更新日:2025年12月24日
腰を曲げると痛い原因は?摂取したい栄養素や日常生活で気をつけるべきポイントを紹介

腰を曲げると痛いと感じた経験はありませんか。腰痛は、日常生活の中で多くの人が経験する症状の一つです。その原因は、筋肉の凝りや疲労の他、椎間板(ついかんばん)や神経、関節に関わる疾患など、多岐に亘ります。放置すると痛みが慢性化し、仕事や家事、趣味などにも影響が出る場合もあるため、早めの対処が重要です。この記事では、腰を曲げると痛いときの代表的な原因や疾患、家庭でできるストレッチ、病院に行くべきサインについてわかりやすく解説します。
監修
竹谷内 康修 先生
竹谷内医院 院長
INDEX
腰を曲げると痛いときの原因は?
腰痛があるとき、一つの原因が痛みを引き起こしていることは少なく、筋肉や神経の疲労、脊椎(背骨)の変形、血管や内臓などの病気、ストレスなど複数の原因が重なり合って、痛みを強めていることが多いです。体を動かしたときだけ痛みがある場合は、腰の関節や筋肉などが原因である可能性が高く、大きな危険はないと考えられるでしょう。しかし、慢性的な痛みや足のしびれをともなう場合など、医療機関の受診が必要な疾患が背景にあることも。ここでは、前かがみの場合と後ろに反らした場合に分けて、腰を曲げると痛いときの原因を解説します。
前かがみになると腰が痛い場合
前かがみになる(前屈する)と腰が痛い場合は、背骨の前方にある椎間板や椎体(ついたい)に原因があることが多いです。代表的な疾患には、下記があります。

・腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間でクッションのような役割を果たしている「椎間板」という組織の中にあるゼリー状の部分が外に飛び出し、神経を圧迫する病気です。腰やお尻が痛み、足に力が入りにくいのが特徴で、太ももからふくらはぎにかけて痛みやしびれが生じたり、重いものを持つときに痛んだりすることがあります。
・脊椎椎体(せきついついたい)骨折
椎体骨折とは、背骨の圧迫骨折のことです。椎体骨折にはいくつかの種類があり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)によるものや、転移性骨腫瘍(てんいせいこつしゅよう)による骨折、強い衝撃により生じる骨折などがあります。
特に高齢者の場合、骨粗鬆症によって骨がもろくなっているため、わずかな衝撃でも骨折を起こすことがあります。このような骨折は胸椎と腰椎の境目に生じやすく、痛みが軽度で気づきにくいこともあります。
腰を後ろに反らすと痛い場合
腰を後ろに反らすと痛い場合は、椎骨の後方にある椎間関節や椎弓(ついきゅう)、棘突起(きょくとっき)といった部分に原因があると考えられます。代表的な疾患には、下記があります。

・腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管(神経の通り道)が加齢などで狭くなり、神経を圧迫する病気です。脚の痛みやしびれ感、麻痺が生じる他、排尿後にまだ尿が出しきれない感じ、便秘などの症状が生じることもあります。
人は立っているだけでも自然と腰が少し反った姿勢になるため、脊柱管が狭まり、神経が圧迫されやすくなります。そのため立つ、歩くなどの動作により悪化し、長距離を続けて歩けなくなることも。歩行中に足のしびれや痛みが出て、少し前かがみになると症状が和らぐのも大きな特徴です。
・腰椎分離症・分離すべり症
腰椎分離症は、10代の体が柔らかい時期に、ジャンプや腰をひねる動きを繰り返すことで、腰椎の後方部分に亀裂が入ってしまう病気です。この分離した骨がずれてしまった状態を「分離すべり症」と呼びます。腰痛に加えて、お尻や太ももの痛みを感じる場合もあります。
ぎっくり腰(急性腰痛)とは?
ぎっくり腰は、何かの拍子に急に発症した激しい腰痛のことで、病名や診断名ではありません。重いものを持ち上げるなどの大きい負荷が腰にかかるときだけでなく、立ち上がったり、体をひねったりしたタイミングで発症することがあります。
発症の原因はさまざまですが、腰椎や骨盤の関節に許容以上の力がかかることで、腰を支える筋肉やすじ(腱、靱帯)などの柔らかい組織が損傷する場合が多いです。デスクワークの悪い姿勢などの生活習慣がもとになり、長い時間をかけて少しずつ椎間板や椎間関節、靭帯、筋肉の損傷が蓄積し、何気ない動作で発症することもあります。
腰を曲げると痛いときのセルフケアと対処法
ここでは、腰を曲げると痛いときのセルフケアと対処法を紹介します。
安静にする

