更新日:2022年4月28日

腰痛の原因とは? 症状や対処法をご紹介

腰痛の原因にはさまざまなものがありますが、原因の多くは筋肉の疲労やこりです。ストレス、病気、ケガ、骨の変形や異常により痛みが生じていることも少なくありません。そうした多様な原因があることもあいまって、腰痛の原因が特定できるケースは15%程度といわれています。

今回は腰痛を引き起こす主な原因を紹介するとともに、腰痛の症状や対処法も合わせて紹介します。

監修

手塚 正樹 先生

院長・高砂慶友整形外科

INDEX

腰痛とは

腰痛は特定の疾患(病気)を指すものではなく、腰部を中心に生じている痛み、はり、しびれといった不快感の総称です。急に起こる短期的な痛み=急性腰痛と、一定以上の期間継続する痛み=慢性腰痛に大きく分けることができ、とくに急性腰痛は、男女ともに多くの人が経験しています。自然に痛みがおさまることも多いですが、「たかが腰痛」とあなどっていると長引くこともあるため、適切な対処が必要です。

痛みの主な原因は、腰部の筋肉や靱帯の損傷、骨の変形や骨折であることが多いですが、中には血管や内臓の疾患、がんなどの影響で痛みが生じていることもあります。痛みの他に下肢の麻痺、発熱、また痛みがどんどん強くなったりする場合は、早めに医療機関を受診し、専門の検査を受けたほうがよいかもしれません。

腰部の構造

腰の構造を知っておくと、腰痛が起きる仕組みをより深く理解することができます。まずは、腰の中心となる骨(腰部脊柱)の構造を解説しましょう。

腰の骨は、腰椎(ようつい)と呼ばれる、ほぼ同じ形をした5つの骨がブロックのように積み上げられ、構成されています。そして5つの腰椎の間には、椎間板(ついかんばん)という、軟らかいクッションのような働きをする組織が挟まっています。このような形状のため、例えば腰部に強い負荷がかかったり、加齢の影響を受けたりして椎間板が変形すると、痛みが生じることがあります。

また、積み上げられた腰椎と椎間板は、お腹側の前縦靱帯(ぜんじゅうじんたい)と背中側の後縦靱帯(こうじゅうじんたい)という、2つの靱帯によってつながっています。この2つの靱帯は、腰椎と椎間板をつなげるとともに、椎間板が腰椎の間から飛び出すのを防ぐ働きも持っています。なぜなら椎間板が飛び出して神経に触れることも、腰痛の原因となるからです。後ほど詳しく解説しますが、飛び出した椎間板が神経を圧迫することで痛みを引き起こすのが、腰椎椎間板ヘルニアです。

この他、腰の骨を支える靱帯の変化や筋肉の損傷によって痛みが生じることもあります。

腰痛の原因として考えられる疾患と症状

腰痛は原因がわかっている「特異的腰痛」と、特定の原因がわからない「非特異的腰痛」の2種類に分けられます。

「特異的腰痛」には下記のような疾患が含まれます。

<特異的腰痛の疾患例>

  • ・腰椎椎間板ヘルニア
  • ・腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
  • ・脊椎分離症・脊椎すべり症  など
  • ・圧迫骨折
  • ・骨粗しょう症

じつは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症のように原因がわかっている「特異的腰痛」は15%程度で、8割以上は、ぎっくり腰のように特定の原因がわからない「非特異的腰痛」です。

ただし、「非特異的腰痛」の中には、早期発見が必要な重い病気によるものが隠れていることもあります。ここでは、腰痛の原因のひとつ「非特異的腰痛」の代表的な疾患や症状を紹介します。

ぎっくり腰

「ぎっくり腰」は、急に生じた強い腰の痛みの総称で、特定の疾患名ではありません。物を持ち上げようとしたときや、腰をひねる動作をしたとき、寝起き時に痛みが生じやすいといわれていますが、とくに何もしていないのに痛むこともあります。後述する「筋・筋膜性腰痛」のように、筋肉や靱帯の損傷が多いと考えられていますが、中には、ぎっくり腰だと思っていたら、骨折や細菌感染の炎症による腰痛だというケースもあります。発熱をともなう場合や長期間ひどい痛みが続く場合などは自己判断せず、医療機関で正しい診断を受けましょう。

筋・筋膜性腰痛症

重いものを運んでいるときに、手がすべるなどして急に強い力が腰にかかる、または持ち上げようとした荷物が予想以上に重かった(または軽かった)ことにより、急に大きな負荷が腰にかかってしまうといったことが原因で、筋、筋肉、靱帯などが損傷して生じる腰痛のことを「筋・筋膜性腰痛症」と呼ぶことがあります。外傷はないものの、突発的な強い痛みが生じるため、注意が必要な症状といえます。

慢性腰痛

最初に痛みを感じてから3ヵ月以上たっても腰の痛みが続いている場合、慢性腰痛と診断されます。時間経過とともに、自然に良くなることの多い急性腰痛と違い、慢性の腰痛は自然に痛みがなくなることが少ない傾向にあります。腰痛が慢性化しやすくなる要因としては、過去に腰痛を患ったことがある、加齢、肥満、喫煙、うつや認知機能障害などが報告されているため、当てはまる人は注意したほうがよいかもしれません。

変形性腰椎症

変形性腰椎症は読んで字のごとく、腰椎が変形することによって、痛みなどの異常が生じる疾患です。主に加齢によって起こることが多く、無症状のこともあります。しかし症状が進むと、変形した腰椎が「弱くなったところを補強しようとして」と、骨棘(こつきょく)というとげのようなものを形成します。これによって、腰の痛みや可動域の制限などが生じるのが、変形性腰椎症の代表的な症状といわれています。中には、骨棘が神経を圧迫し、神経性のしびれが生じることも、まれにあります。

腰痛を予防するには?

