更新日:2022年11月1日
疲労の回復が期待できる!疲れたときにおすすめの飲み物6選
「今日は一日頑張った」、「大事なプレゼンの準備で忙しく働いた」、「趣味の運動に精を出した」ときなど、効率よく疲れをとりたいときにおすすめの飲み物や栄養素をご紹介します。
監修
福渡 努 先生
滋賀県立大学 人間文化学研究院 教授 日本ビタミン学会 幹事 ビタミンB研究委員会 委員
INDEX
効率よく疲れをとりたい。まずは「疲れ」を知ることから
「疲れ」とは何か。私たちはどうして疲れるの?
適度に体を動かしたときに感じるほどよい疲れは、心身をリラックスさせ、睡眠の質を高めるなど、私たちに良い効果をもたらしてくれます。しかし、過度な疲労やストレスの蓄積は集中力を低下させ、パフォーマンスの低下につながってきます。
日本疲労学会では、日常生活に問題のある疲労の定義を、「日常生活において慢性的な疲労もしくは、疲労と関連の深い健康の問題を抱えている、もしくは過重労働などの状況にあること」としています。
長時間労働や疲労は身体の抵抗力を低下させ、放っておくと本格的な体調不良やうつなどの病気の原因にもなりえるため、日頃から疲れを明日に持ち越さず、うまく休息することが大切です。
疲れはどこから来るのか
「疲れの要因」というと、みなさんは何を想像するでしょうか?激しい運動や神経を使う仕事など、比較的負荷の高い行動を想像する人が多いと思いますが、私たちの体は呼吸や消化など、生命維持活動に常にエネルギーを必要としています。私たちは何もしていなくても、食事で摂取した栄養からエネルギーを産生して消費し、毎日を過ごしています。そこへ、例に挙げたような負荷の高い行動が加われば、その分エネルギーを消費しますから、体や脳に負担がかかるのは当然のことです。
「疲れ」は「痛み」「発熱」と合わせて、三大生体アラームといわれ、体が発する「休め」のサインです。そのため、疲れを感じたときには十分な栄養と休息が不可欠なのです。
実は怖い慢性疲労。疲れは早めにとることが大切。
毎日の活動で、疲れを感じるのは自然なことです。私たちは日中に活動し、食事で栄養を摂り、眠ることによって疲労を回復するというサイクルを回しています。翌朝になってスッキリと目覚めることができれば、問題はありません。
しかし、過度な疲労が蓄積した状態が長期間継続すると、起きたときからひどい疲れを感じ、心身に支障をきたす「慢性疲労症候群」という病気につながってしまいます。また、体力や免疫機能も落ちて、病気や感染症にもなりやすくなってしまうのはいうまでもありません。
疲れをとるために必要な栄養素とは?疲労回復に効果が期待できる成分
疲労回復に必須のビタミン、「ビタミンB1、フルスルチアミン」
ビタミンB1は、疲労回復のカギを握る重要な栄養素のひとつです。脳や心臓、筋肉の主要なエネルギー源となるのは糖質ですが、この糖質をエネルギーに変えるプロセスで、代謝を助ける重要な役割を担っています。
ビタミンB1は豚肉や豆類、玄米や全粒粉パンなどに多く含まれる栄養素ですが、水洗いや加熱など、調理工程でその多くを消失してしまいます。食事の中に食材をたくさん盛り込んで工夫したとしても、必要な栄養素を普段の食事だけで補うことは大変なのです。
一方で、「フルスルチアミン」はビタミンB1よりも吸収に優れた成分で、より多く吸収され、組織内に多く届けることのできる成分です。
エネルギー代謝を助ける必須アミノ酸、「BCAA」
BCAAとは、分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid)と呼ばれるアミノ酸、バリン、ロイシン、イソロイシンのこと。BCAAは人の体内で作り出すことができないため、食事から摂取する必要のある「必須アミノ酸」です。エネルギーが足りなくなったときに起こる筋肉の分解を抑制してエネルギー源となり、疲労を軽減する働きをします。
酸っぱいものに多く含まれる「クエン酸」
クエン酸は、エネルギーを生み出す際に重要な役割を果たしている成分で、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、キウイ、梅干しなど、酸っぱいものに含まれています。疲労回復にも役立ち、糖質と一緒に摂取すると、疲労が溜まりにくくなるのに加え、酸っぱさも軽減できるのでおすすめです。
疲れたときにおすすめの飲み物6選
疲れたときに選ぶ飲み物に必要な要素とは?
