更新日:2023年11月30日

肩甲骨(けんこうこつ)はがしとは?肩こりを緩和し、疲れにくい身体をつくるためのストレッチも紹介!

肩甲骨(けんこうこつ)はがしは、肩こりの緩和や、疲れにくい身体をつくるために近年注目されているアプローチです。日々のデスクワークや長時間のスマートフォンの利用でこり固まった肩まわり。肩甲骨を動かして、筋肉をほぐし、血流を良くすることで、身体全体のバランスを整えましょう。

ここでは肩甲骨はがしやそのメリットについて解説し、肩こりの改善方法や、肩甲骨まわりの柔軟性セルフチェック、おうちでできる肩甲骨はがしのストレッチ方法などを紹介します。

監修

杉田 一寿 先生

株式会社MEDICALBAY 代表

杉田 大我 先生

杉田接骨院 院長

INDEX

「肩甲骨はがし」とは

肩甲骨の正しい位置は?

肩甲骨は背中の上の方にある逆三角形の平らな骨で、四肢の動きや姿勢を保つのに重要な役割を果たします。

胸を張る姿勢になると、自然と左右の肩甲骨が近付きますが、これが本来の肩甲骨の正しい位置です。多くの人の肩甲骨は、姿勢の悪さや周囲の筋肉の影響で、骨同士が離ればなれになっています。この肩甲骨の動きや位置を改善するアプローチが、肩甲骨はがしです。

肩甲骨はがしで意識すべき筋肉

肩甲骨はいくつもの筋肉に支えられています。なかには普段使われていない筋肉もあり、それらがこり固まることが、身体の不調の原因になります。肩甲骨はがしによって、日常的に使われていない筋肉を意識的に動かすことができるため、肩の動きをスムーズにする効果が期待できます。

肩甲骨まわりの動きの悪い筋肉

■僧帽筋(そうぼうきん)
首から肩や背骨へと広範囲に広がっている筋肉で、肩甲骨を動かし頭を支える大事な働きをしています。僧帽筋の動きが悪くなると、連動して肩甲骨の動きも悪くなり、頭痛や肩こりを引き起こす原因となります。

■前鋸筋(ぜんきょきん)
腕を前に突き出すときに使われる筋肉で、脇の下あたりで肩甲骨と肋骨をつないでいます。日常生活ではあまり使わないのですが、この筋肉が固まると背中が丸まって腕を上げにくくなり、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の原因になります。

■肩甲挙筋(けんこうきょきん)
物を持ったり、横を向いたり、肩をすくめて上げる動作に関わる筋肉で、頭を支える役割もあります。パソコンの操作やスマートフォンを見るなど、頭を前に出した姿勢が日常化すると、徐々に負荷が肩甲挙筋にかかり、肩こりと首こりを引き起こします。

肩甲骨はがしで何が変わる?

ほとんどの人の肩甲骨は、悪い姿勢を長期間取ることで、本来あるべき位置から外側に開いてしまい、動きが悪くなっています。身体にめり込んだ肩甲骨は、肩周辺の組織を常に緊張させ、可動域を狭め、身体に不調をきたす原因ともなります。

肩甲骨はがしの目的は、肩甲骨を肋骨からはがして正常な位置に戻すことです。肩甲骨が本来の動きを取り戻すことで、筋肉や関節、血液の流れなどの身体全体のバランスを整えられます。

肩甲骨まわりの不調や疾患

運動不足や長時間にわたるデスクワークの影響で、肩甲骨が正しく動かない人が増えています。肩甲骨のまわりには大小の筋肉、腱や靭帯、関節、血管が集まっているため、それらがうまく機能しなくなると、肩こりや腰痛、頭痛、だるさなど、慢性的な身体の不調を誘発する可能性があります。

以下では、考えられる症状や疾患について紹介します。

肩こり

腕や肩が上がらない、上げるだけで痛い、肩や首のつけ根、または肩から背中にかけて張っている状態。その他にも、肩まわりをつかまれている感じ、鉄板が入っている感覚などが挙げられます。これらは背中の血行不良が原因と考えられます。

