更新日:2023年6月26日

食欲がないときの栄養補給の方法とは?食欲不振時に摂りたい栄養や食べ物を紹介

食欲がないとき、どのように栄養補給を行っていますか?

栄養の摂取は、人間が生きるために欠かせない行為です。それでも、食欲が出ないときもありますよね。ただ、そもそも食欲がないということは、体に何らかの不調が起きているサインかもしれません。

ここでは、食欲がないときに試したい栄養補給の方法や摂りたい栄養・食べ物を紹介するのはもちろん、あわせて知っておきたい、食欲がなくなる原因、食欲を出すためにできる対策を紹介します。

監修

谷口 英喜 先生

済生会横浜市東部病院 患者支援センター長、東京医療保健大学大学院 客員教授

INDEX

食欲がなくなる原因は?

そもそも食欲がないってどういうこと?

「食欲がない」状態は、一般的に、空腹感がないために「食べたい」という気持ちが起こらない場合を指します。ただ、食べたいという気持ちはあるのに食べられない、食べられたとしても少量になってしまうということもあり、両者の原因は異なります。

いずれにしても、食べることは人生の楽しみのひとつ。食べられないという状態では、生活の質(QOL)が低下してしまいます。また、食べられない状態が長引くと、栄養失調をはじめ、いろいろな病気のリスクが高くなってきてしまいます。

「食べたくない」場合の原因

食べたいという気持ちが起こらないときの原因はさまざまです。

  • ・疲労
  • ・精神的ストレス
  • ・生活習慣の乱れ
  • ・夏バテ
  • ・食事をするときの環境の問題
  • ・加齢
  • ・薬の副作用
  • ・妊娠
  • ・何らかの病気(感染症による味覚・嗅覚の低下、消化器系の病気や甲状腺機能が低下する病気の症状による食欲不振など)

など

なお、高齢者では何かの病気にかかったときに、明確な症状が現れにくい傾向があり、食欲低下が病気のサインになることもあります。

「食べられない」場合の原因

決して食べたくないというわけではないのに、あまり食べられないという場合は、消化器や口の中に、何か原因となる問題が起きているのかもしれません。

・何らかの病気

胃もたれや吐き気などの消化器関連の病気の症状、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器の病気や心不全などによる食事中の呼吸苦、胃がんなどで胃を切除したことにより胃の容量が低下しているといったことで、食欲があっても食べられなくなることがあります。

・口の中の状態が良くない

口の中の状態が良くないことは、食べられるものの種類や量が制限されるため、食事の楽しみが減る、食事をストレスに感じてしまうなどのことから、食欲の低下につながると考えられます。

例えば、歯周病などのために歯がぐらぐらしている、歯が痛い、口内炎がある、薬の副作用や高齢のために唾液が減り、口の中が乾燥しているといったことです。また、飲み込む力の低下や食べ物が誤って気管に入ってしまうことなども食欲が落ちる原因として挙げられます。

食欲がないときの栄養補給の方法

食欲がないときでも、栄養を補給することは私たちが生きていく上で欠かせません。「食欲が湧かなくてなかなか栄養を摂れない」「体がだるくて食べる気が起きない」そんな人に試してほしい、栄養補給の方法をご紹介します。

調理方法を工夫する

食欲がないとき、食事からの栄養補給の方法として、まず実践したいのが調理方法を工夫してみることです。下記の方法を実践してみてください。

・香辛料や柑橘類などで味にアクセントをつける

香辛料や柑橘類の調味料などを使用し、味覚を刺激することで食欲を増進するのも良い方法のひとつです。

香辛料は食欲を刺激し、酢の物やヨーグルトなどの酸味のある食べ物は、胃酸の分泌を刺激して食欲を高めます。その他、大根おろしや果汁などにも、同じような効果が期待できます。ニンニクや梅干しなどを少し加えて、“味変”してみるのもおすすめです。

・塩分制限が必要ない人は、塩味を生かす

高血圧などの心配がない人は、塩を少し多めに使ったり、濃い目の味付けにしたりして、味にメリハリをつけてみるのも良いでしょう。

・食べるときには適温で

料理は、体温との温度差が25度以上あるときにおいしく感じるといわれます。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷やして食べるようにしましょう。ただし、熱すぎたり冷たすぎたりすると、舌神経が麻痺し味を感じにくくなりますので、おいしいと感じる温度になるよう工夫をしてみましょう。

