更新日:2025年2月27日

ストレッチの効果とは?疲労回復につながる理由や行う際のポイントを紹介

「ストレッチ」にはどのような効果があるのでしょうか。ストレッチは、自宅でも簡単に行える身近な運動です。実は、ストレッチには「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」の2種類があり、それぞれ得られる効果が異なります。特に静的ストレッチは、疲労回復やリラックス、肩こり軽減などの効果が期待できるため、体の不調を感じている人におすすめです。この記事では、ストレッチの効果や種類、ストレッチ方法、効果を高めるポイントについて解説します。

監修

竹谷内 康修 先生

竹谷内医院 院長

INDEX

そもそもストレッチ(ストレッチング)って何?

「ストレッチ(stretch)」という言葉には「伸ばす」という意味があり、そこから派生して、体の筋肉を伸ばす柔軟体操のことを指します。正式には「ストレッチング(stretching)」や「ストレッチ体操」といいますが、略して「ストレッチ」と呼ばれることが一般的です。

ストレッチには、日常的なリラックスを目的とした「静的ストレッチ」から、スポーツなどのパフォーマンス向上を目的とした「動的ストレッチ」まで、さまざまな種類があります。ストレッチの効果を高めるには、それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。

ストレッチの効果

ストレッチには、柔軟性の向上だけでなく、血行促進や疲労回復など、さまざまな効果が期待できます。ここでは、ストレッチの主な効果について詳しく解説します。

柔軟性の向上

ストレッチをすると、筋肉や靱帯(じんたい)の柔軟性が高まり、体の動きがよりスムーズになります。また、筋肉をゆっくりと伸ばすように意識すると、筋肉を縮めようとする反射(ストレッチ反射)が和らぎ、筋肉がリラックスした状態を保ちやすいといわれています。

血行促進

ストレッチをすると、硬くなっていた筋肉や血管が刺激され、ストレッチ後の血流が増加します。血行がよくなると、体中に酸素や栄養が行き渡りやすくなるというメリットも。最近では、ストレッチをすることで血管の柔軟性が高まり、動脈硬化の予防につながる可能性があることもわかってきています。

疲労回復

ストレッチをすると血行がよくなり、筋肉に酸素や栄養が行き渡りやすくなるだけでなく、筋肉に溜まった老廃物を効率よく排出できるというメリットも。結果として筋肉の疲労回復が早まり、疲労感の軽減が期待できます。

肩こりや腰痛、関節痛の軽減

長時間同じ姿勢を続けたり、繰り返し同じ動作をしたりすると、筋肉の柔軟性に偏りが生じ、肩こりや腰痛、関節痛などの不調を引き起こすことも。ストレッチをすると、柔軟性の偏りや筋肉のこわばりが解消されるため、それらの不調の軽減につながります。

姿勢の改善

長時間の猫背や前かがみなどの姿勢は、特定の筋肉に負担がかかるため、肩こりや腰痛の原因に。肩甲骨や首のストレッチを継続的に行うと、関節の可動域が広がるため、姿勢の改善が期待できます。

リラックス効果

最近の研究から、ストレッチにはリラックス効果もあるということが明らかになってきています。余裕があるときは、30分ほどかけて全身の筋肉を順番に伸ばすストレッチをするのもよいでしょう。ストレッチをすると、体を休めるときに働く「副交感神経」の活動が活性化するため、深いリラックス効果を得られるといわれています。

ストレッチの種類

ストレッチには、大きく分けて「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴とおすすめのストレッチを紹介します。

静的ストレッチ

静的ストレッチは「スタティックストレッチ」とも呼ばれ、筋肉をゆっくりと伸ばしたまま、反動や動きはつけずに、その状態を一定時間保つストレッチ方法です。

静的ストレッチには、筋肉をリラックスさせることで柔軟性を高める効果があるといわれています。さらに、副交感神経が活性化されるので、心身が落ち着くというメリットも。特に、運動後や就寝前に行うと、リラックスしやすくなるといわれています。

・おすすめの静的ストレッチ

ストレッチは、伸ばしたい部位や目的に合わせてメニューを選ぶことが大切です。ここでは、首・背中や肩甲骨・腰を伸ばすおすすめのストレッチを紹介します。

【首のストレッチ】

  • ①リラックスしてイスに座り、左手で座面のへりを持つ
  • ②首を前に倒し、右に向ける
  • ③右手を頭の左側にあて、ゆっくり首を右斜め前に押し10秒キープ
  • ④反対側も同様に行う

【背中・肩甲骨のストレッチ】

  • ①足を開いて立ち、左腕をまっすぐ前に出す
  • ②右手で左の前腕をつかむ
  • ③左腕を右手で右側に引くようにし、上体を右側に向け10秒キープ

【腰のストレッチ】

  • ①仰向けになり、膝を両手で抱えて胸に近づける
  • ②腰が丸まるように両膝をしっかり引き寄せて30秒キープ
  • ③この動きを3回繰り返すのを1セットとして、1日3セット行う

