更新日:2023年2月28日
活力を高めるには? 必要な栄養素や簡単セルフケアを知って元気な毎日を!
「活力」は何をするにもすべての源。学生なら「部活」や「就活」、成人後は「婚活」、結婚後は「妊活」、出勤前に趣味やスポーツをする「朝活」、腸内環境を良くするための活動「腸活」。「~活」という言葉はどんどん増えていますね。「終活」という言葉もあり、自分らしく人生を終えるためにも活力は必要です。活力がなければ「●活」も「■活」も始められません。そこで、活力をアップさせるアイデアを紹介します。
監修
渡辺 恭良 先生
日本疲労学会 理事長、
神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 特命教授、
理化学研究所 名誉研究員、
Integrated Health Science株式会社 代表取締役CEO
INDEX
活力とは元気と同じ?
活力に似た意味で「元気」という言葉も使われます。両者の違いは何でしょうか?
活力という言葉は、一般的に「活動を生み出す力、元気よく動いたり働いたりする力」として使われることが多いようです。一方、元気については辞書によると、「体の調子が良く、健康である状態」との解説が多く見られます。つまり、活力は元気の源、元気であるために必要な要素と言えそうです。
「体中に活力がみなぎる」といった使われ方をするように、活力がある状態とは、さまざまな活動に取り組んだり、元気よく動いたり働いたりすることができる状態。反対に活力が低下していると、何をするにも「始動が遅くて効率が上がらない、持続できない」といったことになりかねません。
活力はどうやって測定する?
「活力」は主観的なものなので、「あなたの活力は○点です」などと数値で表すことはできません。それでも、仕事と活力、健康と活力との関連などについては、客観的に評価する方法が提案・活用されています。
・仕事と活力の関連の評価
仕事に対する心理的な充実度の評価のため、国際的に「ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale;UWES)」という指標が使われていて、以下の3つの質問で活力を評価します。「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じるか」、「職場では、元気が出て精力的になるように感じるか」、「朝に目がさめると、さあ仕事へ行こう、という気持ちになるか」――です。これらに、「はい」と答えられない場合、仕事面の活力が低下しているのかもしれません。
・健康と活力の関連の評価
健康診断や体力測定の結果から、老化の度合いの指標としての「活力年齢(vital age)」を算出する方法が考案されています。この活力年齢が高いと健康寿命が短くなってしまうというデータもあります。一方で、例えば肥満の方の減量などによって、この活力年齢を低下させることもできます。
活力が低下しているとなぜ良くないの?
仕事や作業の効率が下がってしまい、疲れやすい
活力が低下していると、家事や仕事など、何をするにしてもやる気が起こりにくく、ようやくそれらに取り掛かっても、終えるのに時間がかかってしまい効率が低下してしまいます。
また、そのような状態が長引けば当然のように心身の負担が増え、その結果として、活力がないと疲れやすくなると考えられます。
心身の病気のリスクが高まる
古くから「病は気から」と言われてきましたが、最近ではストレスが体の病気や心の病気のリスクを大きく左右することが、科学的にも明らかになってきました。心身の健康を保ち元気であり続けるには、ストレスに対する自己管理能力を高く維持することが必要です。しかし活力が低下していると、それが難しくなってしまいます。
また、とくに高齢の方は、活力低下で「フレイル」になる可能性も考えられます。フレイルとは、健康な状態と介護が必要な状態(要介護)の間に位置付けられ、年齢を重ねて身体能力が衰え、動いたり外に出たりするのが億劫になるなど、心と体の働きが弱くなってきた状態のことです。
フレイル予防のためにも、運動習慣や食習慣(とくにタンパク質の摂取が重要)を改善し、活力を保つようにしましょう。
どうして活力は低下してしまうの?