・口当たりを良くする

なめこ、オクラ、とろろ、納豆、もずくなどの「ねばねば食材」を使った、のど越しの良い一品をレシピに加えてみましょう。また、豆腐や卵豆腐なども、少量で栄養価の高い食べ物です。これらの口当たりの良い食品は、食べたいのにのどが痛くて食べられないというときにも役立ちます。

・汁物は具だくさんに

食べ物はあまり食べたくないけど、飲み物なら大丈夫そうという場合は、具だくさんのスープや汁物をつくりましょう。スープと一緒なら食べ物がのどを通りやすくなり、水分補給にもなります。

・食材を小さめにカットする

肉や野菜などは一口サイズにカットしてみてください。また、野菜は火を通すことで、ボリュームが減り、食べやすくなります。

・白米を混ぜごはんや炊き込みごはんにする

白米に他の食材を混ぜることで、おかずも一緒に食べることができるため、栄養が偏るのを抑えられます。

食べ方や食べるものを工夫する

食欲低下時、調理方法の次に試したいのが食べ方や食べるものを工夫することです。下記を実践する際に、栄養バランスが気になるところですが、まずは「少しでも食べる」ことを意識してやってみてください。

・胃腸を休ませる、少しずつ食べる

胃腸を休ませるために、数日程度なら無理に食べないというのも選択肢のひとつです。1食あたりの摂取カロリーを抑え、少量ずつ、回数を増やして食べるようにするのも良いでしょう。食欲があまりなくても少しなら食べられるでしょうし、その回数を増やせば、1日に食べる量を一定程度は確保できます。

・好きなものを食べる

好きな食べ物だけを食べるという、いわゆる「偏食」は、もちろん良いことではありません。ただし、食欲が改善するまでの間だけなら、食べないよりは食べたいと思うものを食べるのも可です。例えば、ごはんが進まないときには、好きなおかずを先に食べましょう。

・少量でも栄養価の高いものを摂る

量を多く食べられないときには、少量でも栄養価の高い食品を選んで食べるようにしましょう。栄養価が高いとは、5大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)がバランスよく含まれていて、とくにタンパク質に関してはアミノ酸スコアが高い(体内で合成できない必須アミノ酸が豊富)という特徴がある食品のこと。牛乳や卵などが良い例です。また、大豆製品やヨーグルトなども栄養価が高い食品といえます。

それらを使って、例えば、卵がゆ、煮込みうどん、湯豆腐、ポタージュなどの消化の良いメニューを中心に、なるべく摂取量を増やしてください。もしご自身でお菓子をつくれるなら、牛乳や卵を使ったお菓子をつくって食べるのも良い方法です。

栄養補助食品や医薬部外品を活用する

食欲不振が続くときには、栄養補助食品や医薬部外品を試してみるのも良いでしょう。手軽に口にできるので、食欲がなくて食べられないときの栄養補給におすすめです。

また、先ほど「食欲がないときには食べられるものだけを食べるのも可」といいましたが、その方法で生じる栄養バランスの偏りを、栄養補助食品や医薬部外品などで補うことができます。手軽なエネルギー補給方法としては、コンビニなどでも売っているゼリー飲料などを取り入れてみると良いかもしれません。ゼリー状であれば、消化・吸収も比較的早く、のどを通りやすいため、食欲がないときでも栄養補給がしやすい製品といえます。最近では、医薬部外品のパウチ商品も発売されておりコンビニなどでも買うことができます。

その他、もし自分の食欲不振の原因が、胃もたれや便秘などの消化器症状によるものだとわかっている場合は、それらに対する市販薬を試してみましょう。

食欲がないときでも摂取したい栄養素

本来であればバランスの良い食事をして健康に生活するのが一番です。しかし今回は、食欲がないときでも、これは摂取した方が良いという栄養素をピックアップしてご紹介します。

炭水化物

炭水化物は、私たちが活動する上で必要な、エネルギー源の中心となる主要栄養素であるため、食欲がないときでも意識して摂りたい栄養素です。他の主要栄養素(タンパク質と脂質)もエネルギー源になり得ますが、利用する過程で肝臓や腎臓に負担が生じます。

・炭水化物を摂るためにできる食事の工夫

お茶漬けやそば、そうめんなどの炭水化物は、食欲があまりないときにでも比較的のどを通りやすい食品なので、夏バテで食欲がないときなどにもおすすめです。

ただし、それらは炭水化物以外の栄養素をあまり含んでいないことが注意点です。また、炭水化物をエネルギー源として利用するにはビタミンB1が必要で、炭水化物ばかり食べているとビタミンB1が不足してしまいます。ビタミンB1と一緒に摂るようにすると良いでしょう。