腰痛

肩甲骨に連動している僧帽筋、肩甲挙筋などがこると、そこから背中の筋肉の血行不良などを引き起こし、腰に痛みを生じるケースがあります。

頭痛

肩こりが原因で首の筋肉まで固くなり、首の血流を滞らせ頭痛を起こすケースもあります。片頭痛は首こりが原因となる場合もあり、いずれも筋肉の硬直と関係しています。また、緊張型頭痛は頭から首、背中にかけての筋肉のこりや張りが要因の一つとされています。

全身の疲れ

朝から疲れている、いつも身体がだるいという症状は、肩甲骨が原因で全身の血流が悪くなっているからかもしれません。肩甲骨まわりの筋肉が固まると、血流が肩や首で止まってしまい全身に行き届かず、疲れがとれにくくなります。

四十肩・五十肩

正式名称は「肩関節周囲炎」です。背中が丸まった姿勢で腕を上げ下ろしすると、肩関節に負担がかかり、腱板(けんばん)と言われるインナーマッスルに炎症が起こり、四十肩・五十肩の原因となります。加齢、身体の歪み、不規則な生活習慣も要因とされていますが、どれも断定できる要素ではありません。

内臓の不調

猫背は内臓の各器官を圧迫し、胃腸や肺などの働きに影響を与えます。肩甲骨が固まることで自律神経のバランスが崩れ、消化器官の働きが鈍くなり、便秘や下痢が起こることもあります。

「肩甲骨はがし」が身体に良い理由

首こりや肩こりの解消と予防

肩甲骨を本来の位置に戻し、肩の可動域を広げることで、固くなった筋肉がほぐれ、痛みがやわらぎます。毎日適度に続けて、こりにくい身体をつくりましょう。

病気やケガをしにくい身体づくり

肩甲骨はがしにより血流がスムーズになると、全身の免疫機能も向上し、感染症などへの抵抗力が高まります。筋肉量や柔軟性もアップするため、転んでもケガをしにくくなります。

冷えやむくみを軽減

肩甲骨が正しい位置におさまると胸が開き、呼吸量が増え、身体に酸素が届きやすくなります。肩甲骨はがしは筋肉がほぐれて血行が良くなるので、冷えやむくみも軽減されるでしょう。

姿勢の改善

猫背や巻き肩といった姿勢の改善も期待できます。肩甲骨がスムーズに動くようになると、自然と背筋が伸び、立ち姿や歩行姿勢も美しくなります。丸くなった背中や肩が治ることで、胸まわりは上向きになり、鎖骨もきれいに盛り上がります。首から顔にかけたラインも整い、横顔も美しくなるでしょう。

肩甲骨まわりの柔軟性をチェックしよう

まずは自分の肩まわりの状態をチェックしてみましょう。ここではすぐにできる肩甲骨の柔軟性をチェックする方法を紹介します。

肩甲骨を触る

片手を背中側に回し、同側の肩甲骨を触る。肩甲骨の先端に触れればOKですが、柔軟性が高まれば肩甲骨全体や上方までつかめるようになります。初めは無理をせず、まずは背中から肩甲骨が浮き出る感覚をつかみましょう。

後ろで手を合わせる

両手を背中に回し、手のひらを合わせる。このとき指先を上に向けます。柔軟性が高ければ、すき間を空けずに両手のひらをぴったり合わせることができます。手を合わせながら、左右の肩甲骨を中央に寄せることを意識しましょう。

交差させた手を触る

肩の上下から交差するように左右の手を背中に回し、指と指が触れるかチェック。柔らかくなれば指を組んだり、手首をつかんだりもできます。肩甲骨の柔軟性には左右差があるので、左右両方で試して確認しましょう。

