2.4倍高かったという報告もあります。歩いているときも、スマホの画面を注視することで周囲の車や自転車、人とぶつかる、駅のホームに転落してしまうといった、不注意による事故やトラブルを招く危険性があります。

移動中は「デジタルデトックスの時間」として、下記のようにスマホの使用を控える工夫をしましょう。

<移動時間のスマホの使い方>

  • ・必要なときは安全な場所で立ち止まって操作する
  • ・運転中はドライブモードに設定して通知が来ないようにする

※車やバイクなどを運転中の「ながらスマホ」は道路交通法で禁止されています。絶対にやめましょう。

影響6:メンタル不調を引き起こす

デジタルの世界に没頭しすぎることでメンタル不調を引き起こすこともあります。

特に、SNSでは、他者の投稿を自分自身の状況と比較し「周りの人は幸せで充実した人生を送っている」というようなゆがんだ認識やうらやむ気持ちが生まれることがあります。SNSを使用する頻度が高い人ほど、こういったネガティブな感情が引き起こされる機会が多くなるため、うつ病になりやすいといわれています。また、SNSには日夜おびただしい量の情報が飛び交っており、絶えず情報に触れ続けることで知らず知らずのうちに心身が疲れていることも少なくありません。最近落ち込みやすいな、疲れやすいな、と感じるときはSNSの使用頻度を見直す機会かもしれません。

※ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略。登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービスのこと

ペンシルベニア大学の研究者による研究では、SNSの利用時間を3週間にわたって1日10分に制限したグループでは、孤独感と憂鬱ゆううつさが大きく改善したことがわかりました(Journal of Social and Clinical Psychology, 37(10), 751–768, 2018)。このような研究結果からも、SNSやデジタル機器の利用の仕方を見直すことが大切だといえるでしょう。

影響7:生活リズムが乱れ、健康を損なう

デジタル機器の使いすぎは、昼夜逆転、朝の起床困難、不規則な食事など生活習慣や生活リズムが乱れる原因になってしまいがちです。体調を崩しやすくなり、心身の健康を損なう可能性もあります。

スマホを短時間使用するつもりが、気づけば数時間経っていた…なんていうことは、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。長時間のインターネット利用はもちろん、最近ではゲームをするのにもスマホが使われることも多いでしょう。

ゲームやSNSを利用すること自体は悪いことではありません。しかし、ストレス発散やリラックス・息抜きのつもりで気軽に触れられる分、本来の生活に支障が出始める、優先すべきことがおろそかになるなど、うまく時間が使えなくなってしまうことがあります。

デジタル機器と適切に付き合えていないときがあるな、と感じたらデジタルデトックスでスマホを使いすぎている時間を短くできないか検討しましょう。趣味や運動、勉強の時間に充てるなど、今までスマホに充てていた時間を自分にとって能動的に時間を使いたくなることに活用してみてください。依存状態になってしまう前に、適切な対処を取ることが大切です。

デジタルとネット依存について

デジタル機器やインターネット利用を控えようとしても、「我慢できずに結局うまくいかない…」という人もいるかもしれません。ダメだとわかっていてもやめられないのは、いわゆる「依存」の状態。依存する対象によって「デジタル依存」「ネット依存」「スマホ依存」「ゲーム依存」などと呼ばれます。

依存状態のときに気をつけたいのが、日常生活に支障が出てもやめられなくなり、自分や周囲の人を困らせてしまうことです。依存の程度にもよりますが、昼夜逆転、朝の起床困難、不規則な食事などの生活習慣の乱れから、本人の体調不良を引き起こします。

さらには、仕事や学校を休みがちになる、課金などでお金を使いすぎる、家族との衝突が増えるなどの影響が出る可能性も考えられます。病的な依存状態が続くと、最悪の場合、犯罪に手を染めてしまったり、人間関係が破綻し社会生活が送れなくなることもあります。

自分だけでは対処が難しい場合も多く、依存から抜け出すには、家族や周囲の人、医療機関などの専門家による手助けも必要です。

スマホ依存

私たちの身近なデジタル機器であるスマホは依存する人が増え続けています。動画やコンテンツの視聴、漫画、スマホでのゲーム、SNSなど、使いすぎだと思いながらもやめられないのは、依存の兆候かもしれません。下記のチェックリストを使って、あなたのスマホ依存度を確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、依存の可能性が高いです。

  • ①スマホをお風呂や脱衣所にまで持っていく
  • ②トイレや信号待ちでスマホを見てしまう
  • ③起きたらスマホをチェックする
  • ④気づくと、思ったより長い時間スマホを見ている
  • ⑤家族や友人との会話より、スマホを見るほうを優先する
  • ⑥通知が来ると、何かに取り組んでいるときでも中断してチェックする
  • ⑦深夜まで、睡眠時間を削ってスマホを見ているときがある
  • ⑧スマホを見る時間を減らさなくてはいけないと考えている

扶桑社新書, 2023「悪習慣の罠」山下あきこ(著)

「不安やストレスの多い現実から逃避したい」という気持ちからネットにハマってしまう人や、一人暮らしによる寂しさから始めたSNSや出会い系アプリがやめられなくなる人など、スマホ依存のきっかけはさまざま。デジタルデトックスをうまく取り入れながら、早めに対処することを心がけましょう。

デジタルデトックスをきっかけに生活習慣の見直しを!

便利なデジタル機器やインターネットはもはや現代社会の必需品。使用機会が多いものだからこそ「必要なときだけ使う」という意識を持ち、デジタルデトックスに時間を割いてみてください。また、日々のデジタル機器の使用は現代人にとって避けては通れないので、疲れのサイン・不調を感じたらすぐに対処しましょう。

デジタルデトックスを意識することで、心身の不調に目を向けて健康的な生活を取り戻し、自分の時間や休息の在り方を見直すきっかけにもなるはずです。知らず知らずのうちに依存状態になってしまわないよう、デジタル機器との距離を見つめ直し、アナログな体験を通して見えてくる発見や楽しさを探してみるのもよいのではないでしょうか。

<監修者(山下あきこ)サイト>
<参考文献>
  • 共栄書房, 2022「こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる」山下あきこ(著)
  • 扶桑社新書, 2023「悪習慣の罠」山下あきこ(著)
  • 朝日新書, 2020「スマホ依存から脳を守る」中山秀紀 (著)
  • 内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン「やめよう!運転中の『ながらスマホ』違反すると一発免停も!」
  • 文部科学省「行動嗜癖を知っていますか?」
  • 環境情報科学論文集, 2019「インターネット利用が新型うつ傾向へ及ぼす悪影響と予防策の縦断研究」坂部 創一,山崎 秀夫(著)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/ceispapers/ceis33/0/ceis33_139/_pdf/-char/ja
「デジタルデトックス」の関連情報はこちら

製品ラインナップをみる