元気の雑学

2012年2月28日公開分

Vol.18グロテスク!? でも、美肌にうれしいアンコウのパワー

出典:武田薬報466号監修:宮城大学 理事・副学長、大阪市立大学 脳科学講座教授 井上正康

はじめに

これまでは、マグロ、カツオ、サケなど、疲れも知らずに猛スピードで泳ぎ続ける回遊魚を取り上げてきました。今回はこうした魚とは対称的に、深海の底でひっそりと暮らすアンコウをご紹介します。

釣竿のような擬似餌でハンティング

アンコウと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、茨城県の名物・アンコウ鍋ではないでしょうか。鍋料理として食用にされているキアンコウのほかに、ダイバーなどの間で鑑賞用として人気のカエルアンコウ、そして映画『ファインディング・ニモ』にも登場するチョウチンアンコウも有名ですが、これらはそれぞれ違う科に分類されます。


アンコウ目に共通する特徴が、両眼の間、口のすぐ上についている「擬似餌(ぎじえ)」です。背びれの棘(とげ)が変化した棒状の突起物を釣竿のように操りながら、まるで生きたエサが震えているようなしぐさで獲物をおびき寄せます。そして腹を空かせた魚がこの擬似餌に食いついた瞬間、目にも止まらぬ速さでガバッと大きな口を開けて獲物を丸飲みします。
お世辞にも優雅とはいえない姿のアンコウは、泳ぎも苦手で獲物を追い掛け回すことができません。しかし、忍者顔負けの保護色と擬似餌で獲物を仕留めることができるハンターなのです。

たくましいメスが、オスを吸収合併!?

通常、私たちが目にすることができるのは圧倒的にメスです。これはオスよりもメスの体のサイズが極端に大きいことに起因しています。チョウチンアンコウでは、メスとオスの体重差が実に100 倍以上。メスのたくましさは、同じようにメス優位社会であるコブシメ(Vol.10に登場)やクマノミ(Vol.11に登場)をはるかにしのぎます。
その繁殖習性も驚きです。出会いの頻度の少ない深海では、大きなメスを見つけたオスがメスに噛みつき、やがてお互いの皮膚が合わさって血管でつながります。


寄生したオスは全栄養をメスに依存し、究極のヒモ生活……と思いきや、主導権は完全にメスが握ることに。繁殖期の産卵時に精子を放出させられたオスは用無しとなり、血流が遮断され、萎縮してメスに吸収されてしまいます。
鍋料理でおなじみのキアンコウも、食用になるほど大きなオスはいないため、食卓に上るのはメスだけです。チョウチンアンコウほど豪快な繁殖習性はないといわれますが、まれにメスの胃袋からオスが出てくることもあります。魚界でも身心共にメスに捧げるのがオスの宿命のようです。

コラーゲン、ビタミンB群、A、Eが豊富

「西のフグ、東のアンコウ」といわれるように、アンコウはそのグロテスクな外見からは想像できないほど美味で、歴史的にも名高い高級食材です。骨以外は捨てるところがなく、肝や皮など、七つ道具と呼ばれる臓器は、それぞれの風味や食感を活かした料理に使われます。
調理の基本は“吊るし切り”です。これは図体が大きいうえに、日頃あまり動かない習性のために柔らかく、表面がヌルっとしてまな板でさばきにくいためです。
アンコウに含まれる栄養素は、肌をプリプリにしてくれる、女性に嬉しいコラーゲンが有名ですが、身にはビタミンB群、肝にはビタミンA、Eも豊富で、皮膚や粘膜の健康維持、貧血予防に良いとされています。
まだ寒さが続く今の時期、美しさと元気の素がつまったアンコウ鍋で温まってはいかがでしょうか。


アンコウ【鮟鱇】

アンコウ目アンコウ科に属する。北極海などの極圏付近から地中海まで広く生息する深海魚。日本近海では水深100〜300mの砂泥底に生息し、底引き網で水揚げされる。
食用にされるのは主にキアンコウで、肝、とも(胸びれ・尾びれ)、ぬの(卵巣)、身(柳肉)、胃(水袋)、えら、皮の部位を七つ道具と呼ぶ。

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