痛みが強いときは無理をせず、腰に負担の少ない姿勢で安静にしましょう。体を起こしていると負担がかかる場合は、横になって上半身の重さが腰にかからないようにし、神経が圧迫されない時間をつくるのがおすすめです。しかし、あまり長期間寝ていると足腰が衰えてしまうため、安静にする期間は長くても3日以内を目安にしてください。
ぎっくり腰など、急性の強い痛みの場合は、冷やすことで患部の炎症を抑えたり、痛みを伝える神経の働きを鈍らせることができ、症状がやわらぐことがあります。慢性的な症状の場合は、入浴したり使い捨てカイロなどで温めたりすると、筋肉がゆるんで血行が促進され、症状の軽減が期待できます。
市販薬を活用する
痛みが強い場合は、市販薬の活用もおすすめです。
・湿布
湿布を使う場合は冷湿布と温湿布がありますが、急性的に痛みが出始めたときは炎症を抑えるために冷湿布を選ぶのがよいでしょう。一方、慢性的に痛みが出ているときは血行を改善して痛みを緩和するために、温湿布を使うと痛みが緩和されやすいと言われています。冷湿布も温湿布も消炎鎮痛剤の成分が入っているので、基本的にはどちらを選んでも構いません。
・鎮痛剤
痛みが強い場合は、痛みを直接的に抑える鎮痛剤の服用も有効です。胃が弱い、腎臓の機能が悪い、気管支喘息があるなど鎮痛薬を使用しづらい場合を除いて、我慢せず痛みが楽になるまでのみ続けるほうが、腰痛が慢性化しにくいと言われています。
・ビタミン剤
鎮痛剤のように痛みを直接的に抑える効果はありませんが、筋肉や神経の働きに作用して痛みを緩和する効果が期待できるビタミン剤を活用するのもよいでしょう。腰痛を緩和したいときに摂取すべきビタミンとしては、ビタミンB群やビタミンEが挙げられます。
ビタミンB1は、神経細胞でのエネルギー産生に関与しているため、不足すると神経伝達がうまく機能しなくなり、腰痛などの痛みが現れることがあります。さらにビタミンB1には糖質の代謝をサポートする働きもあり、エネルギー産生に働き疲労の回復を早めるとも考えられています。そのためビタミンB1が不足しエネルギーが十分に作られなくなると、腰痛や筋肉痛につながることも。
また、ビタミンB6やビタミンB12は“神経ビタミン”とも言われていて、神経の機能維持に関わっています。さらにビタミンEは末梢の血液循環に関わり、血行促進に働くことで腰痛を緩和します。
腰痛に悩んでいる方は、これらのビタミンが配合されているビタミン剤を服用するのも一つの手です。特にビタミンB群は水に溶けやすい水溶性ビタミンであり、食品から摂取しても体内に吸収されにくいという特徴があります。そのため、ビタミンB1をより吸収しやすい形にしたビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」を含むビタミン剤を選ぶとよいでしょう。
- <フルスルチアミン(ビタミンB1誘導体)を配合し、腰痛の緩和におすすめのアリナミン製品>
軽いストレッチを行う
腰痛がある人は、腰の筋肉が凝り固まっていることが多いため、筋肉を伸ばすために、軽いストレッチを行うのも一つの方法です。
ストレッチをするときは、呼吸をとめず、ゆっくりとした動作で無理のない範囲で行うように心がけましょう。痛みが強かったり、お尻から太ももにかけてしびれがある場合は中止し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
腰痛緩和におすすめのストレッチとしては、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)や腸腰筋(ちょうようきん)、大殿筋(だいでんきん)、腰方形筋(ようほうけいきん)、脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)などをやさしく伸ばす方法があります。これらのストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、腰への負担を軽減する効果が期待できます。
ここでは、一人で気軽にできるストレッチを2つ紹介しますので、ぜひ日常生活の中で取り入れてみてください。
・腰を前に曲げる動作が辛い場合「猫のポーズ」

