更新日:2023年8月31日

休日ずっと寝てしまう原因とは?可能性のある病気や寝すぎないための対策とよい睡眠のための栄養習慣を解説

休日ずっと寝てしまうのをどうにかしたい…。

日曜日の夜になると「また何もせずに休日が終わってしまう」と罪悪感を抱いたり、焦りだしたり、あるいは「何かの病気のせい?」と不安になる人もいるのではないでしょうか。

そんな人たちに向けて、休日をずっと寝て過ごしてしまう原因や、寝すぎを解消するための対策を解説します。

監修

中村 真樹 先生

青山・表参道睡眠ストレスクリニック 院長

INDEX

休日ずっと寝てしまう…その原因は?

平日の睡眠不足

休日なのに、ずっと寝て過ごしてしまうというとき、最も多い原因として考えられるのは、睡眠不足です。とくに、平日の睡眠時間が足りていないことが挙げられます。

睡眠不足が続くと、睡眠負債という週末の1~2日長く寝る程度では解消されないくらいの「睡眠の借金」が蓄積します。睡眠不足の影響は眠ることでしか解消できないため、休日などに長く寝てしまうようになるのです。また、睡眠の役割のひとつが「疲労回復」なので、睡眠時間が足りなければ、必然的に疲労も蓄積します。

睡眠障害の世界的な診断基準であるICSD-3(睡眠障害国際分類第3版)では、「医学的に推奨される睡眠時間未満の睡眠で日中に眠気を認め、休日等に長く寝てしまう(平日よりも2時間以上)」場合、「睡眠不足」を第一に疑います。米国睡眠財団による2015年の報告では、18~64歳に推奨される心身の健康を維持するために必要な睡眠時間は7~9時間とされています(Sleep Health 1(1), 40-43, 2015)。

逆に、睡眠不足を休日に一気に解消しようと、週末に長く寝るという方もいらっしゃいますが、一時的に睡眠不足や睡眠負債の解消ができても、遅くまで寝てしまうことで睡眠リズムが乱れてしまいます。それどころか、かえって次の週の平日の睡眠を妨げ、平日の寝不足・疲れをさらに蓄積させるという悪循環を招いてしまいます。

平日に規則正しく7~9時間の睡眠をとっているにもかかわらず、休日に長く寝てしまう場合、眠りの質を悪くする体の病気や就寝環境に問題が隠れていることがあるため、その他の原因についてはこの後ご紹介します。

生活習慣の乱れ

生活習慣が乱れていると、睡眠時間が不足したり睡眠の質が低下したりしやすくなり、睡眠負債につながります。

睡眠の質が低下する生活習慣の乱れの一番の原因は、夜更かしや不規則な生活です。また、運動不足や、食事の偏りなども眠りに影響します。

その他にも、夕食後にスマートフォンやゲームなどのディスプレイ操作に多くの時間を割くと脳が覚醒状態になってしまい、その結果、寝つきが悪くなります。そして眠りのリズムが遅寝・遅起きに慣れてしまうと、平日は遅寝のリズムのまま出勤のため早起きすることになり、平日に寝不足を積み重ね(睡眠負債の蓄積)、そのしわ寄せで週末を寝て過ごすという結果につながります。

・社会的時差ぼけ

近年「社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)」という、海外旅行に行っていないのに、休日に遅寝・遅起きをしたことで、平日はあたかも海外旅行に行った後のような時差ぼけと同じ状態になることが注目されています。

社会的時差ぼけの例として、土日が休みの場合に金曜日や土曜日の夜は夜更かしして遅くまで起き、土曜日や日曜日の朝は遅くまで寝てしまい、月曜日には早起きするという生活を考えてみましょう。そのような生活パターンでは、あたかも週末、海外旅行に行って、週明けに帰国するという時差ぼけを繰り返しているのと同じ負担が体にかかります。海外旅行を楽しんだわけでもないのに、時差ぼけ同様に疲れと寝不足がひどくなるのです。

日本人だと、平均55分(睡眠時間帯の中央値の差)の社会的時差ぼけを経験していて、1時間以上の人も40.1%を占めるというデータが報告されています。この数値は、若年層でより高いこともわかっています。この睡眠時間帯の中央値の差が2時間を超えると、平日の寝つきの悪さと寝起きの悪さの原因になるといわれています。

睡眠環境の悪さ

夜の睡眠環境の悪さが眠りの質を悪くし、質の意味での「寝不足」になり、休日ずっと寝てしまう原因のひとつになります。

睡眠環境が悪いと、夜寝つくのに時間がかかって睡眠時間が短くなったり、寝苦しくて途中何度も目が覚めるなど質のよい睡眠が得られなかったりします。これでは十分な休息がとりにくいため、質の悪い睡眠を時間でカバーしようと時間のある休日に多く寝てしまうことになります。

