更新日:2024年12月23日
基礎代謝量を上げる方法とは?基礎代謝に関わる栄養素や取り入れたい運動を紹介
「基礎代謝」は、健康を意識する人であれば一度は聞いたことがある言葉でしょう。「昔と比べて太りやすくなった…」「疲れが取れにくくなった…」と感じる場合は、基礎代謝量の低下が影響しているかもしれません。基礎代謝量を上げると、太りにくい体や疲れにくい体を手に入れたり、体の冷えが改善されたりすることも期待できます。今回は、基礎代謝に関わる栄養素や、取り入れたい運動などについて紹介します。
監修
知久 正明 先生
メディカルチェックスタジオ 東京銀座クリニック院長・医学博士
INDEX
基礎代謝とは?
人は食べ物から摂取した栄養素を消化・吸収して、生きるために必要なエネルギーを生み出します。このように体内で行われるさまざまな化学反応の総称を「代謝」といいます。そのなかでも「基礎代謝」とは、生命活動を維持するために、特別なことをしなくても無意識に行っているエネルギーの消費のことをいいます。
代謝が行われている体の部位の内訳としては、年齢や性別、体格によって異なりますが、筋肉が一番多く約22%、次いで肝臓が約21%、脳が約20%です。つまり、日々の運動量を増やしながら筋肉をつけたり、筋肉をつけるために食事を工夫したりすることで、基礎代謝量を上げることが期待できるのです。
代謝の種類
私たちの総エネルギー消費量は、次の3種類に分けられます。
基礎代謝量
安静時に消費されるエネルギーによる代謝量のことであり、1日のエネルギー代謝全体の約60%を占めます。基礎代謝量は主に体格に比例するため、体格の大きい人は基礎代謝量も高くなる傾向にあります。
身体活動量
仕事や家事などの日常生活の活動時や、スポーツなどの運動時に消費されるエネルギーによる代謝量のことであり、1日のエネルギー代謝全体の約30%を占めます。運動を習慣化している人や、仕事で普段から体を動かすことが多い人などは身体活動量も多くなる傾向にあります。
食事誘発性熱産生
食事をするときに消費されるエネルギーによる代謝量のことであり、1日のエネルギー代謝全体の約10%を占めます。食事をした後に体が温かくなるのは、この代謝の影響といえます。
性別や年齢による基礎代謝量の差とは
基礎代謝量は、一般的に高齢者より若者、女性より男性が高くなります。これは、筋肉などの除脂肪の量は加齢により減少する傾向があり、また、男性は女性より除脂肪の量が多いことが関係しているためです。
基礎代謝量は、エネルギー代謝量の大半を占めていますが、10代がピークとなり年を重ねるごとに徐々に低下します。ただし、日々の活動量を増やすことで、筋肉量を増やし、基礎代謝量およびエネルギー代謝量を増やすことが期待できます。
自分の基礎代謝量はどのように計算する?
基礎代謝量は、上述の通り性別や年齢などの条件によって異なります。自分の基礎代謝量はどのくらいなのか、ここで計算してみましょう。基礎代謝量を算出するにはさまざまな計算方法がありますが、一般的に「ハリス-ベネディクト」の式が用いられています。
Harris-Benedict(ハリス-ベネディクト)の式※1
男性:66.5+(13.75×体重〈kg〉)+(5.0×身長〈cm〉)-(6.78×年齢)
女性:655.1+(9.56×体重〈kg〉)+(1.85×身長〈cm〉)-(4.68×年齢)
※1 日本救急医学会「エネルギー消費量」より引用
例えば、40歳男性で身長が175cm、体重が70kgの場合、計算式は以下の通りです。
66.5+(13.75×70)+(5.0×175)-(6.78×40)=1,632.8
つまり、この場合の1日の基礎代謝量は1,632.8kcalとなります。自分の基礎代謝量を知ることで、1日の摂取カロリーの目安も意識することができるでしょう。
基礎代謝量が低いとどうなる?