※辛い場合は、お尻の下に座布団や枕などを敷くと楽にできる

動的ストレッチ

動的ストレッチは、関節や筋肉を動かしながら柔軟性を高めるストレッチ方法です。代表例としては、ラジオ体操が挙げられるでしょう。

動的ストレッチは、筋肉を動かしながら徐々に伸ばしていく「ダイナミックストレッチ」と、反動の力で筋肉を大きく引き伸ばす「バリスティックストレッチ」に分けられます。動的ストレッチには、運動のパフォーマンスを向上させるだけでなく、怪我を防止する効果もあるため、起床後や運動前の準備運動として行うとよいでしょう。

・おすすめの動的ストレッチ

動的ストレッチは、一般的に負荷が高いとされているため、無理のない範囲で行うようにしましょう。ここでは、負荷が少なく、簡単にできる2つの動的ストレッチを紹介します。

【肩甲骨のストレッチ】

  • ①足を開いて立ち、できるだけ高く腕を頭上に上げ、肘を伸ばして手の甲を合わせるようにする
  • ②肩甲骨を寄せながら、半円を描くように腕を下ろす。このとき、手のひらの向きが合うように手首を内側に返す

【体幹部の動きを高めるストレッチ】

  • ①四つんばいの姿勢になり、手は肩の下、膝は股関節の下を意識する。このとき、目線は下を向いた状態でセットする
  • ②ゆっくり息を吸いながら、へそを床に近づけるように背中をそらし、同時に肩甲骨を寄せる
  • ③ゆっくり息を吐きながら、肩甲骨をできるだけ引き離すように、背中を丸める

ストレッチの効果を高めるポイント

ストレッチを行う際は、いくつかのポイントを意識することで、効果をさらに高めることが期待できます。ここでは、ストレッチをより効果的に行うためのコツを紹介します。

無理をしない

柔軟性が低い筋肉を無理に伸ばすと、痛みをともなう「オーバーストレッチ」になり、筋肉を痛める原因となることも。そのため、ストレッチをする際は、無理せず、気持ちいいと感じる範囲内で行うことが大切です。「痛気持ちいい」と感じるくらいが、最も効果を得ることができるといわれています。

ストレッチしている筋肉を意識する

ストレッチをしている間は、どこの筋肉が伸びているか、意識するようにしましょう。「今は〇〇の筋肉が伸びている」と自分の体に意識を向けながら行うと、筋肉の状態を感じ取りやすくなります。

このように神経と筋肉の連携が高まると、ストレッチの効果がさらに向上します。また、筋肉を伸ばす際の力加減を調整しやすくなるため、ストレッチを安全に行えるようになるでしょう。

呼吸を止めない

ストレッチをしている間は、呼吸を止めないようにすることも大切。息を止めると体が緊張し、筋肉が十分に緩まらないだけでなく、血圧が上昇し、体に余計な負担がかかってしまう場合もあります。

鼻と口を使い、細く長くゆったりとした呼吸をしながらストレッチをすることで、リラックスした状態を保ちやすくなります。

最低でも20秒は伸ばすように心がける

ストレッチを行う際は、時間をかけてゆっくり伸ばすことが大切です。ストレッチを始めてから最初の5~10秒は、筋肉の伸ばし具合を調節するのに使われるため、すぐにストレッチをやめてしまうと十分な効果を得られません。

最低でも20秒以上は筋肉を伸ばすよう意識しましょう。呼吸が止まらないように、声に出しながらゆっくり20秒カウントするのもおすすめです。

ストレッチにおすすめのタイミング

ストレッチと一口に言っても、静的ストレッチと動的ストレッチでは、適したタイミングが異なります。それぞれの特徴に応じたタイミングで行うようにしましょう。

静的ストレッチは、お風呂上がりなど、体が温まっているときに行うのがおすすめです。また、デスクワークの合間にストレッチを取り入れれば、長時間の座りっぱなしで緊張した筋肉をほぐせるので、肩こりや腰痛の緩和も期待できるでしょう。

動的ストレッチは、スポーツやフィットネス前のウォーミングアップとして取り入れるのがおすすめです。筋肉が適度に温まり、怪我の防止やパフォーマンスの向上につながるといわれています。

健康のためにストレッチと併せて行いたいこと

健康な生活を送るためには、ストレッチだけでなく、生活習慣を整えることも大切です。ここでは、健康のためにストレッチと併せて行いたいことを紹介します。

湯船につかる

湯船につかると体が温まり、全身の血行が促進されます。特に40℃前後のお湯に10~15分浸かると、副交感神経が活性化し、リラックス効果も得られるでしょう。

また、就寝の1~2時間前に入浴すると、体温が一時的に上がり、その後の体温低下によって、快眠につながるとされています。睡眠の質を高めたい方は、入浴するタイミングを意識してみるのもよいでしょう。

