更新日:2024年8月27日
足がだるい原因は?疲労や血行との関係、対処法をご紹介
「足がだるい…」長時間の活動や立ち仕事、またはデスクワークなどで座りっぱなしの状態が続くと、そう感じる方は多いのではないでしょうか。人によってその感じ方はさまざまで、ふくらはぎやすね、足の甲などの重さ、張り、痛み、圧迫感、疲労感、むくんでいるような不快感として生じることも。そんな足のだるさの原因や、日常生活に取り入れやすい対処法をご紹介します。
監修
勝木 美佐子 先生
かつき虎ノ門クリニック院長 博士(医学)、日本内科学会総合内科専門医、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医
INDEX
足がだるい原因
足のだるさには、一時的なものと、慢性的なものがあります。一時的に足のだるさを感じるときは「疲労」や「むくみ」が関係している場合が多いかもしれません。具体的な原因は以下のとおりです。
足の筋肉に疲労が蓄積している
マラソンやサッカーなどの足を使う運動の後や、たくさん歩いた後などに感じる足のだるさは、足の筋肉が疲労していることが原因だと考えられます。
足の筋肉といってもさまざまですが、ここでは、体を動かす際に重要となる膝から下の筋肉に注目してみましょう。膝から下にある主な筋肉には、ふくらはぎの「腓腹筋(ひふくきん)」、「ヒラメ筋」や、すねの外側にある「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」などがあります。
腓腹筋はダッシュやジャンプのような瞬発的な運動や、膝関節を動かすために使われる筋肉です。ヒラメ筋は直立や歩行のようなバランス維持や長時間体を動かすための筋持久力、前脛骨筋はつま先を上げて、歩行時につまずかないようにするために重要な役割を担っています。
これらの筋肉が緩んだり収縮したりすることで体を動かしていますが、筋肉の収縮には、「筋グリコーゲン」というエネルギー源が必要です。筋グリコーゲンとは、筋肉に蓄えることができる糖質のこと。筋グリコーゲンが分解されてATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー源ができます。
長時間の運動で筋肉を使い続けることによって筋グリコーゲンが足りなくなることが、筋肉の疲労に関連していると考えられています。ただし、疲労には個人差があり、一つの要因だけでなく、さまざまな要因が重なり合って引き起こされるともいわれています。
過度な活動により、全身の疲労が影響している
運動などで足の筋肉をたくさん使ったわけではないのに、足のだるさを感じる場合は、全身の疲労が影響していることもあります。
疲労は、体からの「休息が必要である」というサインであり、疲弊して病気になるのを未然に防ぐために大切なものです。健康な人でも、体も心も疲れてしまうほど無理をしてしまったり、活動をし過ぎたりしてしまう状態が続くと、疲労が生じて全身のだるさを感じることがあります。その影響で、足にもだるさを及ぼすこともあります。この場合の疲労は「生理的疲労」といわれ、基本的には睡眠などの休息を取ることで回復することができます。
しかし、休んでも疲れやだるさが回復しない場合、あるいは疲労を伴うほどの労働をしているわけでもないのに疲れやだるさを感じる場合には「病的な疲労・倦怠感」に分類されます。低栄養や低血圧、内分泌系ホルモンの異常、脳機能の障害などが原因とされ、うつ病の症状が現れることもあります。病的な疲労・倦怠感は、医師の判断のもと適切な休息や治療が必要になるケースもあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。
むくんでいる
接客やデスクワーク後などにも、足のだるさを感じる人は多いのではないでしょうか。長時間立ったまま・座ったままといった同じ姿勢を続けたときに生じる足のだるさは、多くが足のむくみによるものです。
むくみとは、皮膚の下にある皮下組織に余分な水分が溜まる状態のことで、足だけでなく、顔や腕、手指などあらゆる部位で起こります。
では、長時間にわたって同じ姿勢を続けると、なぜ足がむくむのでしょうか。それには血液の流れと、体の構造が関係しています。
心臓から送られた血液は動脈を通って全身に送られ、毛細血管という非常に細い血管によって体の隅々まで経由した後、静脈を通って再び心臓に戻ります。このとき、動脈を流れる動脈血は、心臓のポンプ作用によってスムーズに流れることができますが、静脈を流れる静脈血は、心臓の拡張による吸引や、胸腔内圧の変化、足の筋肉のポンプ作用、静脈弁による逆流抑制が働いています。
「第2の心臓」とも呼ばれるふくらはぎは、足から心臓へ、つまり下から上へと重力に逆らって静脈血が流れるために、ポンプの役割を果たします。先程もご紹介した、ふくらはぎの「腓腹筋」「ヒラメ筋」という2つの大きな筋肉が収縮するのと連動して静脈血を押し流します。