睡眠環境と一言であらわしても、騒音が気になる、照明が明るすぎる、室温や湿度が適切でない、枕の高さや硬さなどがあっていない、などさまざまです。

何らかの病気・症状

休日ずっと寝てしまうだけでなく、平日に十分な睡眠時間をとっているにも関わらず平日も日中の眠気がとれないという場合、眠りの質を悪くする何らかの病気や服用している薬の影響も考えられます。

睡眠に関わる病気や症状で、代表的なものは、

  • ・鼻づまり(鼻炎)
  • ・せき(喘息、気管支炎など)
  • ・トイレが近い(頻尿、胃腸炎など)
  • ・節々の痛み(リウマチ、関節痛など)
  • ・皮膚のかゆみ(アトピー性皮膚炎など)
  • ・睡眠時無呼吸症候群
  • ・中枢性過眠症(ナルコレプシー、特発性過眠症など)
  • ・むずむず足症候群(足を動かさずにいられなくなる)
  • ・メンタルヘルス系の疾患(うつ病、過度の不安、燃え尽き症候群、HSP…)

などが挙げられます。

その他、女性の場合は、月経前症候群(PMS)や更年期障害、貧血(鉄欠乏状態)も睡眠を妨げることがあります。

薬については、ステロイド薬(抗炎症薬)、β遮断薬(高血圧や心不全などで使われる薬)などで、寝つきが悪くなることがあります。

※気になる症状が続く場合は、早めに主治医へ相談や医療機関で受診をするようにしてください。

休日寝すぎないためにできる対策

休日ずっと寝てしまわないために、日常的に医学的に推奨される十分な睡眠時間を規則正しく確保することが大切です。ここでは、睡眠のリズムを整えるために実践したい対策をご紹介します。

生活習慣を整える

・早起きして日光を浴びる

早起きをして日光を浴びることは、日中の覚醒維持と夜の自然な眠気による入眠につながり、休日に寝すぎないための対策になります。ただし、早く起きるだけではなく、十分な睡眠時間を確保するため、逆算して就寝時刻も早めなければ、逆に寝不足を蓄積させることになるので注意が必要です。例えば、6時起床なら、7時間の睡眠を確保するためには夜11時より前に就寝する必要があります。

夜にしっかり眠れた後に朝に日光を浴びることで、メラトニンの分泌にリセットがかかり、その14~16時間後に睡眠を促すメラトニンの分泌がはじまります。つまり、朝6時に起床して日光を浴びたときは、20~22時にはメラトニンの分泌がはじまり、自然に眠くなってきます。また、目覚めたときの明るい光刺激が交感神経を適度に刺激し、スッキリ目覚める効果が見込めます。

朝早く起きて日光を浴び、就寝時刻を早めて、次の日起床時刻までたっぷり寝るようにしてみましょう。

・日中に体を動かして適度に疲れておく

運動による適度な疲れは、心地よい眠りにつくために必要です。

日中にあまり動かなかったり、睡眠不足を解消しようとして長時間の昼寝や夕方以降に仮眠をとったりすると、夜になっても身体的な適度な疲れが生じないために、眠れなくなることがあります。

逆に、過度な運動で気分が高ぶったり、体の火照りや筋肉痛があると、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなることがあるので、夕方以降は、軽く汗ばむ程度の適度な運動にとどめましょう。

・夕方以降は昼寝やカフェインの摂取をしない

夕方以降の昼寝やカフェインの摂取は、夜間の睡眠を妨げます。

眠れなかった翌日に、眠気覚ましのためにカフェインを摂る、昼寝をするなどはよいアイデア。ただし、時間を間違えると夜眠れない原因になるため、どちらも午後早めの時間帯(午後3時頃)までとすることを心掛けてみてください。

・寝酒をしない

寝酒(寝る前の適度な飲酒)は、寝つきをよくする効果はありますが、中途覚醒しやすくなり睡眠の質を低下させるため、次の日に眠くなる原因になります。

また、寝酒によって睡眠中にトイレに行きたくなりやすいことも、睡眠の妨げとなるため、夜ぐっすり寝て、休みの日に活動したい場合は控えるとよいでしょう。

睡眠環境を改善する

・寝るときは真っ暗がおすすめ

寝室はなるべく暗い方が睡眠に適しています。

明るいと、夕方から夜にかけて脳を眠りモードにするメラトニンの分泌が減ってしまうためです。

夜寝るときは暗くして、なるべく質のよい睡眠を確保すると、日中の眠気を抑えることにつながるでしょう。

・テレビやYouTubeをつけっぱなしで寝るのはNG

テレビやYouTubeをつけっぱなしで寝てしまうのはよくありません。そこから発する音や光は、脳を刺激し、寝つきにくくなるためです。

また、寝る前にテレビやパソコン、スマートフォンなどのブルーライトの強い画面を見ることも眠りを促すメラトニンの分泌を抑制するため、避けるのがおすすめです。

寝る1~2時間前からは、ブルーライトを抑えた電球色の照明や間接照明がおすすめですが、難しければ部屋の照明の照度を少し暗くし、だんだんと脳への光刺激を少なくしてみてください。

