更新日:2024年6月26日
クーラー病(冷房病)とは?主な症状や原因、だるさや疲れの対処方法について解説
夏に陥りやすい「クーラー病(冷房病)」。気温や湿度が高く、熱中症の危険性が高い日本の夏にはクーラーが欠かせません。しかしながら、「クーラーをかけていると調子が悪くなる…」という方も多いのではないでしょうか。その不調、もしかしたら寒暖差が原因で引き起こされるクーラー病によるものかもしれません。そこで、この記事では、クーラー病の症状やその原因、治し方を紹介。クーラー病を予防して、快適な夏を過ごしましょう。
監修
久手堅 司 先生
せたがや内科・神経内科クリニック 院長・医学博士
INDEX
クーラー病(冷房病)とは
夏場、クーラーが効きすぎた部屋にいると、体温の調節がうまくいかなくなって体にさまざまな不調が現れることがあります。これを一般的に「クーラー病」といい、別名「冷房病」とも呼ばれています。
クーラー病は正式な病名ではありませんが、クーラーの使いすぎが体に悪影響を及ぼすことは広く知られており、頭を悩ませている人も少なくありません。特に女性は、クーラーに当たりすぎると、生理不順や腰痛など、更年期障害に似た症状が起こりやすいといわれています。
どんな症状が引き起こされるの?
クーラー病の主な症状としては、体のだるさや疲労感、肩こり、足腰の冷えの他、食欲不振、便秘、下痢といった胃腸の不調などが挙げられます。
夏場、クーラーをつけずに過ごすと、熱中症になる危険性がありますが、クーラーのかけすぎも体に負担がかかる原因に…。クーラーに当たると不調になるという人は、使い方や夏の過ごし方を見直してみましょう。
クーラーの使いすぎが体に与える影響
クーラー病の症状を予防するためには、まずその原因を知ることが大切です。クーラーを使いすぎたとき、体でどんなことが起こっているのか、一つずつ確認していきましょう。
自律神経のバランスが乱れる
私たちの体は、暑い環境では、汗をかいたり、血管を拡張させたりして、熱を放出し、体温を調節しています。この体温調節機能を担っているのが、私たちの無意識下で自律的に働く「自律神経」なのです。
自律神経は、体温だけでなく、血圧や心拍数、消化といった体の重要な機能をコントロールしています。クーラーのよく効いた涼しい部屋で長時間過ごしたり、涼しい部屋と暑い屋外を何度も出入りしたりすると、自律神経のバランスが乱れてしまい、その結果、体にさまざまな不調が現れるのです。
だるさや疲れなどの症状が起きる
クーラーのよく効いた部屋と暑い屋外を行き来するなどして、体が大きな寒暖差を感じると、体温を調節するために、自律神経がエネルギーを消耗します。その結果、疲労が蓄積されて、だるさや疲れといった症状が体に現れるのです。
寒暖差による疲れは「寒暖差疲労」と呼ばれており、クーラー病は寒暖差疲労の一種と言い換えることもできます。
寒暖差疲労に陥ると、だるさや疲れの他、汗をかけなくなって体温をうまく調節できなくなったり、肩こり、頭痛、下痢、便秘といった症状が起きたりすることも。普段から肩がこりやすい人は肩こりがひどくなるなど、症状はその人の弱い部分に起きやすいといわれています。
だるさや疲れ、肩こりといった症状が続くと、日常生活にも支障が出て、焦りや不安など、精神的なストレスも感じやすくなってしまいます。こうしたストレスを受けると、自律神経のバランスがさらに乱れてしまうため、早めに対策することが大切です。
体が冷えて血流が悪くなる
体の冷えも、クーラー病の大きな原因です。クーラーの冷気に当たりすぎて、体が冷え切ってしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
体が冷えてしまうと、全身の血流が滞り、頭痛や腹痛、肩こりといった症状が現れます。こうした身体的な症状の他、人によっては、不眠や、やる気が出ないといった精神的な症状が現れることも。
夏場は暑いからと薄着で過ごす人も多いですが、クーラーの効いた部屋で肌を露出させていると、冷気が肌に直接当たって体が冷え切ってしまいます。特に手足など、体の末端の血流が悪くなり、冷え症と同じ状態になってしまう場合も。冷え症の人は、クーラーによって冷えを感じやすいといわれているため、クーラーとの付き合い方には特に注意を払いましょう。
