更新日:2023年3月30日

ビタミンB12の働きとは? 1日の摂取量の目標や過不足の影響を解説

ビタミンB12は、「赤いビタミン」「抗貧血ビタミン」「神経のビタミン」とも呼ばれています。ビタミンとは、微量ではあるものの人体の機能を正常に保つために必要な有機化合物のこと。ビタミンが不足した場合、体にさまざまな悪影響が生じてきます。20世紀初頭からビタミンが次々と発見され、現在では13種類のビタミンが知られています。ビタミンB12は、1948年に肝臓から単離・結晶化されました。その結晶は赤い色でした。コバルトという金属を含んでいることが特徴です。今回は、ビタミンB12の働きとは?ビタミンB12の不足に注意すべきはどんな人? 多く含まれている食品は? 摂り過ぎの心配は? などの疑問にお応えします。

監修

柴田 克己 先生

滋賀県立大学名誉教授、藤田医科大学客員教授

INDEX

ビタミンB12とは?

不足すると貧血になる栄養素として発見されたビタミン

今ではビタミンB12にさまざまな働きがあることがわかっていますが、歴史的にはまず、貧血との関連が着目されました。

19世紀初頭に欧州では、原因不明の重度な貧血のために亡くなる人が多かったのにもかかわらず、動物の肝臓(レバー)を食べる習慣のある人は、病状が進行しないことが知られるようになりました。この情報をヒントにして、肝臓の抽出液が貧血の治療に用いられるようになり、20世紀中頃に、その有効成分が単離され、生理活性名としてビタミンB12、化学名としてシアノコバラミンと名づけられたという歴史があります。

貧血とは、赤血球の数が少ないことや赤血球の中のヘモグロビンが不足している状態のこと。ビタミンB12不足による貧血は、赤血球を作る細胞のDNA合成がスムーズにいかなくなって、数が減ることで生じます。後に述べますが、DNAの合成にはビタミンB12と葉酸が共同して働きます。ヘモグロビンは血色素ともいわれ赤色をしています。血液中の酸素を全身に運搬しているヘム鉄を含むタンパク質です。

神経の働きを正常に保つのにも必要

神経は全身に広がっていて、体の隅々からの情報を脳に伝えたり、反対に脳からの指令を体の隅々に伝えたりしています。神経には、神経細胞の軸索を取り囲んでいる髄鞘(ずいしょう・ミエリンともいう)と呼ばれる脂質の層があり、絶縁体の役割をしています。この髄鞘が障害されると、情報伝達がスムーズにいかなくなります。

例えば、手足のしびれ。本来は何かに触れたときに、その刺激を脳へ伝えるための神経が、神経系の障害によって何も触れていないのに信号を発生してしまい、手足がしびれたりすると考えられます。また、眼精疲労や肩こり、腰痛などにも、ビタミンB12不足による神経系の障害が関係していることがあります。

ビタミンB12と神経障害との病因は未解明なことが残っているのですが、髄鞘のリン脂質の組成を適正に維持する物質の供給をスムーズにすることや、髄鞘の絶縁性を維持するのに不要な脂肪酸の除去をスムーズにすることに関わっていると考えられています。そのため、ビタミンB12は神経の働きを保つのに重要であり、「神経のビタミン」とも呼ばれています。

また、ビタミンB12以外のビタミンB群、ビタミンEなども、神経の働きに欠かせない微量栄養素です。

ビタミンB12の1日の必要量は?

栄養素の必要量はビタミンB12に限らず、一般的に厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に準拠して考えます。ビタミンB12については、シアノコバラミン(ビタミンB12の化学名)として、以下に示した表の食事摂取基準が示されています。

なお、推定平均必要量とは、字のごとく、必要量の平均値の推定値のこと。つまり、50%の人が必要量を満たすと同時に50%の人が必要量を満たさないと推定される1日当たりの量のことです。推定平均必要量は集団の栄養状態を評価するときに使用するもので、個人レベルでは使用しません。

また、推奨量とは日本人の大半(97~98%)が必要量を満たすと考えられる1日当たりの量。個人レベルの栄養状態の評価に使用します。さらに、目安量とは大半の人に不足状態がみられない1日当たりの量。字のごとく目安の量ですので、必要量はまだ解明されていないということです。目安量ぐらい摂っていれば、不足することは「まずないよ」という値です。

ビタミンB12の成人の推奨量は男性・女性ともに2.4μg/日。これは、例えば豚レバーなら約10g、小粒のアサリなら約2個程度に含まれている量です。

ビタミンB12 の食事摂取基準(μg/日)※1
性 別男 性女 性
年齢等推定平均
必要量
推奨量目安量推定平均
必要量
推奨量目安量
0 ~ 5 (月)0.40.4
6 ~11(月)0.50.5
1 ~ 2 (歳)0.80.90.80.9
3 ~ 5 (歳)0.91.10.91.1
6 ~ 7 (歳)1.11.31.11.3
8 ~ 9 (歳)1.31.61.31.6
10~11(歳)1.61.91.61.9
12~14(歳)2.02.42.02.4
15~17(歳)2.02.42.02.4
18~29(歳)2.02.42.02.4
30~49(歳)2.02.42.02.4
50~64(歳)2.02.42.02.4
65~74(歳)2.02.42.02.4
75 以上(歳)2.02.42.02.4
妊婦(付加量)+0.3+0.4
授乳婦(付加量)+0.7+0.8