おうちでも簡単にできる「肩甲骨はがし」

肩甲骨はがしはおうちでも簡単に行うことができます。ここでは一人でもできる肩甲骨はがしの方法を4つ紹介します。

背面で両手の指を組んで、上半身を前に倒す

両手の指を組んで前屈みに
肩幅より広いスタンスで楽に立ち、両腕を背後に回して、指を組み、真っすぐに伸ばしましょう。身体との角度が90度になる位置まで腕を上げたら、身体を前に倒します。

腕の重さを使い前傾を深める
前屈みの姿勢から腕の重さに従って、更に深い前傾姿勢を取りましょう。組んだ腕を時計の針のように移動させます。頭の位置も少し下げることを意識しましょう。

<この運動のポイント>
なるべく勢いを付けずに、腕の重さで自然に前傾させる

両手の指を組んで、伸ばした腕を振り下ろす

身体の正面で組んだ手を引き上げる
身体の正面に腕を伸ばし、指を組みます。そのまま腕を斜め上に引き上げましょう。このとき、肩甲骨は背中の奥に引っ込んだ状態になります。

肩甲骨の動きを意識して腕を下ろす
上げた手を胸の位置まで下ろします。力を入れて腕を振るのではなく、肩甲骨を動かして、後から腕が付いてくるイメージで上下動を繰り返しましょう。

<この運動のポイント>
肩甲骨が腕に連動して、背中に浮きでれば柔軟性は◯

腕を固定する形で、壁に手をつき、身体を前傾する

片手を壁に添える
壁のコーナーに真っすぐ立って、片手を壁に当てます。ひじは90度に曲げて肩の高さに合わせる。指先からひじまでが壁にぴったりつくようにします。

壁で腕を固定して身体を前傾させる
腕は壁につけたまま、身体を前傾させます。立っている位置は変えずに上半身をゆっくり前に倒し、壁側の肩甲骨が伸びているのを感じましょう。

<この運動のポイント>
壁をうまく使い、固まっている肩甲骨を動かそう

壁に手をついて、体重を掛けてひねる

壁と向き合って手をつく
足を肩幅よりやや広く開き、壁に向かって立ちます。腕を前に伸ばし、そのまま壁につきます。このときの手の向きは縦ではなく、指先が内側を向くように横方向にしましょう。

左足を踏み出して体重を掛ける
左肩に体重が掛かるように前傾して、身体をひねります。意識は肩甲骨に向けましょう。肩から下は横向きになり、左足を軽く前に出して、全体重を掛けます。

足を入れ替えて逆側にひねる
右側も同様に肩に体重が掛かっているイメージを持って行います。このとき顔を押し出す肩と逆の方向に向けることで、骨盤が自然にひねられます。

<この運動のポイント>
壁で腕を固定しながら、体重を肩に掛けてひねる

肩まわりのこりや痛みがおさまらない場合は

食生活を見直す

人間の身体を機械とした場合、ビタミンは機械をスムーズに動かすための潤滑油のような働きをします。油が切れると血液の流れが悪くなり、肩こりや首こりなど、身体の不調を引き起こします。

ここでは肩まわりに影響する栄養素である、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12の働きを、多く含む食品とあわせて紹介します。

肩こりをやわらげる働きのある栄養素
ビタミンEビタミンB1ビタミンB6ビタミンB12
働きや機能
毛細血管の拡張や、血液中のコレステロールと細胞の抗酸化作用など、血液や血行に重要な役割を果たす。ビタミンEが不足すると、血液の流れが悪くなり、肩こりや頭痛、冷え症になりやすくなる。筋肉を収縮させたり、弛緩させたりする際に必要なエネルギーである、糖分の代謝を補助する酵素に関連しています。代謝が不完全になると、身体に疲労物質が溜まり、肩こりの原因に。神経伝達物質の合成などにも重要な役割をしており、補酵素となって多くのアミノ酸の代謝をサポートしている。神経伝達物質の働きが悪くなると、血行不良になり、筋肉がこりやすい身体に。タンパク質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝、赤血球の生成にも関与。神経の働きにも欠かせない栄養素であり、ビタミンB12が不足すると、貧血や腰痛、肩こりや手足のしびれなど、さまざまな症状の原因となる。
各栄養素が多く含まれている食品
種実類、穀類、魚介類、豆類、野菜類など
例:アーモンド、うなぎ
肉類、魚類、豆類、穀類など
例:豚肉、ホウレン草
野菜類、穀類、魚介類、種実類など
例:さんま、バナナ
魚介類、藻類、乳類、卵類など
例:豚レバー、アサリ

