更新日:2021年12月1日
意外と知らない、睡眠で疲れがとれない理由
心身の疲労を回復するために睡眠は欠かせません。しかし、寝たはずなのに「疲れが残っていて朝がつらい」「昼間どうしても眠くなる」「やる気がでない」といった経験をしている人も多いのではないでしょうか。実はそこには意外な要因が隠れているかもしれません。
専門家監修
渡辺 恭良 先生
日本疲労学会 理事長、
神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 特命教授、
理化学研究所 名誉研究員、
Integrated Health Science株式会社 代表取締役CEO
INDEX
疲れと睡眠の関係
睡眠は体だけではなく脳も休める
ノンレム睡眠 | レム睡眠 | |
---|---|---|
眠り | 深い | 浅い |
脳 | 休息している | 活動している |
筋肉 | 軽い緊張状態 | 弛緩状態 |
自律神経系 | 副交感神経優位 (リラックス状態) | 不安定 交感神経活動もみられる |
私たちは起きている間、さまざまな肉体的、精神的活動を行っており、それに伴い「疲れ」がたまっていきます。疲れが蓄積されると脳から出される「眠りたい」という欲求(睡眠欲求)が強くなり、睡眠へと導きます。
睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という質の異なる2つの眠りで構成されています。レム睡眠は体は休息していますが、夢を見たり、血圧や脈拍が変動することから覚醒への準備状態にある浅い眠りです。一方、ノンレム睡眠は深い眠りで脳波活動が低下し、脳(心)が休息している状態です。
一般に、脳(心)の疲労は主にノンレム睡眠のときに、体の疲労は双方の睡眠で、とくにはレム睡眠のときに回復するといわれています。疲労を感じる脳は眠ることが休息の大事なポイントなのです。
睡眠は時間だけでなく、質も重要
日本の成人の睡眠時間は6時間以上8時間未満が標準的と考えられていますが、夜間に実際に眠ることができる時間(一晩の睡眠の量)は、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、加齢に伴い約30分の割合で減少するとされています。また、日の長い季節では睡眠時間は短くなり、日の短い季節では長くなる傾向にあります。
このように、睡眠時間は年齢、季節、個人差などでまちまちで、しかも思うように時間を確保できない可能性がある現代社会においては「睡眠の質」が重要になってきます。
時間的には寝たにもかかわらず、「体がだるい」「疲れがとれない」「眠くて仕方がない」といった状況は、睡眠の質が低下し、眠るだけでは疲労回復が追いついていないサインといえます。
寝ても疲れがとれない、その原因の1つは細胞のエネルギー不足
細胞は機能するためのエネルギーを自らつくりますが、その際に活性酸素が生じます。その活性酸素によって細胞は酸化され、機能が低下するといわれています。
しかし、体には細胞機能を修復する働きも備わっています。細胞機能の修復にはエネルギーが必要ですが、十分なエネルギーがあれば、睡眠などの休息によって再び本来の機能を果たすようになり、疲れは回復します。
ところが、睡眠の質の低下などがみられると、細胞の機能は低下しがちに。このときオーバーワークなどによって修復するためのエネルギーが不足していると、細胞機能の修復が間に合わず、機能低下のままの状態になり、本来の機能を果たせなくなってしまうのです。
これが、あなたが寝ても疲れがとれなくなってきたと感じる原因のひとつかもしれません。
睡眠だけでは疲労回復できない時こそ、栄養が大切
疲れに効果的な栄養素はビタミンB群
疲れの回復に必要となる細胞のエネルギー。そのもとになるのは、食事から摂る三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)です。
そしてこれらの三大栄養素をエネルギーにつくり変える栄養素がビタミンB群です。三大栄養素は、車で言えば、ガソリンなどの燃料にあたり、ビタミンなどは、ガソリンを使って動くためのエネルギーを作り出すエンジンの点火役といっても良く、これらがないとガソリンを燃やして活動のエネルギーに変えることができません。
ここでは、睡眠の質の向上にも期待できるビタミンB1、B2、B6について見てみましょう。
ビタミンB1
糖質などをエネルギーにつくり変えるために必要なビタミン。また、筋肉や神経の疲れをやわらげる働きがあります。
- 【多く含まれる食材例】
- 豚肉、うなぎ、玄米、豆類など
ビタミンB2
脂質のほか、タンパク質や糖質をエネルギーにつくり変えるために必要なビタミン。
- 【多く含まれる食材例】
- レバー、納豆、卵、のり、チーズなど
ビタミンB6
タンパク質などをエネルギーにつくり変えるために必要なビタミン。また、神経伝達物質の合成や脂質の代謝にも関与。神経伝達物質の一つであるセロトニンは、睡眠の開始やノンレム睡眠の中でも深い睡眠を調整していると考えられています。
- 【多く含まれる食材例】
- マグロ、カツオ、ヒレ肉(牛・豚)、バナナなど
特に疲労回復に欠かせないのはビタミンB1
三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)の中でも特に糖質は、脳や心臓、筋肉の主要なエネルギー源となる大切な栄養素です。この糖質からエネルギーをつくるのに不可欠な栄養素がビタミンB1です。
「眠ることが疲労を感じる脳を休息させるために最重要なこと」と先述しましたが、脳がエネルギーとして利用できる主な物質は、糖質から分解されるブドウ糖です。ビタミンB1はこのブドウ糖をエネルギーに変える際には欠かせないので、睡眠とビタミンB1は切っても切れない関係といってよいでしょう。
そんな重要な働きを担うビタミンB1ですが、体の中でつくられないため、食品など外から摂取しなければなりません。
ところがビタミンB1は水溶性のため、調理をする際の水洗いによって流出しやすく、加熱でも失われがちです。さらに1回の摂取で10mgくらいまでしか吸収されず、体内に蓄えられない性質も。一度にたくさん摂ろうとしても摂取できる量に限りがあるため、ビタミンB1はどうしても不足しがちです。日本人の毎日のビタミンB1摂取量の統計では、潜在的に不足している人が大部分であると考えられています。とくに、若年層に摂取不足が多いという統計もあります。
ビタミンB1より体内へ吸収されやすいフルスルチアミンって?
そんなビタミンB1の弱点を補うため、生み出されたのがビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」です。ビタミンB1に腸管で吸収されやすい化学構造が付けられた化合物です。
フルスルチアミンには3つの特徴があります。
特徴1
ビタミンB1に比べて小腸などの消化管からの吸収がすぐれている。
ビタミンB1は水溶性であるため、脂質でできている小腸の細胞膜をトランスポーター(輸送担体)がなければ直接通過できません。それに対しフルスルチアミンは脂溶性であるため、トランスポーターがなくても細胞膜を通過し、血中や体内などに入ることが可能です。
特徴2
筋肉や神経などの組織へよく移行する。
フルスルチアミンは上記の特徴1によって、ビタミンB1に比べてより多く吸収され、組織内に多く届けることができます。
特徴3
「活性型ビタミンB1」を多く生成する。
ビタミンB1は細胞内に入ってから「活性型ビタミンB1」に変換されることでエネルギーの産生を助けるのですが、フルスルチアミンは吸収率が高い結果、その「活性型ビタミンB1」をビタミンB1に比べてより多く生成します。
このような働きからフルスルチアミンは、疲れに悩まされる私たちにとって「抗疲労成分」であり、疲労回復のカギになるといえるでしょう。
- <参考文献 >
- 渡辺恭良ほか「おもしろサイエンス 疲労と回復の科学」日刊工業新聞社(2018)
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf - 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」
今日の疲れを明日に持ち越したくない方に
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