更新日:2024年9月30日

健康寿命を延ばすには?平均寿命との違いや、疲労回復など健康寿命を延ばすために大切な対策も解説

健康寿命を延ばして、いつまでも快活に過ごしたいですよね。ご存じの通り、日本は世界でもトップクラスの長寿国です。「人生100年時代」ともいわれ、健康への意識が高まる現代。しかし、具体的にどのような取り組みや習慣が健康寿命を延ばすのか、イメージしにくい方も多いのでは。そこで今回は、健康寿命を延ばすために大切とされることや、健康寿命とともに使われることの多い「平均寿命」という言葉との違い、疲労回復など健康寿命を延ばす対策についても解説します。

監修

田中 清 先生

静岡県立総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部長、日本ビタミン学会 理事

INDEX

健康寿命とは?

「健康寿命」とは、人の健康状態を表す健康指標の一つであり、1964年にアメリカで提唱されました。基本的な定義としては「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいますが、より詳細に見てみると、「健康」と「不健康」をどのように判断するかによって、定義に微妙な違いが生じます。

日本では、「日常生活に制限のない期間の平均」を健康寿命の主指標としており、「自分が健康であると自覚している期間の平均」を副指標、「日常生活動作が自立している期間の平均」を補完的指標としています。

これらは、厚生労働省による国民生活基礎調査の質問に含まれている、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という問いに対して、「ない」と答えた人を「健康」と定義し、その人たちの年齢を基に日本の健康寿命が算出されます。また、補完的指標の「日常生活動作が自立している期間の平均」は、介護保険制度での要介護2※1以上と認定された場合を、「不健康」と定義しています。

※1 要介護2:日常生活動作に部分的な介護が必要な状態のこと。

平均寿命との違い

「平均寿命」とは、その国や地域に暮らす人々の寿命の平均のこと。医療の進歩や社会環境の改善により、人々の寿命は徐々に延びていくものですが、平均寿命の算出にはそのような変化は考慮されず、その時点の状況が維持されることを前提として計算されます。

平均寿命と似たような言葉として「平均余命」というものもあります。これは、ある人がその年齢からあとどのくらい生きるかという期間(余命)の平均を指します。

平均寿命と健康寿命の差

2019年において、日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳と報告されています。一方、健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳であり、両者の間に男性は8.73年、女性は12.06年の差があることがわかります。

このことから、日本人は人生の最後の10年前後を「健康」とはいえない状態で過ごしている可能性があることがわかります。健康な状態で長生きするには健康寿命の延伸はもちろん、平均寿命との差の縮小が重要です。

都道府県別で見た健康寿命ランキング

健康寿命の都道府県別ランキングを見てみましょう。上位10位は以下の通りです。

2019年に最下位だった都道府県の健康寿命は、男性は岩手県で71.39歳、女性は京都府で73.68歳でした。つまり地域によって、男性では最大2年以上、女性では4年近くの差があることがわかります。

そんな中、山梨県は例年、男性・女性ともに上位を維持しています。その理由として、県民の野菜の摂取量が多いこと、身近な地域で特定健康診査と各種がん検診が同時に実施できること、健康を意識する人が多いことなどが関係しているのではないかといわれています。

健康寿命に関する国の政策とは

山梨県のように、健康に対して積極的に意識を向ける地域もあるようですが、国全体ではどのような政策が掲げられているのでしょうか。

・健康寿命延伸プラン

2019年、厚生労働省は国民の健康寿命延伸のための具体的な目標と施策をまとめた「健康寿命延伸プラン」を策定しました。ここでは男性・女性ともに、2040年までに2016年時点よりも3年以上、健康寿命を延ばして75歳以上とすることを目指しています。

・21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)

2000年には、同じく厚生労働省が国民の健康増進の総合的な推進を図る「21世紀における国民健康づくり運動」いわゆる「健康日本21」を策定しました。

この政策は、目標とする基本的方向が数年おきに改訂されていますが、2024年からの「健康日本21(第三次)」でも健康寿命の延伸については変わらず目標として引き継がれています。また、それまでの取り組みで十分な成果が表れていない項目に対応するため、以下の4項目が重点目標として示されました。

  • ①健康寿命の延伸・健康格差の縮小
  • ②個人の行動と健康状態の改善
  • ③社会環境の質の向上
  • ④ライフコースアプローチ※2を踏まえた健康づくり

