更新日:2023年9月27日

葉酸の働きとは?摂取量の目安や葉酸が豊富な食べ物も紹介

近年、葉酸が不足することによる健康へのさまざまな悪影響が明らかになっています。葉酸の発見のきっかけは「妊婦の貧血」を治癒する因子の探索でした。日本語名の葉酸という名は、1941年、ほうれん草の葉から有効物質が分離され、葉のラテン語Foliumに基づき、英語名としてFolic acidと名付けられたことに由来します。葉酸はその名の通り、ほうれん草をはじめとする緑色野菜の「葉」に豊富に含まれている栄養素です。ここでは、そんな葉酸のことを理解するために必要な知識と1日に必要な摂取量、また葉酸が多く含まれている食べ物のことなどについて紹介します。

監修

柴田 克己 先生

滋賀県立大学名誉教授、藤田医科大学客員教授

INDEX

葉酸とは

葉酸はビタミンB群の一種に分類される必須栄養素です。したがって、食べ物から葉酸を必要量摂らないと不足し、やがて欠乏状態になってしまいます。葉酸欠乏といえば、赤血球の数が足りないために起こる「貧血」で、妊婦に起こりやすい「妊婦の貧血」です。ビタミンB12欠乏と同じ「巨赤芽球性貧血」となりますが、「妊婦の貧血」はビタミンB12では治癒しません。

葉酸にはさまざまな種類がある

葉酸と一言で言っても種類が多くあります。食品中に含まれる食事性の葉酸は、ほとんどが「ポリグルタミン酸型」 (複数のグルタミン酸が結合した形) で存在しています。一方でサプリメントなどに配合されている葉酸は、「モノグルタミン酸型」(グルタミン酸が一つ結合した形) として合成されたプテロイル・モノグルタミン酸(略してPteGlu(1);プテグル・ワンと読む)というものです。

食事中に含まれる葉酸は消化管内の酵素によっていずれも、「モノグルタミン酸型」となり小腸から吸収されます。5-メチルH4PteGlu(1)が主な形です。

また、これらのさまざまな種類の葉酸はまとめてビタミンB9と言われています。詳しくは最後のコラムでわかりやすく説明しています。

葉酸の働き

葉酸の働きはタンパク質の合成開始や、一部のアミノ酸代謝などに関わっており、多岐にわたります。また、全身のすべての細胞に存在している核酸の生合成にも、葉酸が必要です。核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の総称で、主に遺伝子情報を伝え、タンパク合成に関わる働きを担っています。

そのため、葉酸が不足すると核酸の合成に支障が生じてしまい、全身のすべての種類の細胞(約270種類と言われています)の分裂や分化(より特異的な働きをするための変化)に影響が現れます。とくに、分裂や分化が活発な細胞ほど、その影響を大きく受けやすいと考えられます。

・他のビタミンB群と一緒に働く

以上のように、葉酸は、細胞の分裂・複製や分化の根本にかかわる核酸生合成とタンパク質の合成開始に関わる重要な働きをしています。そして、もう一つ重要なことは、それらの葉酸の働きは同じビタミンB群と協働して発揮されるという点です。葉酸の働きを十分に生かすために、葉酸とともに他のビタミンB群の摂取量にも気を付けるようにしましょう。ビタミンB群の中でも特に、ナイアシン(B3)は、ビタミン剤やサプリメント型食品に使用されている葉酸(PteGlu(1))を補酵素型の源となるH4PteGlu(1)に変換するときに必要です。

葉酸が不足すると

・胎児への影響

葉酸が不足・欠乏した場合の大きな問題として、妊娠中の場合に、胎児(お腹の赤ちゃん)への影響が挙げられます。赤ちゃんに何かしらの異常が発生してしまうリスクを下げるためにも、妊娠前から葉酸が不足しないように心がけることが大切です。詳細については、この後で詳しくお話しします。

・成人への影響

葉酸が不足・欠乏してくると、貧血が起きやすくなったり、神経症状、例えば足のしびれや腱反射の消失、舌のしびれや味覚異常などが現れやすくなります。

貧血というと、立ちくらみなどがその症状だと思われるかもしれませんが、それは「脳貧血」と呼ばれる症状で、血圧の調節異常などで生じるものです。一方、葉酸の不足・欠乏などで起こる貧血とは、血液中の酸素を運搬するヘモグロビンが少なくなっている状態のことを指し、息切れや動悸、めまいなどが現れやすくなります。

さらに、葉酸が不足・欠乏していると、動脈硬化が進みやすくなったり、不足していない人に比べて認知機能が低下していたり、うつの度合いが高い人が多いという報告もあります。

葉酸の補給を心がけたい人とは?

