更新日:2024年2月26日

ビタミンB2の働きとは?多く含まれる食べ物や1日に必要な摂取量も解説

ビタミンB2は1930年代に、体の成長に関連する微量栄養素として発見されました。当初は英語の‘growth’(成長)の頭文字をとって「ビタミンG」と呼ばれたり、「発育ビタミン」と呼ばれたりしていたようです。ところがその後の研究によって、発育にかかわるだけでなく、エネルギー産生や体に有害な活性酸素の除去などにも関係していることが解明されてきました。必要量はわずかでも、不足すると体調不良につながりやすいビタミンB2。その働きや摂り方のコツをご紹介します。

監修

福渡 努 先生

滋賀県立大学 人間文化学研究院 教授 日本ビタミン学会 幹事 ビタミンB研究委員会 委員

INDEX

ビタミンB2とは?

ビタミンは摂取してもそれがエネルギー源になるわけではなく、また血液や筋肉などの体を構成する材料にもなりません。しかし、健康を保つためには欠かせない微量栄養素であり、一部を除いて体内では作ることができないため、食事などから摂り入れなければなりません。

多くのビタミンのなかで、ビタミンB群はエネルギー産生を助けるように働き、エネルギーを多く使うような状況では必要量が増加します。ビタミンB2もエネルギー産生に必要なビタミンであり、日本人が不足しがちな栄養素の一つでもあります。

なお、ビタミンは、水に溶ける水溶性ビタミンと水に溶けない脂溶性ビタミンに大別されます。ビタミンB2を含むビタミンB群は前者の水溶性ビタミンです。水溶性ビタミンは一度に大量に摂ったとしても、体内には一定量しか溜めることができないため、毎日適量を摂取し続ける必要があります。

ビタミンB2の働き

・エネルギーの産生

生命活動のためのエネルギーの元は基本的に食事から摂取します。食品に含まれている、糖質、脂質、タンパク質という主要栄養素を燃焼させることで、エネルギーを得ることができます。ビタミンB2は、主要栄養素からのエネルギー産生の過程を後押しするような、補酵素(コエンザイム)として働いています。そのため、エネルギー源となる食品を十分摂取していたとしても、ビタミンB2が足りていないとエネルギー産生が間に合わず、なんとなく疲労感がとれないといった状態が生じやすくなります。

また、ビタミンB2は主要栄養素のなかでも脂質の代謝に深くかかわっており、脂質を分解してエネルギーに変える過程で必要とされます。この過程には、β酸化※1とTCA回路※2(クエン酸回路ともいいます)という二つのステップがあり、それらを経て、「エネルギーの通貨」と呼ばれるATP(アデノシン三リン酸)が産生されます。ビタミンB2は、β酸化とTCA回路の双方を促進するように働き、エネルギー産生を助けます。

※1 脂肪酸を酸化しアセチルCoA(高エネルギー化合物)を作り出す細胞内の過程
※2 糖や脂肪酸などの有機物が呼吸により代謝される回路

・髪の毛や肌の健康維持、粘膜の保護、貧血防止

「発育のビタミン」と呼ばれることもあるビタミンB2は、健康な髪の毛・爪・肌を作り出したり、粘膜を保護したりするなど、健康的な成長・発育にも欠かせません。また、赤血球の生成にもかかわるため、その不足によって貧血が起こりやすくなるともいわれています。

・活性酸素の除去の促進

活性酸素とは、さまざまな物質と反応して細胞にダメージを与える物質のことで、動脈硬化やがんなどの発症リスクの増大に関係があることがわかっています。

体内で行われるエネルギーの産生・消費や化学反応の過程、あるいは紫外線、放射線、大気汚染、タバコ、酸化された食品の摂取、過度な運動、ストレスなどによっても、体内の活性酸素が増加します。ビタミンB2は、このような活性酸素を除去する過程において、補酵素として助ける働きを持ちます。

・ビタミンB群の他のビタミンと共同して働く

ビタミンB2を含むビタミンB群は、さまざまな働きをする際に互いに連携して作用するという特徴があります。例えばビタミンB2はB6やB12、葉酸(ビタミンB群の一種)などの代謝に関係があり、ビタミンB2が不足していると、それらのビタミンも十分に機能を発揮できなくなります。また、ビタミンB1とB2は、ともにエネルギー代謝に関与していて、糖を利用する過程である「糖代謝」において重要な働きをしています。つまり、糖やアルコールを分解してエネルギーを作り出す際にはビタミンB1とともにビタミンB2の消費も増えます。

1日に必要な摂取量は?

