更新日:2021年12月1日
疲れをためないための快眠法
いきいきとした毎日を送るためには、正しい健康のための基礎知識が大切です。
みなさんは、以前に比べて、ずいぶん疲れやすくなったなぁと、お思いではないでしょうか? 年齢を重ねると、
一般的に「疲れ」を感じやすくなることが言われています。
これからも前向きにチャレンジを続けるみなさまへ、ちょっとしたひと工夫で改善できる健康情報をお届け致します。
ぜひ、みなさまの健やかな毎日にお役立てください。
監修
内山 真
日本大学医学部精神科教授
INDEX
疲れをためないための快眠法
疲れにくい体質を作るには、運動による筋力アップと適切な栄養摂取による基礎代謝能力の向上にあります。同時に十分な睡眠と休養をとることは、体とともに心の疲れをためないための基本でもあります。最近では睡眠と、糖尿病や高血圧などといった生活習慣病、うつ病などの精神科の病気との関係も話題になっています。
厚生労働省の研究班作成の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」に掲げられたよい睡眠を得るための12項目を参考に、質・量ともに充実した睡眠をとり、健康の基礎作りをしましょう。
快眠法 その1
睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- ・睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
- ・歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
若いときは8時間でも平気で眠れたという人も、年をとるにつれて睡眠時間は自然に短くなってきます。また、睡眠時間は季節的な変化もあり、秋から冬にかけては長く、春から夏にかけては短くなるのが普通です。ですから「8時間眠っていないから睡眠不足だ」などと考えることはありません。昼間に活動的な時間を過ごせているなら、睡眠不足ではないと思ってよいでしょう。
快眠法 その2
刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
- ・就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙は避ける
- ・軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
緊張や刺激による興奮があると、床に就いてもすぐには寝付けないものです。緊張を解くための自分なりのリラックス法を見つけておきましょう。ストレッチングを行う、アロマテラピーを楽しむ、穏やかなメロディーの音楽を聴く、などはいかが? 眠りを誘うハーブティーなど味わってみるのもよいかもしれません。ただし、覚せい作用のあるカフェイン入りの日本茶、コーヒー、紅茶などは、飲んで30~40分でその作用が現れ、その後4~5時間は持続するので注意しましょう。
快眠法 その3
眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
- ・眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
例えば明日は早起きしなければならないというときなど、いつもより早い時刻に床に就くと寝付けないことがあります。普段、就寝時刻がほぼ決まっている(習慣的入眠時刻)人は、その2~4時間前は最も眠りに就きにくいといわれています。そんなとき無理に眠ろうとするのは逆効果。むしろ、眠くなってきたら床に就くほうがスンナリと眠りに入れるでしょう。
快眠法 その4
同じ時刻に毎日起床
- ・早寝早起きではなく、早起きが早寝に通じる
- ・日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
毎朝同じ時刻に目覚め、起床後はなるべく早く朝日を浴びると、夜はスムーズに眠りに就けることがわかりました。起床後に太陽の光を浴び、“体内時計”がリセットされると、そこから15~16時間後にメラトニンの分泌が始まり、脈拍・体温・血圧が低下し、体が夜の休息体制になって眠気が生じます。早寝早起きの習慣は、早起きして朝の太陽を浴びることが第一歩です。
日曜に寝すぎると、夜の寝つきが悪くなり、月曜の朝がつらくなるので、日曜もいつもと同じ時刻に起床して、朝日を浴びるようにしましょう。
快眠法 その5
光の利用でよい睡眠
- ・目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
- ・夜は明るすぎない照明を
朝の光を浴びて“体内時計”のリセットが行われないと、その夜に寝つくことができる時刻は、約1時間遅れます。せっかく早く目覚めても、起床後2時間以上、暗い室内にいると体内時間のリセットは行われません。朝目覚めたらなるべく早く窓のカーテンを開けたり、外へ出て太陽の光を浴びましょう。晴れている日の屋外の明るさは室内の10~20倍、曇っていても5~10倍もあるのですから。
一方、夜間の室内照明が明るすぎると、体内時計のリズムを狂わせてしまい、自然な入睡時刻が遅れます。夜は明るすぎない照明を心がけましょう。
快眠法 その6
規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- ・朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
- ・運動習慣は熟睡を促進
いつもの時間に目覚めたら、いつものように朝食を摂りましょう。朝食は心と体をスッキリ目覚めさせ、1日の規則正しい生活リズムを整えるきっかけになります。また、日中の運動による軽い疲れは熟睡をもたらします。ウォーキングのような軽めの運動を習慣化しましょう。一方、就寝直前の食事は寝つきを悪くし、ひいては目覚めも悪くします。
快眠法 その7
昼寝をするなら、15時前の20~30分
- ・長い昼寝はかえってぼんやりのもと
- ・夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
昼食後、無性に眠くなるときがありますが、そんなときは15時前に20~30分の昼寝がおすすめ。目覚めたときにスッキリして午後の活動に臨めます。夕方以降に昼寝しては夜の睡眠に悪影響が及びかねません。また、30分以上の長い昼寝は、目覚めたときにスッキリするどころか、反対に頭が重くぼんやりしてしまいます。
快眠法 その8
眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
- ・寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
しっかり睡眠をとらなければと思い、早く床に入ってもなかなか寝つけず、よけいに眠れなくなってしまうことがあります。必要以上に長く床の中で過ごすと、かえって睡眠は浅くなり、夜中に目覚めやすく、熟睡感が減ってしまいます。こんな場合は逆に遅寝・早起きをして就床時間を減らしてみましょう。「8時間は睡眠をとらなければ」というこだわりを捨て、「熟睡感があり、かつ昼間に睡眠不足を感じない」睡眠時間が、その人にとっての適した睡眠時間です。床の中で過ごす時間は7時間程度がよいでしょう。
快眠法 その9
睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
- ・背景に睡眠の病気、専門治療が必要
激しいイビキと断続的な呼吸停止が特徴的な「睡眠時無呼吸症候群」や、足のむずむず感やほてりが特徴的な「むずむず脚症候群」など、睡眠を障害する病気があると、日中に眠気が起きて日常生活や仕事などに支障が生じます。
こういった病気がある場合は、睡眠障害の専門的な治療が必要です。
快眠法 その10
十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医
- ・長時間眠っても日中の眠気で、仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
- ・車の運転に注意
睡眠不足で日中の眠気が強いと、作業ミスや交通事故など重大な事故につながりやすくなります。日中の強い眠気は睡眠の量的低下・質的低下による睡眠不足が主な原因ですが、なかには過眠症という病気が隠れていることもあります。
快眠法 その11
睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
- ・睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
就寝前の飲酒は、寝つきはよくなりますが、睡眠が浅くなり途中で何度も目覚めてしまい、睡眠の質は低下します。睡眠薬代わりにアルコールを連用すると摂取量が急速に増え、アルコール過剰摂取による精神的・身体的問題が起きやすくなります。寝酒はやめましょう。
快眠法 その12
睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
- ・一定時刻に服用し就寝
- ・アルコールとの併用をしない
もし、不眠症と診断された場合、治療のために睡眠薬を処方されることがあります。不眠の種類や程度によって、薬剤の種類が選択され、量を調節されます。医師の指示に従い、正しく使いましょう。同時に、適切な睡眠習慣についての生活指導を受け、実行しましょう。