更新日:2022年11月29日
集中力を高めたいときにおすすめの栄養素と食べ物
さあ、やるぞー、と気合をいれても、イライラしたり、別のことが気になって仕事や勉強、家事にすぐに取り掛かれない…せっかく朝早く来て仕事を片付けようとしてデスクに座っても、集中力を維持できないことは誰しもあるもの。そんなときにおすすめの集中力を高め、維持するために必要な栄養素と食べ物をご紹介します。
監修
柴田 克己 先生
滋賀県立大学名誉教授
INDEX
まずは集中できない原因を探ろう
睡眠不足や体の疲れ
集中できない理由の一つに、睡眠時間の不足や眠りが浅いなどで前日の心身の疲れが十分に取れていないことが考えられます。
運動などによる適度な身体的な疲労感は質のよい睡眠の助けになります。ところが、過度な運動や仕事による心身の疲労の蓄積は睡眠時間に影響してきます。令和元年に行われた厚生労働省の調査では、睡眠時間が6時間に満たない人の割合は男性の37.5%、女性の40.6%という調査結果が出ています。
栄養の不足
意外と見逃してしまいがちなのが、栄養不足です。脳のエネルギー産生に必要な栄養素が十分に足りていないと集中力が失われます。
私たちの体は脳が司令塔となってコントロールしています。自分で意識しているかどうかに関わらず、脳は四六時中、体温調整や呼吸、消化、考えること(思考)など、たくさんのことを同時に処理しているのです。
すなわち、私たちが眠っている間も脳がずっと働き続けています。そうすると、朝ごはんを食べていないなどの理由で、長時間にわたって脳が栄養不足に陥るとボーッとする、イライラするなどの症状が出ることもあります。
長時間労働や神経を遣う仕事が続いている
そもそも、健康な状態でも人間の集中力には限界があります。個人差もありますが、プログラミングや表計算などの数字を扱うデスクワーク、品質のチェックなど神経を遣う仕事を長時間続けていると、だんだんと疲れてくることは誰しも経験があるでしょう。
集中力が続かない状態での長時間にわたる労働や勉強は、パフォーマンスも低下します。「ボーッとする」、「イライラする」、「疲れた」と感じたら早めに休憩しましょう。このとき、単に作業を中断するだけではなく、給湯室へコーヒーや緑茶を入れに行く、甘いものを食べる、部屋から出て外の空気を吸うなど、気分や場所を変えてきちんとした区切りを作りましょう。
集中力を維持するために必要な栄養素とおすすめの食べ物とは?
私たちの集中の要、脳の唯一のエネルギー(ブドウ糖)
ブドウ糖(グルコース)は脳が唯一エネルギーとして利用できる物質です。脳のエネルギー代謝量は、安静時では全身のエネルギー代謝量の約20%を占めています。エネルギー量に換算すると、350kcal/日程度となります。脳は1日に100g程度のブドウ糖を必要とします。脳は、ブドウ糖を貯蔵できないため、常に血液から取り込んでいます。血液中のブドウ糖の量は5g程度と少ないのですが、常に100mg/dL程度になるように調節されています。供給元は、肝臓に貯蔵してあるグリコーゲンです。グリコーゲンは栄養状態が良好な人では最大で100g程度まで貯蔵することが可能ですが、そのすべてを脳が使えるわけではなく、全身で使われます。集中力が途切れそうになったときには、血糖値が下がっているときがしばしば認められます。そのようなときは、速やかに脳へブドウ糖を供給することが大切です。ブドウ糖やショ糖などの糖類を主成分とする甘いものを食べるとよいでしょう。おすすめの食品として、ぶどう、バナナ、ラムネなどがあげられます。
【ブドウ糖を多く含む食べ物】
- ・ぶどう
完熟果のぶどう100gで7g程度摂れます。 - ・バナナ
季節に関係なく入手しやすく、適度にお腹も満たせるので、小腹がすいたときのおやつにおすすめです。完熟果のバナナ100gでブドウ糖が2g程度摂れます。 - ・ラムネ
多くの製品は、ブドウ糖や砂糖を原料にしています。ブドウ糖の含有量を謳った製品もあるため、うまく活用しましょう。
ブドウ糖からのエネルギー産生に欠かせない「ビタミンB1」
ビタミンB1は、ビタミンB群の一つです。ビタミンB群は、生体触媒である酵素と共同して機能を果たす因子である補酵素の前駆体で、アシスト役となる物質の前段階の物質です。8種類ありますが、エネルギー産生においては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3(ニコチン酸アミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6の5種類の貢献度が高く、中でもブドウ糖のエネルギー産生にはビタミンB1が特に関わりが深いです。