疲労の蓄積
体を動かすにはエネルギー源が必要です。体を使えば使うほどエネルギーを消費し、ついにはエネルギー源が枯渇してしまって、活力が低下します。また、精神的な負担は心のエネルギーを使い、活力を下げるように働いてしまうと考えられます。
食生活の乱れや運動不足
食事の乱れや体を動かさない生活は、活力の低下を招きます。例えば、食べ過ぎ飲み過ぎで胃腸の働きが悪くなると、栄養素を十分に吸収できずに活力ダウンにつながります。運動不足は筋力低下を招くとともに、新陳代謝を低下させます。
また、そのような生活習慣の乱れは、いわゆる生活習慣病のリスクを高め、何かの病気が起き始めると、その影響で活力が低下してしまうことも。
その他に、虫歯や歯周病のために食事が不十分になっていたり、食事が偏ってしまっていることが活力低下の原因となることもあります。
ストレスや不安、心配、活動意欲の低下
ストレスや不安、心配事を抱えているときに、体の不調を感じたことがある方は多いでしょう。これには自律神経の乱れが関係していると考えられています。ストレスや不安、心配事が多くて、しかも体の調子も悪化してくれば、当然のように活力は低下してしまいます。
また、それらの精神的な不調が繰り返されると、次第に活動意欲が低下してしまうことがあり、積極的で行動的な思考を保ちにくくなることも。これらも活力低下につながります。
夏バテなどの季節に関連すること
5月病や夏バテなど、環境の変化や厳しい気候も活力を奪う要因です。季節性のある疾患、例えば花粉症などによる症状も、活力低下に関係すると考えられます。また、日照時間の短い冬には、うつ傾向が強くなりやすいことも知られています。
活力を向上する方法は?
食事に気をつける
・糖質を適切に摂る
エネルギーの源は食事です。とくに、心の活力にかかわる脳は、糖質を主なエネルギー源として利用しているので、活力アップには適切な糖質が欠かせません。
最近では、ダイエット目的で極端な糖質制限をする方もいるようですが、必要な分の糖質を摂取しなければ活力が低下してしまいます。
血糖値が気になる人は、血糖値を上げにくい糖質の摂り方を工夫しましょう。例えば、体内で吸収の速いブドウ糖などの単糖ではなく、でんぷんなどの複合糖質(炭水化物)を選ぶ。また、食事の最初にサラダを食べるといった方法で、食後の血糖値の急な上昇を抑えつつ、食後長時間にわたって一定レベルの血糖値を維持していきましょう。
・タンパク質を摂る
心の活力のポイントが脳にあるなら、体の活力のポイントは筋肉やさまざまな臓器です。体の疲れは筋肉やさまざまな臓器の疲れとも言い換えられます。
筋肉やさまざまな臓器は主としてタンパク質によって作られています。よって、食事でタンパク質をしっかり摂ることが、筋肉や筋力アップ、臓器の機能維持に必要です。ただし、摂り過ぎは腎臓などに負担をかけてしまうこともあるので注意しましょう。
・ビタミンを摂る
ビタミンは、それ自体がエネルギーになるわけではありませんが、体の諸機能の調節に欠かせない微量栄養素です。糖質や脂質などをエネルギーに変えるには、ビタミンB群が欠かせません。ビタミンB群はタンパク質の代謝にもかかわりがあり、活力の維持にとってたいへん重要です。
少し詳しく解説すると、炭水化物の食品が消化されると単糖類(それ以上分解されない糖類。ブドウ糖など)となって体内に吸収されます。吸収されたあとは、さまざまなステップを経てピルビン酸となり、ピルビン酸はビタミンB1の働きでアセチルCoAに変わります。このアセチルCoAを利用して「エネルギーの通貨」と呼ばれる「アデノシン三リン酸(ATP)」を作り出す「TCA回路(クエン酸回路)」を回転させるのにも、ビタミンB1が必要とされます。ですから、「エネルギーの源」である炭水化物をいくら摂取しても、ビタミンB1が不足している状態では、それを「エネルギーの通貨」として利用できないというわけです。
その他のビタミンも含め、ビタミンは健康維持には欠かせないものであり、相互に関係し合って働くので、不足しないように心がける必要があります。