※1 シアノコバラミン(分子量 =1,355.37)の重量として示した。

〔厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より〕

詳しい話となりますが、ビタミンB12の推奨量は悪性貧血患者の半数の治癒に有効であった最小投与量から算定された値で、極めて特殊な条件下での数値です。「日本人の食事摂取基準」の「ビタミンB12」の項の「今後の課題」に記載されているように、成人の推奨量2.4μg/日は、ビタミンB12の適正な栄養状態を維持するには低い可能性を示唆する論文が散見されるようになりました。これらの論文は6μg/日程度の摂取をすすめています。特に、食品タンパク質に組み込まれた結合型ビタミンB12を遊離型にしにくくなった中・高齢者においては、この程度の摂取を目標にすると良いでしょう。また、ビタミンB12が遊離型となっているサプリメントやビタミン剤での補充は効率的です。

ビタミンB12が不足するとどうなる?

貧血

ビタミンB12が不足すると貧血になりやすくなります。貧血の主な症状は、疲れやすい、動悸や息切れ、頭痛などが多く、その他に、歳の割に白髪が多い、顔色が良くない、食欲不振などの訴えも挙げられています。

また、葉酸もビタミンB12同様に、赤血球を作るために重要なビタミンで、ビタミンB12や葉酸の不足が著しいと、「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる貧血が起きることがあります。その場合、貧血やこの後に解説する神経症状がより強く現れたり、萎縮性胃炎、ハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みなどの症状)といった消化器系の異常も現れたりします。

なお、立ちくらみが起きたときに「貧血になった」ということがありますが、それは脳の血流量が一時的に低下した状態であって、医学的には「脳貧血」と呼びます。

神経症状

「神経のビタミン」とも呼ばれるビタミンB12。神経は血管と同じように全身に張り巡らされているので、それが不足することの影響は、全身のさまざまな症状となって現れる可能性があります。

例えば、手足の脱力感、しびれ、感覚が鈍くなる、眼精疲労、神経痛、腰痛、肩こり、舌がしびれる、味覚障害、耳鳴り、起立性低血圧(立ちくらみ)、勃起障害(ED)、抑うつなどです。

実際、そういった症状が現れている場合、医療機関ではビタミンB12を含む医薬品が処方されることが多く、また、目や肩や腰のつらい症状に対する市販の内服薬の多くに、ビタミンB12が使われています。

なお、ビタミンB12不足のためにこのような神経症状が現れている患者さんの約2割は、貧血が認められないというデータもあります。つまり、ビタミンB12不足は貧血の原因としてよく知られているものの、たとえ貧血になっていなくても神経症状が現れることが少なくないのです。

どんな人が不足しやすい?

・動物性食品をあまり食べない人

動物はビタミンB12を栄養素として利用していますが、植物は利用していないため、植物性食品にビタミンB12は含まれていません。そのため、例えばビーガン(乳製品なども含めて動物性食品を一切食べない完全菜食主義者)の人は、ビタミンB12不足のリスクが高くなります。

・胃の病気などがある人や高齢の方

ビタミンB12は胃で作られる「内因子」と呼ばれるタンパク質と結合した後に、腸で吸収されます。胃の病気で胃を切除した人や、自己免疫性胃炎という病気の患者さんは、内因子が不足するために、ビタミンB12をきちんと摂取していても十分に吸収されません。

また、胃酸の分泌を抑える薬(胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療に使われる薬)や、腸からのビタミンB12の吸収を抑えるように働く糖尿病の薬(一般名:メトホルミン)を服用している人も、ビタミンB12が不足しがちです。心配な場合は、主治医に相談しましょう。

さらに、胃の酸性度が低下すると、摂取した食べ物に含まれるタンパク質からビタミンB12を取り出す能力、すなわち、タンパク質を消化しビタミンB12を遊離型にする能力が低下します。特に高齢の方は、胃の酸性度が低下するために吸収が不十分になり、ビタミンなどの微量栄養素が不足しがちです。また、年齢とともに食事の量自体も減りがちなので、必要に応じてサプリメントや市販の医薬品などで補うと良いでしょう。

・50歳未満の人は不足傾向

厚生労働省「国民健康・栄養調査」の平成27年度データを分析した結果によると、ビタミンB12不足による症状が現れていなくても、50歳未満では推定平均必要量に達していない人が30.7%もいた、という結果が報告されています。つまり、自覚症状がなくても実際はビタミンB12が不足している人が少なくなく、とくに50歳未満の世代ではよりその傾向が強いようです。

なお、この調査からは、日本人のビタミンB12の摂取源としては、魚介類から得ている割合が高いことも示されました。(出典:ビタミン93(11),p.478-484,2019「年代別のビタミンB12 摂取量に関する検討 国民健康・栄養調査結果の再解析」)

ビタミンB12が豊富な食べ物は?