ビタミンB1の活性型はチアミン二リン酸(ThDP)といいます。ブドウ糖からのエネルギー産生量が増えると、ThDPの必要量が高くなります。したがって、脳が稼働・活性化や集中するためのエネルギー産生時に不足してはならないビタミンです。成人男子のビタミンB1必要量は1.5mg/日程度です。
しかし、食品中に存在するビタミンB1の化学形態であるチアミンは、化学的に不安定であるため、調理中に損失がおきやすい食品があります。また、一度に体内に吸収される量が多くなく、ビタミンの中で必要量に対して最も体内の貯蔵量が少ないとされています。そのため、チアミンより多く体内に吸収され、体の組織へよく移行することができるフルスルチアミン(ビタミンB1誘導体)がおすすめです。低下してきたエネルギー産生能力を素早く回復させて、集中力を高めたいときには、食事で必要な栄養を摂ることに加えて、医薬品を活用してビタミンB1、ないしフルスルチアミンを効率よく摂ることもおすすめです。
【ビタミンB1を多く含む食べ物・飲み物】
- ・豚肉
豚肉はビタミンB1を多く含む食品の代表格。100gあたり0.5~1.0mg程度摂れます。料理のレパートリーも多いので、うまく食事に取り入れましょう。 - ・うなぎ
スタミナ食品として知られるうなぎも、豚肉と同等にビタミンB1が多く含まれる食品の一つです。かば焼き100gで0.6mg程度摂れます。 - ・栄養ドリンク
フルスルチアミンを主とする栄養ドリンクは、ビタミンB1を効率よく補給することができ、体内で活性型のThDPに多く変換されます。低下してきた集中力を回復させたいときには、特にブドウ糖などの糖類とフルスルチアミンが含まれる栄養ドリンクを選ぶとよいでしょう。
- <ビタミンB1の補給に>
集中するときの体の変化、カギを握るのは「芳香族アミノ酸」
集中力を高めるとき、体内で何が起こっているのでしょうか。集中力が欠如してきたときは、精神的かつ肉体的なストレスを感じています。このようなときには、体の反応として副腎髄質からアドレナリン(エピネフリンともいう)というホルモンが血液中に放出されます。アドレナリンはグリコーゲンの分解を促進することで血糖値を上げ、また心拍数も上げて、脳へのブドウ糖の供給を効率化します。
一方、脳内ではノルアドレナリン(ノルエピネフリンともいう)が神経伝達物質として作用し、集中・覚醒・怒り・恐怖・不安などに関与しています。
ノルアドレナリンとアドレナリンは、芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシンから生合成されており、その過程でビタミンB6の活性型のPLP(ピリドキサールリン酸)が関わっています。つまり、体や脳が集中力を高めるために必要な物質を作り出すには、芳香族アミノ酸とビタミンB6の両方が必要ということになります。
【芳香族アミノ酸を多く含む食べ物】
- ・カシューナッツ、落花生などのナッツ類
適度に噛み応えもあり、休憩時間中のおやつにすれば、噛むことで気分転換にも。尚、ナッツ類にはビタミンB6も含まれています。 - ・チーズ
休憩時間でも食べやすいうえ、食事の中でも取り入れやすいです。
眠気覚まし成分の代表格「カフェイン」
カフェインは適切な量を摂取することで眠気を解消したり、集中力を高めるのに役立ちます。ただし、近年はカフェインが含まれている食品や飲料が多くあるため、知らない間に過剰摂取になっていることも。摂り過ぎにはくれぐれも注意をしましょう。
【カフェインを多く含む食べ物】
- ・ハイカカオチョコレート
カフェインがコーヒーや紅茶、緑茶(玉露、抹茶)に含まれることは有名ですが、カフェインはチョコレートにも含まれています。特に、カカオの含有量の多いものほど、カフェインの量も多くなります。
集中力を維持したいなら、普段から体のコンディションを整えておくことにも意識しよう
これまで述べてきたように、集中力を高めるには普段の生活改善も不可欠です。
- ・必要な栄養素をしっかり摂る習慣
- ・適切な睡眠をとり、疲れを次の日に持ち越さない習慣
- ・急激に血糖値の上昇が起きにくい食習慣
- ・集中できないときは、無理せず休憩する習慣
これらの4つの習慣は、集中力を高めるためだけでなく、私たちの健康のためにも必要な習慣です。
必要な栄養素をしっかり摂る習慣
脳のためには、ブドウ糖が大切です。成人男子では200~300g程度のデンプンを摂取するとよいでしょう。デンプンは、体内のブドウ糖やグリコーゲンのもとになる糖質で、ご飯やパンなどの食品に多く含まれる糖質です。