疲れを感じたとき、どんな飲み物を選ぶのが良いでしょうか。せっかくなら効率よく栄養補給ができ、疲労回復の助けになるものを選びたいところ。以下のような条件を満たす飲み物がおすすめです。
- ❶疲れに作用する栄養が含まれていること
- ❷栄養が壊れずに吸収できること(特にビタミンB1は水溶性のため、調理など洗う段階で流出しやすく、加熱でも失われがちです)
- ❸適切な休息の一助になること
栄養ドリンク
栄養ドリンクにはビタミンB群や必須アミノ酸など、疲労回復に必要な栄養素が入っており、効率よく不足した栄養を補給することができます。ドラッグストアなどで簡単に手に入る他、医薬部外品のものなら深夜のコンビニでも入手可能です。
製品によっては、栄養補給に伴って睡眠の質を向上させるものや、二日酔いの軽減をするものなど、疲れをとるのに役立つ成分が製品の効能に準じて配合されています。栄養吸収の効率を高めたり、栄養素が失われないように加工したものなど、メーカーによってさまざまな工夫がされているのが特徴です。
ビネガードリンク
お酢に含まれるクエン酸は、疲労回復に役立ちます。
ビネガードリンクは、はちみつなどが添加されていることが多く、糖質と一緒に摂取できるうえ、お酢の酸味に味をつけて飲みやすく加工してあるなど、極端な酸っぱさを感じずにジュースとして飲めるものもあります。
フルーツジュース・野菜ジュース
フルーツジュースには、多くのビタミンB群をはじめ、ビタミンCなどの栄養も含まれています。柑橘類などの果実を絞ったストレートジュースなら、クエン酸も摂取できます。
現在は技術の進歩によってフルーツジュースや野菜ジュースにはビタミンなどの栄養が含まれているものが増えています。ただし、糖分や塩分の摂りすぎになる場合もあるので飲み過ぎには注意が必要です。
「それだけ」で栄養を摂ろうとせず、きちんと食事からも摂取することが大切です。
豆乳
豆乳に含まれるタンパク質も、主に筋肉や血液を作る材料になる他、エネルギー産生に欠かせない栄養素のひとつです。さらに、豆乳にはビタミンB群も多く含まれています。
飲みやすく味付けした市販の豆乳飲料は、味のバリエーションも豊富ですが、実は豆乳飲料よりも、無調整豆乳のほうがタンパク質量は多くなります。独特の風味がありますが、栄養価が高いのでおすすめです。
牛乳
牛乳はタンパク質、ビタミンB1の他、BCAAもバランスよく含まれているので、疲労回復に役立つ栄養がまとめて補給できるのでおすすめです。
ホットミルクを飲んで、ほっとした経験はありませんか。牛乳タンパク質が分解されてできる「ペプチド」には、ストレスを緩和する働きがあります。また、牛乳に含まれる必須アミノ酸のひとつ、トリプトファンは、精神を安定させる物質「セロトニン」を合成する材料になるため、集中したり、神経を使う仕事をした際にほっと落ち着く休憩時間の飲み物としておすすめです。
なお、冷たい牛乳を飲むとお腹が痛くなってしまうタイプの人は、レンジなどで温めてホットミルクにするのが良いでしょう。
コーヒー
みなさんご存じの通り、コーヒーに含まれるカフェインには集中力を保ち、眠気を解消する働きがあります。また、疲労を回復する働きがあるため、休憩時間にうまく活用しましょう。
ただし、これは適度にとった場合の話。最近はエナジードリンクなどカフェインが多く含まれる食品もあり、知らず知らずのうちに摂りすぎていることもあるので、注意が必要です。カフェインを過剰に摂取すると中枢神経が過剰に刺激され、めまい、心拍数の増加、興奮などが起こる場合があります。
質の良い睡眠のためにも眠る前の摂取は控え、1日の摂取量は2〜3杯程度にとどめましょう。
疲れたときは飲み物にもひと工夫を
疲れに必要な栄養素を知って、より効果的な飲み物を選ぼう
ここまで、疲れたときにおすすめの飲み物を栄養面から解説してきましたが、一般的な飲料で摂取できる栄養素の量には限りがあります。
飲み物での栄養補給はあくまでも補助的な位置付けとし、必要な栄養素はきちんと食事で摂りながら、うまく活用していきましょう。
疲れを慢性化させないようにするには、勉強や仕事、運動に精を出した後は、適度なタイミングで休憩を入れること。また、日頃からウォーキングなどの適度な運動や規則正しい生活をプラスして、よく眠れる生活の工夫も忘れずに行いましょう。
疲労回復のために栄養を効率よく補う飲み物としては、栄養が壊れにくく、吸収の効率を考えて作られている栄養ドリンクがおすすめです。
- <参考文献>
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html - 文部科学省 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020報告書