更新日:2022年11月29日
「首こり」に効くストレッチは?首がこる原因を知って正しく対処しよう
現代病ともいえる「首こり」の多くは、パソコンやスマートフォンの長時間使用などが原因で生じるといわれています。つらい首こりの予防や改善にはストレッチが有効なことが少なくありません。首こりが起こる原因と正しい対処法を知って、首のこりを上手に解消していきましょう。
監修・ストレッチ考案
大月 直美 先生
健康運動指導士
INDEX
首こりとは?
筋肉が縮んでかたくなったり、こわばったりした状態になることを「こり」といいます。それが、首の後ろ側のうなじ周辺の筋肉に生じることを「首こり」と呼びます。
長い時間、集中して同じ姿勢でパソコンに向かい続けたり、スマートフォンやタブレットなどを見て目を酷使したりすると、首の後ろ側の筋肉が緊張した状態が続き、血行障害が生じます。すると、筋肉が疲れてこわばり、首こりになります。
また、首こりになると首周辺の筋肉に老廃物がたまり、それらが神経を刺激した結果、痛みなどの症状があらわれることもあります。
首こりの原因
頭を支えることによる負荷
首こりが生じるのは、直立歩行をする人類の宿命ともいえます。2本の足で直立して活動するようになったヒトは、重たい頭を首や肩で支えなければならなくなりました。
頭の重さは体重の8~10%といわれています。体重の1割近い重さの頭を支えるため、首と肩には日常的に負荷がかかった状態になっており、それが首こりの一因になっていると考えられます。
長時間同じ、または悪い姿勢でいることによる筋肉の緊張と疲労
姿勢も首こりの原因のひとつです。首や背中が緊張し、負荷がかかるような姿勢で長時間過ごしていると、こりが生じやすくなります。
具体的には、スマートフォンの長時間使用によるスマホ首(ストレートネック)、デスクワーク中心の座りっぱなしの生活、ドライバーや美容師のように仕事で同じ姿勢を長時間続けやすい場合などが当てはまります。同じ姿勢の連続は、首や肩の筋肉に無意識に負担をかけます。猫背や前かがみといった、クセのある姿勢にも同じことがいえます。
眼精疲労
目の使いすぎによって眼球周辺の筋肉が疲れることを眼精疲労といいます。眼精疲労が生じると、物を見たりピントを合わせたりするのに時間がかかり、姿勢が悪くなることがあります。その結果、肩こりや首こりを引き起こしやすくなります。
長時間のパソコン作業、スマートフォンやタブレットなどの画面を長く見続けることは、目の酷使につながり、眼精疲労を生じさせることがあるため、要注意です。
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運動不足
日頃から体を動かさず、筋肉が使われない状態が続くと、筋肉に緊張や疲労が生じやすくなります。加えて筋肉量も減ってしまうため、結果として肩や首がこる原因となります。
反対に、日頃から運動などで体を動かす機会が多く筋肉量の多い人は、血行不良を起こしにくく、こりが生じにくい傾向にあることがわかっています。
精神的なストレス
私たちは過剰なストレスを受け続けると、自律神経の働きに乱れが生じ、血行障害が起こりやすくなります。そして血行障害が首周辺の筋肉に生じると、首こりの原因となります。
また、精神的なストレスは脳の働きを妨げる原因にもなり、脳の働きの低下は、筋肉などの血流不足を生じさせ、筋肉のこりを引き起こしやすくなります。
心臓や内臓の病気
単なる筋肉の疲労や血行障害によって、こりが生じていると思っていたら、内臓の病気からくるものだったというケースもあります。
例えば階段をのぼっている最中など、体を動かしているときに首や肩が痛む場合は、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気がひそんでいる可能性があります。また、心臓以外に肺がんや膵炎(すいえん)、胆石症などの病気でも、症状のひとつとして肩や首の痛みが出ることがあります。
痛む場所がはっきりしなかったり、痛みのある部位を押しても痛みが増したりしない場合は、筋肉のこりではなく内臓の病気による痛みである可能性が考えられます。気になるときは早めに医療機関を受診しましょう。