①四つん這いの姿勢から、胸をゆっくり床に近づける
このとき、お尻の高さは変えずにキープします。猫が背伸びをするようなイメージで、背中を気持ちよく伸ばしましょう。
②胸が床についたら、背中から腰にかけて反らすように意識して伸ばす
腕は肘を軽く曲げて、頭の横に置きましょう。顔は左右どちらか向きやすい方に回して、首まわりをリラックスさせましょう。

・腰を後ろに反らす動作が辛い場合「膝抱え体操」

①横向きに寝て両ひざを曲げる
頭の下に枕やクッションを敷いても問題ありません。無理のない高さに調整しましょう。
②両手で両ひざを抱えて胸に引き寄せる
股関節が硬い場合は、無理に胸まで引き寄せる必要はありません。できる範囲でひざを引き寄せましょう。
③上半身を丸めて胸をひざに近づける(イラスト左側の状態)
脊柱管が広がるよう、腰のあたりをしっかり丸めるイメージで行います。
④上半身を丸めたまま、両手を離して力を抜く(イラスト右側の状態)
腰のあたりのカーブが緩まないよう意識しながら、体をリラックスさせます。この状態を2~3分キープしましょう。

- <関連記事>
つらい症状が長引く場合は医療機関を受診する

脚やお尻にしびれがある場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の疑いがあるため、整形外科などの医療機関を受診しましょう。
腰を動かさなくじっとしていても痛い、横になっていても痛みが楽にならない、発熱が続いている、体調がすぐれない(冷や汗、動悸、倦怠感など)、市販の鎮痛剤を5~6回ほど服用してもよくならない場合は、脊椎の感染や腫瘍、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)など、命にもかかわりうる危険な疾患の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。
腰痛を予防するための生活習慣のポイント
腰痛は、日頃の生活習慣が影響していることも多いもの。ここでは、腰痛を予防するために気をつけたいポイントを紹介します。
腰に負担をかけない姿勢や動作を心がける
腰痛は多くの場合、筋肉や靭帯、関節、椎間板などへの負担が重なって引き起こされることが多いです。
洗濯・掃除といった家事や、運転、運搬作業など、日常生活の中で前かがみになったり、重いものを持ったりする機会が多い場合は、知らないうちに腰への負担が蓄積されていることも。また、よくない姿勢を続けることや、たとえよい姿勢でも同じ姿勢を長時間続けてしまうことも、腰に過剰な負荷をかける原因に。腰を守るためには、背中や腰の筋肉に負担をかけない姿勢を取ることが大切です。ここでは、日常生活の中で気をつけたいポイントを紹介します。
・デスクワークでの姿勢を工夫する
デスクワークでは、猫背にならないよう、正しい姿勢を意識しましょう。お尻は背もたれに密着するように座り、背筋を伸ばし、軽くあごを引きます。
背もたれにしっかりよりかかり、両足が床についた状態になるよう、椅子の高さを調整します。足を組んだりすると姿勢が崩れる原因になるため、極力避けるようにしましょう。長時間作業を行う場合は、椅子の背もたれの腰部分にクッションやタオルを固定するなどして、腰のカーブを支える工夫をするとよいでしょう。また30分から1時間に1回は立ち上がって座り直すか、歩き回るようにするのがおすすめです。
・腰に負担をかけない起き上がり方をする
起床時にあお向けの状態からまっすぐ体を起こすと、腰に大きな負担がかかって痛めてしまう恐れがあります。体を起こす際は、下記のポイントに気をつけるようにしましょう。

