更新日:2023年8月31日

ストレートネック(スマホ首)とは? 体に与える影響や、痛みをやわらげる方法を紹介

スマートフォンやパソコンの長時間使用などによって姿勢が悪くなり、首に負担がかかっている状態を指す「ストレートネック(スマホ首)」。首のこりや痛みにつながることから、現代人を悩ませる体の不調として知られています。今回は、ストレートネックの原因や体に与える影響、おすすめのストレッチなどを紹介します。

監修

竹谷内 康修 先生

整形外科医・カイロプラクター

INDEX

ストレートネックとは?

そもそもストレートネックとは、首の骨(頚椎)がその名の通りまっすぐになった状態で固定してしまうこと。通常、私たちの頚椎は前方に向かって緩やかなカーブ(前弯)を描きながら体の真上にある重い頭を支えていますが、ストレートネックでは頭が前に出るため、首に大きな負担がかかります。スマートフォンやパソコン、タブレットなどを操作する際に、頭が前に出たり下を向いたりすることが主な原因のため、「スマホ首」として知っている人も多いのではないでしょうか。

ストレートネックは、「筋性のストレートネック」と「骨性のストレートネック」の大きく2つに分けられます。筋性のストレートネックは、悪い姿勢を長時間続けることで筋肉がこわばってストレートネックになる場合。骨性のストレートネックは、頚椎が押しつぶされたり、頚椎同士の隙間が狭くなったりと、頚椎そのものが変形してストレートネックになる場合を指します。筋性のストレートネックが悪化して椎骨や椎間板に影響が出ることで生じます。

ストレートネックは日頃の姿勢によるもので、生まれつきの体質ではありません。若年層をはじめ幅広い年齢層で見られる症状です。

ストレートネックが体に与える影響は?

人間の首は、7つの椎骨からなる頚椎と、胸鎖乳突筋や僧帽筋などの筋肉で頭を支えており、成人の頭の重さは頚椎が通常の位置にある状態でも約5kg。これが30度前に傾くだけで約18kg、60度傾くと約27kg相当と、その重量は劇的に増加します。

ストレートネックによって頭をうまく支えられないと、周辺の筋肉に必要以上の負荷がかかってはりやこりが生じやすくなり、その結果、血流が悪くなります。やがては頚椎の変形(骨性のストレートネック)を招く可能性もあります。また、筋肉のこりが続くと、頚椎の関節に負担がかかり、関節から痛みなどの症状が発生することもあるでしょう。頚椎が変形すると、神経を刺激して痛みやしびれを生じることもあります。

あなたはストレートネック? 簡単セルフチェック方法

ストレートネックになっているかどうかは、自宅などで簡単にセルフチェックできます。

まず、壁にお尻と背中をつけて立ち、後頭部・肩甲骨・お尻・かかとの4箇所が自然に壁にくっついているかをチェック。後頭部が壁から浮く、無理をしないとくっつかない、という場合はストレートネックになっている可能性が高いです。

ストレートネックへの予防・対策のポイント

姿勢をよくする

ストレートネックを防ぐには、首に負担のかかる悪い姿勢を正すことがなにより大切です。スマートフォンやタブレットを操作する際はなるべく高く持ち上げ、画面と目の高さが同じになるようにしましょう。重くて腕が疲れるときは、電子機器を持っている方のひじを逆の手で支えるとラクになります。机がある場合は、ひじをついたり、スタンドを使用したりするのもおすすめです。

座っているときの姿勢

正しい姿勢を保つには、イス選びも重要です。自分の体に合った大きさで、ひじ掛けがなく、座面と背もたれにクッション性のあるものが良いでしょう。また、背中と背もたれの間に隙間がなく、座った状態で力を抜いても背筋が伸びた状態を保てるイスがおすすめです。ソファは沈み込みすぎないしっかりしたもので、背もたれに十分な高さがあるものを選ぶと良いでしょう。

デスクワーク時の姿勢

パソコン機器は、猫背防止のためできるだけデスクトップ型を使用するのがおすすめ。ノートパソコンの場合は、画面を10〜15cmほど高くし、外付けのキーボードを使用すると良いでしょう。骨盤を起こして背中を伸ばし、両肩と頭を引いて背もたれに寄りかかった姿勢が、正しい姿勢です。

運転中の姿勢

運転中はハンドルが体から遠くならないように保つことが大切です。シートに深く座り、腰とシートの間にクッションなどの補正具をあて、骨盤が後ろに倒れるのを防ぎましょう。背もたれはリラックスして寄りかかれる最も小さい角度に、シートの前後位置はハンドルを180度回しても背もたれから肩が浮かない位置が理想です。必要に応じて、ハンドルの前後位置も調整し、背もたれに寄りかかりやすい姿勢をとりましょう。