葉酸は水溶性ビタミンであり、体の中に貯めておくことができないので、不足・欠乏しないように継続して摂取することが大切です。

葉酸が不足・欠乏するリスクのある人とは、まず、当然ですが葉酸の摂取量が少ない人が挙げられます。その他にも、摂取した葉酸の吸収が低下してしまっている人や、葉酸の需要(必要量)が多い状態にある人も、不足・欠乏するリスクがあります。とくに、葉酸の不足状態を通り越して欠乏による症状が既に現れている人は、より積極的な摂取が必要です。

どのような場合にこのようなことが当てはまるのか、もう少し詳しく解説していきます。

妊娠する可能性がある・計画している女性、妊婦、授乳婦

お腹の中の赤ちゃんは細胞の分裂・複製や分化が急速に進行しています。先に述べた通り、葉酸の重要な働きの一つは、細胞の分裂・複製や分化に関わっていることです。そのため、赤ちゃんができた時点から、お母さんの葉酸依存性の酵素反応系が非常に活発化しています。葉酸補酵素代謝系がスムーズに動かないと、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクが上昇しますので積極的にサプリメントなどから葉酸(PteGlu(1))を摂るようにしましょう。

・神経管閉鎖障害とは

神経管閉鎖障害とは赤ちゃんの先天性異常の一つです。妊娠が成立した妊娠初期の細胞増殖が盛んな時期に、脳や脊髄などが作られる過程で多く作られるのが神経管です。この時期に神経管がうまく作られないことで起こります。

神経管は通常、妊娠6週あたりで閉鎖が完了します。ところが、先天的に異常がある場合には、葉酸の需要が高まり要求量が異常に高くなります。要求量を満たすことができない場合には、神経管が閉鎖しないことがあり、その場合には二分脊椎のリスクが高くなります。二分脊椎とは、脊椎(背骨)の形の異常の一種で、脊椎の中にあるべき神経が骨の外に出てしまった状態のことです。胎児の二分脊椎では死産になったり、生まれてきた赤ちゃんの歩行や排尿に障害が生じてしまうことがあります。また神経管閉鎖障害では二分脊椎の他にも、無脳症(脳の全部または一部に欠損が見られる病気)などのリスクも生じます。

・妊娠前からの摂取が大切

妊娠6週で赤ちゃんの神経管が閉鎖するということは、受精から妊娠6週までの間の葉酸の摂取が重要ということです。そのため、妊娠する可能性のある女性や、妊娠を計画している女性は、常に葉酸を十分摂るようにしましょう。葉酸(PteGlu(1))をサプリメントなどで摂り始めてから、血液中の葉酸濃度が安定するまでに、8週間ほどかかるとされています。希望の出産時期などがある方はこの点も考慮すると良いでしょう。

・サプリメントからの摂取が必要

赤ちゃんに神経管閉鎖障害が生じるリスクを抑制するために必要とされる葉酸の量を、一般の食品のみから摂取するのは難しいため、サプリメントの葉酸(PteGlu(1))の利用が推奨されています(食事性の葉酸の摂取量については次項で解説します)。とくに、先天性異常の一つである神経管閉鎖障害の赤ちゃんを出産したことのある女性は、第二子が神経管閉鎖障害となるリスクが十倍以上に上ると言われており、妊娠前から医師の管理の下で、高用量の葉酸(PteGlu(1))の摂取が必要とされます。

なお、日本では推定で年間500~600人が神経管閉鎖障害で生まれてきていると推計されています。出生数を100万人とすると0.05%程度となります。一方、諸外国では、穀類の食品に葉酸(PteGlu(1))を添加することを義務付け始めた国が多くあり、そのような政策を施行してから、神経管閉鎖障害のある赤ちゃんの出産が減少したという報告もあります。日本でも一部の自治体(埼玉県坂戸市など)で、同様の取り組みが行われているようです。