レバー

貧血があってもレバーを食べている人は病状が悪化しにくいことから発見されたビタミンB12。そのことからもわかるように、牛や豚、鶏のレバーにはビタミンB12が豊富に含まれています。

■レバーに含まれるビタミンB12量(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB12(µg)
うし 肝臓(レバー) 53.0
にわとり 肝臓(レバー)44.0
ぶた 肝臓(レバー)25.0

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

魚や貝、海藻

日本人では、ビタミンB12の摂取源として魚介類の割合が大きいという報告があります。また、動物性食品を一切口にしないビーガンの人が全員ビタミンB12欠乏になるわけでない理由の一つは、あまのりなどの真核藻類にビタミンB12が含まれているからです。なお、スピルリナなどの食用原核藻類にもビタミンB12が多く含まれていると記載されている場合もありますが、主要なものは、「シュード(偽)B12」と呼ばれており、人には有効ではありません。

■魚や貝、海藻に含まれるビタミンB12量(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB12(µg)
しじみ68.0
あさり52.0
かき 養殖23.0
まいわし16.0
まさば 13.0
ししゃも 生干し焼き6.7
あまのり 焼きのり58.0

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

卵、チーズ

卵やチーズもビタミンB12が豊富な食品です。そのまま食べても良いですし、いろいろな料理に加えるなどして、積極的に食べましょう。

■卵に含まれるビタミンB12量(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB12(µg)
うずら卵 全卵4.7
鶏卵 卵黄3.5
ぶた 全卵1.1

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

■チーズに含まれるビタミンB12量(可食部100g当たり)
食品名加工状態などビタミンB12(µg)
プロセスチーズ3.2
ナチュラルチーズ パルメザン2.5
ナチュラルチーズ モッツアレラ1.6
ナチュラルチーズ カマンベール1.3

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

ビタミンB12を効率よく利用するポイント

他の栄養素と一緒に摂る

貧血の改善のためにビタミンB12を摂るときは、葉酸も一緒に摂ると良いことがわかっています。ただし、ビタミンB12と葉酸のどちらも不足している場合、まず先にビタミンB12の不足を補ってから、葉酸の不足を補いましょう。なぜなら、体の中で葉酸が利用される際にビタミンB12が不可欠だからです。先に葉酸を補充してしまうと、体の中のビタミンB12の不足が隠されてしまいかねません。

また、ビタミンB12は他の微量栄養素(例えばB12以外のビタミンB群やビタミンC)と助け合って機能を発揮するので、それらをバランスよく摂取することも必要です。

葉酸が多く含まれる食材としては、ほうれん草やレバーがあります。レバーには葉酸に加え、ビタミンB12も多く含まれており、効率良く栄養素を摂れるのでおすすめです。

ゆでたときと、電子レンジで損失が大きい

食材を、焼く、ゆでる、油で揚げる、蒸す、電子レンジで温めるという調理方法で、栄養素量の変化を比較した研究の結果が報告されています。それによるとビタミンB12は、ゆでる場合と電子レンジで調理した場合に損失が大きく、30~50%が失われてしまうようです。(※Nutrition Care 15(1),p.50-53,2022「ビタミンB12」)

ビタミン剤やサプリメントの活用

ビタミンB12が不足している人は、食生活に偏りがあり、ビタミンB12だけではなく、その他のビタミンB群やビタミンB群以外の微量栄養素も不足しているかもしれません。それらをバランスよく補うためには、ビタミン剤やサプリメントを活用するのもおすすめです。また、バランスの良い食生活を送っていても、栄養素の吸収力が低下しがちな高齢者なども、ビタミン剤やサプリメントの利用を検討してみましょう。

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摂り過ぎるとどうなる?

ビタミンB12の吸収は、胃から分泌される内因子によって調節されています。内因子を介して吸収できる量の上限に達すると、それ以上は吸収されません。つまり、摂り過ぎたとしても吸収される量が極端にオーバーすることはないのです。

実際、ふつうの食生活を送っている人で過剰摂取による健康障害が発現したという報告はなく、またサプリメントの利用による健康障害の報告もありません。1日に2.5mgという極めて大量のシアノコバラミンを投与しても、過剰症は認められなかったというデータもあります。よって、「日本人の食事摂取基準」では、「ビタミンB12の過剰摂取が健康障害を示す科学的根拠がない」として、耐容上限量は設定されていません。

バランスの良い食事を心がけ、ビタミンB12も意識してみよう

“飽食”と言われることの多い日本でも、ビタミンB12が不足している人はまれではないようです。ビタミンB12の不足による貧血や神経障害などの健康障害は、症状が徐々に進むことが多く、そのために気づくのが遅れがち。バランスの良い食事を心がけ、気になることがあれば早めに診察を受けましょう。バランスの良い食事とは「日本人の食事摂取基準」に準拠することです。

<参考文献>
  • 治療102(2),p.175-179,2020「ビタミンB12
  • 診断と治療109(8),p.1051-1056,2021「ビタミンB群」
  • 「最新 食べて治す医学大事典」主婦と生活社,2018
  • Nutrition Care15(1),p.50-53,2022「ビタミンB12
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

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