バランスの良い食生活が大切だとはわかっていても、家事や仕事で忙しくて「理想的な食事なんて無理」という人も少なくないことでしょう。そのような場合は、サポートとしてサプリメントや市販薬などを利用する方法もあります。
体を動かす
食事と並んで、活力の維持・向上に欠かせない要素が運動。食事と運動は、健康の維持増進の基礎です。
疲れが翌日に残らない程度に日々運動を続けることで、新陳代謝が活発になったり、筋力がついて体が軽くなったりして、活力アップにつながります。
休養と気分転換、そして、人との絆
体と心の健康に重要な「健康の三要素」は、「食事」と「運動」、そして「休養」です。活力の維持には、何より健康であることが欠かせず、健康であるためには休養が欠かせません。体や心の疲れがたまらないように、しっかり睡眠をとりましょう。また、ときには「健康のために休養をとろう」などと深く考えず、気晴らしすることも必要。気分転換が明日の活力につながるでしょう。
加えて、人と接することも大切です。先述した高齢の方の「フレイル」も、フレイル予防という視点では身体的なフレイルばかりでなく、社会的フレイルにも注意が求められています。社会的フレイルとは、社会的な接点が少なくなって孤立した生活を送っていることから、心身の脆弱性が高まった状態です。
近年、内閣に「孤独・孤立対策担当大臣」というポストが設けられたり、医療において「社会的処方」という施策も模索されていることからもわかるように、社会的フレイルへの関心が高まっています。
作業中の環境や姿勢を見直す
・音楽を流す
音楽には緊張をほぐしてリラックスさせてエネルギーを回復する力があると言われています。実際、疲れたときやつらいときに音楽に助けられたという経験をお持ちの方も多いでしょう。スポーツ選手の多くも試合前に音楽を聞いている情景を良く見かけます。
・アロマテラピー
ストレス解消にアロマテラピーが効果があることも知られています。また、嗅覚の刺激によって、デスクワークの効率が上昇するという研究結果も報告されています。その研究では、いくつかの異なる種類の香りを比較した結果、気分やストレス状態の悪化を最も強く抑制し、作業効率を高めたのは、柑橘類の香りだったとのことです。
また、木々の緑の香りにも、ストレスによる集中力や注意力の低下を防ぐ効果があるという報告もあります。
・姿勢を見直す
背筋を正して生活していると、肩こりなどの不快な症状が軽くなります。また、歩き方も良くなり、筋力がついて体が軽くなるなどの変化が現れてきます。ふだんの姿勢を見直してみましょう。
疲れたと感じたら早めのケアが大切
疲れたときは医薬品を利用するのも手
食事や運動、休養などを心がけていても、疲れがとれないなと感じたときは、疲れたときのビタミン補給などの効能を持つ市販薬を利用するのも手です。
ビタミンB1が吸収されやすくした化合物である「フルスルチアミン」を成分としている市販薬などもあるので、上手に活用してみてはいかがでしょうか。
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最後に
活力が下がってくると、食欲が低下したり、体を動かすのが億劫になったり、人と会うのが面倒くさくなったりしてしまいます。それらの結果として、さらに活力が低下してしまうという悪循環になってしまうことも。元気が出ない、疲れてきた、活力が必要だな、と感じたら、早めに対策を立てて、悪循環に陥らないようにしましょう。
- <参考文献>
- 食生活「活力年齢指数を健康支援に生かそう!」Vol.98 No.2 2004.2
- 第15回日本感性工学会「活力促進効果を有する嗅覚刺激の提案」,2013
- 学研パブリッシング「病気を防ぐ食べ方」,2014
- フレイルとは | 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html - 厚生労働省「厚生労働白書(平成19年版)」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/07/dl/0201.pdf