・妊娠中期・後期~授乳中にも葉酸が不足・欠乏しやすい

葉酸が関わる反応系が非常に活発化し、要求量が増すのは、妊娠初期だけではありません。妊娠の成立から胎盤の形成、それに続く妊娠中の全期間を通じて、赤ちゃんの発育のために葉酸補酵素が必要です。

妊娠中に葉酸の補酵素代謝系がスムーズに働かない場合は、ホモシステインという酸化力の強いアミノ酸の蓄積を招き、それによって妊娠高血圧腎症や常位胎盤早期剥離、死産、早産などのリスクを高める可能性が指摘されています。また、出産後の授乳中にも、赤ちゃんに葉酸を届けるために、授乳婦は需要の高い状態が続きます。

なお、女性だけでなく男性についても、葉酸の十分な摂取が精子の質や妊娠率の向上に役立つという報告があるようです。

貧血などの症状のある人

葉酸欠乏に起因する貧血が起きている人は、補充が必要です。この場合は医薬品やサプリメントの葉酸(PteGlu(1))の摂取がおすすめです。息切れや動悸、めまいなどが起きやすい人は、葉酸不足が関係した貧血に近い状態になっているのかもしれません。

貧血以外にも、動脈硬化や認知症、うつ病などと葉酸不足・欠乏の関係も報告されています。

偏食する人、少食の人、習慣的に飲酒している人

偏食していたり少食の人は、葉酸などの微量栄養素の摂取量が不足しがちです。また、アルコールを習慣的に飲んでいると、腸からの葉酸の吸収が低下してしまいます。

胃腸の手術をした人や高齢者

胃腸の手術を受けた人は消化吸収の働きが低下していることが多く、葉酸不足になりやすい傾向があります。また、高齢者は一般的に消化吸収機能が低下していることが多いです。

葉酸の需要を増やす薬を服用している人

糖尿病の薬やてんかんの治療薬の中には、葉酸の需要を増やす薬があります。気になる方は、医師に一度相談してみましょう。

また、リウマチなどの治療に使われる薬の中には、葉酸の働きを抑えるような作用があるものもあり、その薬は葉酸(医薬品としては、ホリン酸あるいはロイコボリンと呼ばれている5-ホルミルH4PteGlu(1)が使用されています。ホリン酸は細胞内で補酵素型に変換されます。)とともに処方されることが多いようです。

葉酸の1日に必要な摂取量は?

葉酸の摂取量は、厚生労働省が5年ごとに策定している「日本人の食事摂取基準」に記されています。

推奨量は1日240μg、妊婦は+240μg

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、ほとんどの人が充足している栄養素の摂取量として「推奨量」が示されています。葉酸については成人の場合、男性、女性ともに1日あたり240μg。ただし、妊婦は+240μgで計480μg、授乳婦は+100μgで計340μgです。

なお、神経管閉鎖障害の子どもを出産したことのある女性は、第二子が神経管閉鎖障害となるリスクが十倍以上と言われているため、妊娠前から医師の管理下で、妊娠11週末まで1日に4~5mg(4,000~5,000μg)をサプリメントなどの葉酸(PteGlu(1))として摂取することが検討されます。

耐容上限量は900~1,000μg

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、葉酸について、過剰摂取による健康障害の回避を目的とする「耐容上限量」が示されています。これは、食事から葉酸を習慣的に過剰摂取することによる健康障害はないが、葉酸(PteGlu(1))のサプリメントや葉酸(PteGlu(1))が強化された食品を習慣的に過剰に摂取すれば健康障害を引き起こし得ることも考えられるとして、「葉酸(PteGlu(1))」の耐容上限量を示しています。その量は、30~64歳は1日あたり1,000μg、それ以外の年齢層の成人は900μgです。

簡潔に解説すれば、サプリメントなどから葉酸(PteGlu(1))を習慣的に過剰に摂取し続けると、健康を害する可能性がありますよ、ということです。

葉酸が多く含まれる食べ物は?

