更新日:2024年4月25日

授乳中に栄養ドリンクを飲んでも大丈夫?成分や飲むときの注意点を紹介

「授乳中に栄養ドリンクを飲んで大丈夫…?」そんな疑問を抱いたことはありませんか?

お子さんが元気に育つことを願うからこそ、授乳中に栄養ドリンクを飲むことで母乳に影響がないか、心配ですよね。そこで本記事では、授乳中に栄養ドリンクを飲んでも問題ないか、飲む際の注意点、そして栄養ドリンクだけでなく母乳に含まれる成分についても紹介します。

育児で疲れているけどもうひと頑張りしたいとき、妊娠授乳期に発熱してしまって体力や食欲が低下してしまったとき、もしかすると栄養ドリンクが頼りになるかもしれません。

監修

宗田 聡 先生

広尾レディース 院長・茨城県立医療大学 客員教授

INDEX

授乳中に栄養ドリンクを飲んでも大丈夫?

授乳期の栄養補給の効能がある栄養ドリンクを選ぶ

市販の栄養ドリンクのなかには、「授乳期の栄養補給」といった効能がある商品があります。こうした商品であれば、授乳中に栄養ドリンクを飲んでも問題ないでしょう。

栄養ドリンク(ビタミン含有保健剤)は、主に指定医薬部外品や医薬品に分類されるもの、つまり薬に該当します。疲労回復に有効な成分が含まれており、効能・効果が認められています。服用量も定められているので、授乳中の栄養補給の効能がある栄養ドリンクを選ぶと同時に、記載された用法・用量を守ることが大切です。

授乳期のお母さんは、母乳によって子どもに栄養を与えているため、授乳頻度の多い人ほど栄養不足になりがちです。産後の体力回復にも時間がかかるうえ、育児に手一杯で十分な食事や睡眠がとれなかったり、風邪や乳腺炎によって発熱したりするなか、ほとんど休む間もなく必死で頑張るお母さんも多いのではないでしょうか。育児中、体力や食欲が落ちてしまったときに、食事から摂取できない栄養素を補える、疲労の回復が見込める、栄養ドリンクを頼ることも一つの選択肢として考えてみるのもよいでしょう。

栄養ドリンクのうち指定医薬部外品については薬剤師や登録販売者のいる薬局やドラッグストアの他、スーパーやコンビニエンスストアなどでも手に入ります。目的や用途に応じて豊富な種類が用意されているので、ご自身に合った商品を選びたいですね。授乳中に飲む栄養ドリンクを初めて選ぶときは、薬剤師・登録販売者に身体の状態や食生活などを伝え、適切なものを選んでもらうとよいでしょう。心配な場合は、かかりつけの医師に相談するのもおすすめです。

カフェインの摂取量に注意する

市販の栄養ドリンクには、カフェインを含む商品もあります。商品によって異なりますが、一般的に栄養ドリンクには、1瓶あたり約50mgのカフェインが含まれていることも。カフェインへの耐性が弱い方や、コーヒー1杯程度でも眠れなくなることがある人は服用に注意が必要です。

適切に摂取していれば問題ありませんが、健康な成人であってもカフェインの摂りすぎ(過剰摂取)は健康被害をもたらすことが懸念されます。摂取量をゼロにする必要はありませんが、授乳中や妊娠中の方はカフェインを多く摂ると母乳へ移行することが知られているので、いつも以上に摂りすぎには気をつけましょう。

日本では「カフェインに対する感受性に個人差がある」として、1日の摂取許容量は定められていません。しかし、欧州や米国など海外の一部の国や地域では規定があり、カナダ保健省は、カフェイン推奨摂取量を1日あたり健康な成人で400mg(コーヒーをマグカップで約3杯)まで、授乳中の女性では300mgまで(約2杯分のコーヒー相当)として、注意を呼びかけています。

<1日あたりのカフェイン最大摂取量>
年齢層1日あたりの健康に悪影響のない
最大摂取量
18歳未満の子どもや青少年体重1 kgあたり2.5mg
18歳以上の大人400mg
妊娠を考えている人や妊婦・授乳中の人300mg

Health Canada

栄養ドリンクだけでなく、紅茶や煎茶、チョコレートなど、他のカフェイン含有食品も考慮に入れ、1日の摂取量の上限を超えないように心がけることが重要です。ノンカフェインの商品を選ぶなど、自分の体質や状態に合わせて選択するとよいでしょう。

<ノンカフェインで寝る前にもおすすめのアリナミン製薬のドリンク剤>

エナジードリンクは飲んでも大丈夫?