頸椎(けいつい)の病気
首や肩の痛みにともない、手足のしびれやまひがある場合は、頸椎(けいつい)の病気が原因で痛みが生じている可能性もあります。頸椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症、後縦靱帯骨化症といった病気によって、痛みが生じているかもしれません。
「たかが首こりだろう」と軽視せず、思い当たる症状がある場合は医療機関を受診してみましょう。
首こりの予防法
日常的な姿勢の改善
日常生活には、首や肩のこりを招きやすい動作や姿勢がたくさんあります。
まず、慢性的な姿勢の乱れ。これは頭蓋骨と首の骨をつなぎ、首の後ろ側の僧帽筋よりも奥深くにある後頭下筋群(こうとうかきんぐん)とよばれる筋肉に負担をかけ、こり固まらせます。
特に、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの画面を見るため、不自然に下を向いた姿勢を続けていると、筋肉への負担は増えます。それによって血流も滞り、こりが生じやすくなるほか、ストレートネックにもつながるため、首の筋肉にさらに負担をかけてしまいます。こうした姿勢をとらないよう、日常的に意識することが大切です。
また、良い姿勢を意識していても、同じ姿勢を長時間とり続けると、首や肩のこりを引き起こすことがあります。この後に紹介する首や肩まわりの運動やストレッチを日々心がけ、疲労を蓄積させないようにするのも重要な予防策のひとつです。
日常生活や運動などで体を動かす
運動不足で筋肉を動かさない時間が続くと、筋肉の血流が減って疲労がたまり、こりが生じやすくなります。適度な運動で体を動かし、筋肉の血流不足の予防や改善に努めましょう。
体を動かすことは、わざわざスポーツをしなくても、通勤や買い物などで歩く、階段の昇降をするといった日常の動きの延長でも、十分に実現可能です。積極的に取り入れていきましょう。
ストレッチをする
ストレッチで筋肉を伸ばしてほぐし柔軟性を高めることは、血流を良くし、首や肩のこりの予防・解消に効果があります。
ただし、力を入れて無理に伸ばそうとすると、かえって筋肉を傷めてしまう危険性があります。痛みが出ない程度の軽い負荷からはじめ、少しずつ強度を上げていきましょう。
また、ストレッチには筋肉の柔軟性を高めるだけでなく、リラクゼーションによる精神的ストレスを緩和する効果も期待できます。
ストレスをためない
精神的なストレスも、筋肉にこりを生じさせる要因です。定期的にストレスの緩和や解消をすることは、首こりの予防になります。
趣味に没頭するなど自分なりのストレス解消法を持っておき、首こりの予防に努めましょう。
首や肩を冷やさない
夏のエアコンによる冷やし過ぎや冬の寒さは、血流を滞らせるうえ、寒さで体を縮めることによって筋肉が緊張し、こりの原因になります。冷気をなるべく避け、首や肩を冷やさないようにすることが大切です。
もしも冷えてしまったときは、蒸しタオルやカイロなどを使って首と肩を温めたり、湯船に首までつかったりして血流を促しましょう。
首こり解消におすすめの簡単ストレッチ3選
首の筋肉の緊張をほぐし、血流を良くするのにストレッチは効果的です。ここでは首こり解消におすすめのストレッチをいくつか紹介します。
首まわりのストレッチ①
- ❶首を左側に倒します。
- ❷左手を側頭部に添え、右腕はできるだけ床の方へ引き下げ、20秒程度静止します。
- ❸そのまま、首を左斜め下に倒し、顎を引いて20秒程度静止します。
- ❹腕を下ろして首を正面に戻したら、反対側も同様におこないます。
首まわりのストレッチ②
- ❶右手を左肩にのせ、肩を引き下げるように手で押さえます。
- ❷顎を引いて首を右側にひねり、できるだけ後ろを振り向き、20秒程度静止します。
- ❸首を正面に戻し、腕を下ろしたら、反対側も同様におこないます。
首の前面から胸のストレッチ
- ❶体の後ろで両手を組み、左右の肩甲骨を引き寄せます。
- ❷肘を伸ばし、腕を斜め下へ引っ張ります。
- ❸胸を押し出し、頭を後ろへ倒して顎を引き上げ、10秒程度静止します。