質のよい睡眠を十分にとる

睡眠不足は生活習慣病やうつ病のリスクを高めるとされています。適切な睡眠時間は年齢や季節、個人差により異なりますが、6~8時間程度が妥当といわれています。

また、健康を維持するためには、質のよい睡眠は欠かすことができません。質のよい睡眠をとるためには、毎日同じ時間に就寝・起床し、体内時計を整えることが大切です。また、運動習慣がある人は、不眠に関する悩みが少ないということもわかっています。軽いウォーキングなど、運動を習慣にするのもよいでしょう。

栄養バランスを見直す

健康を維持するには、バランスのよい食事を心がけることも重要です。筋肉疲労や血行不良を解消したい場合、ビタミンB群とビタミンEを意識的に摂取するようにしましょう。

・ビタミンB群(ビタミンB1・B6・B12
ビタミンB群には、筋肉を動かすために必要なエネルギーの代謝を助ける働きがあります。疲れや筋力低下を感じている場合は、ビタミンB群を多く含む食品を普段の食事に取り入れるようにしましょう。

【ビタミンB群を含む食品】

  • ・ビタミンB1: 豚肉、豆類など
  • ・ビタミンB6: あさり、牡蠣、いわし、のりなど
  • ・ビタミンB12: ブロッコリー、かぼちゃ、ごまなど

・ビタミンE
ビタミンEは、毛細血管を拡張し、血液の流れを改善する働きのある栄養素です。不足すると肩こりや冷え症の原因になることがあるため、血行を促進したい人は、下記のような食品の摂取を心がけましょう。

【ビタミンEを含む食品】

  • ・アーモンド、ほうれん草、うなぎ、植物油など

ビタミン剤などの市販薬を活用する

ストレッチをしても疲労が回復しない、肩こりや腰痛、関節痛が改善されないといった場合は、ビタミンなどの栄養素が不足している可能性があります。食事だけで十分な量を摂るのが難しい場合は、毎日服用でき、体の内側から不調を改善できるビタミン剤などの市販薬を活用するのもよいでしょう。

特にビタミンB1には、筋肉疲労の回復を助ける効果が期待されています。筋肉を使いすぎると、エネルギー源であるATPが大量に消費され、結果として筋肉のエネルギー不足が起こります。ビタミンB1は、糖質からエネルギー源であるATPを効率よく作れるようサポートし、疲労回復を早めてくれます。

ビタミンB1とエネルギー源であるATPの関係

疲労が気になる場合は、筋肉や神経に働くビタミンB群や体全体の血液循環に関与するビタミンEが配合された製品を選ぶのがおすすめです。

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体の不調が改善されない場合は病院で診察を受けるように

ストレッチやビタミン剤を試しても筋肉疲労や肩こり、腰痛が改善されない、常につらい症状があるという方は、セルフケアでは対処が難しい場合があります。時には、内臓疾患など、思わぬ病気が隠れていることも。体の不調が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

肩から腕にかけて痛みがある場合は、心疾患のサインの可能性もあります。緊急を要するケースもあるため、違和感を覚えたら、すぐに医師の診断を受けるようにしましょう。

ストレッチにはさまざまな効果が! 生活習慣の見直しと共に取り入れてみよう

ストレッチを継続して行うと、筋肉の柔軟性が高まるだけではなく、疲労回復や肩こりの軽減、血行促進などさまざまな効果が期待できます。さらに、ストレッチにはリラックス効果もあるため、仕事の休憩時間や就寝前などに行い、習慣化するとよいでしょう。健康のためには、ストレッチに加えて、食事や睡眠など、基本的な生活習慣を見直すことも大切。ストレッチをしても疲労が回復しなかったり、肩こりなどの不調などが改善されなかったりする場合には、ビタミンB群やビタミンEが配合されたビタミン剤を服用するのもおすすめです。体の不調や痛みが長引く場合は、思わぬ疾患が原因になっている場合もあるので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

<参考文献>
  • 「頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える」竹谷内康修, 徳間書店
  • 「スポーツ医・科学的 トレーニング情報 No.60」公益財団法人富山県スポーツ協会 富山県総合体育センター
  • 「公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト6 予防とコンディショニング」財団法人 日本体育協会
  • 「一瞬で体が柔らかくなる動的ストレッチ」矢部亨, 青春出版社
  • 健康長寿ネット「ストレッチングの目的・効果・種類」
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/stretching.html
  • E-ヘルスネット「ストレッチングの効果」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-006.html

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