日常生活に以下のようなことを取り入れると、腰痛の発生予防につながることが期待できます。

筋トレをする

筋トレ(筋力トレーニング)で体幹部を中心とした筋肉を成長させると、筋肉が背骨や腰部の支えとなり、腰椎の変形や弯曲が起きにくくなる効果が期待できます。例えば椅子に座ったまま、膝を胸に近づけるようにゆっくりと上げ下げするだけでも、腹筋を鍛えることが可能です。毎日少しずつ続けて、腰痛を予防しましょう。

腰に負担がかかる姿勢をしない

長時間同じ姿勢を続けたり、体にゆがみが生じるような姿勢をとったりすると、筋肉がこわばり、腰痛が起こることがあります。猫背、足を組むといった、体をゆがませる原因となる姿勢を避ける他、重い物を持ち上げるときは胸を張り、お尻を後ろに引いて股関節と膝を曲げるなどして、腰への負担を減らす姿勢をとりましょう。

ストレスをためない

「精神的ストレスは、職場における腰痛の発症と強い関連がある」という報告があるように、ストレスも腰痛の一因になることがあります。そのため、自分なりのストレス解消法を見つけて適度に発散し、ストレスをためないようにすることも大切です。健康的な生活習慣とストレスの少ない生活を心がけ、心因性の腰痛予防にも努めましょう。

食生活に気を配る

バランスのよい食生活を心がけ、骨や筋肉の成長に必要な栄養素を適切に摂取することも、腰痛予防につながると考えられます。以下に紹介するような栄養素と食材を意識しつつ、食事のバランスに気を配り、食生活からも腰痛を予防しましょう。

<腰痛予防に備え、積極的にとりたい栄養素と食材の例>

  • ・筋肉のもとになるタンパク質(例:まぐろ、かつお、あじ、サンマ、牛肉、鶏肉、卵、大豆、高野豆腐、チーズなど)
  • ・骨を強くするカルシウム(例:小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品、牛乳・乳製品)
  • ・体の中から筋肉や神経の働きに関与するビタミンB1、B6、B12(例:穀類の胚芽、肉類、レバー、卵黄)
  • ・末梢の血行の改善に関与するビタミンE(例:小麦胚芽油、ひまわり油、ベニバナ油などの植物油、アーモンドなどのナッツ類、ほうれん草やブロッコリーなどの緑色野菜)

とはいえ、家事や仕事で忙しい日々を送る中で、バランスの取れた食生活を常に行うのはなかなか難しいもの。そういったときは、サプリメントなどを活用するのもおすすめです。

腰痛への対処法とは?

最後に、腰痛を悪化させないための対処法についても紹介します。

安静にする

腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、原因がわかっている特異的腰痛の場合、筋肉や神経を刺激しないよう、安静にしたり、コルセットなどで固定したりすることで痛みの緩和につながることがあります。

ただし、原因がよくわからない非特異的な急性腰痛では、過度に安静にするよりも適度に動いていたほうが回復に有効な場合もあるため、症状に合った対処をすることが大切です。

腰痛改善のストレッチを行う

ぎっくり腰などの非特異的腰痛で、それほど痛みが強くないときは、腰痛改善のストレッチを行ってみましょう。ストレッチには柔軟性を高めて筋肉を伸ばす効果があり、継続して行うことで症状の改善効果が期待できます。毎日少しずつでよいので、無理のない範囲で続けてみましょう。痛みが出たり強くなったりした場合は、すぐに中止してください。

具体的なストレッチ方法はこちら

薬で痛みを緩和する

腰痛の軽減に使われる薬は大きく分けて2種類あります。一つは、痛み止めなどの内服薬で、これは服用することで体の内側から患部の炎症を抑えたり、痛みを軽減したりする作用があります。また、腰痛を緩和する効能をもつビタミンを配合した内服薬を使用することも有用です。たとえばビタミンB1・B6・B12には中からこりを緩和する効果が、ビタミンEは血行改善に関与しています。

もう一つは、湿布や塗り薬などの外用薬です。これは皮膚から消炎作用のある薬を吸収することで、炎症を抑え、痛みの緩和につなげるものです。痛みの度合いなどによって、これらを使い分けながら様子を見てみましょう。

多くの腰痛は経過観察で症状が緩和する傾向にあります。そのため、無理をして痛みを我慢せず、薬を使って痛みを軽減させるのは大切なことであり、適切な対処法といえます。

しかし、我慢できないほどの激しい痛みを腰に感じたり、手や足にしびれが生じる場合は、自己判断で薬を使用せずに早めに医師の診察を受けてください。

また、薬を使用しても改善が見られないときも同様に受診をしましょう。

<参考文献 >

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