座っている姿勢は、立っている姿勢や寝ている姿勢より体に負担がかかります。日頃から正しい姿勢を心がけましょう。

血行を促す

筋肉がこわばって血行が悪くなり、首にこりや痛みを感じるときは、蒸しタオルをあてる、湯船につかるなどして温めましょう。緊張がほぐれて、リラックスすることで、体に溜まっていたこりが解消します。10〜20分、熱すぎないお湯にゆったり浸かると、高い心身の休息効果も得られます。

適度な運動とストレッチを行う

散歩や柔軟体操をはじめとする全身運動は、精神面にも良い影響を与え、筋肉のこわばりの解消につながるとされています。

この他にも、自宅などで手軽にできる次のようなストレッチを実践してみてください。

(立って行う)胸のストレッチ

かたくなった胸の筋肉と胸椎を伸ばし、猫背を解消します。

STEP1:足を肩幅に開いて立つ。両腕を背中側に持っていき、お尻のあたりで両手を組む
手の組み方は自由です。肩が痛む人は無理に組まなくてもOK。両腕を後ろに反らすだけでも効果があります。

STEP2:顔を上に向ける。両腕を体から離し、腕全体をななめ下方向に引き下げる。左右の胸と胸椎の伸びを意識しながら、20秒キープ
上体をしっかり反らし、左右の肩甲骨を寄せるのがポイント。3セット繰り返しましょう。

(前に出た頭の位置を改善する)チンタック

首の前側の筋肉を鍛え、前に出た頭の位置を体の真上に来るようにリセットします。また、ストレートネックからカーブをとり戻します。

STEP1:背筋を伸ばしてイスに座り、あごの先端に人差し指をそえる
あごを引くときに首を後ろに反らしたり、顔の向きが変わったりするのはNGです。

STEP2:首の前側の筋肉に力を入れ、首が反らないようあごを指で押しながら頭の位置を後ろにスライド。最大限引いたところで1〜2秒キープ
指をそえずに行ってもOK。正しくできていると、肩甲骨の間あたりの背骨に張力を感じます。

食事から栄養素をバランスよく摂取する

ストレートネックによる首のこりや痛みを予防するには、末梢神経の修復に関与するビタミンB群や、血液循環の改善に関わる働きのあるビタミンEを摂取すると良いでしょう。

筋肉の疲れをとる「ビタミンB1、B6、B12

首のこりや痛みの主な原因は、筋肉に蓄積された疲労です。ビタミンB1、B6、B12などのビタミンB群は、神経の働きに関与し疲労回復効果があるため、摂取を心がけましょう。

末梢の血液循環に関わる「ビタミンE」

ビタミンEは、体のすみずみの毛細血管を広げ、血液の流れをよくする働きに関与しています。血行がよくなると、筋肉の活動に必要な栄養分や新鮮な酸素が全身に運ばれるため、筋肉の疲れもやわらぎます。

市販のビタミン剤やサプリメント、外用薬を活用する

首のこりや痛みの緩和として、市販のビタミン剤やサプリメント、湿布などの外用薬を活用するのもおすすめです。市販のビタミン剤やサプリメントを購入する際は、先に挙げたビタミンB群やビタミンEが入っているものを選びましょう。

抗疲労成分「フルスルチアミン」

フルスルチアミンは、もともと体に吸収されにくい特性をもつビタミンB1を吸収されやすくしたビタミンB1誘導体の医薬品成分です。ビタミンB1は、三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)とともに、エネルギーを作り出すのに重要な栄養素の一つ。不足すると、疲れの原因になると考えられています。

筋肉や神経の細胞でエネルギー産生を促進し、疲れやこりなどに効果を現します。

末梢神経の修復に関与する「メコバラミン」

メコバラミンは、体の中ですぐに働ける形である活性型ビタミンB12であり、医薬品の成分として市販薬などに配合されています。

ビタミンB12は、神経の機能維持に役立ち、末梢神経の修復に関与します。一方、不足すると貧血を起こしたり、末梢神経の働きが悪くなって手足がしびれたりします。

同じビタミンB群で、細胞の生産や再生に関わる葉酸と協力して働き、末梢神経の修復に関与することが知られています。

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外用薬

湿布などの貼り薬、塗り薬は、患部の炎症をしずめて痛みをやわらげる効果があります。首のようによく動き、目立ちやすい場所には、塗り薬を使用するのも良いでしょう。

日々の姿勢が大切! 痛みが強いときは我慢せずに受診を

ストレートネックを防ぐためには、日頃から正しい姿勢を意識し、首への負担を少しでも軽くすることが重要です。痛みが強い場合は頚椎に影響が出ていることも考えられるので、放置せず整形外科などの医療機関を受診しましょう。

<参考文献>
  • 「首を伸ばして自分で治す!頸椎症」竹谷内康修
  • 「頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える 」 竹谷内康修
  • 非活動に伴う逸脱姿勢による弊害に対する理学療法介入の効果:システマティックレビューとメタアナリシス
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/36/2/36_285/_pdf

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