※2 ライフコースアプローチ:胎児期から高齢期に至るまでの人の生涯について、時間の流れをたどって捉えた健康づくりのこと。

いずれの政策にしても、国が健康寿命の延伸を目指していることに変わりはなく、それを達成するためのさまざまな数値目標が掲げられています。

健康寿命を縮める可能性がある原因とは

介護を要する原因から見た場合

それでは、どのような事象が健康寿命に関連しているのでしょうか。対策について考えるには、健康寿命を縮める可能性がある原因について知ることが大切です。まずは介護を要する原因から見てみましょう。

<介護を要する原因(要介護度別)>
第1位第2位第3位
要支援者※3関節疾患18.9%高齢による衰弱16.1%骨折・転倒14.2%
要介護者※4認知症24.3%脳血管疾患(脳卒中)19.2%骨折・転倒12.0%

〔厚生労働省「2019(令和元)年 国民生活基礎調査」より〕

※3 現在介護の必要がないものの、将来介護が必要となる可能性がある状態。
※4 日常生活において常に介護が必要な状態。

介護を要する原因を要介護度別に見ると、要支援者では関節疾患が18.9%で最も多く、要介護者では認知症が24.3%で最多となっています。また、要支援、要介護ともに第三位は骨折・転倒です。

その他の指標への影響から見た場合

要介護となる原因の他にも、さまざまな指標から健康寿命を縮める可能性がある原因を知ることができます。

・障害調整生存年(DALY:Disability-Adjusted Life-Years)

近年、新たな健康指標として「障害調整生存年(DALY:Disability-Adjusted Life-Years)」が使われるようになっています。これは、不健康な状態にある場合に、その程度や期間を加味した生存年数を表します。このDALYに影響を及ぼすものとしては、日本人の場合、喫煙、高血圧、高血糖、BMI高値(肥満)、不健康な食事、飲酒などが上位に挙げられています。

・HCAL(Health Condition without Activity Limitations)

一方、近年、多くの研究分野で広く用いられるようになった機械学習によって、健康寿命を予測する試みもなされるようになってきています。その一環として、健康寿命に関する新たな健康指標「HCAL:Health Condition without Activity Limitations」という指標が提唱されています。

このHCALを利用した研究からは、健康寿命に影響を及ぼす年齢以外の要素として、うつ病などの心の病気、腰痛、骨折、神経痛や麻痺、脳血管疾患、関節症などが上位に挙げられています。

健康寿命を延ばすために、生活習慣を改善しよう

上述のように、健康寿命の延伸を妨げる可能性がある原因は、関節疾患や認知症、あるいは脳卒中が多く、それらの疾患には塩分過多や運動不足などが影響を与えることがわかっています。他にも、肥満、栄養不足、過度な飲酒や喫煙にも気を付けたいところ。これらの生活習慣を改善し、健康寿命を延ばすためには何から始めればよいのでしょうか。

生活習慣を改善するために、目安となることとは

健康寿命を延ばすための具体的なアクションについて、国の政策を基に考えてみましょう。

「健康日本21(第三次)」では、健康寿命の延伸のためにさまざまな数値目標を掲げています。その中から、ここでは食生活・睡眠・身体活動に関して、いくつかピックアップしました。自身の生活を振り返り、どのくらい達成できているかチェックしてみましょう。

  • ・BMI18.5以上25未満(65歳以上は20超25未満)の人の割合を66%に
  • ・野菜摂取量の平均値を350gに
  • ・果物摂取量の平均値を200gに
  • ・食塩摂取量の平均値を7gに
  • ・睡眠で休養がとれている人の割合を80%に
  • ・睡眠時間が6~9時間(60歳以上については、6〜8時間)確保できている人の割合を60%に
  • ・1日の歩数の平均値を7,100歩に

具体的なアクション(1)栄養バランスを見直そう

栄養不足を解消するために、積極的に摂取したい栄養素をチェックしてみましょう。

栄養素の中で、エネルギーにはならないものの体調の維持に重要な栄養素を微量栄養素といいます。そのうち、カリウムや食物繊維、ビタミンなどは、循環器疾患(心臓や血管の病気)やがんの予防に役立つといわれています。