さまざまな原因が重なって、基礎代謝量が低くなってしまうこともあります。その場合、体にはどのような影響があるのでしょうか。詳しく解説します。
疲労が溜まりやすくなる
日常的な運動量が減って筋肉量が減少すると、しだいに基礎代謝量は低下し、食欲も減ってしまうことがあります。1日のエネルギー代謝量が下がると、疲労感を覚えやすくなり、ますます身体活動量の減少や活力の低下を招くという悪循環に陥ることもあるでしょう。
運動の習慣をつけるようにして、かつ毎日必要な栄養素を食事から摂ることが理想的ではありますが、日々の忙しさから食欲が減ったり、自炊から充分な栄養素を摂れなかったりすることは多いかもしれません。最近疲れやすくなったと感じる場合、疲労回復に効果のある「ビタミンB群」を摂ることもおすすめです。
疲労を感じたときには、日々の食事から摂る栄養素に加えて、サプリメントやビタミン剤の活用も検討してみましょう。
- 疲れたときのビタミンB1などの補給におすすめのアリナミン製品
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太りやすくなる
基礎代謝量を上げることとダイエットは関連付けられることが多いですが、どのように関連しているのでしょうか。
一般的に言われる太りやすさ・太りにくさには、日々のエネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスが大きく関わってきます。食事などのエネルギー摂取量に対して、運動などのエネルギー消費量が不足している場合は、代謝が十分に行われず、体脂肪が蓄積し、肥満につながってしまいます。
エネルギー消費量を上げるために重要なことは、適度な運動などによりエネルギー消費量を上げること、筋肉量を増やし基礎代謝量を減らさないこと、食事内容を工夫してエネルギー摂取量を減らすことが挙げられます。
冷えやすくなる
筋肉量と基礎代謝量の関連性については説明しましたが、基礎代謝量が減ると体の冷えにもつながってしまいます。筋肉量が少ないと、体内での熱産生も減ってしまい、それが体の冷えを引き起こしてしまうためです。
日々の継続した運動で筋肉量を増やし、基礎代謝量を上げることによって、体の冷えの改善が期待できます。
疾患につながる可能性も
生活習慣の乱れなどから基礎代謝やエネルギー代謝が正常に行われなくなると、本来の体の機能が維持できず、以下のような疾患につながってしまう可能性もあります。気になる人は早めに医療機関に相談してみましょう。
【代謝の悪化による疾患の例】
- ・糖尿病
- ・高血圧
- ・脂質異常症
- ・脂肪肝
- ・高尿酸血症(痛風)
- ・メタボリックシンドローム
- ・肥満症
基礎代謝量が下がる原因
筋力の低下
体内でエネルギー代謝量が最も高い部位は筋肉です。普段体を動かす習慣がなかったり、デスクワークなどにより座りっぱなしの状態が続いていたりすると、筋力が低下してしまいます。筋肉のなかでも、骨格に沿って付いており、体の活動を支えているものは骨格筋と呼ばれ、筋肉全体の約40%を占めています。この骨格筋は運動をすることで増やすことができます。骨格筋が増えると、運動で消費されるエネルギー量が増え、基礎代謝量の上昇が期待できます。
過度なダイエット
ダイエットのために過度な食事制限をしてしまうと、筋肉をつくるために必要なタンパク質や、エネルギー代謝を促すために必要なビタミンなども不足してしまうことがあります。バランスのよい食事は基礎代謝に限らず、健康的な生活を送るためには欠かせません。ダイエットのためといって断食をしたり、特定の食品しか食べないような食生活を送ることは避けましょう。
自律神経の乱れ
自律神経は、血管や心臓、肺など全身のあらゆる部分に分布していて、私たちのさまざまな活動をコントロールする司令塔のような働きを担っています。
自律神経は体内のエネルギー産生にも関わりがあり、精神的ストレスや生活習慣の乱れによって自律神経の機能が低下してしまうと、頭痛や低血圧など、日常に支障が出る不快な症状が現れることがあります。