市販薬を活用する

肩こりや腰痛がおさまらない場合は、市販薬を利用することも一つの方法です。市販薬を選ぶ際は、前述の身体全体の血液の流れに作用するビタミンE、筋肉や神経に働くビタミンB1・B6・B12が配合されているものを服用するのがおすすめです。1ヵ月ほど使用しても改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。

ビタミンE

ビタミンEは毛細血管の血液循環に関与しています。血液の循環が改善されると、筋肉の働きに必要な栄養や酸素が全身に行き届きやすくなり、身体の疲労物質などを排出し、肩こりを緩和させます。

ビタミンB1

ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換する際に働きます。日頃から摂取すると、エネルギー産生がスムーズになり、健康的な状態を維持しやすくなります。

筋肉の疲労回復や肩こりの緩和にもおすすめです。

ビタミンB6

ビタミンB6は神経の伝達物質の生成に関与し、不足してしまうと神経の働きが悪くなり肩こりや腰痛の一因になります。筋肉や血液をつくるアミノ酸の代謝にも関与するため、タンパク質とビタミンB6を一緒に摂取し、肩こりや腰痛になりにくい身体をつくりましょう。

ビタミンB12

ビタミンB12は「神経のビタミン」とも呼ばれ、神経の働きを保つのに重要です。不足して神経の働きが悪くなると腰痛や肩こりなどの一因となります。

なお、活性型ビタミンB12に「メコバラミン」があります。メコバラミンは葉酸と協力して働き、神経の機能維持に役立ち、末梢神経の修復に関与します。

抗疲労成分「フルスルチアミン」

フルスルチアミンは上述のビタミンB1をより吸収されやすく改良したビタミンB1誘導体の医薬品成分です。ビタミンB1はエネルギーをつくり出すのに重要な栄養素の一つで、不足すると疲れの原因になります。筋肉や神経の細胞でエネルギー産生を促進し、疲れやこりなどの緩和に効果を現します。

病院で診察を受ける

日常的に肩こりのある人は、多少の痛みはそのままにしてしまいがちです。しかし、マッサージや接骨院などを利用することで、血行がよくなったり、筋肉がほぐれて痛みが緩和されることがあります。

肩周辺に今まで経験したことのない強い痛みや、違和感を覚えたときは、痛風、がん、肺結核、肋膜炎、狭心症、心筋梗塞、胆嚢炎、変形性頚椎症、椎間板ヘルニアなどの疾患が原因かもしれません。例えば、肺がんの場合は、肩から腕にかけてピリピリとした痛みが広がります。心臓疾患の場合、肩から腕の広範囲にわたり、痛みの症状が出ることもあります。

肩周辺に痛みを感じたら、ただの肩こりだと放置せず、常日頃からケアを行うことが重要です。もし痛みがおさまらない場合は、病院へいくことをおすすめします。

<参考文献>
  • 「肩甲骨はがしストレッチ -首、肩、腰の痛み、体の不調が消える!-」杉田一寿
  • 「全身のコリと痛みが消える!ゆるく誰でもできる肩甲骨はがし」我満俊介
  • 「1分でバキバキ肩こりがスッキリ! 山内流 肩甲骨はがし」山内義弘
  • 「くび・肩・背中の痛み」手塚正樹
  • 「病気がみえる vol.11 運動器・整形外科」医療情報科学研究所

眼精疲労、肩こり、腰痛などにお悩みのあなたに
アリナミンからのおすすめの製品

製品ラインナップをみる