・温度や湿度を調整する

部屋の温度や湿度を調整することも睡眠環境を改善する方法のひとつです。

眠気は深部体温の低下とともに起こるのですが、室温が暖かすぎると深部体温が低下しにくくなって、寝つきが悪くなる可能性があります。

また、乾燥も口や鼻の粘膜の乾燥をもたらし眠気を妨げるため、加湿器を設置する、濡れタオルをかけておくなど、どのような方法でもよいので、加湿を心掛けましょう。

睡眠の質を改善する食生活を心掛ける

休日を寝て過ごさないためには食生活も大事な要素です。

・寝る直前の食事は避ける

夜遅い食事は体内時計を夜型に遅らせてしまうという報告があります。また、遅い時間の食事は脂肪を体に蓄積させるため、肥満や生活習慣病のリスクを高めます。帰宅が遅くなりそうなときは、残業前の休憩時に軽食を摂るようにしましょう。空腹も脳を覚醒させる原因になってしまうため、帰宅後に小腹が空いているようなら脂質・糖質を控えたもの(サラダや豆腐や鶏肉のささみ料理など)を選んでみてください。

・睡眠の質を改善する栄養素を摂る

睡眠の質を改善・向上するとされているトリプトファン、グリシンなどの栄養素や、睡眠に必要なセロトニンやメラトニンの合成に必要なビタミンを摂取することで、質のよい睡眠につながります。また、鉄不足や亜鉛不足も睡眠に影響を与えるとされていますが、ビタミンやミネラルの過剰摂取には注意が必要です。

<睡眠の質を改善・向上する栄養素>

●トリプトファン トリプトファンは、脳をリラックスさせるホルモンであるセロトニンの合成に必要な必須アミノ酸です。魚介類、鶏肉、卵、大豆製品、ゴマなどに多く含まれています。

●グリシン 脳をクールダウンして、体温を下げるように働くアミノ酸です。深部体温が下がると眠りに入りやすくなるのですが、グリシンはそれを後押ししてくれます。カジキマグロ、ホタテ、海老などに多い栄養素です。また、グリシンを合成するセリンも、質のよい睡眠の助けとなる栄養素のひとつで、そのセリンは牛乳や海苔に含まれています。

<寝ている間に疲労を回復 グリシン配合・ノンカフェイン>

<セロトニンの合成を助ける栄養素>

●ビタミンB6 ビタミンB6は、ナイアシンやマグネシウムとともに、トリプトファンからセロトニンを合成します。鮭やサバなどの魚類、鶏むね肉やささみなどの脂身が少なめの肉類、ゴマなどに豊富に含まれています。また、眠りにつくために必要なメラトニンはセロトニンから合成されるためその点も踏まえてビタミンB6を意識的に摂るようにするとよいでしょう。

休日に予定を入れる

休日ずっと寝て過ごしてしまうことが多い場合、休日の日中に好きなことや興味のあることなど、気分転換になり楽しめる予定を入れるのもひとつの方法です。

その予定のために、休みの日もふだんどおりの時刻に目覚め、ふだんどおりに眠りにつくことが、平日の睡眠リズムの改善につながるかもしれません。

休日寝すぎないために…その日の疲れはその日のうちに解消しよう

休日ずっと寝てしまうのをどうにかしたいというとき、一番よいのは、毎日の疲れを翌朝までに解消することです。もちろん、仕事などが忙しく一時的なものであれば、休日を寝て過ごして疲れをとる必要があるかもしれません。とはいえ、そのような生活パターンが身についてしまわないように気をつけてください。

また、疲れの原因の一つには体内でのエネルギー不足があります。

私たちの体は、食事などから取り入れた栄養素(主には「糖質」「脂質」「タンパク質」)から、エネルギーを作り出していますが、このほかに必要な栄養素としてビタミンなどの微量栄養素があります。中でもビタミンB1は糖質からエネルギーを作り出すのに必要であり、不足すると疲れの原因となってしまいます。

疲れを持ち越さないためにも、ビタミンB1の補給をこころがけましょう。

また、日々の疲れがとれないというときは、サプリメントやビタミン剤を試してみるのもよいでしょう。

なお、気になる症状があって、そのために睡眠が妨げられているような場合は、早めに医師に相談をしてください。

<参考文献>
  • 厚生労働省/健康づくりのための睡眠指針2014
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
  • 薬局74(2),2023「特集:睡眠薬のトリセツ 今すぐ使える不眠治療の処方箋 ; キホン事例で学ぶ『ファーストチョイス』その理由」
  • おはよう21 33(14), 2022「特集:昼夜逆転・転倒リスク・夜勤時の対応… 現場の悩みを解決! 眠れない利用者へのケア」
  • 全日本病院会「睡眠習慣セルフチェックノート」,2015
  • 睡眠医療17(1),2023「特集:社会的ジェットラグ」

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