自律神経が乱れると基礎代謝量が低下してしまう可能性もあるので、ストレスを溜め込まないことや生活のリズムを整えることを意識しましょう。
基礎代謝量を上げるために取り入れたい運動
基礎代謝量を上げるには、体を動かす習慣を身につけることが重要です。ここでは、気軽に取り入れやすい運動を紹介していきます。
筋トレ
筋力トレーニング(筋トレ)は、一般的に筋肉に負荷をかけて筋肉量を増やす運動のことで、骨格筋が増えると、体を動かすエネルギー消費量が増え、基礎代謝量も上昇することが分かっています。
筋トレは無酸素運動の1つであり、有酸素運動に比べると体脂肪の減少効果は少ないですが、筋トレを通じた筋肉量の増加によって、基礎代謝量を2~3%上昇させ、体脂肪の蓄積予防に効果が期待できるといわれています。
日常生活に無理なく取り入れられる筋トレの例としては、スクワットや、寝ころんだ状態からの背筋がおすすめです。行う際は、早く上下運動するのではなくゆっくりとしゃがんだり、そらした体をゆっくりと降ろしたりすることがポイントです。また、筋トレのためにエスカレーターやエレベーターを使わず、階段を利用するという方もいるでしょう。その場合は急いで上るより、ゆっくりと下る方が筋肉量を増やすともいわれています。毎日少しずつでもよいので、トレーニングを継続して行うようにしましょう。
ストレッチ
ストレッチング(ストレッチ)は、意図的に筋や関節を伸ばす運動のことで、取り入れることにより心拍数や血流量を増加させたり、体温を上げたりすることが期待できます。基礎代謝は体温の変動に深く関わっており、体温が上がると基礎代謝量も上昇するといわれています。
ストレッチの効果としては、筋肉や関節の可動域が広がることも重要なポイントです。日々のデスクワークなどにより、肩甲骨や骨盤が硬くなってしまっている方も多いのではないでしょうか。肩甲骨と骨盤は、体の中心にある背骨と密接に関わっており、それらが適正な位置に戻ると、正しい姿勢を取れるようになります。ストレッチにより、肩甲骨と骨盤まわりの筋肉の可動域が広がることで、基礎代謝量の上昇も期待できるともいわれています。
有酸素運動
有酸素運動とは、ウォーキングやジョギング、水泳のように比較的長い時間にわたって行う運動のことをいいます。
有酸素運動をすることによって、体内の心肺機能が向上して脳内の血流が増えたり、体脂肪が減少、また筋肉量が増加したりすることで基礎代謝量が上がることが期待できます。
有酸素運動も長続きできる方法を選ぶことがポイントです。走ることや泳ぐことが苦手という方は、自転車やフィットネスバイクを利用してみることもおすすめです。漕ぐ際は、単純にペダルを回すよりも逆回りをするなど、屈筋だけでなく伸筋を鍛えることが心臓にも負担がなく、有酸素運動も長続きできるといわれています。自分に合った方法を探してみましょう。
基礎代謝に関わる栄養素
基礎代謝には、運動だけでなく、普段の食事の栄養バランスも大きく関わっています。特に意識して摂りたい栄養素について紹介します。
タンパク質
基礎代謝量が減少する主な原因の1つは筋肉量の減少です。筋肉量を増やすには、タンパク質の摂取が重要です。タンパク質を摂取することで、筋肉をつくる材料が増えて基礎代謝量が上がり、エネルギー産生にもつながります。
タンパク質は肉類や魚介類などの動物性食品、豆類などの植物性食品に多く含まれています。
【タンパク質を多く含む食べ物】
- ・肉
- ・魚
- ・レバー
炭水化物
炭水化物は、エネルギーのもととなる重要な栄養素です。炭水化物は摂取エネルギーのほとんどを糖質に変え、分解されたブドウ糖を体の各組織に運ぶ役目を果たしています。全身に運ばれたブドウ糖は体や脳を動かすエネルギー源となるため、炭水化物の摂取量が不足してしまうと、生命活動を維持するための基礎代謝が十分に行われなくなってしまいます。