1.腰をねじらないように気をつけながら、膝と股関節を深く折り曲げて体をコンパクトに横向きの姿勢になります。
2.床に両手と片ひじをつき、腕の力を使って上半身を起こします。このとき腹筋に軽く力を入れると、胸と骨盤の間にある腰をねじらずに起きることができます。
3.2の姿勢をキープしたまま、腕の力で上半身をゆっくりと起こしていきます。
・物を持ち上げるときはお尻を後ろに引く姿勢を取る
前かがみで物を持ち上げる動作は、どうしても腰に負担がかかりやすくなります。腰痛予防のためには、お尻を後ろに引く姿勢を意識しましょう。まずは胸を軽く張り、肩甲骨を寄せたまま、股関節から体を前に倒します。背中は丸めず、お尻を後ろに突き出すイメージでかがみましょう。この姿勢のまま持ち上げる物を体に近づけ、膝を曲げて持ち上げると、腰への負担が軽減されます。
・低いところでの作業は膝を曲げる
低いところで作業するときは、膝を曲げて腰を落とし、背筋をできるだけまっすぐに保つことが大切です。このとき、背中を丸めずに、少し腰を反らして腰の自然なカーブを意識すると、腰にかかる負担を減らすことができます。持ち上げる動作も、膝を曲げた姿勢から伸ばす筋力を使うことを心がけ、上体を起こす力だけで持ち上げないように注意しましょう。
ストレスを溜めない

心理的なストレスも、実は腰痛と深く関係しています。例えば、人間関係の悩みがあったり、仕事や家事に対する周囲からのサポートが不足していたりといった心理的ストレスが積み重なると、それが脳の働きに影響を及ぼし、体にさまざまなストレス反応が現れるようになります。睡眠障害や疲労感、頭痛、下痢・便秘・吐き気など胃腸の不調、息苦しさ・動悸などが代表的なストレス反応ですが、腰痛や肩こりとして現れることもあります。
また心理的ストレスは交感神経を優位にし、体を緊張状態にします。体が緊張すると、筋肉が無意識のうちに収縮します。こうした状態が長時間続くと、筋肉が疲労し、特に腰の筋肉に痛みが生じやすくなるのです。
疲労やストレスが蓄積していると感じたら、無理をせずにしっかりと休養をとりましょう。もし家事や仕事などの負担が大きくなっている場合には、家族や職場に相談し、周囲のサポートを得ることも大切です。
また腰痛になると、「このまま悪化するのでは」「もう治らないのでは」といった不安や恐怖を感じ、活動を制限したり、コルセットを常につけたりと、腰を必要以上に保護してしまうことがあります。しかしこうした行動は、かえって回復を妨げることがあると報告されています。腰痛があっても心配しすぎず、明るい気持ちで生活することが大切です。
栄養バランスのとれた食生活を心がける

腰痛を予防するためには、栄養バランスのよい食事を規則正しく摂取することが大切です。特に肥満は背骨への負担を増やし、椎間板ヘルニアのリスクを高めると言われています。脂質や糖質の摂り過ぎは、カロリーの過剰摂取につながり、肥満になりやすいため、注意しましょう。
また日頃の悪い姿勢などによって、筋肉の凝りや疲労が蓄積し、腰痛が生じることも多いです。疲労によって傷ついた筋肉を修復するためには、エネルギー源となる栄養素の他、エネルギー代謝に必要なビタミンの摂取が欠かせません。ビタミンB1は豚肉や玄米に、ビタミンB6は魚やバナナに、ビタミンB12は貝類やレバーに、ビタミンEはナッツやかぼちゃに多く含まれています。腰痛持ちの人や、スポーツやデスクワーク、運搬作業などで日常的に腰に負荷がかかることが多い人は、これらの栄養素を意識して摂取しましょう。食事から摂取するのが難しい場合はビタミン剤を活用するのも一つの手です。
腰を曲げると痛いときは、正しい知識と習慣で改善を目指そう

腰を曲げたときの痛みは、普段の姿勢や動作の影響により、腰の特定の部位に負荷がかかることで生じることが多いです。腰に負荷がかかる状態が続くと、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった疾患につながることも。腰の疲労を蓄積しないようにこまめにストレッチを行ったり、腰痛を和らげる働きのあるビタミンを摂取しましょう。食生活が乱れがちな人は、ビタミン剤を活用するのもおすすめです。ただし、しびれの症状があったり、痛みが強い場合は医療機関を受診するようにしてください。無理のない範囲で生活習慣を見直し、腰痛の改善を目指しましょう。
- <参考文献>
- 竹谷内康修『名医が教える自分で治す脊柱管狭窄症改善トレ』(徳間書店,2024年)
- 厚生労働省「産業保健スタッフのための新腰痛対策マニュアル」
- 厚生労働省「腰痛対策」