栄養ドリンクと混同されやすい「エナジードリンク」は、「清涼飲料水」に分類されます。認められた効能・効果の表示はなく、摂取量の制限も明記されないため、商品に記載されている成分表示をよく確認し、飲んでよいかどうか判断する必要があります。

カフェインを多く添加したエナジードリンクには、1本あたりコーヒー2杯分のカフェインが含まれるものもあるので注意してみるようにしましょう。授乳中の飲用を控えたり、カフェインを含む他の飲食物との総量を調整したりする工夫が必要です。

栄養ドリンクに含まれる成分

商品によって異なりますが、栄養ドリンクにはビタミンやミネラル、アミノ酸など、身体のエネルギー生成に役立ち、健康に欠かせない栄養成分が含まれています。以下では、一般的な栄養ドリンクに含まれる成分を紹介します。

ビタミンB1

水溶性ビタミンの一つで、体内でブドウ糖からエネルギーを生み出す際に関与する栄養素がビタミンB1です。

ブドウ糖をエネルギー源としている脳のためにも、ビタミンB1は積極的に摂取するとよいでしょう。ビタミンB1は多めに摂取しても、余分なものは尿中に排泄されやすく、体内に蓄積しにくい性質があるため、日常的に摂取することが大切です。

ビタミンB2

水溶性ビタミンの一つであるビタミンB2は、糖質、タンパク質、脂質の代謝やエネルギー産生に関与する栄養素です。また、皮膚、粘膜、髪の毛などのターンオーバーを促進し、皮膚・粘膜の正常な働きを助けることで健康維持に寄与する役割もあります。

※細胞が形をかえながら表面に押し出されて、新しい細胞へと生まれかわること

ビタミンB2が不足すると、口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、角膜炎などが引き起こされる可能性があります。

ビタミンB6

水溶性で酵素の働きを助ける成分であるビタミンB6は、アミノ酸の代謝を促進しエネルギー産生に寄与します。その他にも、脂質の代謝、免疫機能の維持、皮膚や粘膜の正常な働きを助ける、赤血球のヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成など、重要な働きをします。

ビタミンB6が不足すると、皮膚炎、舌炎、口内炎、口角炎、貧血、リンパ球減少症の発症の要因となる可能性があります。

アミノ酸

アミノ酸はタンパク質を構成する要素です。さまざまな種類のアミノ酸が組み合わさることによってタンパク質を形成しています。タンパク質は体内で酵素やホルモン、免疫物質(抗体)などの材料として必要なもので、身体の機能の維持に重要な役割を果たしています。体内で作り出すことができないので、食べ物から摂取する必要があります。

ミネラル

カルシウム、リン、カリウム、ナトリウムなど、これらを総称して「ミネラル」と呼びます。

ミネラルは身体に不可欠な成分ですが、体内でつくることができないため、食べ物から摂る必要があります。不足したり、逆に摂りすぎたりすると、不調の原因となる可能性があるため、適量を摂取することが望ましいとされています。

タウリン

タンパク質が分解される過程で生成されるアミノ酸に似た物質がタウリンです。この物質は、消化管内でコレステロールの吸収を抑えるだけでなく、心臓や肝臓の機能を高め、視力の回復などの働きもあるとされています。

カフェイン

カフェインは、眠気解消や、集中力の向上に関わる成分です。また、利尿作用もあるため、摂取後は尿意でトイレに行く回数が増えることもあります。適量であれば害はないとされていますが、授乳中はカフェインの摂取量に注意が必要です。

母乳に含まれる栄養

ここからは、授乳中の方にはぜひ知っておいてほしい、母乳に含まれている主な栄養成分を紹介します。

まず知っておきたいのは、母乳に含まれる成分組成は常に一定ではないという点です。母乳は出産後の時期によって成分が異なり、大きく「初乳」「移行乳」「成乳(成熟乳)」に分かれます。初乳は出産後早期にみられる粘度の高い半透明の母乳で、出産後5日前後で移行乳となり、7~10日前後で白青色不透明の成乳になっていきます。