注意点:腰を反らないよう気を付けましょう。
首の後ろに痛みや違和感がある場合は、首を後ろへ倒さずおこないましょう。
首こりには食事も大切
食生活を見直し、首や肩のこりの改善につながる栄養素を積極的に摂ることは大切です。
特にビタミンEは血行障害の改善に効果的な栄養素として知られています。
首こりや肩こりにお悩みの場合、ビタミンEを多く含むアーモンド、かぼちゃ、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、キウイフルーツ、うなぎ、はまち、かれいなどを食事に1品プラスしてみてはいかがでしょうか。
また、不飽和脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、動脈硬化を予防して血行を促進する作用があります。DHAやEPAはいわし、あじ、さば、さんま、まぐろなどの背の青い魚に豊富に含まれています。
首こりの改善に少しでもつなげるためにも、バランスのとれた食生活を心がけましょう。
市販薬で首こり、肩こりの改善も
市販薬には首こりの効能を持ち、次のような成分が配合されたものなどがあります。
使用の際には医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
神経痛などに有効な活性型ビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」
首のこりの主な原因は、筋肉に疲労がたまることです。そのため疲労回復に効果のあるビタミンB群を摂取すると、疲労が軽減され、こりの解消につながることが期待できます。
ビタミンB群にはビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、イノシトールなど、たくさんの種類があります。なかでもビタミンB1は、筋肉や神経細胞でエネルギー産生を促進し、筋肉や神経の働きを正常に近づけることで首こりや肩こりを緩和します。しかし、ビタミンB1は体に吸収されにくいという特性があります。
そこで、吸収されやすいビタミンB1誘導体であるフルスルチアミンが配合されたものを活用するのも有効です。その他、神経の機能維持に関与する働きがあるビタミンB6も、首こり・肩こりの改善に効果があるとされています。
末梢神経の修復に関与する「メコバラミン」
メコバラミンは、体の中ですぐに働ける形である活性型ビタミンB12です。
ビタミンB12は、神経の機能維持に役立ち、末梢神経の修復に関与します。活性型ビタミンB12は体の中で活性型に変換される必要がなく、そのまま働くことができます。
また、葉酸と協力して働き、末梢神経の修復に関与することが知られています。
ストレッチなどのセルフケアに加え、医薬品でこうした有効成分を補うのも、積極的なこり対策につながると考えられます。
血液循環に関与するビタミンE
ビタミンEを医薬品から補うのも、こり対策に有効です。
ビタミンEには、毛細血管を広げ、血液の流れを良くする働きに関与しています。血行が良くなると、筋肉の活動に必要な栄養分や新鮮な酸素が運ばれ、筋肉の疲れがやわらぎます。
ビタミンB群とともに、ビタミンEが配合された医薬品を服用して、首こりの対策をするのもひとつの方法です。
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日常生活でのケアと適切な受診で首のこりを改善しよう
首こりの原因はさまざまです。ストレッチや積極的に体を動かしたりして血行を良くし、食事や栄養などにも注意しながら、こりの早期改善、悪化防止を目指しましょう。
また、首のこりは多くは生活習慣などによる筋肉の疲労が関係していますが、なかには内臓の病気が影響していることもあります。症状が長引いたり、日常生活に支障をきたすほどのこりによる痛みの他、しびれなどをともなう場合は、医療機関を受診してください。
- <参考文献>
- 主婦の友社「家庭の医学」p579-580
- 「肩こり」|日本整形外科学会症状・病気をしらべる
- 肩こりの対症療法|日本臨床内科医会