タンパク質

タンパク質は私たちの筋肉・臓器・皮膚・毛髪などを構成するのに必要な栄養素です。タンパク質の摂取量が不足していると、体力が低下したり、疲れやすくなってきたりするため、食欲がないときでも摂取を心掛けると良いでしょう。

・タンパク質を摂るためにできる食事の工夫

タンパク質を摂るためにできる工夫は、肉類や大豆製品をできるだけ摂取することです。また、牛乳や卵などの乳製品を、そのまま口にしても良いですし、料理やお菓子をつくる際にできるだけ使用するようにすると良いでしょう。

脂質

脂質は、エネルギー(カロリー)の補給という点で、最もすぐれた栄養素です。炭水化物やタンパク質が1gあたり約4kcalであるのに対して、脂質は約9kcalもあるためです。少量でカロリーを確保できます。

ただ、ふだん健康な人なら一定量の脂肪を蓄えているので、食欲不振が短期間であれば脂質の摂取不足によるカロリー不足の心配はほとんどありません。しかし、高齢者などふだんの食事量が少ない方は、少量でカロリーがある脂質もしっかり摂取することをおすすめします。

・脂質を摂るためにできる食事の工夫

脂質を摂るために、味噌汁やスープなどの汁物に、ごま油やバターなどを加えたり、おかずにマヨネーズやすりごまをトッピングしたりしてみましょう。サラダのドレッシングは、カロリー補給という点ではノンオイルタイプでないものの方が適しています。

ビタミンB群

ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は、食欲がないときに欠乏のリスクが生じやすい栄養素です。体内に微量しかなく、なかでも水溶性ビタミンのビタミンB群やCは、体内に蓄えることができないため、食欲がないときでも意識して摂取する必要があります。

ビタミンB群のうちビタミンB1が不足していると、主要栄養素の炭水化物を摂っても、エネルギーを十分につくり出すことができなくなってしまいます。ビタミンB1は、豚肉や大豆製品、玄米などに多く含まれているのですが、まずはこれらを十分摂ることが重要です。

また、ニンニク・ネギ・ニラなどに含まれている、ビタミンB1の吸収を良くする「アリシン」という成分と一緒に食べるようにして、ビタミンB1を効率良く摂取しましょう。

なお、前述の通り、ビタミンB1不足のために食欲が落ちることもあります。食欲の低下を改善するためにも、下記で紹介するビタミンB群が含まれている食べ物を摂取してみてください。

・ビタミンB群を摂るためにできる食事の工夫

ビタミンB群には、ビタミンB1以外に、B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンがあります。これらは互いに助け合って機能を発揮するので、バランスよく摂取することも必要です。

ビタミンB群は主に肉類やレバーなどに豊富に含まれています。また、魚介類では、さば、かつおなどに多く、その他に、ごま、玄米、アーモンド、モロヘイヤ、アボカドなどが挙げられます。これらの食材を摂るようにしましょう。食事から毎日摂取するのが難しい場合、サプリメントなどを使用して栄養を補うのも摂取方法のひとつです。

ビタミンC

ビタミンCは体内でつくることができず、蓄積することも難しいため、食欲がないときでも摂取すべき栄養素です。

ビタミンCが欠乏すると、コラーゲンが生成されないために血管がもろくなり、出血を起こす壊血病になる可能性が高まったり、イライラ・貧血・筋肉減少などの症状を引き起こしたりします。

・ビタミンCを摂るためにできる食事の工夫

ビタミンCは、果実や野菜類、いも類などに豊富です。ただ、ビタミンCは調理時の洗浄や加熱による損失が大きいビタミンとして知られています。なるべく生に近い状態で食べると良いでしょう。ただし、いも類のビタミンCはでんぷんにより保護されているため、調理後にもほとんど分解されずに残ります。

水分(飲み物)

水分は「栄養素」ではありませんが、食欲がないときにまず注意したいのが脱水です。食べられないときには、本来食品とともに自然に体内に入る量の水分を、飲み物として摂取しないと脱水になってしまいます。そのため、水やお茶を積極的に飲むようにしてください。

食事では、味噌汁やスープなどを多めに口にすることで、水分と栄養素を同時に摂ることができます。また、野菜は重量の85%、果物は80~90%が水分のため、それらの摂取でビタミンなどの微量栄養素と水分を同時に補給できます。