緑色野菜

葉酸は、ほうれん草の葉から見つかった栄養素で、ほうれん草のような濃い緑色の野菜に多く含まれています。

■緑色野菜に含まれる葉酸の重量(可食部100g当たり)
食品名加工状態など葉酸(μg)
ほうれんそう 葉210
ブロッコリー 花序220
えだまめ320
アスパラガス 若茎190

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

レバー

レバーにも葉酸が豊富に含まれています。また、レバーには、葉酸とともに摂取することで貧血予防などに働く、ビタミンB12も豊富です。

■レバー(肝臓)に含まれる葉酸の重量(可食部100g当たり)
食品名加工状態など葉酸(μg)
にわとり 肝臓1,300
うし 肝臓1,000
ぶた 肝臓810

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

その他、葉酸含有量の多い食品や飲み物

その他に、卵や乳製品、きなこ、納豆なども比較的、葉酸含有量が多い食品として挙げられます。また、日本人によく飲まれている緑茶は、茶種の中では葉酸を多く含んでいて、とくに玉露は多く、1杯で推定平均必要量の1割以上の葉酸を摂取できます。

■その他、葉酸含有量が多い食品や飲み物(可食部100g当たり)
食品名加工状態など葉酸(μg)
鶏卵 卵黄150
うずら卵 全卵91
きな粉 全粒大豆 黄大豆220
糸引き納豆120
玉露 浸出液150

〔出典:文部科学省「食品成分データベース」〕

葉酸を効率よく摂るポイント

他の微量栄養素と一緒に摂る

葉酸の吸収や代謝には、ビタミンCやビタミンB2・B6・B12、ナイアシン(ビタミンB3)、亜鉛といった微量栄養素が深く関係しています。そのため、葉酸の摂取量だけを気にかけるのではなく、それらの栄養素も同時に摂取することを心がけると、葉酸が体の中でより働きやすくなります。

食事性葉酸とサプリメントや栄養強化食品の葉酸の違い

両者の違いは主に消化の過程と葉酸補酵素型に変換されるときにビタミンB12が必要かどうかという点です。

食事性の葉酸は、主として5-メチルH4PteGlu(1)というものに消化され、小腸で吸収されて、血液を介して肝臓などの組織に取り込まれます。その後、体に有効な形に変換されて働きますが、働く形になるにはビタミンB12が必要です。そのためにビタミンB12も一緒に摂る必要があるのです。

一方、サプリメントや強化食品に含まれている葉酸(PteGlu(1))は、そのまま吸収されてビタミンB12がなくても体の中で働く形になることができます。

以上のように、サプリメントなどに含まれる葉酸(PteGlu(1))の方が食事性の葉酸と比べて吸収性においても、代謝性においても優れているのです。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食事性の葉酸の生体利用率(摂取したもののうち体で利用される割合)を50%としています。一方、サプリメントや栄養強化食品に含まれている葉酸(PteGlu(1))の生体利用率は約85%です。この違いが、葉酸の需要がとくに高い妊婦に対して、サプリメント型の葉酸(PteGlu(1))の摂取が推奨される大きな理由の一つです。

保存や調理によって失われないために

葉酸は、光に対して不安定で、また水溶性ビタミンであるため、水にさらすと失われやすいという特徴があります。対策として、明るい場所で保存する場合には、新聞紙などにくるんでおくとよいでしょう。また、調理の際に食材から葉酸を効率的に摂りたい場合は、なるべくゆでたりせず、炒めるなど、水を使わずにできる調理法をとるようにしましょう。