それぞれの母乳に含まれる成分は多少異なり、授乳期間が長くなるほど、ビタミンB6やB12、ビタミンC、カルシウム、鉄、亜鉛、銅などの一部の成分の濃度は低下。また、母親の遺伝的背景や環境によっても変化するといわれています。

母乳を構成する成分には、基本的な栄養素はもちろん、多種多様の微量成分が含まれています。それらの栄養成分は、赤ちゃんの身体のさまざまな器官の発達に関係する重要な役割を担っています。なお、市販の粉ミルクは、一般的な母乳の栄養構成比率をお手本につくられています。

<主な母乳構成成分>
多量栄養※1微量栄養※2その他

タンパク質
脂肪
炭水化物
多量ミネラル※3
ビタミン
微量ミネラル※4
母体由来の細胞・抗体
ホルモン
成長因子
など

※1:食事の大部分を占め、エネルギーや多くの必須栄養素を供給する栄養素
※2:ビタミンや必要量がごく微量のミネラル
※3:1日あたりの必要量が比較的多いミネラル。ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム
※4:高濃度では有毒になってしまう、必要量がごく微量のミネラル。クロム、銅、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、亜鉛

ミネラルのなかでは、主にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなどが含まれており、ビタミンはA、B1、B2、B6、B12、Dなど多くの種類を含みます。ただし、これらの栄養素は母親の食事と体内の貯蔵量に応じて変化するうえ、母乳中にはビタミンDやビタミンKの含有量が非常に少ないという特徴があります。

そのため、母乳のみで育てられている乳児には、ビタミンD欠乏症やビタミンK欠乏症が起こりやすい傾向であることが知られています。ただ、ビタミンDは日光に当たることによって産生できるので、医師の許可が得られたらお散歩に連れて行ってあげたりすることで補えます。ビタミンKは、産院で処方されるビタミンK2シロップと呼ばれる、ビタミンK不足による出血を予防する製剤を与えるなどで補うことができます。新生児健診等で、産院からビタミンK2シロップを処方されたら医師の指示に従って忘れずに与えるようにしましょう。

授乳中の母親の食事が常にバランスのよいものであるとは限らないため、母親自身の健康維持のため、また、母乳から赤ちゃんに栄養を渡すことも意識し、ビタミン・ミネラルを積極的に摂取する必要があります。

その他、覚えておきたい母乳中の栄養素が下記の二つです。

ラクトース(乳糖)

ラクトースは、母乳に含まれる糖質の一種です。新生児が消化できる炭水化物であり、体内で利用しやすいエネルギー源となります。

タウリン

栄養ドリンクに含有されていることが多い成分としても紹介したタウリンは、脳の発育に重要な役割を果たす物質です。人の体内でも作り出すことができますが、必要量には足りないため食品から摂り入れる必要があります。

また、タウリンは、動物実験レベルでは乳児の脳の発達に寄与しうることが知られてきています。1)

1)Shiro Tochitani, Tomonori Furukawa, Ryo Bando, Shigeaki Kondo, Takashi Ito, Yoshitaka Matsushima, ... Atsuo Fukuda. GABAA Receptors and Maternally Derived Taurine Regulate the Temporal Specification of Progenitors of Excitatory Glutamatergic Neurons in the Mouse Developing Cortex. Cerebral Cortex, 2021 Aug 26;31(10):4554-4575.

栄養ドリンクを飲むときの注意点

カフェインが含まれている栄養ドリンクは、眠気を覚ます効果があるため、寝つきが悪くなることも。夜の睡眠に影響を与えないためには、飲むタイミングに注意しましょう。良質な睡眠のためには、寝る前の飲用は避けたほうが無難です。

なお、「寝ている間に疲労を回復したい」、「翌朝元気に目覚めたい」などの理由で寝る前に栄養ドリンクを飲みたい場合は、ノンカフェインタイプを選ぶことをおすすめします。

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授乳期には積極的な栄養補給を

授乳期は、自分のためにも赤ちゃんのためにも、栄養が欠かせません。栄養ドリンクには、一般的にビタミンB1・B2・B6など身体のエネルギーをつくるために必要な栄養素や、母乳にも含まれるタウリンなどが配合されています。バランスのとれた食事を心がけることが先決ですが、授乳期・産後の栄養補給に取り入れやすい栄養ドリンクも活用して、不足した栄養を補いましょう。

<参考文献>

疲労の回復予防・妊娠授乳期の栄養補給に
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