食欲を出すためにできる習慣

ここまで、「食欲がないとき」にできる栄養補給の方法や摂取すべき栄養素を解説してきました。ここからは、食欲がないときにできる応急措置のような方法ではなく、食欲を出すためにできる生活習慣や食習慣をご紹介。ふだんの生活スタイルや心理的な要因にも左右されてしまう食欲を、高めていくためのポイントを説明していきます。

適度な運動、十分な休養と睡眠、規則正しい生活

運動量が不足すると、それだけ消費されるエネルギー量が減るため、食欲も低下しやすくなります。

また、睡眠不足や睡眠の質が良くないことや過労も、食欲低下に関係していることがあります。健康づくりは規則正しい生活から。食欲低下が気になったら、生活が乱れていないか振り返ってみましょう。

タバコ・アルコールを控える

喫煙や飲酒は食欲低下につながっているため、なるべく控えると良いでしょう。

タバコを吸っている人が禁煙すると、食事がおいしくなり食欲が出てくることがあります。

また、アルコールは少量であれば胃酸の分泌を促して食欲を刺激してくれますが、飲みすぎると反対に食欲が低下することがあります。

ストレス・イライラを解消する

なるべくストレスやイライラを解消して、リラックスして食卓につくようにしましょう。ストレスが続くと、食欲の信号が発生しなくなってしまうことがあるためです。例えば、入浴してさっぱりしてから食事をしたり、少量の食前酒を飲んだりするのも良いでしょう。

自律神経のバランスを整える

自律神経のバランスが乱れることによって食欲が低下してしまうこともあります。

ここまでに取り上げた、運動不足、睡眠不足、過労、ストレスなどは、それらが直接的に食欲を低下させるとともに、自律神経のバランスを乱してしまいがちです。自律神経を整えるためにも、生活が不規則になっていないか確認し、改善できることは改めるようにしてください。

食事をするときの環境を改善する

食事をする部屋の清潔感を大切にしましょう。照明も明るい暖色系にすると食欲が出やすいといわれています。食卓にランチョンマットを敷いたり、音楽を流したりしてみて気分を変えてみるのも良いでしょう。

また、一人暮らしの人は難しいかもしれませんが、なるべく「孤食」を避けて、他の人と一緒に食事を楽しむ機会を増やすようにしてください。

盛り付けを工夫する

食欲がないときには、盛り付けを工夫してみるのも良いでしょう。食事は「目で楽しむ」という要素も大切です。色とりどりの料理にすることで、食欲が刺激されます。

また、盛り付けの際に大きなお皿を使うと、実際の量は同じでもボリューム感が少なくなり、食欲の低下が生じにくいといわれています。

よく噛んで食べる

よく噛むことは、消化の助けとなります。日頃からよく噛んで食事をしましょう。

それに加えて、日本人の主食である炭水化物を多く含む食品は、よく噛んだ方が甘味が出ておいしくなります。

消化を良くする姿勢やツボ刺激

食欲を出すために、消化を良くする姿勢やツボ刺激もおすすめです。

長時間座っていると前屈気味になり、内臓が圧迫されて胃腸の働きが鈍ってしまいます。そういった理由から食欲が低下しがちになるため、座った状態での作業が続くときには、時々胸を反らしながら深呼吸をすると良いでしょう。そうすると胃の周りの緊張がほぐれます。

また、食欲不振に胃下垂が関係している場合には、腹筋を鍛えると良いといわれています。

その他、食欲不振に良いとされる「肝兪(かんゆ)」、「脾兪(ひゆ)」、「胃兪(いゆ)」といった、背中にあるツボを刺激してもらうのも良いかもしれません。

食欲がないときでもできる限りの栄養補給を

食欲がないときでも、私たちが生活していくために、エネルギー源や体を構成する成分となる栄養を補給することは必要不可欠です。

十分な栄養補給のためには、食欲を回復させることが一番の近道となりますが、食欲が湧かないときもあるでしょう。食欲が低下してしまったときには、栄養補助食品や医薬部外品、のど越しの良い食材を活用して、ご紹介した栄養素をなるべく摂取するようにするなど、食欲を出すためにできることを実行してみてください。

もし、思い当たる食欲低下の原因が長引きそうな場合や、食欲低下の原因が思い当たらない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性も考えられますので医療機関で受診をするようにしましょう。

<参考文献>
  • 栄養と料理87(12)「食欲不振」,2021
  • Care 15(3)「食欲のメカニズムを探る!」,2022
  • 主婦と生活社「食べて治す医学大事典」,2018

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