こんな症状がある場合には市販の医薬品を利用する方法も

ビタミンB群が不足・欠乏すると、疲れやだるさを感じやすくなるだけでなく、肩こりや腰痛、手足のしびれや眼精疲労などさまざまな症状を引き起こす可能性があります。

特に、ビタミンB12は「神経のビタミン」とも呼ばれ、神経の機能維持に役立ち、末梢神経の修復に関与します。

ビタミンB12は、葉酸と協力して働き、末梢神経の修復に関与することが知られているので、一緒に摂ると良いでしょう。

市販の医薬品には、ビタミンB12や葉酸(PteGlu(1))などが配合された、眼精疲労・肩こり・腰痛などの症状に効果のあるものがあります。

医薬品なので含まれるビタミンなどの量は食事から摂取する量よりも多く、服用の際には服用方法などを確認しましょう。

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葉酸不足・欠乏に注意すべきは妊婦さんだけではない

妊娠を希望するすべての女性にとって葉酸の摂取量を気にかけることは大切です。葉酸の不足・欠乏は赤ちゃんへの影響だけでなく、成人にも現れ、神経痛やしびれなどとの関連性も指摘されています。健康なうちに、食生活を振り返ってみて、葉酸が足りていないかもと思った方は、食べるものに気を付けたり、サプリメントに含まれる葉酸(PteGlu(1))を利用して不足を補いましょう。また、葉酸不足・欠乏が関係して貧血などが現れる場合もあるので、心配な方は医師の診察を受けてください。

コラム

「葉酸」という名前が「葉酸のこと」の理解をさまたげる?ビタミンB9という名前が便利!

「葉酸」という言葉の定義は、発見の歴史に起因するややこしさがあり、「葉酸のこと」の理解を妨げていると思います。

すでに、「葉酸」という名前の由来は、ほうれん草の葉から分離されたこと、と紹介しましたが、その時点では「葉酸」の化学構造が正確に決定されていませんでした。決定される前に、有効な物質が化学合成されてしまいました。化学合成された物質はプテロイル・モノグルタミン酸(略してPteGlu(1);プテグル・ワンと読む)で、この化合物も「葉酸」と名付けられてしまいました。後に、食品中に存在する「葉酸」の化学構造が決定されました。有効な物質は複数あることがわかってきました。食品中の有効な物質は、PteGlu(1)ではなく、テトラ・ヒドロ・プテロイル・モノグルタミン酸(略してH4PteGlu(1);エッチフォー・プテグル・ワンと読む)とその誘導体でした。

H4PteGlu(1)は、PteGlu(1)に四つの水素原子が結合したものでした。PteGlu(1)は食品中には存在していませんでした。では、なぜ、PteGlu(1)は、「妊婦の貧血」の治癒因子、あるいはある種の乳酸菌の生育因子として有効?という疑問が生じてきました。PteGlu(1)は、細胞内でH4PteGlu(1)に変換可能であった、よって有効であることが分かりました。

このような「葉酸」発見の歴史により、「葉酸」は「狭義の葉酸」という意味の「合成葉酸」であるPteGlu(1)のみを指しているの?あるいは「食事性葉酸」という意味の「食品に存在している葉酸」を指しているの?あるいは「合成葉酸」+「食事性葉酸」という意味の「広義の葉酸」を指しているの?このような名前によるややこしさが、「葉酸のこと」の理解の妨げとなっているのではないでしょうか。

「葉酸のこと」の理解の妨げを解消する一つの方法として、「ビタミンB9」という名前が便利です。生物活性を意味する時には「ビタミンB9」という名前を、そして、特定の化合物を指す時には「化合物名」を使用するという方法です。「妊婦の貧血」を予防・治癒する、あるいはある種の乳酸菌の生育に必要な因子である「ビタミンB9」活性を有する代表的な化合物として葉酸(PteGlu(1))がある、食品中に存在する「ビタミンB9」活性を有する主な化合物として、H4PteGlu(n)(テトラヒドロ・プテロイル・ポリ・グルタミン酸の略で、エッチ・フォー・プテ・グル・エヌと読む)とその誘導体(5-メチルH4PteGlu(n)、10-ホルミルH4PteGlu(n)、5,10-メチレンH4PteGlu(n)など)がある、ビタミンB9の主要な貯蔵型はタンパク質に結合した5-メチルH4PteGlu(5)で、主要な体内循環型は5-メチルH4PteGlu(1)であるということになります。図に示すと以下のようになります。

ビタミンの名前は「ビタミンB9」のほかに、ナイアシンを「ビタミンB3」、パントテン酸を「ビタミンB5」、ビオチンを「ビタミンB7」とも言います。

<参考文献>
  • 治療102(2),2020「葉酸」
  • 保健の科学62(7),2020「葉酸と認知症予防」
  • 臨婦産75(2),2021「葉酸」
  • 母性衛生62(2),2021「妊孕期にある成人女性における葉酸摂取の知識と行動および食品への葉酸添加の認識」
  • ペリネイタルケア40(9),2021「食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取しよう」

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