「日本人の食事摂取基準」によると推定平均必要量、推奨量、目安量は以下のとおりです。

なお、「推定平均必要量」とは、50%の人が必要量を満たすと考えられる量のことです。ビタミンB2の場合、尿のなかにビタミンB2の排泄量が増大し始める摂取量(体内にそれ以上は入らないという量)から算定しています。また、「推奨量」とは日本人の大半(97~98%)が必要量を満たすと考えられる量のこと、「目安量」とは栄養状態を維持するのに十分な量のことをいいます。

ビタミンB2 の食事摂取基準(mg/日)※3
性 別男 性女 性
年齢等推定平均
必要量
推奨量目安量推定平均
必要量
推奨量目安量
0 ~ 5 (月)0.30.3
6 ~11(月)0.40.4
1 ~ 2 (歳)0.50.60.50.5
3 ~ 5 (歳)0.70.80.60.8
6 ~ 7 (歳)0.80.90.70.9
8 ~ 9 (歳)0.91.10.91.0
10~11(歳)1.11.41.01.3
12~14(歳)1.31.61.21.4
15~17(歳)1.41.71.21.4
18~29(歳)1.31.61.01.2
30~49(歳)1.31.61.01.2
50~64(歳)1.21.51.01.2
65~74(歳)1.21.51.01.2
75 以上(歳)1.11.30.91.0
妊婦(付加量)+0.2+0.3
授乳婦(付加量)+0.5+0.6

※3 身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB2の欠乏症である口唇炎、口角炎、舌炎などの皮膚炎を予防するに足る最小量からではなく、尿中にビタミンB2の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。

〔厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」〕

どんな人が不足しやすい?

ビタミンB2は、とくに以下に当てはまるような人や状態で不足しやすくなると考えられます。

・少食の人、偏食をする人

ビタミンB2は体内で作ることができず、かつ体内には一定量しか溜めることができないため、毎日の食べ物から摂取する必要があります。そのため、食事の量自体が少ない場合には、ビタミンB2不足になりやすくなります。また、脂っこいものや塩辛いものを好んで食べたり、特定の食品以外はあまり食べなかったりといった偏食をしがちの人、あるいは外食やコンビニを多く利用するといった人も、ビタミンB2が不足しやすい傾向が見られます。

・お酒をよく飲む人

アルコールを摂取するとエネルギー産生のために、ビタミンB2を含む多くのビタミンが消費されます。また、慢性的なアルコールの摂取によって、消化管からのビタミンB群の吸収が抑制されることを示唆する報告1)もみられます。つまり、アルコールの影響でビタミンB群が体に吸収されにくくなるうえに、使われる量が増えるということです。それらがあいまって、習慣的に飲酒をしている人は、ビタミンB2を含むビタミンB群が不足しがちになります。

1) Veedamali S Subramanian, et al.Am J Physiol Cell Physiol. 2013 Sep;305(5):C539-46

・エネルギーの消費が多い人

ビタミンB群はエネルギーの産生と代謝の補酵素(コエンザイム)として働くため、エネルギー代謝が盛んな人や状態では、必要量が増加します。具体的には、スポーツをしている人、妊娠中・授乳中の女性などです。

・何らかの病気を患っている人や薬剤を服用中の人

糖尿病や甲状腺機能亢進症、肝臓の病気を患っている人は、ビタミンB2が不足することがあります。また、抗菌薬やステロイド薬、抗うつ薬などの服用によって、ビタミンB2が不足することもあります。

・ストレスを抱えやすい人や状況

ストレスが多い人は体への負担が大きく、エネルギーの需要も高まるのでビタミンB群が不足しやすいと考えられます。よって、ビタミンB2不足につながる可能性もあります。その可能性を示唆する一例として、阪神淡路大震災の被災者に口内炎や口唇炎を患う人が多発しました。これは災害のストレスによるビタミンB2の需要の増大が関係していると考えられています。それに対してビタミンB2の投与を行ったところ、症状が改善されたという報告もあります。

・ビタミンB2が過剰摂取になる心配は?

ビタミンB2は水溶性のビタミンであり、摂り過ぎた分は尿のなかに排泄されて体外に出ていきます。よって、過剰摂取による悪影響はほとんど心配ありません。「日本人の食事摂取基準」でも、ビタミンB2の耐容上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限)は特段定められていません。

なお、一度に27mg以上は吸収されないとの報告があり、つまり大量に摂取することに意義はないため、普段から適量を摂取し続けることを意識するのがよいでしょう。

ビタミンB2が不足するとどうなる?

口内炎・肌荒れ

ビタミンB2が欠乏すると、舌が赤紫になって腫れる「舌炎」や、口唇(くちびる)に腫れが生じたり、口内炎や口角炎ができやすくなったりします。また、脂漏性皮膚炎といって、皮脂の分泌が盛んな部位に湿疹ができることもあります。とくに、鼻の周囲に脂肪性の糠(ぬか)のようなものが現れやすいことが知られています。さらに、肌の健康にもビタミンB2が必要とされるため、不足によって肌荒れなどが起こりやすくなることも考えられます。

疲れやすい・疲れがとれない

一般的な食生活をしていれば、ビタミンが「欠乏」するリスクはそれほど高くありませんが、ビタミンが「不足」することは少なくないと考えられます。そのような場合には、倦怠感や食欲不振などの「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれる、なんとなく体調が悪い状態に陥ることがあります。

ビタミンB2の不足でも、疲れやすくなったり、ちょっとした疲れがとれなくなったりすることがあります。また、目の疲れから頭痛や肩こりなども引き起こす眼精疲労になることもあります。

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ビタミンB2を効率よく摂取するポイント

多く含まれる食べ物は?