さらに、静脈の中には血液の逆流を防ぐための「弁」がいくつも付いています。ふくらはぎの筋肉が縮んだときは、弁が開いて血液を上へと押し流し、ふくらはぎの筋肉が緩んだときは、弁が閉じて血液の逆流を防いでいるのです。
しかし、同じ姿勢を続けたり、逆に活動して筋肉が疲れていたりした場合、ふくらはぎの筋肉が十分に動かず、血液を押し流す量が減ります。すると、血液の流れが滞り、毛細血管から染み出す水分量が増え、皮下組織に余分な水分が溜まります。これが足のむくんだ状態であり、だるさを伴うことがあります。
むくみには食生活や運動不足、ストレスなど、さまざまなことが関係しています。
<むくみの要因の例>
- ・足を組んで座る
- ・お酒の飲み過ぎ
- ・塩分・水分の摂り過ぎ
- ・運動不足
- ・冷え
- ・ストレス
- ・妊娠や月経、月経前症候群
- ・血行不良を伴う病気
むくみのチェック方法として、夕方に靴下のゴムの跡が残っているかを確認してみましょう。または、すねのあたりを強く押して、数秒経っても指の跡が残っているかどうかでもチェックできます。跡が残る場合はむくんでいる可能性が高いといえるでしょう。
足のだるさは、血行不良を伴う病気の可能性も
何日も続くような慢性的な足のだるさがあるときは、病気によって血行不良などが起きているかもしれないため注意が必要です。以下では、考えられる病気の一例をご紹介します。場合によっては治療が必要なため、足のだるさが続いている人は早めに医療機関を受診しましょう。
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
静脈の中にある弁の機能が悪化し、血液が逆流を起こすようになると、下肢静脈瘤を発症することがあります。足に溜まった血液によって血管が浮かび上がり、皮膚がこぶのように盛り上がるなど、症状が見た目に現れます。
さらに症状が強くなると、強いかゆみを伴う皮膚の炎症を引き起こしたり、内出血を繰り返すことによる色素沈着で皮膚が黒ずんだりすることもあります。
うっ血性心不全(うっけつせいしんふぜん)
うっ血性心不全とは心臓病の一つです。心臓のポンプ機能が弱くなり、通常の血液量を心臓から送り出せなくなることで起こる病気です。血液の流れが滞って、「うっ血(けつ)」という状態になります。
自覚症状としては「動くと息が苦しい」、「足がむくむ」、「急に体重が増えた」、「咳とピンク色の痰(たん)が出る」、「疲れやすい」などが挙げられます。
こういった症状に心当たりがあれば、放置せずに医療機関を受診しましょう。
足のだるさの対処法
ここでは、筋肉疲労やむくみによって生じる一時的な足のだるさの対処法をご紹介します。家庭でできるものばかりなので、ぜひ今日から試してみてください。
同じ姿勢のままではなく、定期的に体を動かす
仕事などでやむを得ず、立ちっぱなし、座りっぱなしなどの同じ姿勢をとらなければならない場合もあるかもしれません。そういうときは、定期的に体を動かして筋肉をほぐし、足の血行をよくしましょう。屈伸運動や、アキレス腱を伸ばしたり、つま先を上げ下げしたりする動きで足のストレッチができます。
なお、きつい靴やヒールの高い靴を避けることも足の血行不良の予防になります。自分の足のサイズにフィットする靴を履くようにし、どうしてもヒールの高いパンプスなどを履かなければならないときは短時間ごとにストレッチするなど、血行を促す工夫をしましょう。
適度に運動する
運動不足にならないよう、1日60分を目安に運動しましょう。本格的なスポーツでなくても、散歩(1日約8,000歩以上が望ましい)やラジオ体操、ストレッチの他、日常的な家事や積極的な階段利用も運動になります。自分の取り入れやすいものから試し、習慣化できるとよいでしょう。
睡眠をしっかりとる
心身の疲労を回復するためには、しっかりと睡眠をとることが大切です。適正な睡眠時間には個人差がありますが、成人においては1日6時間以上8時間未満が妥当であると考えられています1)。なお、高齢の方は、床上時間(寝床にいる時間)が長いと健康リスクにつながることがあるため、床上時間が8時間以上にならないように注意しましょう。
また、睡眠の質にも気をつけたいもの。寝る前はスマートフォンの使用、飲酒、喫煙、コーヒーなどのカフェイン飲料を控えましょう。また、適度な運動習慣をつけることで、入眠を促進する効果もあります。
1)出典:厚生労働省, 健康づくりのための睡眠ガイド2023, p.11
睡眠時に足枕をする
足のむくみやだるさが気になるときは、足枕もおすすめ。睡眠時は血流が滞りやすいため、タオルや布団などを使って10〜15cmほどの高さの足枕を作り、足を心臓の高さまで上げるとよいでしょう。ただし、足の付け根が圧迫されて静脈血が流れにくくなる恐れがあるため、足枕は15cm以上高くしないように注意してください。