他の糖質として、ブドウ糖や果糖、ショ糖などの糖類(糖類とは糖質の中で甘みを感じるもの)を、砂糖、清涼飲料水、お菓子などの食品から、50~100g/日程度摂取しています。かといって、糖質ばかり摂取していればよいかというとそうではありません。他のエネルギー産生栄養素である脂質、タンパク質の摂取量とのバランスも大切な要素となります。脂質はエネルギー比で25%程度、平均的な成人男子のエネルギー必要量から計算すると重量では70g/日程度、タンパク質は15%程度、重量に換算すると90g/日程度となります。これら糖質、脂質、タンパク質のエネルギー産生栄養素を代謝してATPというエネルギー物質を作り出すのに、酵素と共同してはたらくものがビタミンとミネラルと称されている微量栄養素です。私たち日本人の白米を主食とする高糖質(高炭水化物)食では、ビタミンB1が不足しやすいため補充するとよいでしょう。
適切な睡眠をとり、疲れを次の日に持ち越さない習慣
寝不足や睡眠が浅い状態では、前日の疲れが十分にとれず、集中力が維持できません。
しっかり体を休ませてすっきり起きるために、睡眠の質を高める工夫も日頃からしておくことをおすすめします。具体的には、就寝前にはカフェインの摂取を控える、スマホを見ないなど、入眠を阻害することはなるべく控えましょう。また、平日の寝不足を補うために休日に寝だめをするといった習慣は改善し、平日も休日も出来るだけ同じ時間に起床して、一定のリズムを作ることが大切です。
急激に血糖値の上昇が起きにくい食習慣
集中力を維持するために日常生活で気をつけたいこと、それは、「血糖値」を意識するという習慣です。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、健康な人(糖尿病などの疾患を持たない人)はほぼ一定にコントロールされています。
ところが、空腹の状態から食事をとった後に血糖値が急上昇すると、体が血糖値を下げようとしてインスリン(膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、食後に高くなった血糖値を元に戻し、一定に保つ働きがある)を大量に分泌し、その反動で今度は急降下するのです。これがよくある「ランチ後の眠気」のメカニズムの一つです。一方で、血糖値が低下したときには、膵臓のα細胞からグルカゴンというホルモンが出て、アドレナリンと同じく低下した血糖値を上げて、一定に保ちます。インスリンとグルカゴンは膵臓で複数のアミノ酸から合成されるペプチドホルモンです。
つまり、集中力をキープしやすい体質にするには、普段から血糖値の急激な変化を抑える食生活が大切になるわけです。食事を抜かずに三食きっちり食べる、主食よりサラダなどを先に食べる、早食いせずにしっかりと噛んでゆっくり食べる、など、ちょっとした工夫で血糖値の上昇を遅らせ、ゆるやかにすることができます。
集中できないときは、無理せず休憩する習慣
多くの皆さんはお分かりかと思いますが、集中できない状況で無理をして仕事や作業を続けたとしても、生産性は上がりません。まずは、集中できないと感じたら、作業を切り上げるという習慣もおすすめします。
とはいえ、どうしても仕上げなければいけない仕事など、後回しにできないことがあります。その場合も、いったんその場を離れて息抜きをする、少しだけ仮眠をとるなど、必要な休憩を適切にとる習慣が重要です。
また、脳に素早くブドウ糖とビタミンB1を供給でき、エネルギー産生に直接関わるビタミンB2、ビタミンB3(ニコチン酸アミド)も摂れる栄養ドリンクは、体内環境を集中できるように整えることができます。集中力の維持・改善効果を有するものもあるため、休憩時間に栄養を補給するのもおすすめです。
- <参考文献>
- レビューブック 管理栄養士2023 株式会社メディックメディア
- 栄養士・管理栄養士のためのなぜ?どうして?基礎栄養学 株式会社メディックメディア
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html - 厚生労働省 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html - 文部科学省 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
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