クーラー病を防ぐには?気軽にできる対策、治し方を紹介
さまざまな症状を引き起こすクーラー病ですが、予防するにはまず、エアコンの使い方を見直すことが大切。症状を和らげたい場合は、衣類で冷えを防いだり、入浴で血流をよくしたりするのもおすすめです。ここからは、クーラー病を防ぐための具体的な対策や治し方を紹介します。
エアコンの風向・設定温度を調節する
まずは、クーラーの冷気が直接体に当たらないよう、エアコンの風向は上向きに設定しましょう。冷気は足元にたまりやすいので、上向きにしておくと足の冷えも予防できます。扇風機やサーキュレーターを使えば、冷気を循環させることができるので、さらに快適に過ごせるでしょう。
また、クーラーの設定温度については、外気温マイナス4~6℃ほどで設定するのがおすすめです。例えば、外気温が30℃だった場合は、24~26℃程度が適切な設定温度といわれています。これ以上低くすると寒暖差が大きくなるため、できる限りこの範囲で設定するようにしましょう。
靴下やカーディガンなど、衣類で冷えを防ぐ
クーラーが効いた部屋で薄着のまま過ごしていると、体が冷えすぎてしまうことも。裸足で過ごしたり、半袖やノースリーブなど肌を露出する服で過ごしたりしていると、冷気が肌に直接当たって体温を奪われてしまいます。
夏場であっても、クーラーが効いた室内にいる場合は、靴下やカーディガン、ブランケットを使って、体の冷えを予防しましょう。特に足元は冷えやすいので、厚手の靴下を着用すると冷えを防ぐことができます。
体を温める食材を食べる
夏の暑い時期は、冷たい飲み物や食事を取りがちですが、スープや鍋など、温かい食事を取るようにすると、血流がよくなって冷えが和らぎます。さらに、生姜やにんにく、ねぎ、にら、しそ、かぼちゃといった食材には、体を温める効果が期待できます。こうした食材を積極的に摂取して、内側から体を温めるようにしましょう。
湯船にゆっくりつかる
暑いからとシャワーで済ませずに、湯船につかることも大切です。入浴すると、全身の血の巡りがよくなります。クーラーに当たりすぎて不調を感じたときは、熱すぎないぬるめのお湯にゆっくりつかって体を温めましょう。
軽い運動を行って血流をよくする
クーラーの効いた部屋で長時間過ごす場合は、屈伸運動や軽い体操を行って、体をほぐしましょう。体を動かすと血流がよくなるので、冷えを軽減できます。
座った姿勢のままでいると、血の巡りが悪くなってしまうため、ときどき立ち上がって少し歩くのもよいでしょう。日頃からウォーキングを行うなどして足の血流を改善しておくと、体が冷えにくくなります。
夏バテでだるさ・疲れを感じたら、市販薬を活用するのも一つの手
夏バテで体のだるさや疲れを感じているなら、疲れの軽減に効果がある「ビタミンB群」を含む市販薬を活用するのもおすすめです。
ビタミンB1やビタミンB6をはじめとするビタミンB群は、糖質・脂質・タンパク質からエネルギーを生み出すのに不可欠な栄養素です。そのため、ビタミンB群が不足するとエネルギー不足になり、だるさや疲れを感じやすくなるのです。
特に、ビタミンB1は、筋肉や心臓、脳のエネルギー源になる糖質を代謝するのに必要な栄養素。夏バテによるエネルギー不足で疲れを感じているときには、必須の栄養素といえるでしょう。さらに、神経が正常に働くために必要なビタミンB6・ビタミンB12は、肩こりや腰痛の解消にも効果があります。
ビタミンB群を含む市販薬は、ドラッグストアなどでも購入することができます。まずは薬剤師に相談し、症状や体質に合った市販薬を見つけましょう。
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クーラー病を予防して、夏を快適に過ごそう!
だるさや疲れ、頭痛、肩こりなど、不快な症状を引き起こすクーラー病。予防するには、クーラーの風向や設定温度を調節するとともに、体を冷やさない工夫を行うことが大切です。日頃から「カーディガンを羽織る」「湯船につかる」といった対策を行いましょう。だるさや疲れが取れないときは、ビタミンB1やビタミンB6などを含む市販薬を活用するのもおすすめです。
- <参考文献>
- 千葉市医師会
- 福山市医師会
- 日本臨床内科医会