体を冷やさない
体の冷えはむくみにつながります。上着やひざ掛けなどを活用して、体温調節をこまめにしましょう。冬だけでなく、夏の冷房が効いた室内で薄着やサンダルなどの冷えやすい格好で過ごすのも要注意。特に女性は男性より筋肉量が少なめなので、体内で生み出せる熱の量が少なく、冷えやすい傾向にあります。
また、冷たい食べ物や飲み物も体を冷やすので、摂り過ぎには注意しましょう。
湯船に浸かる
働く世代や一人暮らしの人は、シャワーだけでお風呂を済ませることが多いかもしれません。しかし、入浴は足のだるさの緩和が期待できるため、なるべく湯船に浸かることを習慣化しましょう。
湯船に浸かることで得られるメリットは「温熱効果」、「水圧効果」、「浮力効果」の3つです。温熱効果は、体を温めることで血行が促進され、汗腺を通じて体内の疲労物質が排除されやすくなる効果のことです。
水圧効果は、水圧がマッサージ代わりとなり、足に溜まった血液を押し上げてくれる効果。浴槽程度の深さでも、全方向から体に約500kgもの水圧がかかるといわれています。
そして浮力効果は、湯船に浸かったときの浮力によって体が軽くなる効果。重力で下に引っ張られていた足が浮力によって楽になるでしょう。関節や筋肉を動かしやすくなって、血行促進にもつながります。
着圧ソックスを履く
適度に締め付け感があり、足首から上に向かって血行が促進されるように設計された「着圧ソックス」という靴下があります。これを履くことで、血行の促進や筋肉の疲労を軽減する効果が期待できます。
日中用や就寝時用など、さまざまな種類があるので、使用シーンや自分の好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
食事を工夫する
バランスのよい食事を心がけ、必要な栄養素を補給することも大切です。
疲労からくる足のだるさを解消するには、筋肉や脳の主要なエネルギー源となる「糖質」と、栄養素をエネルギー源として利用するために有効な「ビタミンB群(B1・B2・B6・B12)」を一緒に摂ることが必要です。特に、ビタミンB1は、糖質の代謝に不可欠なビタミンなので、意識して摂取しましょう。
<豊富に含む食べ物>
糖質:お米やパン、いも類などの炭水化物
ビタミンB1:豚肉、豆類など
ビタミンB2:レバー、卵など
ビタミンB6:あさり、牡蠣、いわし、のりなど
ビタミンB12:ブロッコリー、かぼちゃ、ごまなど
ただし、これらの食材を毎日の食事でまんべんなく取り入れるのはなかなか大変です。特にビタミンB1は水や熱に弱いので、サプリメントやビタミン剤などで対処するのも一つの方法です。ビタミンB1よりも体内への吸収に優れているうえ、抗疲労成分である「フルスルチアミン」や、三大栄養素の代謝に関わる「パントテン酸カルシウム」を配合している製品を選ぶのもおすすめです。
- <疲れたときのビタミンB1などの補給におすすめのアリナミン製品>
一方で注意したいのは、塩分やアルコールの摂り過ぎです。
特に塩分について、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、目標量(食塩相当量として)は、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満と定められています。しかし、実際の1日当たりの食塩摂取量は成人男性で11g程度、成人女性で9g程度といわれ、現代の食生活では超過しやすいことがうかがえます。塩味の強い食べ物や濃い味付けを控えて、減塩を意識した食生活が大切です。
カリウムは、ナトリウム(塩分)を排出する作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節するうえで重要な栄養素です。昆布、ひじき、海苔などの海藻類や、柿、バナナ、アボカドなどを食事に取り入れるとよいでしょう。
足がだるいと感じたら…生活習慣を見直してみよう
疲労やむくみによる足のだるさを感じたときは、定期的にふくらはぎを動かしたり、着圧ソックスを履いたりなど、さまざまな対処法を試してみましょう。バランスのよい食事や定期的な運動、睡眠をしっかりとることで改善できる部分もあるので、この機会に日々の生活習慣を見直してみてもよいかもしれません。
- <参考文献>
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
- バイオメカニズム学会誌, Vol.40, No.2, 2016「長時間歩行および立位姿勢中の下肢のむくみに起因する不快感に関する研究」齋藤誠二, 村木里志
- デサントスポーツ科学, Vol.31「機能性靴下の衣服圧と下腿および足部の筋疲労に関する研究」細谷聡, 斎藤健治(共同研究者)