ビタミンB2は、肉類(とくにレバー)、牛乳・乳製品、卵などに多く含まれています。

・肉類に含まれるビタミンB2量(可食部100g当たり)

食品名加工状態などビタミンB2(mg)
うし 肝臓(レバー)3.00
ぶた 肝臓(レバー)3.60
にわとり 肝臓(レバー)1.80

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

・牛乳・乳製品に含まれるビタミンB2量(可食部100g当たり)

食品名加工状態などビタミンB2(mg)
普通牛乳-0.15
プロセスチーズ-0.38
ナチュラルチーズ パルメザン-0.68
ヨーグルト 低脂肪無糖-0.19

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

・卵に含まれるビタミンB2量(可食部100g当たり)

食品名加工状態などビタミンB2(mg)
鶏卵 全卵0.37
鶏卵 卵白0.35
鶏卵 卵黄0.45

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

・その他食品に含まれるビタミンB2量(可食部100g当たり)

食品名加工状態などビタミンB2(mg)
アーモンド1.06
糸引き納豆-0.56
あまのり 焼きのり-2.33

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

おすすめの調理方法・保存方法とは?

・ゆで汁や煮汁も食べられる料理にする

ビタミンB2は水溶性ビタミンに分類されてはいるものの、水にはやや溶けにくく、調理による喪失が極端に多いわけではありません。とはいえ、不足を補うことを意識して摂るのであれば、調理にともなう損失を抑える方法を実践しましょう。

調理によるビタミンB2の損失を防ぐ方法として、食材をホイル焼きにしたり、スープにしたりして、全体を食べられるようにするとよいでしょう。例として、食材をゆでた場合のビタミンB2の残存率は、調理前の食品に含まれている量を100%とした場合に、ゆで汁や煮汁へ流出することにより70~80%程度に減ります。しかし、ゆで汁や煮汁も一緒に摂取できる調理法であれば、元のビタミンB2の量の85~100%を摂取できるといわれています。

・食材は光を避けて保存する

ビタミンB2は熱や酸などには強いものの、光に弱い(分解されやすい)という特徴があります。そのため、ビタミンB2の豊富な食材を摂ろうとして、大量に買い溜めしておいても、食べる前にビタミンB2が失われてしまうこともあります。食材を保存する際には、腐りにくいものでも冷蔵庫に入れるなどして、なるべく光が当たらないようにするとよいでしょう。

・他の微量栄養素と一緒に摂る

ビタミンB2が不足しがちな食生活では、他の微量栄養素も不足しがちです。そのため、ビタミンB2とともに他の微量栄養素も一緒に摂ると、体調管理により役立つ可能性があります。例えば「レバニラ」のような料理で、ビタミンB2とともに鉄分やビタミンCなども一緒に摂取すると、不足しがちな微量栄養素の摂取量を全体的に底上げすることができます。

サプリメントやビタミン剤を活用する手も

栄養素は食事から摂ることが基本ですが、自炊する時間がとれない人などは、サプリメントや市販のビタミン剤を活用するのもよいでしょう。日頃の疲れ、あるいは眼精疲労などにビタミンB2不足が関係していることもあるため、そのようなときに試してみてはいかがでしょうか。

なお、ビタミンB2を含むサプリやビタミン剤を服用すると尿が黄色くなることがあります。これはビタミンB2自体が黄色い結晶であり、吸収されて尿中に混ざって排泄されることによるものであるため、心配は必要ないでしょう。

疲れを感じたらビタミンB2の摂取を心掛けてみよう

ビタミンB2はエネルギー消費が高まる状況で、より多く消費されやすい微量栄養素。そのため、忙しい生活を送っている人ほど、不足する傾向があります。バランスのよい食事を意識しつつ、疲れを感じたり、肌荒れが気になったりしたときには、ビタミンB2の摂取を心掛けてみてはいかがでしょうか。

<参考文献>
  • 月刊フードケミカル「リボフラビン(ビタミンB2)」, 2002
  • 主婦の友社「最新版 1億人の家庭の医学」, 2008
  • 主婦と生活社「最新 食べて治す医学大事典」
  • Nutrition Care 15(1)「ビタミンB2」, 2022
  • 食品と容器61(9)「ビタミンB2」, 2020
  • Ramírez-Maldonado M, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2021;18:5.

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