・カリウム

カリウムは、神経の興奮などにもかかわるミネラルです。ナトリウム(塩分)の排泄を促す働きもあることから、血圧のコントロールにも役立ちます。

カリウムは、野菜や果物、魚などに豊富に含まれています。

・食物繊維

食物繊維は、消化吸収されずに大腸まで到達し、大腸の環境を整えてくれます。また便秘解消効果だけではなく、血糖値やコレステロールのコントロールにも役立つといわれています。

食物繊維は、穀物や野菜、きのこ、海藻などに豊富に含まれています。

・ビタミン

ビタミンは、体の機能を正常に保つために必要な微量栄養素です。

ビタミンの中でもビタミンA・ビタミンC・ビタミンEは、活性酸素の働きを抑える作用を持つため「抗酸化ビタミン」とも呼ばれています。活性酸素は動脈硬化やがん、老化、免疫機能の低下などを引き起こすといわれています。人間の体には、活性酸素の作用を抑える働きが元々備わっていますが、年齢や食習慣の乱れなどによって、その働きが低下してしまうことがあります。そのため、抗酸化ビタミンが不足しないよう、積極的な摂取を心がけましょう。

一方、ビタミンB群(ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ナイアシン・パントテン酸・葉酸・ビオチン)は、エネルギーの代謝などにかかわる水溶性のビタミンです。特にビタミンB1は「疲労回復ビタミン」とも呼ばれており、日々の生活を快活に送るうえで大切な微量栄養素です。

エネルギー源である糖質を十分に摂っていたとしても、ビタミンB1をはじめとするビタミンB群が不足すると疲れやすくなり、疲労が続くことで身体機能が低下してしまうこともあります。例えば、うっかりつまずいて骨折をしてしまい、動けなくなることで筋力が低下してしまったり、骨折が治るころには要支援・要介護状態になってしまったりすることも。疲労のためにやる気が出ず、生活に張りがなくなってしまい、結果として健康寿命を縮めてしまう可能性も考えられます。また、近年では高齢者において心不全の患者が増加しており、その背景には軽度のビタミンB1不足が原因となっている可能性が指摘されています。さらに、ビタミンB6やB12、葉酸と動脈硬化の関係もわかってきており、軽度の不足であっても重大な疾患につながることが懸念されています。

そして、骨折をしないためには、ビタミンDの不足にも気を付ける必要があります。ビタミンDは骨量維持に重要であり、日光を浴びることにより体内でつくることもできます。

健康寿命を延ばすために、微量栄養素の不足にも注意するようにしましょう。

具体的なアクション(2)疲労回復のための工夫をしよう

・睡眠時間を確保しよう

心や体の疲れの蓄積も、健康寿命を縮めるリスクとなり得ます。疲れを解消するために大切なことの一つは、適切な睡眠時間を確保すること。

具体的な睡眠時間については、1日6~9時間(60歳以上については、6~8時間)の人の割合を増やすことが目標とされていることから、少なくとも6時間は確保したほうがよいでしょう。

・ビタミンB群を摂取しよう

上述の通り、ビタミンB群は疲労回復にとって大切な微量栄養素です。ビタミンB群の中でも特にビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える際に必要不可欠とされるため、意識して多く摂取したほうがよいでしょう。また、ビタミンB1と比べて吸収や組織への移行を高めた誘導体である「フルスルチアミン」は、「抗疲労成分」とも呼ばれ、体内のエネルギー産生を促し疲労回復に効果的です。

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具体的なアクション(3)運動を習慣づけよう

日頃から活発な身体活動を心がけることも大切です。今より1日10分でも多く体を動かすことから始めてみましょう。

可能であれば、1日60分(1日あたり平均7,100歩)の歩行を習慣づけ、その中に、息がはずみ汗をかく程度の運動が1週間に60分程度含まれるとなおよいとされています。

健康寿命を意識した行動を心がけよう

長寿を得られたとしても、人生の後半を健康で快活に過ごすのと、そうでないのとでは大きな違いがあるでしょう。生活習慣の改善は健康寿命の延伸にとどまらず、人生をより豊かに過ごすためにも重要といえます。ただ、突然運動を始めたり、食事に気をつかったりしようとすると、慣れない習慣に疲れてしまう方もいるはず。時には市販薬やサプリメントも活用しながら、無理のない範囲で習慣を変えていきましょう。

<参考文献>
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット
  • 厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
  • 厚生労働省「令和4年簡易生命表」
  • 内閣府「令和5年版高齢社会白書」

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