特に脳は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源としているため、糖質の摂取が欠かせません。また、脳は基礎代謝量の約20%を消費するので、ブドウ糖が減ると脳に栄養が行き届かなくなり、疲れや日中の判断力低下などにつながることもあります。
炭水化物はご飯、パン、麺類などの主食に多く含まれているため、摂取はさほど難しくありませんが、砂糖や甘味類から摂取しようとすると血糖値を急激に上げてしまうことにもなるので、注意しましょう。
【炭水化物を多く含む食べ物】
- ・パン
- ・米
- ・スパゲッティ
- ・さつまいも
ビタミンB群
ビタミンB群は三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)の代謝を助ける、生命活動の維持には必要不可欠な栄養素です。主に肝臓において、各消化器官から吸収した栄養素や、グリコーゲンといわれる糖を蓄えて、エネルギーの生成や炭水化物・タンパク質の分解などが行われています。その働きに、ビタミンB群をはじめとするビタミンやミネラルが利用されています。ビタミンB群のなかでも、特にビタミンB1・ビタミンB6は体内で幅広い機能を果たしている栄養素です。
ビタミンB1
ビタミンB1は、炭水化物を摂取した際の栄養素であるブドウ糖をエネルギーに変える重要な役割を担っています。ブドウ糖は、さまざまな代謝を経て「ピルビン酸」に変わります。そのピルビン酸を「アセチルCoA(高エネルギー化合物)」に変換するときに必要とされるのがビタミンB1です。アセチルCoAはTCA回路※2(クエン酸回路)に入り、代謝の過程でエネルギーが産出されます。つまり、炭水化物をどれだけ摂っても、同時にビタミンB1を摂取しなければエネルギーに変えることはできません。
※2 糖や脂肪酸などの有機物が呼吸により代謝される回路
ビタミンB6
ビタミンB6は体内の酵素反応に関与しており、そのほとんどはタンパク質の代謝に利用されています。ビタミンB6内の一化合物の中には、炭水化物や脂質の代謝にも関連する物質を内包しており、エネルギーの代謝には必要不可欠です。
ビタミンB群は野菜類、穀類、果実類などに多く含まれています。ビタミンB1やビタミンB6は水に溶けやすい「水溶性ビタミン」であり、体内に蓄積されにくいため、食事やサプリメントなどで意識的に摂取することが重要です。
【ビタミンB群を多く含む食べ物】
- ・切り干し大根
- ・モロヘイヤ
- ・ブロッコリー
- ・豚肉
- ・うなぎ
- ・納豆
食物繊維
食物繊維の摂取は整腸効果だけではなく、血糖値上昇の抑制や、コレステロール値を下げるなどの効果が期待できます。
筋肉量が減ってしまうと、日々の活動量も次第に少なくなってしまいます。運動不足は中性脂肪の増加や血糖コントロール値の悪化にもつながるので、運動の習慣をキープすることと同時に、食物繊維の日常的な摂取も意識していきましょう。
食物繊維は野菜類、穀類、豆類に多く含まれており、食品によって効果が変わってくるため、バランスよく摂取することが重要です。
【食物繊維を多く含む食べ物】
- ・切り干しダイコン
- ・きな粉
- ・豆類
- ・ひじき
生活習慣を見直して健康的に基礎代謝量を上げよう
基礎代謝量は加齢により下がってくるものですが、実は日々の食生活や運動などの生活習慣を見直して、基礎代謝量を上げることが期待できます。筋トレやストレッチの習慣化や、食生活の見直しなど、普段の生活に取り入れやすいものから始めてみましょう。仕事や家事、勉強などが忙しく食事にこだわることが難しいという人は、サプリメントやビタミン剤の摂取も試してみてはいかがでしょうか。
- <参考文献>
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - 農林水産省「バランスの良い食生活を送るコツ、正しいダイエットのコツ」
https://www.maff.go.jp/j/fs/pdf/data04.pdf
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書